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クリスマス・プレデター 河城にとりは、むにゃ、むにゃ・・・リア充…爆せろ! むにゃ・・・zzz ** ( B169 )
誘惑を捲く笑顔の邪悪 小悪魔は、ふう、やっとちゃんと議事録を読み終えました……。では、また明日。 ( B170 )
「ふふっ、上手くでーきたっ♪」
何度、失敗作をこしらえただろうか。
指先にはいくつか絆創膏が貼られ、大量の食材はメイド妖精達の腹へと収まる羽目になった。
「妹様は飲み込みが早いですね」
「え、そっかなー、えへへ」
そばで見守っていた咲夜は、フランの頭を撫でる。
時間はそろそろ16時を回り、クリスマスもそろそろ終わってしまう時間帯だ。
「あやや、喜んでくれるかなー」
あらかじめ準備しておいた箱に、ケーキを詰める。
多少おぼつかない手つきにフランは少し苦戦をしているが、どうにか上手くケーキを箱に収める事ができたようだ。
「ん……?」
ふと、窓の外。
咲夜の視界には、門の所で二つの影が立っているのが見えた。
片方は当然の事ながら、門番の美鈴なのだ、が。
何となくだが、胸騒ぎがした。
「妹様、ちょっと美鈴がサボっているようなので説教しに行ってきますね」
「わかったよー。リボンつけたら完成だから、こっちはだいじょうぶー」
無邪気なフランの返答を聞きながら、咲夜は門へと向かう。
「ところでどうするんですか、文さん」
美鈴はそう問いかける。
「どうするも何も、フランさんが私に抱いているのは幻想と、憧れです。何よりも私を満たしてくれる存在は美鈴、貴方だけですよ?」
「文さん……」
文を見つめる美鈴頬はわずかに朱が浮かび上がり、またその視線を受け止める文の表情も穏やかで、柔らかかった。
門へと向かっている咲夜の瞳がその様子を捕らえた時、瞬時にその関係に気付ける。
それほどまでに文と美鈴の距離は近く、またお互いを恋人同士として認識している艶めいた顔つきをしていた。
「そろそろ門番としての仕事のお時間も終わりでしょうから、今日はお付き合いしてくれませんか?」
「えぇ、そう来ると思って、咲夜さんにお暇を頂いてます」
二人の話し声は少し大きく、盗み聞きするつもりは無かった咲夜の耳に届く。
その言葉の内容から、二人が多少なりともそういう関係に至っている事を推理するのに、ほんの数秒とかからなかった。
「しまっ、妹様を止めない……と」
今、この状態の二人にフランを会わせる訳にはいかない。
咲夜が振り向いた時、すでにフランは手に箱を持って、文の方へと駆け寄っている所だった。
「あ、あややだ! 会いに来てくれたの、うれしいなー♪」
無邪気な笑顔を浮かべ、フランは文の所へ駆け寄っていく。
だが、文はそんなフランを一瞬だけチラリと見て、表情を微妙に歪めた。
「すみません、フランさん。今ちょっと立て込んでまして、後にしてもらえますか?」
「あのねあのね、今日はケーキ焼いたんだよ。咲夜に手伝ってもらって、上手くできたんだー。おねーさまは悪魔だからクリスマスなんて祝わないって言ってたけど、あややは天狗だからクリスマスだよねー」
フランは文の表情の変化に気付く事が出来なかった。
文が自分に会いに来た物だと信じており、フランは自分が焼いたケーキで、文が喜んでくれると思っていたから。
「あの、フランさん。私は美鈴さんと大事な話をしてましてね」
「はいっ、あやや。これどーぞ」
「はぁ……では美鈴、また後ほど」
この場でこれ以上美鈴と会話をするのは無理と悟ったのか、文はそこでフランがさしだしてきた箱を受け取らず、すぐに立ち去る事にした。
「え……あや……や……?」
「…………妹、様……」
フランが会話に割り込んできた瞬間、美鈴は反射的に黙ってしまった。
数日前にフランが料理を手伝って欲しいと美鈴にお願いし、その時から美鈴はフランが抱いている気持ちに、淡い感情が混じっている事を理解していた。
だが、美鈴は美鈴で文に魅かれている所があり、文も美鈴へ好意を寄せていた。美鈴はそれを言い出せないまま、文にどうするのかを相談しようとした。けど、文はフランの感情は子供じみた感覚であると判断しており、紅魔館へのパイプ作り程度にしか思っていなかったのである。(>>4:+268)
「え、と、どうして……なの? 待って、待ってよ、あやや……ッ?」
喜んでもらいたかった、微笑んで欲しかった。
ただそれだけの気持ちで作り上げたケーキを受け取る事を拒絶され、フランは感情の行き場を無くしてしまう。
それは、大きな喪失感だった。
腕の中から、スルリと箱が滑り落ちて地面へと叩きつけられる。
一緒に落ちたメッセージカードには、絵が描かれていた。
『いつもありがとう だいすきだよ』
文とフランが手を繋いで散歩をしている、そんな日常の風景。
不慣れながらも、フランが必死に描いた絵だというのは、誰が見てもわかる代物。
「妹様……」
美鈴はそこでフランを慰めようと手を伸ばす、しかし次の瞬間、その手を横から咲夜が払っていた。
「業務に戻りなさい、美鈴」
「咲夜さ……」
「戻りなさい」
「でも……」
「業務、に、戻りなさい。三度目を言わせる愚鈍は、紅魔館にはいないはずよね」
咲夜の言葉に、美鈴は押し黙るしか無かった。
文の気持ちが向いているのは美鈴であり、フランでは無い。
それを理解していながらも、フランの料理を手伝ったりと後押しするような事をしていたのだから。
どうあれど、それはフランの育ち始めた感情を踏みつけたのと一緒だ。
「あ……ぅ……ぁ……」
涙は、こぼさなかった。
悲しいだとか、切ないだとか、そういった感情が沸き出してくるのではなく、心がごっそりとえぐり取られた感覚。
ペタリと座り込み、肩を震わせ……そんなフランに、咲夜落ちた箱を拾い上げ。
言葉を口にしようとして、唇が乾き、張り付いていた事を自覚する。
一度だけ舌で唇を湿らせ、咲夜はゆっくりと口を開く。
「お部屋に戻りましょう、妹様。ここは……冷えます」
「……ん」
ひらり、雪が降り始める。
聖なる夜を祝うため、雪は幻想郷をゆっくりと白銀の輝きに覆い尽くしていくだろう。
地面に落ちたままの、少女のメッセージカードも。
やがて雪の中に覆われていき、忘れ去られていく。
フランが抱いた感情の喪失感は。
まるで……そんな、雪に、似ていた。
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