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― 酒場 ―
邪魔するよ。
[酒場の扉を開け店主に声を掛ける。
事件の匂いを嗅ぎつけたか、店内はややざわついた雰囲気だ]
ん? グラスがない?
ああ、いいよいいよ。話聞きに来ただけだから。
[頭を下げる店主に軽く手を振り、代わりに灰皿を出してもらった。
ヴェルの店で買った煙草に小型着火機巧で火を点け、一息吸い込んで]
ほら、さっき官憲が騒いでるの見掛けたんでね。
それに関して情報なり依頼なり、来てないかと思ってさ――
[言いながら、情報料としてのチップを主人の掌へ載せる]
そういや、怪我人の話は――
っと、現場に向かった官憲は流石にまだ戻ってないか。
そんじゃ、今後また情報が増えるかもしれないな。
[ひとまず情報は出し切ったと見て礼を言う。
短くなった煙草を灰皿に押し付けてから、ふと思い付いたようにパンを二つ頼んだ。
一つは自分用。もう一つは薬草をくれたヴェルに持って行こうと思ってのことだ]
−酒場−
s〜…s〜…s〜…
[風を操る旋律を少しずつ弱めて、そっと酒場の前に盾を乗りつけ、軟着陸させる]
お〜、ご主人さん、グラス持っできだけど〜
[グラスの入った木箱を抱えて店内に入り、そんな間延びした声を上げる]
んぉ?
なんが賑わっでねェが?
なんがあっだんがぃ?
[カウンターの影に木箱を降ろしながら、酒場の主ともなく、その話し相手の青年ともなく、問いを投げかける]
あ〜、あんどぎの?
[荷馬車がどうのこうの、商人がどうのこうの、と、ことのあらましを聞けば、思い出されるのは街道へと向かう道すがらに脇を駆け抜けていった荷馬車と、先刻ロッテが商談を持ちかけていたらしき荷馬車]
ロッテさんがこのグラス売っでぐれた荷馬車護衛しでくるっで言っでだがらよ〜
あとで話し聞けっかもしんねェなぁ
[思いつきをそのまま零すみたいに、そんなことをひとりごちる]
―タウン・ナリヤ外周にて―
[己が呼ばずとも官憲は自ずからやってくる。
外部から入ってくる荷馬車の存在を見てのことだった]
あぁ、検問か……というには何やら騒がしいが。
一体どうした?
[その答えを聞く前に、荷を積んだ馬車とその主は官憲の面々の捕捉を受ける。
木箱を抱えて同行していたロッテも、無関係とは判断されなかったようだった。ついさっき町の外に出て行った姿は目撃されていたから、初めから同行していた護衛ではないとは認められたのだが]
取り調べとあらば、協力しない訳にはいくまい。
丁度不穏な話を聞いて、其方に通報しようとしていたところだったしな。
……オノン殿に先に行ってもらって良かったな。
[少なくとも己が買い付けたグラスは、非合法の取引の対象となるような代物ではないとは判断していたのだが、結局かの商人が見せてくれなかった荷のこととなれば――]
んん?兄ちゃん事件が気になるんがぃ?
気になるこどっつったら、そぉなぁ…
もう一台、荷馬車がえれェ速さで通っでったがらよ。
今思えばありゃぁ事件を知らせに行っでたんじゃねェがなぁ?
[首をかしげかしげ、記憶を辿るようにしてその荷馬車の外装をポツリポツリ口にする。ある程度街に馴染んだものなら、荷馬車の主に心当たりもあるだろうか?]
