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吸え……ぬのか。
[シェリーを抱き締めた。
彼女の頭が、口が、牙が、自分の首筋に来るように。
だが彼女は――吸血鬼は、自分の美しい肌に牙を立てることはなく。
遠くから後衛の男の声が聞こえる。
そんなもの、どうでもよかった。
吸血鬼だろうが、人間に戻ろうが、誰かを失うことに代わりはない――人間は、それを理解しようとしない。]
[当たったら死ぬ、まさにその破砕の権化たる力のまま、左腕が死んだ。
噴き出す血に体が震える。舌に開けられた吸血痕がざわと疼く]
っぁ、ハ、く そ
[転がる少年へ走り寄る。
握る腕の離れた棍が床に落ちる音がした。
鉄球を受けた部分の折れ曲がった棒]
…――!
[這うエルクの腹めがけて、鉄板の仕込まれた軍靴を蹴り上げる。
徒手になった右手はベルトから幅細の片刃ナイフを抜き出していた]
[ぐらり揺れる視界から逃れようと出鱈目に手足を動かした。]
あ……はッ。
あと少し……。
[遠くに足音を聞き、それを見定めようと顔を向けようとしたが。]
――ぐぶッ……。
[自身が顔を向けるよりも疾く、身構えるよりも疾く届いた爪先。
鉄板入りの重たい蹴撃は簡単に腹に突き刺さり、奥深くの臓器が断末魔を上げた。]
――あ、がはッ……ああ。
[体は簡単にひっくり返り、背中と後頭部を強かに打つ。
ぼんやりとした右目に映るのは三人の男と三本の白銀の輝き。
衝撃で転がり出たのか、手元に硬い感触――自身の血に濡れて輝く紅榴石。
震える手で掴み、三人の男の向こう――深い闇に向かって投げつけた。]
[ナバールが目を逸らした隙を突き、瞬時にナバールの背後に回る]
隙を見せるか
[後頭部に一撃を与える]
始祖に歯向うとは
[吐き捨てる]
……よかったな。
復讐の念に駆られて惨殺するのが美しい行為でなくて。
[彼女の亡骸を――いつまで存在しうるのかわからないが――抱き上げて。
彼女を殺した男、自分に何かした男には一瞥をくれてやって。
そのままどこかへ行こうとして――]
……人間は不便だ。
[本当に人間に戻ったことについて何も語らず、ただランタンの灯りの外に出ると何も見えないことに不満を漏らして戻ってきた。
自分の装備はもう無い。]
[易々と身をかわす始祖は、蹴り出した少女を、
同朋を守るように腕に抱えていた
それをずっと睨み吸えたまま]
[目の前の敵"狩人"から僅かでも、眼を逸らすなんて
そんな隙を見せるのなら]
[――仕事で斬るだけだ]
[昔、最初に牙に穿たれた時から、
吸血鬼という存在に対する、感情を殺して来た
そうでなければ]
[ノスフェラトゥがアレクトーに視線を向ける一瞬に、
ショテルの内刃がその首を狩るように疾った**]
――ぐぅ!
[重い衝撃が左肘にまで伝わって、蹴撃のダメージを己も受ける>>17
滲む涙で視界がぼやけた。
ふらつきながら、仰向けになった吸血鬼の胸の上にナイフをかざす。胸骨のわずか右、心臓の中心へ向け幅薄の刃を滑り込ませようとして、]
っ!
[身を捩る吸血鬼の手元から紅い何かが飛び出した。
予備動作のない不意の動き、速さに呻く。
前髪の下、右眼があった場所に石が激突した。
後方へ首が反る。目標が見えなくなる。
斜めに傾きながら左胸に刺したナイフは、心臓を一撃で切り裂くよりやや柔らかく軽い手応え]
――
[そのまま、後方へ尻餅をつくように倒れた]
[確かに、呼ばれた。自分を、そしてその主は
先刻、自分が傷めつけた相手…]
何用か
[ナバールが追ってくるかもしれないのを考え、アレクトーを連れ再び霧散する]
―棲家―
[連れてきたのは棲家だった]
気が変わったか。
逃げられぬ運命を知って…――
[自分が傷めつけたよりも更に傷が増えているのを見て]
更に痛めつけられたか。
――…我の癒す手段はひとつしかない。
[そう言うと首筋に牙を立てる。エルク同様少量の血を吸って、やはりソファに横たえた]
しばらく休むが良い。
[穏やかに、告げた]
村の設定が変更されました。
[割れた額から血が頬を流れて唇に入る。
赤い味に舌が疼いた]
――っぐ、ぁ、は
[喘ぎながら身を起こそうとする。
致命傷を与えなければ、吸血鬼は甦る――ナイフがどの程度、胸の中心を逸れたのかわからずに]
[痛みに痙攣する瞼をこじ開ける。
エルクの右の眼の、赤が 暗い視界に飛び込んで来た]
…… …
[名前も知らぬままの ]
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