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―中核研究所・外殻深部、自室―
[部屋に入ると、多くの機器の電源が落とされていた。
いくつかのディスプレイだけがデータを示し続けている。
「フィリップ」のもの、「リル」のもの、そして、この中核研究所の最深部…「彼」自身の]
…。
[それは「彼」の家族だった。
吐く息が、少し震えた。]
これは・・・・・・
[ディスプレイに広がるデータ。
すぐにはわからないが、どこかで見たことがある気がする。
今の僕ではなく、【フィリップ】が]
─ Endeavourラボ/外殻深部 研究室 ─
私は、サラに会う為に
戻って来た。
[今まで誰も招かれた事が無いと言う研究室に入ると、まずそれだけを返した。]
リル。
[サラに会うために戻ってきた。そうリルは言った。
自分の疑問をぶつけるだけではなく、リルの中にも彼女へと到達する道があるのだろう]
いくつかの質問に答えてほしい。
まず、僕はどうやって生まれたんだ。
あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。
「彼」が悔しがるわ、きっと。
あなたたちは「彼」が細い糸をたどって作った、「彼」の拠り所だったもの…
[キャスリーンはしばし沈黙したあと、大きく息を吸い込んで、
そして、固めた左拳で円城寺の頬を殴った]
どうして周りに理解されようとしないのかと思っていましたけれど。……あなた、自分でも自分を理解するのが嫌なんでしょう?
[そして困った顔をイステに向けた]
彼のやりたいようにやらせてみます。彼の悪運が本物なら、案外くるりと世界が回ってしまうのかもしれません。
――回らないなら、少しでもベターな解決を。これでも主で、私は従者……補佐役ですから。
伯爵の次に華麗で、伯爵の次に聡明で、そして伯爵の次に美しい。地上最高の秘書にして伯爵の第一の従者……それが、この私、キャスリーン・ロンズデールだから。
[そして、口元に微笑を浮かべた]
そんな抽象的な話を聞きにきたんじゃない。
現代に【フィリップ】と同様の固体が存在し、僕には記憶が無く、ラミアから過去を教えられた。
なら選択肢は多くない。
僕自身が【フィリップ】か、子孫。もしくは・・・・・・複製。
そして、それはリルも同じという事か。
古代のラミアのインターフェースは死亡していた。だが今リルが目の前にいる。僕と同じ。
あなたたちは「彼」――
この星に送り込まれた惑星探査装置の生みの親だった人たちが元になった擬似生命。
出自は違うけど、今のふたりはふたりとも「彼」が作り出したようなもの、と言っていいわね。
…話を続けても大丈夫?
[電源の落とされた機器のある雑然とした室内。
展開されているデータのうち「リル」のものだけは、慣れ親しんだものだった。
逆に言うならば、他のデータにはアクセスが困難だった。或いは、サラについて「不自然な空白」が生じていたように、この研究施設に居た間もアクセスしようと、リルは「考え」無かった。]
「リル」のデータには、
此処に居た時にアクセスしていた。
[自分自身の有り様について、疑問は無い。
フィリップとサラの両方に頷いた。]
[背を向けたまま円城寺に言葉を掛ければ
そのまま公園を後にしようとする。
その際に、イステに少しだけ目配せをして。
共に帰路に着くならばそのままホテルへと。
もし彼女がこの場に残るというのなら
止めはしないだろう。]
―公園側―
[――いい音がした。大変いい音だ。
イステは一度、瞬いた。]
そうか。分かった。
ならば各々、成すべきを成し、
行くべきを行く。
私たちは、フィリップたちを追う。
彼は、「知っている」が、「知らない」。
知らないからこそ、知ろうとするだろう。
《終焉》を。
私たちはその所在を知らねばならない。
恐らくはお前たちと行く道筋は似ている。
そうして辿り着く「先」が同じならば、
そのときは、共に。
「元のあなたたち」は夫婦で、研究者だった。
ふたりは別の星からこの星への移住を模索するため、惑星探査装置を作り、送り込んだ。
でもこの星の環境は、彼らにはまったく適さなかった。
彼らにとっては、この星の大気も、この星の水も、この星の生物も、すべてが毒でしかなかった。
惑星探査装置が宇宙で待機していた探査船へ射出したこの星の地表のサンプルにはウィルスが紛れ込んでいて、次々と探査船にいた人たちは死んでいった…
…みたいね。
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