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父は、母の金色の瞳と、小さな灰色の石、
両方の魅力に、一目惚れだったらしいわ。
[教えてくれた時の少し照れたようだった父の表情を思い出し、
くすり、小さく微笑んで、灰金色の瞳を伏せる。
かつては、母と――そして妹とそっくりの、
光の色をしていた瞳を]
[マルセーの記憶、ハンスの感情、レリアの過去。様々な人の心がうねりあって、星を形造ってゆく。それをじっと見つめていた]
いつか、終わり、くる。
キューちゃんも、返す時、来た。
[尻尾の先からするすると光の帯を放った]
[二人は父の家族……大統領一族の手から逃げるように、
ロワン・ディシーに移り住んで研究を続け、灰色の石が、
限りない可能性を持つエネルギー資源だと証明した。
最果ての土地の名を持つ、不毛の星ロワン・ディシーは
一躍、レアメタルの産地として有名になった(>>2:264)]
…あたし達が12歳の時、
母は見学中の採掘現場の事故で亡くなったわ。
それ以来、父は…ずっと、
何かを思いつめたような瞳をして…。
あたし達を信頼する知人に預け、自分だけノロンドに戻ったの。
[後から父の知人が、父と母の研究…ロワン・ディシーの
レアメタルのエネルギーが、ノロンドで軍事利用され始めた
らしい、と教えてくれた]
おじ……じゃなかった、オネェさん、サンキュ♪
[手を振って、売店を後にした。]
よかった、お土産買えて。
[壺をのぞくと、光と共にやさしい言葉があふれ。
それは空気に溶けていった。]
あ……あれ? ええっ!? 店が……消えた?
[振り返ると、背後に広がるのは荒野。]
それ以来、父と連絡が取れないの……
血筋を考えれば、殺されはしていないと思うけれど…。
…そして、あたし達が生まれ育ったロワン・ディシーが、
ラピス側の急襲を受けて滅んだのは、それから2年後のことよ。
だからあたし達には、
後退は(>>0:452)…帰る故郷はもうないの。
あの夜、シリルも…あたしも……、
……あまりにも多くのものを、失ったわ。
[小さな震えを帯びた声で、失われた星を想い、
灰金色の瞳を一瞬だけ伏せてから、
きゅっと唇を持ち上げるようにして、いつもの笑顔を作る。
小さな頃、両親が、幸せ探しをする少女、ポリアンナ(>>2:332)の
ようだと評した笑顔と微かに濡れた灰金色の瞳で芳を見上げて]
― 大きな星(回想) ―
[大きな星での回想は多くを語る事はすまい。
車掌ププモアの声音には、ラーマは星への危険さを微塵も感じなかったのだから。
綿毛舞う壮大なる大地、蝶々は花畑で睦言を囁き交わし、飴坊の様な水面をすいすいと渡る昆虫達に、そして、ほんの少しだけ、皆を楽しませる為に助力する人々。
ラーマは、蜻蛉に乗りながら雄大な景色を見て回った。星の声すら聴こえて来そうな景色だった。
星々の奏でる声(またたき)は遠く近く、ラーマが生まれた地である地球や太陽系が、唯一無二の「生命」と「意思」の存在する星でない事を、強く意識させた。
此処では地球は遥か彼方、挿話やお伽噺や、文章の中の一小節にしか過ぎぬ場でもあるだろう。]
―――。
[聖杯。
或いは其れに似たる場にて。
彼が願いたかったのは、唯一つ。
妻に再び命を与えること。
一度の疑念で喪った、愛する妻シータを蘇らせること。]
― 荒野 ―
[ハンスの言葉>>318に静かに微笑み、見送られるままに歩いた。
辺りには人はおろか動物や植物の姿すら見えず、少し赤みがかった土の地面が、遙か遠くまで広がっているように見える。]
どこに行けば……そういうものでもないのかしら。
[風に舞いあがった土埃に顔を手で覆いながらも、歩みは止めない。]
怖いけど、大丈夫。
私は進むわ。
[言葉を原動力にしたかのように、一歩一歩を踏みしめて、確実に進んでいく。]
[彼は王だった。
しかし、伝承にある様な
神でも神の化身でもなかった。
与えられた妻であろうとも、
彼は妻を愛していた。
願いたいのは何時でも一つ。
一度の失敗で、彼女は笑わなくなった。
そして一度の疑念、
敵に捕らわれ長らく会えなかった妻へ、
問いつめた その時。
妻は地に飲まれ消えた。
鮮血の迸りは温かく、
今もまざまざと思い出す事が出来る。]
[だから、何時だって。]
ぼくはきみに、幸せを与えたいと思っていた。
ぼくの所為で喪ってしまった命を、
きみに再び与えたいと思っていた。
あの時の行いを変えられるなら、
ぼくは何だってしたかった。
[しかし、其れは叶わぬ願い。
死後英霊となろうとも、
何時だって、誰かの願いを叶える為に、その力は振るわれる。
そんな存在で在り続けた。]
[この星で見る、生前の嘗ての過去で有り未来は、
受肉していない英霊の身にとってもまた、幻覚や幻影であろうか?
*否、或いは―――*]
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