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[ハキム・ガールズは、ディーラー 一条に「この雇われ職を切り上げ辞めて、豪遊してもおかしくない額だ」>>200
と説明され、そうなのかな?と首をかしげている。
73億チップの価値がよくわかっていない……。]
先にフロアマネージャーから聞いているかもしれないが、君達をニュースその他のメディアに載せていいかという確認が来ててね。
[書類とサインペンを渡しながら。]
そこにサインしといてくれないかな。
[ハキム・ガールズは、その名の通り、大富豪 ハキム氏専属のダンサーたちである。
パドマーとパールヴァティー。
血縁関係はないが、幼少期に才能を見出されてハキム家へと引き取られて以降、ずっと一緒にいたため、その行動と感情は、双子のようにシンクロしている。]
[ふたりは、ハキム家の敷地の外に出たことがほとんどない。
というのも、数多いハキム家の従業員の子弟のため、敷地内に小・中学校が建てられているのだ。
そもそも、ハキム家の敷地が広大すぎて、外へ出るにも一苦労である。
成人後に就職した従業員と違い、用事もないのに外へ出ようとは思わないふたりだったが、そのあたりをハキム氏に心配され、今回、2週間だけこのカジノで踊ることになった……。]
[これまではハキム家の客のために踊っていたので、お客がたくさんいる空間には慣れている。
だが、自分たちの意思表示を求められた経験は皆無。
わからないことに直面すると、とりあえず踊ってやり過ごしてしまうふたりだった……。]
君達は社会勉強で来たのだろう?
これも経験だと思って、意思表示をしなさい。
[踊り始めたハキム・ガールズを見て、再び告げた。
サインするまで、扉の前から動かないようだ。]
まあ、この踊りを意思表示に変えてもいいんだけど、
多分判定は、困った感情の意思表示だろうなあ。
[ハキム・ガールズは、「これも経験だと思って、意思表示をしなさい」と、扉の前で頑張るディーラー 一条>>206
に促され、困惑しつつサインした。
しかし、実はサインをした経験もないふたりだった……。]
[気負いなく扉に凭れ掛かっていたが、
サインすると書類をとサインペンを受け取った。]
これは……、+表+
表:芸術的なサインだな。
裏:………。ああ、うん。サインだね。
[そして、持っていた紙を、ハキム・ガールズに差し出した。]
それと、解雇通知書だ。
君達に恨みはないが、うちのオーナーの判断でね。
君達がこの宇宙カジノで踊り、客から支払われたこれまでのチップを合わせても充分過ぎるし、何より従業員が当てたとなると少しね。
それならいっそ辞めた形をとられた方が好都合らしいよ。
社会勉強は切り上げて、あとは得たお金を元出に、客として来て欲しいという話なんだ。
[因みに、この解雇通知書は真っ赤な嘘。
オーナーが、ジャックポットに合わせて、ハキム・ガールズの社会勉強の為に一計を巡らした。
普通に見れば、誰でもすぐ気付くものだが……。]
[ハキム・ガールズは、「解雇通知書」というフレーズにびっくりしたが、
「客として来て欲しい」>> 209
という説明に、またも考え込む……。]
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