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したら気付けの草ば置いてぐがらよ、余っちまったら駅屋に置いてってぐれな
ま〜、誰か使うべよぉ
[どのみち、眠気覚ましも酔い覚ましも自分には無縁の代物だ。
物々交換のネタになるかと思って、種を採りがてら葉の方も多少集めておいたが、少しばかり採りすぎたかもしれない。
ついでにと、化膿止めやら咳止めやらの草やら、あれもこれも、と、少々かさばる草葉の類を駅屋においていく。
ここから先は人の通らぬ道なき道だ。物々交換の当てもないなら、余分な荷物は置いていくに限る]
そんじゃぁ、オレはこれで
いい旅になるといいべな
[お互いに。笑みを残して、駅屋を発った]
―― 昔話
[たたら部の村では16歳になれば成人と認められ、火山での立ち回りを覚えさせられる。だが、よく体調を崩し伏せる事が多かったジェスロは16歳になっても、火山へ行く事を許されなかった。
そんな彼を不憫に思ったのか仲間外れと感じたのか、彼のたった一人の友人である鍛冶師見習いは、彼を火山に連れて行ってやる為に、大人達に内緒で魔素吸収に関する知識と、火山に出る危険種の活動期を頭に叩き込んだ。
そして決行の日、魔素吸収の印を掘った魔法銀の護符をジェスロに渡し首から下げさせる。よっぽど護符の出来がよかったのだろう、ジェスロが体調を崩す事も鍛冶師の少年が影響される事もなく、二人で火山を登る事が出来た。
行動していたのが彼ら二人のみであったなら、危険種は現れず、事故も起きず、二人は無事に帰路に着く事が出来たのだが――…]
―ジェスロの自宅前―
[いつ帰ってこれるか分からない状態で、まったくなんの挨拶もしないというのも何だ。あれから数日かけて必要な薬は作り上げ、そろそろ出かけるという段階になって、やっとここを訪れる]
(でも、ほら、出かけてるかも、だし)
[こそこそと。ノックをしてみる。本来なら家人に聞かせるためにするノックであるはずなのに、家人に聞かれるのを避けるような、小さな音。しばらくそのまま様子を伺う]
……。
(いな、い?)
[小さく首を傾げる。時間も冒険者であるジェスロが出かけていてもおかしくない昼間だ。いないものは仕方がないと、それだけ顔を合わせない条件を揃えた癖に、いないことを寂しく思いながら家の前を離れようとした]
――きぃ
[微かに聞こえた音。不思議に思って振り返ると、先程はきっちりと閉まっていた扉がほんの僅かに開いている]
……ジェスロ、さん?
[いるのだろうか。それにしては、普段の彼らしくない。そろり、と近寄ってみるけれど、扉の向こうからは何の音も聞こえてはこない]
…?
[微かに開いた扉の隙間から、小さな紙片が差し出された]
え、と…私、が受け取っていいの、かな…
[自信なさげに聞いてみるが、小さな神は依然としてそこにある。ダメなら引っ込むだろうとそれを抜き出すと、扉の隙間がそっと音もなく閉じた]
………???
[一体なんなのだろう。訳が分からないながら、手の中に残った小さな紙――カード?を見た]
『家のものはしばらく留守にします。御用がありましたら、後日に願えますでしょうか。 “屋根裏の怪盗”』
……。
[それを見たヴェルの顔は、心底不思議そうなものだった]
−回想・酒場にて−
そぉなぁ…必要経費っつっでもよ、ほれ、これから行くとごってあんま人のたくさんいねぇとごだべ?
[開拓村よりも、旅の道中の冒険者や行商人と取引する機会の方が多くなるだろう。
そういった場所では、貨幣通貨よりも物々交換の方が何かと便利で確実なことが多い。
それそのものだけでは使い道がない硬貨よりも、即座に使い道のある現物の方が好まれるためだ]
ま、そっちの話は後でいいべよ
ブツでも話でも、言い値で売るがらよ
[経費がどれほどのものか分かるわけでなし、何より物珍しげな場所と種の情報が十分すぎる報酬になっていることもあり、エドワーズからの報酬の申し出>>*4は、暢気に曖昧にはぐらかせた]
もし、その学者さんが考えた魔法が利用されているなら、刻印をみてもらったらわかるんでしょうか。
……壊れちゃってますけど。
[猫のご飯皿を持ったまま、思案げに視線を巡らせた]
魔法に詳しい人なら解るのかな〜 って、ちょっと君、待って、ほら。
[子猫がせがむように前足を伸ばしてくるから、ひっくり返されないうちに、ご飯皿を床に置く]
モーリッツさん、と。
魔素で作物を大きくする、か〜 そんな身近な魔法の使い方もあるんですね〜
[感心しつつ、持っていた資料の端に、名前をメモする。
礼をして、頭を上げると手を振るウィルがいて]
あ、ごめんなさい。
[つい、頭を下げてしまうのもこの青年の性分。
けれどその性分で、ちょいちょいウィルを困った顔にさせている気もしている]
でもウィリアムさんには、いいえ、冒険者のみなさんにですけど。本当にありがたいと思っているんですよ。
[なんとなく、それは伝えた方が良いと思った。
肯定するように子猫がにゃーと鳴いた]
f〜〜f〜f〜〜〜〜♪
まぁ、行商人さんに『エドワーズさんにツケで〜』とが頼むわげにもいがねしなぁ
[風に乗って山の峰を目指す盾の上で呟いた。
物々交換のネタ用に集めた薬草をたんまりと置き去りにしたことを思えば、エドワーズさんの申し出を受けておいてもよかっただろうか?
などと思い出しつつ。まぁ、その薬草にしたって元手のかかったわけで無し。経費を金額にするならば0だ。気を取り直して、空飛ぶ盾を飛ばしていく。
折りしも、周囲には疎らながら立ち上がる木々の姿が、ちらほらと増え始めていた]
/*
今見直したら盛大に勘違いしていたことに気付いたのでした。
ヴェルが受けたのは自警団からの依頼なのに、何故か酒場で依頼書見たのかと思い込んでいたという。
ごめん、ね!
[鍛冶師見習いの少年は、己を狙う黒い感情に気付かなかった。彼に手を引かれる少年は、自分が生き抜く事に精一杯で、鍛冶師の少年がどのような立場なのかを知らなかったし知ろうとしなかった。
そんな2人が“調子に乗っている奴にちょっと痛い目を見せてやろう”そんな理由で休眠中の危険種を起こそうとする者がいるなどと、予想が着くはずもはず――…結果、その瞬間がやってくる。
一通りのまわった後、適当な岩に腰かけ干し肉を齧っていた二人の耳に、悲鳴が飛び込んでくる。その方向をみやると村の少年らがフレイメアに襲われている。
痛い目を見せてやろうとフレイメアを叩き起したまではいいが、目的である鍛冶師の少年の隣には吸収の護符を持たされているとはいえ、強い反属性を持つ少年がいた為に、自分達が襲われてしまったのだ]
どうだろうなー、オレも魔法には詳しくないし。
……っと。
[前足を伸ばしてじたばたする子猫。
ご飯皿が置かれたのを見計らって、そっと床に下ろしてやる。
子猫は物凄い勢いで皿に駆け寄り顔を突っ込んだ]
ま、これ以上この件について知ってそうな人は思い当たらないし、手掛かりがある方に賭けるしかないな。
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