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ダハールちゃんは。
"そこにいるだけ"じゃだめなの?
[せっせとレンゲを編みながらも、ダハールの言葉を耳に入れ、少女は首を傾げる]
ハルだって、ここにいるだけ、だよう?
[そして、それだけが、少女の望み]
リヴリアちゃんの、お洋服?
ああ、リヴリアちゃん、今日はちょっとくたびれた格好だったねえ。
[リヴリアの服装については、のんびりとそう返した。
7年前から続く今日の話。
これからもずっと終わらない今日の話]
ふふ、大した自信だ。
じゃあすぐそこだけど潮騒の子の家まで駆けてみるかい?
いや、ボクの挑戦を受けてください王者様。
受けて負けて『ぐぬぬ』ってする顔をする貴方様を肴にランチを頂きとうございます。
が、いいのかな?
[どう? っと言わんばかりにミズキとローザに小首を傾げたまま眺めてみせ]
お料理も、潮騒の子と競ってみたらどうだい?
キミならめきめき追いつけると思うのだけど。
ありゃ。
[花冠を断られると、意外そうな顔をした。
これまで断られたことなんか、なかったからだ]
ええーっ、ダハールちゃんだって、似合うと思うよう?
ムラサキツユクサなんか、ちょっと大人っぽくっていい感じじゃないかなあ。
[レンゲを編む手を止めて、検分するようにまじまじとダハールを見つめる]
……僕はね
”いるだけ”どころか、いるのもだめ
だってさ。リヴリアに、言われちゃった。
いっそ、桜とか樹木だったら、
傍にいられるのかなぁ
[首をかしげた少女に
泣き顔のお面のまま、
さめざめと泣くしぐさ一つ。
の後、おもむろに顔を上げて]
まぁ、それでも いるんだけどね?
……ハルが同じに言われたら、どうする
[ずっと、ずっとい続けているらしき少女。
けれど、彼女の中では、一日の出来事。
洋服の話には
「ハルみたいな服もきればいいのにねぇ」
と、こちらものんびり返す。]
[ただ、意外そうな顔には軽く目を逸らす。]
あー、いや、その……ムラサキ……?
ツユ何とか?はさておき、さ。
[まじまじと見られている。
園芸部でもない少年には花の名前は
難しくて、それがどんな花かもわからず
まさか、男だから勘弁とも言い出せず
彼女の視界をさえぎる様に両の手を顔の前に。]
こんばんはあ。
[明けぬ夜をちらりと視界に入れた後、夜の挨拶を返す]
………旅をしてるのとは、違うんですよう。
流れ星じゃないんですよう。
でも、んー……、
お星様、急ぎ足で歩いてるみたいで、落ち着かないですねえ。……わたしが。
[説明になったかどうか分からなくて、困ったような笑顔が浮かぶ。
渡り鳥の少女の問いかけにゆるく頷いた後、少女もこてんと首を傾げて]
……もしかして、いっしょに探してくれるんですかあ?
まあ、いい。
そうとなったらローザ、君も走るだろう?
あの家まで競争だ!
[気を取り直して。
もう目前に見えるシンの家を指差して、
ローザに向けて笑いかけた。
手に持つ二つのバケツのうちの一つをリヴリアに渡す、
ローザへのハンデだ、と伝えながら。]
位置について―――……
よーい、ドン!
[少し逸り気味に有無も言わせず、
砂浜のかけっこへと*駆け出して行く*]
ながれぼし、ちがう?
そっか――たびびとさんじゃ、ないのね。
[急ぎ足、落ち着かない。
眠たげな表情には感情らしい感情は浮かんではいない。
ただあるがままに大きな瞳で夜空と、
そして困ったように笑う星売りを映した]
カスミがさがしてるおほしさまは。
どんなおほしさま?
ぐれいへんにも、とどくかな。
[一緒に探す。
その言葉に頷いて星売りを見上げた]
ボクを調味料にしても“ろく”な味にならないんじゃないかい?
