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そうか、なら、いい。
どうすればいいのか、今は道が分からなくても。
胸を張って自分を信じれば、方法も道も自ずと見えてくる。
俺にはそんな世界は似合わないな、血生臭い今の方が俺らしい。
ああ、ナタリア……。
すまないが、代わりにナタリアに伝えてくれないか。
すまない、と。
あれは気丈だから、泣いたりはせずに怒るかも知れないな。
心配ばかりかけて、勝手に死ぬのだから。
[そう語る表情はいつもの険しい顔ではなく、穏やかに笑みを浮かべて]
[猫の子のように首筋を掴まれて引き上げられる。
シンドバッドのつるりとした紅玉髄のようなフェイスマスクに自分が映っている。
不意に白い腕から振られて、身体が投げだされた。
黒服たちがクッション代わりになっていなかったら頭蓋骨を破壊されていた勢いで。
だが、それもインシャラーなのだろう。
激しい衝撃に脳震盪を起こしたらしく世界が歪む。]
…… 、
[あれは──遠くへ、行ってしまった。**]
さらばだ、宮古護。
[ナジームの身体はダストシュートに吸い込まれていく。
そして―………カチッ]
ど……ごん…。
[爆発したのは延栄満の身体だけだった。
規模も小さく、負傷こそすれ致命傷には至らないだろう。
どうやら、黒服たちの爆弾を「認識していない」ようだ。
ナジームは気付いていない**。「異変」に。]
死なないでください…、ナタリアさんが悲しみます。
そんな笑顔を見せないでください、死ぬなんてあなたらしくな…い…
[死期が近づいているからか。優しい笑顔を見せる雷さんの顔が涙でにじむ。]
ゾンネに勝てていたとしても……どの道もう長くなかった。
死ぬ、か……またあの感覚を味わう事になるとはな……。
ああ、なんだか疲れた……やっとゆっくり休める……。
もう……目覚めて、くれるなよ……俺の……身体……。
[口端から一筋血の線が溢れ、すぐに雨に消えた。
血の筋が消えると、ゆっくりと瞼を閉じて、そのまま二度と目が覚めることはなかった**]
─ 喫茶店『ヒバシラ』跡地 ─
[降り続ける雨が冷たい。
焔の色の髪は濡れて力なく。
感じる冷えが、そろそろ戻らないと、と危険信号を発していたが、その場を離れる事ができずにいた]
……どこにも、それらしいものは見えない……って、事は。
[瓦礫の山のどこにも、先に相対していた姿は見つけられなかった。
それが何を意味するのか。
考えられる可能性は限られる、けれど]
…………。
[無言で、ポケットに手を突っ込み、中に入っているものを握って、離し。
それから、水滴を払い落とすようにぶん、と首を横に振って、空を見上げた]
……まだ、わかんねーし。
諦めて、たまるかよ。
[ぽつり、と零れるのは、小さな決意。
一度は諦めて、それで後悔したから。
二度、同じ事をする気はなく]
…………。
[改めて、ぐるり、周囲を見回して歩き出す。
都庁で、そして別の場所で起きた事を知るのは、もう少しだけ、先になりそうだった。**++]
[都職員は、どれだけが満足に生きていただろう。
生存者を探し、外へ誘導するのはついこの間の第9ビルの爆破に強く重なる。
止まぬ爆破の炎に、つく息が重くなる。
電波系統も芳しくないのか、通信はノイズが強くなったあと、暫く前から途絶えている。
宮古が電磁パルスで電子機器を落としたから、とは知らぬまま、しかし出来ることを、と残したヴィクトーリアの言葉守り動き続ける。]
[瞬間。規模はさほどでもないが、聞こえた場所は――司令室。]
――――faceless《カオナシ》!
[跳べる、といった彼を反射的に呼ぶ。
誰よりも早く中へ向かえるのは彼だ。望みを、託す*+*+]
―司令室内部―
[――カキリ。
歯車の音。空間が裂かれ、
爆風の余波残る部屋へと白い異形は現れる。
壁に床に天井に、出来の悪い落書きのように
赤い飛沫が散っていた。]
《ミヤコさん!!》
[叫ぶ。椅子に座ったままの《東風》、
黒服の上に倒れ付した宮古。
もうシンドバットの姿はない。]
[気を失ったらしき宮古の体を横抱きに抱え上げる。
自分がしっかり触れてさえ居れば
共に跳躍しても危険ではないだろう。]
《――、…?》
[そこで、違和感に気づく。
爆発したのは、ただひとり。
あれほどに自ら進んで爆発していた黒服が
爆発することなく、在る。
先ほど大きなノイズが起こり、
通信機器が乱れた。
これが]
《これが “策”…?》
[腕の中の宮古へ視線を落とすが、彼は意識を失ったまま。]
[次に現れたのはフロウディアの前。
小さく息を詰める。
自分以外の誰かの分まで
座標を違わず“跳躍”させるのは
まだ慣れぬせいもあり負担が掛かるようだ、と
再度自らの身をもって確認する。]
《――シンドバッドはもう居なかった》
[事実を告げる。]
《だが 黒服は爆発していなかった。》
《――ミヤコさんの謂っていた“策”は、成ったのだと、思う》
《ミヤコさんを病院へ》
[フロウディアへ確認する。
できる限り、宮古に衝撃を与えぬように
しっかりと抱えたまま
可能な限り早く下にたどり着くために
再び“跳躍”した。
黒服の生き残りが在ったとしても
もう、シンドバットが直接認識できない限りは
爆発しないのであろう。]
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