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お、なになに?
俺に興味津々と言った様子だけど。
まったく、色男は困っちゃうねぇ。
[席に着いた途端、横にいる女性から視線を感じた。
噂を聞いているのみで、隣の女性がフィリップのソレとは知らなかった]
[教壇に立ち、講義を開始する。
資料を広げ、黒板に昨日同様「自己制御システム」についての理論を書き込んでいく。
昨日とは違い、さらに深く、気象の変化と生態系への影響、そしてこれらの相互作用によって生態系が修復される可能性についての論述を書き上げる。
しかしやはり気になる。確か彼の名前は円城寺だったはずだが、彼がリルに余計なちょっかいを出して。
リルが不穏な言葉を口にしないか、と]
……──、
円城寺 海人、と言うのだとな。
今、右席のヤツに聞いたが。
[隣席に座り自ら色男と名乗った相手をじっと見詰めた。
講義開始のベルが鳴る。
相変わらずピタリとした素材に包まれた黒手袋の指先を、円城寺の前にかざしてみながら。リルの指先に現れるのは、蒼白い光の波紋。一般人には見えないが、おそらくフィリップと、円城寺には見える。]
色男。
お前は、何者、だ?
……私とは、一致しないが
何かの──シグナルを発している。
[と、フィリップが時々こちらを見ている事に気付いて、口元に小さな笑みを浮かべる。]
お、流石だね、俺有名人だから皆に知られているみたいだ。
[女性が指差す隣の男に記憶はなかった。
相手が名前を知ってるのならばやっぱり俺は有名らしい。
半分は悪評なんだろうけど]
なんだぁ? マジックかぁ??
俺のことより、今は君の名前が気になるな。
一致って性格??
シグナルとかはよくわからないけど、その辺は追々ってことでどうだろうか?
[フィリップに大丈夫だと言う風にヒラヒラと手を振った。
顔は正面に戻して、片側の視線だけを円城寺に。視聴覚の注視先をフィリップと円城寺の二つに振り分ける事にした。帝都大学の学生と言えども、集中した注視を振り分けるのは、一般的な人間には難しい事。]
…む。
今の光が見えるのか。
[講義は全て聞き取る、フィリップの表情も見詰める。
それでいて円城寺にも真紅の視線を注いでいる。]
──リル。
それが、今の名だ。
私は壇上に居るあの男に夢中だが、
円城寺が如何なる理由で有名なのか
簡潔な説明が聞きたいぞ。
お前にも別種の興味がある。
[壇上からちらちらと様子を気にしているのが判ったのか、何故かこちらに向けて手を振っている。
つい、条件反射で手を振ってしまった。
ざわっとするかと思いきや、逆に室内がシーン、となってしまった。
成る程、人間というのはこういう気まずいシーンに直面すると何も言えなくなるのだな、という教訓を得る結果となった]
君という光は見えたかもしれないなぁ、なんてね。
[よく分からない事を呟かれた。
そんなわけで自分の方向に誤魔化してみた]
リル、ね。
改めて、自己紹介すると円城寺 海人だ。
俺が有名な理由?
頭が良くてカッコいいからかな。
[実際、成績はかなり良かった。
顔も悪くないと思っている。
昨日はっきり好みではないといわれたばかりだけど]
なるほど、噂の彼女だか妹さんか。
こりゃ、俺の努力は無駄だったな。
[言葉と手を振る仕草をみて肩を落とす素振りを見せる。
もっとも本気で口説いたわけではないけど]
[講義室は静まりかえっている。うっかり手を振ってしまって、またリルが笑みを深くしてから暫くして、フィリップからは遠い後ろの方でヒソヒソ話が聴こえた他は。
円城寺の誤摩化しが理解出来ず、不可解そうな瞬きになる。]
円城寺は、成績が優秀なのか。
学科と将来の夢は?
──見た目は、ふむ。
[周囲を見渡してみて比較すると、他の学生達のルックスの平均値をざっと計算したりしなくとも、円城寺の外見は抜きん出ているように見えた。寧ろ、真面目な学生の多い講義室内だけで見れば、その見目が浮いている気も。
肩を落とすそぶりに、おかしな男だなと片目をつぶる。]
何か、外見と成績以外で、
普通では無いと言われた事があるのでは。
そのように見えるぞ?