[ろくなことにならないんだろう? とクスクス嗤いながらも仮面の中で巡る思考。
貧弱な……出会った頃のあのたどたどしい様子ならばそうだろう。
けれど、最初とは見違えるように良く回るようになった舌。
無論『話す』と『味見』ではまるで違うのだろうけれど、その眩しいまでの向上心を見せる彼女からは、やはり少し何かがひっかかる]
ふふ、ならばそちらの方はボクの方がキミよりがんばっているようだね。
聞いて驚くといい。苦節5(6)年にしてボクはついにウサギちゃんリンゴを作ることに成功したのだよ。
[ふふふ、と胸を張ってみせる。
……それは“現実”での話なのだけど。]
[二人の対話に、微笑みを浮かべて聞いていたが
突如として始まった競争にはただ目を丸くした。
バケツのひとつをリヴリアに渡すとかけていくミズキ。
呆然と見送る。]
いるのも、だめ……?
[強い拒絶の言葉に、少女は小さく息を飲む。
それから、困ったように眉を下げた]
どうしたんだろうねえ?
リヴリアちゃん、そんな意地悪、言う子じゃないのになあ。
それでも、ダハールちゃんは、リヴリアちゃんの側にいたいんだあ?
ダハールちゃんは、リヴリアちゃんが好きなんだねえ。
……うらやましいなあ……。
[そう口にしてから、少女はきょとんと瞬いた。
それは、意図せぬ言葉。
うらやましいって、なんのこと?
少女には、心当たりがない。
少女の望みは、いつまでもずっと、ずうっとここにいること。それだけのはずだ。
誤魔化すようにへらりと笑った少女は、続くダハールの問いかけに、困る、と端的に答えた]
そんなこと言われたら、ハル、困るよ。
だって、ハルには他に行くところなんて、ないんだもん。
[そう答えた時、少女の顔から、表情は消えてしまっていたかもしれない。
少女にはわからないこと。少女は、考えないこと。
"楽しくないことは、なかったことに"
やがて、少女はケロリと表情を取り戻す。
顔を隠すダハールに、にこにこと楽しげににじり寄って]
ダハールちゃんは、恥ずかしがり屋さんなんだねえ。
[のんきにそんなことを言うのだった]
[困ったような表情。
それ自体がハルには珍しい。
編みかけのレンゲの花冠を持ったまま。
彼女が自身の言葉にきょとんとする様子を
彼女の言葉に苦笑を返しかけた泣き顔の仮面で
じっと見た
…………うらやましい、その言葉を発した彼女を。]
[困らせてごめん。そう、口にするよりも早く
とうとう表情が消えたハルは
いつもの様子を取り戻す。
浅く息を吐いた。
彼女の様子が、
見ているこちらが切なくなった。
でも、当の本人は、
きっともう、忘れてしまった。
だから。]
だ〜〜〜 そうです、そうなんです。
それはもう仮面をかぶるくらいには。
なのに、にじり寄ってくるような、子は
……えいっ!
[楽しげににじり寄るハルに調子を合わせて、
真紅のローブ姿は顔(仮面だが)を隠していた両の手で
彼女を捕らえながら軽く抱きしめようと。
……忘れてしまったとしても
彼女の感情を安堵させられればいいと、
怖い話を聞いて怯えた自分が
そうされて安堵したように。
時折刃物で切り傷をこしらえ
包帯を巻いていた手がしたように、
その黒髪をそっと撫でようと。]
やれやれ、ボクを出し抜くまでになったなんてやるじゃないか。
[駆けていく背を眩しげに眺め、傍らで呆然とした様子のローザへ顔を向ける。]
元気でいい子だろう?
もっとも……いい子じゃない子はいないのだけどね。
ここには。
[『ああ、一人いたか』と小さく呟いてから、バケツを持ち直し、走り征くミズキはこうしている間にもどんどん離れていくだろう。
もはやまともにやって追いつける距離ではないのだけれど]
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