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煙草の火………欲しかったんやけどなぁ。
「こうですか?」
[ふいに、よく知った誰かの声が聞こえ、暗くなりつつある視界に明かりが灯った]
…………あぁ、でかした。
それと………おかえり。
[満足げに微笑んで、男は深く息を吸い込み、
自らにしか見えない紫煙を吐き出した*]
フラットさん、彼をお願いします。
[ 後を託すように願ったそれは、フラットにどう受け止められただろうか?フラットへ、身構えることなく、無防備ににっこりと微笑んだ。]
[肩口から切断された男の腕は血を滴たらせ、砂浜へと落ちた。
けれど男は前進も後退もせず、真っ直ぐに銃器を肉塊本体に向けていた。男の顔に、先程までの焦りや恐怖はなかった。無力に思われた人間の攻撃から肉塊は逃げる事は出来ない。怯える人間を前に危機感は無く、あまりにも無防備だった。
「…………ご苦労さん、〈Caldeira〉」
男が何か囁いた。その言葉が合図となって、
一際大きい銃声がしたと思えば、ふたつの銃口から通常弾と火炎弾が、
銃口の両脇からナイフが、肉塊に向かって放たれる。
肉塊の咆哮がぴたりと止んだ。
火炎弾が肉塊に火をつける。銃から放たれた弾は七色の肉の壁を突き破り、化け物の弱い所へと潜り込む。つまりは肉塊の本体である、…へと。触手を操り今まで何人もの人間の命を奪って来た七色の肉塊。3〜4mにも及ぶ化け物の巨躯を動かしているのは、…の小さな心臓だった。
火が付いた肉の壁が剥がれ落ち、…の姿を露にした。男の撃った弾は…の心臓を外したものの、直ぐ近くに大きな穴を開けた。穴からは大量の赤い血が溢れる。心臓は間もなく止まり、同時に肉塊もまた動きを止めるだろう。]
[男は自分の右腕を犠牲に怪物に渾身のダメージを負わせた。
自分の命と引き換えに肉塊を葬った。
…はゆっくりと目を開けた。
めらめらと肉塊は大きく燃えている。炎が邪魔をして、傍目からは様子が分からない。見えたしても人影ぐらいで、其処に居るのが誰なのか判断付かないだろう。その人物の表情は見える筈もない。
肉塊の巨躯が傾く。]
[…はゆっくりと目を開けた。気が付くと何故か自分の身体は火に囲まれていた。しかし、不思議と熱さは感じなかった。目からは涙が零れ続ける。
そうだ、集積体のもとへ。
肉塊の巨躯が傾く。海の方へと身体を捻ろうとして、そのまま砂浜へと肉塊は倒れた。その際一瞬垣間見た、海の彼方。*]
[どの様な素材で構築された遮蔽体なのか。
輪郭を歪ます程度の膨脹であれば、黒の球体も膨脹し、地球大気との遮蔽が続いている。
七色の粟立つ海原に、巨きな黒い球体が浮かぶ光景。
集積体ではなく人工物と一目見て分かる其れは、人の心を掻き乱す其れではなかった。]
元――元、人類?
もう、人間とは言えない?
[お願いします、とはなにを。
擬人の言っていることは理解の範疇にない。
だが、擬人の連れてきた人間が危険であるという理解。
それが事実かどうか分からないけれど。
戻れないならそれは、人間ではなくて集積体に近い。
医療者の役目。]
――助けられないとしたら――僕は。
[小さな武器を持ち上げる。軽いはずが、重たかった。]
そんなの――信用できません。
[武器の狙う先は擬人。]
やはり、僕は擬人を信じがたい。
書き換えられただけで人類を守る、なんていうのも――
ただの方便かもしれませんから。
[まだ撃てない。
己の能力を遙かに凌駕するであろう相手に、
すぐに狙撃することはできない。]
[かたかたと手が震える。
相手は擬人だ。安楽死よりも良心が痛むことはないはず。]
僕の足のことだって……
「擬人の目には」、お見通しなんでしょう?
助けたところで、一方的に僕を踏みにじって。
プログラムの異常を装って――
[そんなの、集積体と同じだ。
叫ぼうとした声は頭の中だけで弾けた。]
………。
[ ちらちらとするオレンジ色の光のノイズ。]
僕の製作者であるフラットラインは、人類に絶望をしていました。
新たな科学の地平線、次元を変える程の開発を行ったにも関わらず、戦争時における有用性のみが取り沙汰され、人類の新たな楽園は開かれなかった。と。
僕は聞いています。
/*
あっ 死体海に落とすとかそういうこと考えてぬぇ
どぼーん! と
そして生存者組とこっちの距離がそんなに離れていない悪寒 まあ発見までは時間かかるかー
フラットライン。
人類の間では、有名らしいですね。
僕は知識でしか知らなくて、
皆さんの反応を実際に目にすると面白いものでした。
[にっこり]
/*
なんかこのへんも元ネタマルドゥックっぽい >>32
天国への階段
なんだSecond Heavenでも流せばええんか(天国繋がり)
人類への奉仕者、擬人という名の機械人形。
人々の生活を豊かにする、人類の友として作られたもの。
人に近づき過ぎた為に、仮初めの心まで生まれて。
[ そこに、なにがしかの意図は含んだつもりはなかった。特に、フラットの過去など知る事がなかったのだから。]
僕が、どんな兵器にも変身出来る万能体として造られながら、基本となる姿として擬人を象られたのは、何故だろうと考えた事があります。
絶望をしたのであれば、
フラットラインは、何故、人の姿で造ったのだろうと。
フラットさんには、分かりますか?
[ 製作者と少し似た名前を持つ青年に問いかける。]
フラットラインは――狡猾だったんでしょう。
人の姿をしていれば、人の弱さが分かる。
擬人を生み出したのと同じ理由です。
そして今度は、それを武器に使うためですよ。
人の会話が分かって、弱い箇所が分かって、
そうすれば――兵器として有用じゃないですか。
擬人に「精神」なんかない。
なのに、支障を来せば病院に入って。
医療者の気持ちを結果、弄んで――
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