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― 交戦跡地 ―
……――
[交戦跡を青い眸に映す。
其処此処で聞こえるざわめきと、
テレビクルーらしき者の声。
イステは手にした端末を片手で差し伸べるようにした。
液晶に忙しく数値が浮かび上がり流れていく。]
高エネルギー反応の残滓が残っている。
「終焉」かどうかは分からないが
アレが本当に目覚めてのことなら
この程度では済まないだろうことから
可能性は低いと見る。
相手は《Endeavour》
私たちの交戦したものと同じ型だろう。
……機神の乗り手は
既に此処からは退避しているだろうな。
接触をはかるもひとつかもしれない。
だが手がかりは少ないな。
それにあの時も一枚岩になるまでに時間を要した。
[視線を横に流すと、
目立たぬようにか一歩ひいた。]
《Endeavour》は彼らにとって未知の脅威に
交戦の姿勢をとるということか。
或いは捕縛を狙うか。
どちらにせよ、歓迎できない。
[手を胸元に引き寄せ、
軽やかにタッチパネルを叩く。]
これよりも、もっと酷くなるって言うのか。
[正直に言えば、気分が悪い。
此処で被害を受けた人は、普通に暮らしていただけだ。
牙も爪も持たない、必要としない。
守られて生きていく、それが許される人達だった筈だ。
それがなんで、こんな理不尽な目にあわなければいけない。]
……Endeavourに事情を説明できないのか。
あそこには山ほどHMがいる筈だ。
それに協力してもらえば、終焉とか言う奴だって―――。
これよりも、もっと酷くなるって言うのか。
[正直に言えば、気分が悪い。
此処で被害を受けた人は、普通に暮らしていただけだ。
牙も爪も持たない、必要としない。
守られて生きていく、それが許される人達だった筈だ。
それがなんで、こんな理不尽な目にあわなければいけない。]
……Endeavourに事情を説明できないのか?
あそこには山ほどHMがいる筈だ。
それに協力してもらえば、終焉とか言う奴だって―――。
[自分で言っていて、希望的観測だというのはわかっている。
そもそも、人は"普通ではない物"を排除しようとするものだ。
まさに異常その物である機神やイステ等を受け入れてくれる可能性は低い。]
ん。
[温かい肌が、不意に体を包む。
原因がダンに抱きしめられた事だと知るまでに
彼は我に返っていたようだ。]
嬉しい…?
…確かに上昇している。
脈拍と体温。
[目を逸らすダンをじっと見つめる。じぃ。]
機神ほどの信号ではない。
しかし所有はしている。
情報統合。
推測。
恐らくインターフェイス。
協力の会合。
成功するかは未知数。
インターフェイスが開発された文化圏は多岐。
思想と目的。
異なる場合もあると考えられる。
私の開発者の場合は……
[...メモリーを検索中...
...]
…修正。
最悪の可能性。
マッドエンジニア。
― 交戦跡地 ―
私の記憶から当時の事実を口にするならば、
瓦礫の山と焼け野原が残った。
[淡々と口にする。]
却下だ。
《Endeavour》へ協力を仰ぐことで
事態が好転する可能性は低い。
それどころか、私たちのような
過去からの「異物」は実験材料にされるのが関の山だ。
それは私たちの望むところではない。
それに、《Endeavour》が必ずしも
「味方」とも限らない。
…そしてそれは他の機神にも謂える。
[夕陽の染める赤の中に浮かぶ青の光。
液晶に点るそれ。
電子地図にあいまいな範囲が示されていた。]
弱いが反応はある。
[イステは謂い、廃工場の方面へ顔を向けた。
あくまで反応のあった、大まかな方角であるゆえに
確信を持っているわけではないようだが]
ソウマ。
お前は、どうしたい。
おう?
[格納庫から戻ってきたところで示された一枚のディスク。
そこから再生された映像を見て、なるほど、確かに面白いと頷いた]
これで未確認のHMが3機目ってことか。唐突に現れたところを見るに、前の2機と同じだな。
場所はどこだ、調査に1小隊出しとけ。
それと、映っている人物の詳細は――もう調べているよな?
ええ、勿論です。
[不敵な笑みを浮かべ、眼鏡をクイとあげる。]
此処からが更に面白いんですがね。
女性の方は詳細不明、いくら調べても現在では何かを断定できる程の情報はありません。
しかし老人の方…此方は意外な名前が出てきましたよ。
…ポルッカ・ヘヴンベル。
過去に英雄とまで言われた軍人と同じ名前ですね。
――ッ!
[ハルナに見つめられて、ますます頬を赤らめる。]
そっ、そうか、インターフェイスか。
目的って、つまり、インターフェイスの中には、“終焉”に手を貸すような奴もいる可能性があるってことなのかな。
……ハルナの開発者がマッドエンジニア?
でも、ハルナの故郷は“終焉”に滅ぼされたんだろう?
ハルナとシトクロムe3は、“終焉”への対抗手段として開発されたんじゃないのか?
[その言葉と共に、書類を手渡す。
そこには映像の老人が英雄と同一人物であると断定できるデータ。
そして現在部屋をとっているホテルの名前まで記載されている。]
ああ、それと例の映像データも解析が終わってます。
信じられませんが、男性2人はこの街の住人です。
[更に追加で渡される調査報告書。
其処には二人の男…【風限 蒼真】と【段田 弾】の情報が記載されていた。]
女性の方はこれまた同じく該当データなし。
女には秘密が多いって、あれ本当だったんですね。
[わざとらしく肩を竦める。]
[淡々と告げられる、過去の情景に思わず拳を強く握る。]
実験材料……イステが。
[先程まで自分が考えていた事そのもの。
いや、単なる排除や拒絶よりも更に悪化した予想を語られる。
もしかしたらそうならないかもしれない。
だが……その未来が容易に想像出来てしまうのもまた事実。
イステの顔を、じっと見つめる。]
――……反応。敵か、味方か。
[自分はどうするべきなのか。
逃げたいと思っている自分は確かにいる。
この非日常から逃げ出して、日常へと戻りたい。
だがそれとは別に―――]
――……お前は、必ず聞いてくれるんだな。
俺が、どうしたいか……って。
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