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えらい耳が遠い魔女だな。
近づきゃ少しは聞こえるか?
[一歩一歩進みながら、耳に届く言葉に
ゆっくりと視線を絵へと向ける。]
あーこりゃひでぇわ、うん。
で、何。これ受け入れれば嫁に来てくれんの?
だったら別に良いけどよ。
これか?
[興味を示されたらしい触手を、得意げにうねうね]
これは見ての通り 触手 だ。
神が創り出した知恵の一つ──いや、武器か。
[厳かに頷いた]
まあ、色々便利だし、実害はあまりないだろうから、
気にするな。気にしちゃダメだ。考えるな、感じろ。
友達というのは一瞬でなれるものなのかしら?
苺様とはさっき会ったばかりなの。
……?
[じろじろ見る視線にきょとん]
不思議?
保健体育?
どういったものなのかしら。
実践…はお願いするには少し疲れていらっしゃるのかしら。
恋愛学や保健体育でのスポーツなんて、聞いたことありませんもの。
お二人でするにも、お一人で出てらっしゃいましたし。
初対面か。
一目合ったその時から、恋に落ちることまであると伝え聞くが。
じょじょにお近づきになりながら
相手のことを知るというのが、恋愛でも友情でも
模範的なのだろうな。
[うんうん、と腕組みして頷く。
言ってしまってから、飛び級したてで飛び込んだ大学に
友人と呼べる相手が一人も居ないことに気づく。
所謂ぼっちだ。だが寂しくない。実験と研究が友達だ。
仕事が恋人にだってなるんだから、それでいい]
実践? ここでして見せるのか?
それとも体験してみるか?
[カラダはちょっと疲弊してるが、触手はまだ元気にぴこぴこ]
調度、お誂え向きの薬もある。
テニスと一緒で、シングルスとダブルスがあるんだ。
まあ中には、三人や四人や大勢で団体競技、という
レアケースを嗜好する者もいるとかいないとか。
いや、今のところはそんな気は起きないな。
[完成はしたが、納得がいかなかったらしい。
ぐりぐりと黒い太陽を描きあげて出来上がり。
エプロンも頬も絵の具で汚れている。]
受け容れなければ苦労するよ、という話で
私が嫁入りする条件というわけじゃないんだ。
しかし何故私なのか。
私の間諜によれば、火浦真は幼女を脳内に飼っている。
けど私は幼女じゃないし、火浦真と交流が深いわけでもない。
[新聞紙で手についた絵の具を拭っている。]
一目ぼれというのは知っておりますわ。
でも。苺様は女の子ですし…。
実践? してくださいますの?
わたくしでも体験できるのかしら…?
こうみえても体力はありませんのよ。
[動く触手に興味津々]
お薬…。痛いのはちょっといやなのですけど。
二人でもできるのでしたら。
団体でするには人もおりませんもの。
ん、一目惚れ。
わかりやすいだろ、駄目か?
[完成した禍々しい絵を見ながら
うわーといった顔でその絵面を眺める。]
つーか、飼ってても実体化できるわけじゃねぇし?
このご時勢に独身なんて許される風潮でもないからな。
[嫁が一人でも文句を言われるのだ。
はてさて、今の世の中男にとっていいやら悪いやら。]
ロリコンっていっても、色々あるんだよ。
青木は顔幼い方だし、そこらへんだろ。
一目惚れは、オスとメスの間にしか
起こらないものなのか?
一目友達、とかはないのだろうか……。
こう、直感でびびびびーっと。
[なかなかに難しい命題だ。うーんと首を捻る。触手も捻る]
体力がないと連戦は厳しいが、
カラダの力を抜いて身を任せていれば
優しくしてくれる、らしいぞ。
最初は痛いが、慣れるとヨくなるらしいし、
それを補助する薬なので、どちらかと言うと
痛み止めの類だな。
[意味深に魔法瓶を取り出しながら、
触手の先はつつ、と相手の頬へとのびる]
実践するなら、名前くらいは覚えておいてやろう。
オマエは何という?
/*
てか、改めて考えると魔法瓶ってすごいネーミングだよね。
これ、海外では何て言うんだろ。
マジカルポット? ミラクルポット?
お友達って、友情を深めていくものではないのかしら?
お友達になりたい、と思っても向こうはそうでないのかもしれないもの。
身を任せ、?
……。少し怖いですけど。
痛み止めがあるなら。
[魔法瓶を見ていたら、伸びてきた触手に頬を撫でられて、片目を瞑った]
ひゃ…。
えと。
中御門 早綾と申しますの。
……ああ、なるほど顔か。
分かりやすいな。
恋愛学の恋の過程どうこうよりは余程分かりやすい。
[手の絵の具をとり終えると、後は水洗い。
部室内に併設されている水場へ向かう。
旧部室とは言え、水道は使えるようだ。]
とは言え、現状のデータと交流記録を省みてみても
私の方からは火浦真に惚れる要素は今のところ無いからな。
友人らしきものもさっき出来たばかりだ。触手だけど。
惚れポイント探しというのも難しい。
[手を洗い終えて、エプロンをはずしにかかる。]
んー…。
ごめんよ火浦真。良ければ紐、解いて欲しいのだけど。
[火浦に背中を向けてみた。手が届かないらしい。]
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