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[壁に背をつけ、刀を抱えるようにして座り、じっと瞑目していたが。眠ってはいない。
ただ静かに、丹田に力を集めるかのように呼吸を繰り返して。体力の回復を待っている。
階下から"穢れた"気配を持つものが近づけば、"鈴"が接近する者を知らせるよりも早く、刀が僅か反応を見せる。
目を開いて、扉の方を見遣った]
[背に回された腕が、布地越しに戦いの高揚のひいた忠興自身の温度を伝えてくる。
未遂に終わった「封印」に消耗した身熱を分け与えとしてくれているのだ。
これまでにも──そうしてくれたように。
思いやりの気持ち、差し伸べられる手、そういったものが闇の冷たさを和らげてくれる。
何よりも強く。]
[やがて、二人の温度はひとつになった。
再び行動の時が来る。
渡された二色の紅榴石をウエストポーチに納め、「戦いの先」を語る忠興に小さく頷いた。]
── 参りましょう。
(ナバール……アレクトーの言っていた者か)
[>>65やがて男が姿を現せば、目だけで挨拶を交わし。階段下で聞いた話を思い出した。]
ああ……アルベルト、できるか?
[先程使いかけた能力――体力を確認するように相棒を見遣る]
── 水場 ──
[ジェフとアレクトーが連れてきたのはまだ会ったことのない青年だった。]
吸血鬼を生け捕りにするなど──大変な苦労でしたでしょうに。
連れてきてくれたことに感謝します。
[激しい戦いの跡はまざまざと、アレクトーの首筋には特徴的な傷痕も見える。
ジェフも無事とは言えぬ姿だ。]
噛まれたのですね …!
ここには薬もありますから、せめて手当をしてください。
[水を汲んで火にかけておいてから、ナバールと紹介された吸血鬼に向き直る。]
[あるいは、この背年も人に戻りたい気持ちがあって、それが魔の力を拉いだのか。
いずれにせよ──]
期待にお応えできるようにいたします。
[忠興が身体を労る様子で言葉をかければ、小さく頷いた。]
やらせてください。
[封印がなれば彼らに伝えるべきことは山程あった。
狂人だったジョセフ、その死。
カークが吸血鬼になっていたこと。アシュレイもまた。
フルムセートを連れ去った始祖、いなくなったシェリー、怪我を負って去ったエルク
吉報と呼べるのはシェリーが一体狩った情報と、地下第三層への階段くらいか。それも深い霧に阻まれた]
俺もアレクトーも、既に”噛まれた”
たぶん次はない
[ナバールの顔を正視する。瞼を開くならその琥珀を]
……
[力が欲しい、仲間が。
かつての己と支え合った仲間達はもういないが、この場を乗り越える新しい絆が]
[三たび、傷から己が血を流す。
それをナバールの胸の傷に直接、滴らせれば闇の力は絡み合う。]
父と子と魂の絆によって請う。
ナバームの肉体に巣食いし古の闇よ。
とく我がもとへ来たれ。
より深く、より濃く、唯一になるまで この器に宿れかし。
[祈りの言葉に力を込めて、血に潜む魔を手繰りよせる。]
[闇の力が流れ込めば、忠興が補ってくれたばかりの身体の熱が瞬く間に冷えてゆく。
だが、知れ切った代償だ。
声はあげない。
やがて、人間の身体を吸血鬼に変える闇をすべて手繰り込めば、自然と血の橋は切れた。]
誰か、ナバールの拘束を解いて、傷の手当を──
[受け入れた闇を逃すまいとするように、自分の傷を包帯で縛りながらナバールに語りかける。]
これで あなたは、れっきとした人間です。
けれど、もし 短期間にふたたび闇の血にさらされたら、その時は──精神が保たないかもしれません。
本当は、城の外へ逃げてもらいたいところですが、地上は毒霧が覆っているとのこと。
太陽を取り戻し、霧が晴れて出られるようになるまで、今まで以上に慎重に身を護ってください。
お願いします。
[杖を両手で掴んで身体を支えながら、見守る人々を振り返る。]
温かいものでも 飲みませんか。
[火の前に座り、冷たい指でなんとかハーブティーを淹れる。
身体の震えは見抜かれたろうか。
術を使った後の反動は弱点に他ならなかったから、忠興以外の人間にはあまり知られたくはなかったけれど、彼らを無下に追い出すこともしたくない。]
[アレクトーの傷を止血し治し、膏を塗って包帯を巻く。透けるような白の肌に、包帯の白こそ褪せたよう。
師であるクラウスは彼女を”止まない者”とだけ言ったらしい>>4:171。 厳格な彼はその名に何を見いだしたのか。
エリニュスは復讐の女神達、真の名を口にすることを憚って人はまた、彼女達を慈しみの女神、とも呼んだという]
――ハっ、まさかね。っと
[笑うような独り言は小さく漏れた]
[情報交換は忠興に任せて、自分は取り込んだ冷たい闇に意識を集中した。]
( ここをおまえの居場所として 眠れ、闇の力。)
( わたしがおまえを受け入れ、満たしてあげよう ── )
( 眠れ 眠れ )
[あやすように語りかけ、鎮めて/同化して ゆく。*]
― 地下一階:水場 ―
[其処には、アルベルトと伊達の姿があった。
聞き及んだ事もこれ迄無かった、その封魔の術に対して、本当に効くのだろうかと思う気持ちも無かったわけではない。]
…お願い。
[床に横になったナバールへ視線を落として後、アルベルトに頭を下げた。]
始祖吸血鬼 ノスフェラトゥは、ナバール を能力(襲う)の対象に選びました。
[>>71やらせてくれと言う相棒に黙って頷く。
相棒が「封印」を成すのをじっと見ていた。それが相棒の成すべき仕事であるなら、戦う者である彼の成すべき仕事は、少しでも戦える力を持つこと。
逸る気持ちを抑えて。静かな呼吸と共に、己の体内と会話をする。
肋骨がいくつか折れ、刀では受け流し切れなかった攻撃を受けた腕や脚に痛みは残っていたが。
薬と、呼吸法で、その痛みだけでもじき抑えられるはずだった。
相棒を守ることで救われる者もある――ならば、女を行かせたことは愚かではあっても、一方で正しかったのだろう]
[拘束を解いてみれば、争いに際した傷は然程ナバールに残っていなかった。
胸の呪いの傷は、未だそこに残るのか、血を流し始めるのか。彼の体をあらためれば知ることになる]
頂こう。 最初の時、貰いそびれた
[火の前へ座るアルベルトへ笑んでみせて。
カップ代わりの筒に受け取ったハーブティは温かく、穏やかな香りだった。
束の間、ひだまりにぬくもるような、凪の時
今更のように、ナバールへ名を名乗った]
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