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[赤、暗赤色、黒。移り変わる色。
インターフェイスA/I=L2は、その機体を真紅の視線だけで愛しげになぞる。]
此のまま、
乗り込みたい衝動に駆られるが、さて。
──行くか。
[気が付けばA/I=L2から滴り落ちていた培養液は乾いていた。
黒髪をなびかせ、機体に背を向ける。A/I=L2の内部で展開されるデータは、En/Co/lCha/Dis/At/En=6*Oに必要なパイロットのものだった。]
―夜の路地―
[――逸れは、青い光と闇の中から出でる。
光吸い込むような漆黒の機体。
まず、腕が空間より忽然と生える様に現れた。
それをなんと呼ぶべきか。
今地上にあるあらゆる金属のどれとも似てはいなかった。]
バーカ、水なんか持ち合わせてねえっつーの
[爪先が男の頭を軽く蹴る。
やっている事も言動も、路地裏にいるチンピラと何一つ変わらない]
立てよ
こんなところで爺さんを転がしてる場合じゃねえ
!?
[突如眼前に現れた黒い機体……HM。
信じられないものを見たかのように、眼鏡の奥で眼を見開く。]
ほ…本当にいた!
通信!未登録のMEを確認。
機体識別信号はどの登録機体とも一致せず!
これより確保に移る!
[本部、並びに他の場所へと向かったシグへと通信を送る。]
―夜の路地―
…その必要はない。
[慌てる蒼真とは対照的にイステの声はただ静か。
彼の手首を掴むのとは反対の手で、現れた漆黒の腕に触れる]
――私はイステ。
――私は歌う。
[言葉通り歌うような声に
こたえるように 光、強くなり
腕を縁取る光はやがて巨大なひとつのかたちを描き出す]
ヴォルバドスが呼んでいる。
……私たちにはお前が必要だ。ソウマ。
[今一度、イステは繰り返して
蒼真の腕を、引いた。]
[酒でガンガンと痛む頭を脚で小突かれて、その痛みにまた胃の内容物をぶちまけそうになる。
右手で胸、左手で頭を押さえなんとか我慢すると、苦労して身を起こした]
と、年寄……優しくせんか……。
[泣きっ面に蜂とはこのことかと、目の前の相手を見る。時間を掛けて、知らない人間だと理解する]
だれじゃ?
[通信が終わると同時に地上へと降り立つ鋼の巨人。
操縦されるがままに、眼前の未確認MEを捕獲しようとゆっくりと近づいていく。]
[眸に当たる位置にはめ込まれた
蒼いレンズが強く光る。
瞬間、蒼真とイステの姿は
地上から光がうせると同時に掻き消える。
次の瞬間に、蒼真が眼にするのは
彼が過去に「巨大ロボット」として
夢想の域に描いたもののようであり
またそのどれでもない領域。
無機質であるようでありながら有機的。
生命のようでありながら機械のようでもある。
半透明のモニタが幾つも空に浮かび
それぞれに違った映像と数値を表示する。
一言で表現するならば
「コックピット」 と 呼べるであろうか。]
何かが、起こっている。
[そんな予感だけを頼りに、マンションの外にでる。
この暗い都会の中で、何かが起きようとしている。
その場に直面した所で自分が何を出来るのかはわからないが、今はただそれに触れたいと、本能が囁いていた]
おいおいおいおいおい………。
[コクピット。
まさにそうとしか表現が出来ないであろう場所。
あまりの展開に、渇いた笑いが込み上げてくる。
自分は知らない間に眠って夢でも見てるのだろうか。]
……どうなってんだよ、これ。
なんで俺、こんな所にいるんだよ。
優しく?そんなの、酒に頼みな
[裏返せば自分には期待するな、といっているに等しい。
名乗りを求める言葉に、影は一つ息を吐き出す]
爺さんに用があるモンだよ
それだけじゃ、不十分か?
[首を傾げると金よりも淡い色の髪が僅かに揺れた。
花紺青に金を含んだその眸は身を起こした男を見て]
…資質以前に、身だしなみが問題だな
[苦い溜息を吐き出して、先が思いやられるというような顔をした]
─ 夜の街/ビルの屋上 ─
[夜に溶け込むような色の長い髪をなびかせて、軽々とビルの上を渡る影がある。
月光を反射する特殊素材で出来たイエローとブラックのコスチュームは、非人間的なインターフェイスの肢体にピタリと張り付いている。]
……街が、騒がしいな。
[二つの真紅が闇の中で輝く。
A/I=L2は、青ざめた皮膚にざわめきが走ったかのよう、喉を反らせて両腕で己の肩を抱いた。空中に表示させた蒼白く点滅する地図は、En/Co/lCha/Dis/At/En=6*Oに必要なパイロットの自宅を示していた。
場所マークの一致に、A/I=L2が立ち止まったのは、都内のとあるマンションの屋上だった。]
─ 夜の街/ビルの屋上 ─
此処か。
フィリップ・ミラー
[彼の住むはずの部屋へ向かいかけて、インターフェイスはマンションを出て行こうとする、フィリップの姿を視認する。
軽く、眉を顰めた。少女の肢体は、目的の部屋の窓へとそのまま躊躇無く屋上からダイブした。
フィリップ・ミラーの視点で見れば。
──突然、空から少女が降ってくる。]
倒すって……、だから何で……。
[そもそも自分はHEの操縦資格などもっていない。
自体が飲み込めないまま、再び疑問の声を荒げようとすれば
目の前に移るのは、此方へと伸ばされるHEの腕。]
〜〜〜〜ッ!あーもう、解ったよ!
その言葉に乗ってやるよ!
[ガリガリと何かを吹っ切るように頭を掻き毟れば、
何かを吹っ切るように操縦桿を握り締める。]
だけど後で……キッチリ説明してもらうからな!
[漆黒の機体に
淡く光る流麗な蒼い文様が微かに浮かんでいる。
《適合者》――すなわち操縦可能なものが
中にいるゆえに満ちる力。
だが未だ、動くに十分では、ない。
鋼の巨人より伸ばされる手を
果たして払いのけられるか否か。]
[操作方法は、まるで最初から知っていたかのように
すんなりと頭の中へ溶け込むように入っていく。
気付いた時にはまるで何でもない事かのように
迫る腕を払いのけるよう、漆黒の巨人……ヴォルバドスに命じていた。]
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