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「彼奴がすべて奪ったのだ・・・・
金も、地位も、名誉も・・・
彼奴さえいなければこんな姿になることはなかった・・・」
老人だったもの――獣人はうわごとのようにそう呟いていた。
私はその姿を哀れに思いながらもまずは獣人の注意をそらすべく、手に持っていた酒を思い切り獣人の顔に浴びせた。
「ウォオオオオオオ!」
この隙に扉からほかの部屋へ逃げよう、そう思ったが獣人の様子がおかしい。
ただの酒を浴びせただけでこれほどの叫び声を上げるものだろうか。
獣人の方を振り返ると、その体から煙のようなものが立ち上がっているのが見えた。
●
さようなら、兄さん
何度倒しても蘇る執念深さに半ば呆れつつ、私は銃口に手を掛け、別れの言葉を口にした。
そのときだった。
「やめろ!院長になにをするんだ!」
先ほど地面に叩きつけたはずの人形が、兄を庇うように立ちはだかっているではないか。
■
煙が立ち上る獣人をよく見ると、酒をかけた部分が爛れ焦げている…!私は悪心を覚えながらも、手に持った酒入りの水筒を見つめた。
酒に…弱いのか?聖水でもなんでもない、ただの酒だが…
「う、ぐううぅぅ、貴様、赦さない、赦さない、
彼奴の差し金か、赦さぬ、」
執拗に、彼奴という言葉を繰り返している。
何者だ?この獣人も、彼奴という奴も…。
私は水筒を構え、じりじりと扉に後ずさりながら、
「彼奴とは誰だ!?お前は何者なんだ!」
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