そして、私はフィリップの彼女では無いらしい。
その案は、今朝がた却下された故に。
[しーん]
・・・・・・
[授業にならない。つまり、これでこの教室の学生からは『フィリップは現在妹と言っている女性が今朝がたフィリップに告白した結果、それを断り妹として同伴させている』という事になる。多分状況を把握できている学生はいないと思うが、少なくともフィリップとリルの間ではまさに泥沼な世界が広がっていると思われているのだろう]
oh, My god.
[祈った。
講義終了の電子音が部屋に鳴り響いた。
神はいたようだ]
フィリップに夢中なのに、告白して玉砕!?
だけど、妹ってどういうことだ!?
[状況がつかめなくて思わず叫んでしまった。
きっと教室の外まで聞こえていたに違いない]
あ、講義終了か……。
[電子音で冷静さを取り戻す]
しかし、フィリップも甲斐性なしだねぇ。
気象バカの本領発揮ってところか?
そういえば、あの円城寺とか海人とかいわれる事も多いな。
いたって普通なんだけどね、有名税って奴かな?
[誰にもともなくうんうんと頷く。
リル以外からも視線を感じたが知らない振りをした]
あ、学科は経営かな。
将来の夢は、今のところない。
とりあえず、そんなところかな。
[フィリップの彼女の下りで抜け落ちていた自己紹介を続けた]
[円城寺の残念な叫びが講義室に響いた。
これまでは居ないか、居てもごく少数だったはず状況を把握している学生の数が一気に増産されてしまった事になる。
そして、その途端に、講義終了である。]
現状は、まだ玉砕では無いぞ。
そのような断絶があるならば、死も同然。
そして、確かに私はフィリップの妹だ。
[リルは至って真面目な表情で、円城寺に首を傾けた。]
──しかし、
あれは、学生に気安く己の名を
呼び捨てにさせているのか。
何か、気に入らん。
円城寺、お前も気になるのだが、
少しフィリップと話をして来ようと思う。
[ドン引きしている学生達が、壇上へ向かうリルを注視しながらも、さざ波のように教室から出て行く。扉のあたりで群れが出来た。]
……何故かは分からないが、
お前とも、また会う気がするな。
[ふと思い出したように、リルは円城寺を振り返る。
フィリップの傍まで来ると、人目を気にせず彼の腕を引いた*。]
ほう、玉砕ではないと?
中々興味があるぜ、そういうの。
死も同然とまで言ってくれる女性であり妹を振るなんてなぁ。
やっぱり、フィリップだな。
[不機嫌そうなリルを見て首を傾げる]
皆にフィリップと呼んでくれっていってるぜ?
もっとも、皆びびって中々呼ばないけどな。
特に女の子は様をつけたがってめったに呼ばないなぁ。
うらやましい限りだけど。
そうだなー、よく話した方がいいかもな。
[また会う気がするの言葉に]
お、いいね、その言葉。
それじゃまたな、リル。
[フィリップの大声に笑いながら教室を後にした**]
[廊下でひそひそ話をしている学生を横目に、リルに腕を引っ張られてその場を立ち去る。
今日の講義はあと1つ、気が重い]
もうちょっと会話内容に気を使ってくれないか、あれだとあらぬ誤解を生むじゃ・・・・・・
[そう言い掛けて言葉を止めた。リルはどうもご機嫌斜めなようだ。円城寺君と会話していた際に何らかのトラブルがあったのだろうか。
拘束されていないほうの腕で頭を掻く。彼女の機嫌が直るまで言いなりになっておくしかなさそうだ]
[しかし、なんだろう。
昔、こういう事があった気がする。
他の誰かではなくて、リルかそれともリルに良く似た誰かと。
朴訥な僕がこうやって引っ張られて、そして彼女によくいやな思いをさせていた気がする。
この記憶は、何だろう。
いろいろトラブルもあり、また彼女もフィリップに言いたいことがあったようだが、とりあえず講義が終わるまでは待ってくれと諭した。
今日の大学での用件が終わり、あとはまた校門付近の冷やかしを耐えながら帰路に着くだけとなった。
その前に、この目立つ姿を隠すための洋服を購入する約束を果たさねば**]
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