―それから、官憲の詰め所にて―
――成程。
つまるところ、僕が遭遇した「隊商とはぐれて命辛々やってきた荷馬車」とは。
「荷物検査」の対象となるものの運び屋だった疑いが、ということでいいのかい。
[確認するように呟き、官憲の一人に向き合う。
自分が抱えていた木箱の中身は――ついでに、ロッテ自身の荷物検査も――シロとのことだった。
オノンに渡した木箱のグラスも同じ種類のものだったから、おそらくは問題ないものだろう]
魔素を多く含有した本体……。
その辺りの勘は僕は働かない筈だったんだが。
とんだお手柄、とでも言えば良いのかね。
……そう言えば、件の荷馬車に向かった時、別の車が通っていったのも聞こえたが。
あれも何か関係が――、
しかし、久々の「荷物検査」は中々応えたよ。
確かに僕は、他の人間よりは色々と隠し持ちやすい身体ではあるからな。
[凝視しない赤い両目は、何の音も立てない。
代わりに、テーブルの下で組んだ脚が、ほんの微かに硬質な音を立てる。
その「音」の訳を直接問われなければ、特に自ずから答えるわけでもない。先程のオノン>>52の反応を垣間見た時も、またそうだった。
つまるところ――少女の姿をしたこの冒険者は、身体そのものが機巧の産物。
といっても部品を頻繁に入れ替える訳でもなく、何より「ロッテ」としての中核に当たる部分の属性は変わらないものだったから、本人確認自体は然程ややこしいものでもない]
どこぞの誰かのように、特定のものに触れるだけで書類の紙束が待っている者に比べれば、大したことはないのかもしれないが。
……って、彼も此処に来ているのかい?
お?いいのがぃ?
[差し出されたコインに相好を崩しつつ、ふと手を止めてそのコインを眺める]
したら兄ちゃん?
この街で草やら木やらの種を譲っでぐれそーな人でも知らねェがぃ?
情報料はこいつで。
[にこやかに差し出したのは、たった今受け取ったばかりのコイン]
折角だし、行けるなら労いにでも行ってみようか。
何にしても、僕も証人のひとりになってしまった訳だ。
まだ酒場には戻れそうにないな……。
[果たして、書類地獄は終わっているだろうか――。
そんなことを考えながら、機巧の少女は、今暫くは詰め所に留まって*いる*]
折角だし、行けるなら労いにでも行ってみようか。
書類地獄の労いに、ね。
しかし、僕も証人のひとりになってしまった、ということか。
まだ酒場には戻れそうにないな……。
[機巧の少女は、今暫くは詰め所に留まって*いる*]
――官憲詰め所――
こん、にちはー。
[ばたばたと慌しく駆け回る人の邪魔にならぬよう、そっと声をかける。包みを抱えた彼女の姿を見れば、言わずとも用件は伝わったのだろう。いくつかの署名を求められただけで、奥へ入る許可は貰えた]
今日は皆さん忙しいんですね。
[経理へと案内をされながら、気になっていたことを聞いてみる。慌しくはあるが、薬草がいますぐ必要ではない様子に幾分安心していた。そして顔馴染みになった官憲から>>45の話を聞かされる]
……?
つまり…入ってくる荷物のチェックが、厳しくなって、る?
―― タウン・ナリヤ外周 官憲の詰め所
……なにこれ
[ジェスロは残り1枚となった書類を手に、困惑の貼りついた顔で官憲に問う。
その書類…書類というよりは何故か一枚だけやたら面積が大きいその紙のことを問われると、官憲は「枚数を削減した結果だ」と、答えた]
書く量変わってねーじゃん…
[がくりと項垂れつつもしっかりを手を動かし……数十分ほどかけて最後の難関を済ませた。
ヌァヴェルとロッテが来たのはどのタイミングだったか。書類との戦闘中であれば右手と視線は書面にとりかかりながら、言葉と左手で挨拶をしただろう]
したらありがたく…
[押し戻されたコインを懐にしまいこみ]
お〜、お願げぇ出来だら助がるなぁ。
したらご主人さんや、お冷一杯と、オレにもパン包んでおぐれ〜
[告げて、出てきたお冷を一気に呷り、パンを受け取る]
んじゃ、これ、御代。
さっきの報酬はまだ後でもらうがら、とっどいでな?
[にっこりとちゃっかりと念を押し、改めて青年に向き直る]
したらお願げぇさしてもらうがらよ
よろしぐな…え〜っと…兄ちゃん、名前は?
オレはオノンってンだ。
オノン・タンブルウィード!
[自己紹介とともに、右手を差し出す]
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