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………あぁ、そういえば。
あの時はクラットの御仁も、猫に顔を掻かれて大変なものだったな。
思い出した。
[本当に忘れているのは、未だウエストポーチの中にある謎の木箱のことだったのだが。
ふいに思考に浮かんできたことに(先程のウィルとの話の影響だろう)、納得したように一人ごちていた]
―自警団詰め所内―
こん、にちはー…
[こそこそと顔を出す。ここにも薬草を収めているので顔見知りはいる。そんな一人に声をかけられ、なんといっていいか首を傾げて考えていたが]
ちょっと、表の依頼書のことで、お話が、あります…
[そういうと、依頼を受けにきたのかと思ったのか驚いた顔をされた]
あ、いえ。ええと…
[言いあぐねていると、奥に通されて少し上の人に取り次いでもらえた]
…北の割れ谷のお話、聞いておられます、よね?近く討伐隊が組まれると…
私、それに行くつもりだったんです。けど、兄が…
[そこまで言って言葉を切ると、何事かを悟ったのか、同情した顔を向けられた。ヴェルは酒場に行かないので知らなかったが、酒場では「妹を割れ谷に行かせるな」「妹に怪我をさせないように護衛しろ」という張り紙が張られている。もしかしたら、それを見ていたのかもしれない]
………あの。西の開拓地への張り紙、見ました。あれ…私、が、行ったことにできませんか?
[勝手なことを言っているのは承知の上。断られたらその時でそう持ちかけた]
討伐隊には入りません。けど…私、単独で。北に、行こうと思うんです。
―自警団詰め所前―
[少しの間だけ辺りを見回したり何か思い出して呟いていたりしたところで、詰め所に向かってくる人影を見つけた。
そちらを注視する――近づけば近づく程に、その姿が詳細に見えてくる]
………やぁ、ヴェル殿。
丁度、今北の割れ谷の異変の状況を聞いたところだったのだが。
まさかヴェル殿も―――、
[先日薬草採りに来ていたヴェルの言葉。巨大化刻印の異変。
ヴェルの表情を見て、「なんとなく」感じ取った気がしたもの。
ロッテの思考にあったのは、彼女が一人ででも北の割れ谷に向かおうとしているのでは、ということだったのだが]
/*
Σ割れ谷解決してなかった!?
あー、いや、時間軸的にはそれがそーでこれがこーでああしてこうしてちょいちょいちょーい!ってことになるのか。
要約すると、地上時間軸→ヴェルさん時間軸→オレら時間軸。
いや、流石に乗りかかった船だからとかなんとか言っておきながらほったらかしで町出てっちまったら後味わるぃべよー
/*
クラットさんがお土産をもってきてくれるなら、
北の荒野のくもの巣にしよう。くもの巣みたいな、硝子のような樹脂のような不思議なもの。それで、パズルみたいなものをヘロイーズは作っているんだけど、なかなか見つからなくて、見つけたらお願いしますと頼もう。
―――ヴェル殿?
[まさか、彼女から薬の扱いに関して指南を受けることになるとは考えもしなかった。
概要は知識として得ていても、実践に必要な専門的な知識まで持っていた訳ではない。
ロッテも初めは慣れないものだったが、それでも次第に判ってきたような気がした]
………あい分かった。
向こうの異変に関しては、僕も助力する心算だ。
薬のこと、被害者の治療も、力を尽くすよ。
[己の方から、ヴェルが何処に向かうのか問うことはしなかった]
[―――聞かずとも、一度だけ、引き留めていた]
先日は、君のくれた煙幕が役に立った。
感謝する、ヴェル殿。
その借りを返すという訳ではないが、これを持って行け。
多少ではあるが、身に着けておけば魔法全体に対する抵抗力を強めてくれるものだと、博士――僕の知り合いが言っていたものなのだがね。
[やや強引に手渡したのは、ロッテが頭につけていた黒いリボン。
この「機巧使い」が冒険者となると言い出した時、それが魔法の察知に疎いことを知っていたその人が付けさせたものだった。
受け取りを断られたとしても、意地を通すような様で押し付けていたことだろう]
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