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―上空―
[星、煌めき始める空を
黒く青い巨人が行く。
操縦者――蒼真の意志に応え、
なるたけひとの目につかぬ場所を探して。
やがてヴォルバドスは、
市街地から少し離れた公園の上へと空中で停止する]
―――…
[破損率。
深紅の機神の推定能力。
残エネルギー量。
諸々の情報を現す半透明の文字列が
イステを取り囲むように浮かび上がり、青い眸の奥に映り込むが―――]
…ソウマ。
ここで。
[彼は急かすだろうか。
イステはコードの絡む手、
青に濡れていないほうの手を差し伸べて触れ、
―――転送。
人通りまばらな公園の一角に、
蒼真とイステは降り立つこととなる。]
[夜に青と黒の機神。
蒼真とイステを守るように
巨大な手が降りてくる。
伸ばしたイステの白い指先がヴォルバドスに触れれば、巨体は燐光に包まれ、見えなくなった。]
………気に入らねぇなあ。
[自動販売機のボタンを押す。ガコン。いい音を立てて缶コーヒーが落ちる。
正体不明の識別登録機はすでに受け入れられた。
パイロットの社長への面会申請さえ、それがすでに約束されていたかのようにすんなりと通った。
――色々と説明を用意していたが、全て不要だったほどに。
経緯の説明は、未だない。
未確認HMの格納されたハンガーへも、立ち入りが禁じられた。
会社のやる事に文句はない。だが、不満は募る]
やれと言われりゃなんでもやるがよ、やっぱちっとくらいの説明は欲しいわな。
[缶コーヒーを取り出すと、待機部屋へと戻った]
おう、まあ言いたい事は判るからいいぞ。
[どっかりと椅子に腰を下ろす]
思う事はあろうがまずは先の戦闘のデータ解析を進めてくれ。
なんであろうとも、俺達のやる事は変わらねぇ。
[即ち――会社の利益となる事を]
― 夜/公園 ―
[夜の公園の一角。
周囲に人の影は無く、疎らに配置された街灯の光だけが照らす中。
体温の感じないイステの腕を握り、引き寄せる。]
いいから早く怪我を見せろ!
[半ば叫ぶように、言葉を発する。]
― 夜/公園 ―
っ…、
[引き寄せられ、
痛みにかほんの僅か眼を眇めた。
肩を押さえていた手をずらす。
傷に滲む青い血――と、ひとが呼ぶものは薄暗い街灯の下でもはっきり確認できただろう。]
…そう急かずとも
大きな問題は、ない。
[蒼真とは対照的に落ち着いた声色であった。それが当然というような。]
/*
公園はきっと、広い、公園。
ソウマの過去を聞いたりできるのかイステ。
ところで参加者一覧が
飴アイコンまみれで
ちょっとびっくりした。
――……なんで。
なんでそんなに落ち着いてんだよ!
[流れる青い血を、破った服の端で拭う。
そこまで深くはないが、決して軽い怪我ではなかった。]
怪我したんだぞ!?
しかも戦闘で、機神が破損したら自分も怪我をするなんて……そんな馬鹿な話があるか!
[落ち着いた声が、何故か気に入らない。]
――何故?
[瞬く。傷は拭われるに任せていたが
そっと止めるように手を重ね]
問題ない、傷は修復はされる。
そのようにできている。
[傷は確かに、塞がり始めていた。]
…、…
インターフェースである私が傷つくのは、
ヴォルバドスとの感覚共有に起因している。
共有することにより動きの精度が上がる。
必要だと判断したが
切り離しがうまくいっていなかったのも
また事実だ。
ッ……。
[その言い分に思わず言葉に詰まった。
傷口は徐々に、だが人では考えられない早さでふさがっていく。
重ねられる手、触れる肌。
もはや何回も感じている、低すぎる体温。]
修復だとか、必要だとか。
そういう問題じゃねぇだろ……。
……――では、
お前は何を問題にしているのだ、
ソウマ。
[ごく僅か、首を傾けるような仕草。
表情は余り動かないが、何処か困ったようにも見える。手は、振り払われなければ重ねたままだ。]
……痛かったんだろうが。
[確かに、痛みに顔を歪ませていた様だった。
搾り出すような声とともに、
重ねられている手を取り、握り返す。]
苦しかったんだろ?
なんでそれを問題にしねぇんだよ!
辛かったら逃げればいいだろうが!
避けて通って、危険のない道を進めばいいだろうが!!
―――なんで、自分から……
死にに行く様な真似するんだよ。
−夜/ホテル付近表通り−
…他に、何にも
[ぽつん、と繰り返す。
澄んだ金色を手に小さく息を吐き出した]
何にも
[考えたことがないのか、それとも忘れているのか。
世界にもうまく馴染んでいないことはわかっているし
欠落したたくさんの記憶はどうやったら帰ってくるのかもわからない]
……ちょと、歩いてくる
[ホテルの外壁を見上げ、これが目印だと記憶する。
それからポルッカに背を向けると、少しだけ足早に踵を返した]
…、――
[蒼真の剣幕と叩きつけられる声に
イステは眼を確かに丸くして]
…、…ソウマ
[何と謂うべきか。
唇を薄く開いて逡巡するような間がある。]
…避けて通る、という選択は
私の中に ない。
痛みにも 意味がある。
…私の痛みを問題にしながら どうして、
[手に触れていた指先を、
そろりと頬の辺りに、伸ばした]
お前の方が、
痛そうな顔をしているのだ、…ソウマ。
/*
欠落した部分は適当に作っとかないといけないことに気づいた。
どーおすっかな。
って言うか投票どうすっか な − 。
−夜/通り−
[ショートブーツの爪先が、カコン、と小石を蹴飛ばす。
それは、街路の植木の中に飛び込んで見えなくなってしまった]
不恰好、かー
[呟く。そのまま空を見上げる。
人工の光、空を飛んでいく飛行機の光。
この街の空は、酷く明るいと感じる。
沢山の音、沢山の人、それなのに感じるのは]
…さびしい
[独りぼっちになったような、そんな気分。
記憶の淵で淡く揺れているのは、星の光。
今よりずっと暗くて静かな夜だった───ような、気がする]
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