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― 大きな星(回想) ―
[大きな星での回想は多くを語る事はすまい。
車掌ププモアの声音には、ラーマは星への危険さを微塵も感じなかったのだから。
綿毛舞う壮大なる大地、蝶々は花畑で睦言を囁き交わし、飴坊の様な水面をすいすいと渡る昆虫達に、そして、ほんの少しだけ、皆を楽しませる為に助力する人々。
ラーマは、蜻蛉に乗りながら雄大な景色を見て回った。星の声すら聴こえて来そうな景色だった。
星々の奏でる声(またたき)は遠く近く、ラーマが生まれた地である地球や太陽系が、唯一無二の「生命」と「意思」の存在する星でない事を、強く意識させた。
此処では地球は遥か彼方、挿話やお伽噺や、文章の中の一小節にしか過ぎぬ場でもあるだろう。]
―――。
[聖杯。
或いは其れに似たる場にて。
彼が願いたかったのは、唯一つ。
妻に再び命を与えること。
一度の疑念で喪った、愛する妻シータを蘇らせること。]
― 荒野 ―
[ハンスの言葉>>318に静かに微笑み、見送られるままに歩いた。
辺りには人はおろか動物や植物の姿すら見えず、少し赤みがかった土の地面が、遙か遠くまで広がっているように見える。]
どこに行けば……そういうものでもないのかしら。
[風に舞いあがった土埃に顔を手で覆いながらも、歩みは止めない。]
怖いけど、大丈夫。
私は進むわ。
[言葉を原動力にしたかのように、一歩一歩を踏みしめて、確実に進んでいく。]
[彼は王だった。
しかし、伝承にある様な
神でも神の化身でもなかった。
与えられた妻であろうとも、
彼は妻を愛していた。
願いたいのは何時でも一つ。
一度の失敗で、彼女は笑わなくなった。
そして一度の疑念、
敵に捕らわれ長らく会えなかった妻へ、
問いつめた その時。
妻は地に飲まれ消えた。
鮮血の迸りは温かく、
今もまざまざと思い出す事が出来る。]
[だから、何時だって。]
ぼくはきみに、幸せを与えたいと思っていた。
ぼくの所為で喪ってしまった命を、
きみに再び与えたいと思っていた。
あの時の行いを変えられるなら、
ぼくは何だってしたかった。
[しかし、其れは叶わぬ願い。
死後英霊となろうとも、
何時だって、誰かの願いを叶える為に、その力は振るわれる。
そんな存在で在り続けた。]
[この星で見る、生前の嘗ての過去で有り未来は、
受肉していない英霊の身にとってもまた、幻覚や幻影であろうか?
*否、或いは―――*]
― ??? ―
あら、ここは……。
[気づけば無心で歩いていて、周りから人の声がした。
声、というより活気とでもいうのだろうか。
喧騒、人の気配、そういったものがどんどん強くなってくる。]
あ、ごめんなさ……い。
[不意に人とぶつかったような気がして、慌てて振り返る。
そこに見えたのは――生まれ故郷の景色だった。
驚きに目を見開いていると、下方から声が聞こえる。]
「ごめんねー! また明日!」
[その声は、どこか自分に似ていて。
その姿は、幼い頃の自分にそっくりで。
今の姿は見えないのだろうか。
周りの大人も、その子どもも、何も言わずに通り過ぎていく。]
「メルちゃんきをつけてねー!」
[幼い頃、よく一緒に遊んだ女の子が遠くに見える。
その声の先には、幼い頃の自分がいた。]
これが……選ばなかった未来。
[無意識に近い状態で呟くと、ふらり。
人ごみの間を急いでかけていく、幼い自分の姿を見やる。
向こうは小回りの利く体だからか、すいすいと前へ進んでいくが、こちらもまた人に当たる心配がない。]
まるで、幽霊になったみたいね。
[聞こえるはずもないのについ囁きながら、見失わないように早足で小さな背中を追った。
その角を曲がれば。]
「かあさま、ただいまー!」
[見覚えのある、こじんまりとした家があった。]
「おかえりーメル!」
[ドアを開ける必要もなかった。
壁を通り抜けるように家に入ると、少しやつれた母の姿があった。
自然と目に涙が浮かび、体が微かに震える。
見逃すまいと慌ててまばたきをすると、小さな雫が零れ落ちた。]
「かあさま、今日はたまごがあるからね!」
「あらあら嬉しいねえ!」
[簡素なキッチン。古びたフライパン。
手にした籠に入れた卵を取り出して、嬉しそうに母に見せる幼い自分。
母はやつれてはいたけれど、以前のはつらつさは失われておらず、大好きな太陽みたいな笑顔を浮かべていた。]
かあさま……。
[その後の光景は、どれも見慣れたものばかりで。
ちょっと焦げてしまった目玉焼きとミルクに浸したパン。
それを母の元へ運んでいく。
ありがとうと頭を撫でてくれる母。
嬉しそうに微笑んで、一緒に食事をとった。
今日あった出来事を話して、これからのことを話して。]
「病気だからって、気持ちまで沈む必要がどこにあるんだい!」
[そう言って、からりと笑った母の姿が思い出された。]
[楽しい時間はあっという間に過ぎて、暗い暗い夜が来る。]
「かあさま、となりでねていい?」
「……もちろんさ。おいで」
[優しい声のかあさまの隣に潜りこんで、狭いベッドにふたり横になる。]
「かあさま」
「なんだい?」
「いつもいっしょにいられなくてごめんね」
[服の裾をぎゅっと掴んで、そんな言葉が漏れる。
本当は、ずっと傍にいたいけれど。
現実は優しいだけじゃなくて、生きていくためには働かなければならなかった。
元々母の仕事を手伝っていたから、職に困るということがなかったことだけが幸いで。]
「メルがいるから、つらくないよ。寂しくないよ」
[そう言って、大好きな暖かい手で頭を撫でてくれる母に抱きついて、静かに泣いた。]
かあさまは、寂しく、なかった……?
[聞いたことのない言葉。
つまりこれが、選ばなかった未来なのだろう。
今までと変わらない毎日を過ごして、終わりが来る恐怖に震えている。]
それでも、かあさまは。
[呆然とただ立ち尽くしたまま、すやすやと眠る幼い自分と、慈愛に満ちた表情でそれを見つめる母の姿を目に焼き付けた。]
そう、ね。
うん、大丈夫。覚悟はできていたから。
[母が眠るまでその姿を見つめて、寄り添って眠る親子に背を向ける。
壁を抜けて外に出ると、夜空に満天の星空が輝いていた。
上を見上げる。
よく星が見えるように、涙が零れないように。]
答えが分かって良かった。
かあさまに会えて良かった。
[ぽつりと呟くと、少しだけ気持ちが晴れた気がした。
目を閉じると雫が零れた代わりに、今見てきた光景が浮かぶ。
きっと長生きはできなかっただろう。]
それでも、かあさまは幸せに生きられたのでしょうね。
[そう、信じたい。
けれど、それを信じれば。]
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