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―― 4F ――
…………。
[無言。
男に言いたいことは女中に踏みつけられている奴が寸分違わず言ってしまった。
ふと横を見るとECLATANTが残念なのかがっかりしているのか定かでない、複雑な表情をしている]
……気にするな。よくあることだ。
言いたいことを他の奴に言われるのは。
[とりあえず慰めるようなことを言っておいた]
外か……。
[視線を向けるのは、Babylon出入り口からほぼ反対側の壁、やや上方。
外のグリッドは平面的に広がっていたはずだから、爆音の主は壁にでも張り付いている事になる]
ううん……そういえば、塔の壁には階段みたいなのがついていたから、そっちかな。
[塔の外観をmemoryから引っ張り出して、現状と照らし合わせる。
そして、青髪少女の方にちらと視線を向けた後、壁に歩み寄った。
掌を付け、sandplay technique―― 一定空間内のobjectを浸食し、支配下に置くプログラムを起動する]
さすがに……固いや。
[内部はともかく、舞台外壁の破壊はそう易々とはさせてもらえないらしい。
そうしている内に外の戦いは決着したか、長い叫び声が聞こえてきた――何故かそれは、空に向かって加速しながら移動していたようだったが]
−2F−
−hall−
あーあァー、ったくなんとも実に呆気のねェことで。
オレッチ様ァなんともがっかりしてんだがそこンとこどーだ?あ?なンか言いてぇことは?
[アバターを構成する情報そのものをプロテクトに包み、あらゆる攻性Programをはじきながら、確実なCounterを入れる。それが彼のスタイルだった。
2Fのhall最後の生き残り(noiseを除く)である、彼の。
そしてたった今、男の手によって体をノイズにされ、それでもなお、自らを保護するプロテクトによって首だけになってさえ脱落を許されない、彼の。]
やっぱなァ。お前ェらダメだわ。ぜんぜんまったくなっちゃァいねェ。
ったくよォ…いっくらクソ雑魚のド三流ッつっても十把一絡げの一山いくらでブッ壊したらちったァ面白ェかと思って期待したんだけどなァ…
[実に不満げな様子の男は、その手に持ち上げた、彼の頭部にたらたらと不満を垂れる。
その彼の頭部もちりちりと首からノイズの侵食が這い上がってきている。そう時間を置かず、消滅することだろう。男は興味を失い、手にした頭部を投げ捨てた]
さて。次いくか。
[呟き、歩を進める。探しているのは階段だ。ワープゾーンを使って一階まで降り、ワープゾーンを壊した上で上階へと向かう。その道々で参加者を丹念に潰していけば、そのうちお目当ての参加者とも出くわすのではないだろうか]
あンのガキ犬か、時計屋ンとこのメス犬か…ああ、ゴミ山の犬っころとか…あのイイ女でも悪かねぇなぁ…
[指折り数えながら歩を進める。その顔は、期待にニヤニヤと笑っていた]
あのクソッタレもさっさとブッ壊して…
…あァ?
[外から響く戦闘音に顔を上げる。手近な窓を見つけて、覗き込んだ]
……はァん。なるほど。そりゃ見逃してたわー。
[塔の外に出ることは盲点だった。どうしたものかと思案する。予定通りこのまま上階を目指すか、1Fに戻って外も含め、回りなおすか――――]
[男と女中に私達を攻撃する気はないと判断した私は、彼らが(無謀にも?)ワープゾーンを使ってどこかに去るのを黙って見送った。
去り際に瞬いたのは男の持つプログラムなのか――知る術はない。
残されたのは私達と、女中に足蹴にされて動かなくなった、男]
『おーおー、アーヴァインとかいう奴、派手にやりあってるねぇ!』
[ECLATANTの声に視線をそちらの方にやるが、すぐにそらした]
[引力を操るAI-bluebirdがソレの方へひらりと翼を広げた]
「gulaダナ?ゴキゲンヨウ。イイ天気ダ]
[鳥の囀りに敵性反応アリ、とavaritiaが判断する。
新たな防御行動として、塊は『腕』を伸ばし、塔の外壁と自身の一部を同化させて固定した。音声を発生させる]
――てんきは あめだよ
[聞こえてなどいないかのように、鳥は嘴で羽根を繕う仕草をしながら囀りを紡ぐ]
「見タゾ。オ前ハgame開始前ニ、戦闘ヲ行ッタダロウ。
ぺなるてぃガナイノハ、不公平ダト思ワナイカ?」
ふこうへいは しらない
[ソレの反応に、鳥は器用に鼻を鳴らす]
「畜生ダナ。著シク低イ知能ト状況判断力。ロクナ攻撃ぷろぐらむモ防御ぷろぐらむモナイ。脱落スルノハ時間ノ問題ダ」
… たたかう?
「くく く?一昨日オイデ。ぺなるてぃヲヤロウ。受ケ取レ」
[鳥が軽やかに囀ると同時。
ソレの上で雨を遮っていた雨傘が空へと『落ちて』行く]
―― !
[警告音]
[浮遊していた小さな球体が重力変化に呑み込まれ、上空へ舞い上がった]
avaritia!
[『腕』を伸ばす。有機的に雨を照り返す触手が落下する補助AIを追い――8m上空で捉えた]
ぎ 。
[補助AIを救出した瞬間、『塊』の全身に強い上向きの力がかかる。
グリッドの入った床を離れて落ちようとする力に、塔を掴む腕が抗しきれずにずるずると伸びた]
「伸ビタ伸ビタ。一緒ニ落チルカナ?落チルカイ?」
[楽し気に囀りながら、小鳥ははたりと羽ばたく]
――
[腕の中のavaritiaが新しい警告を発する。
上空から、今度は床へ――ソレに向けて斜めに落ちてくるモノ。四本腕のプレイヤーが持っていた、ガトリング砲だった]
危険 破壊 不能
緊急回避行動
[己が身を叩き潰そうとする銃身に熱衝撃波をぶつけて勢いを殺し、ソレは塔の外壁と一体化していた『腕』を切り離す。
重力に従い、落ち始めた。真上に]
―― !
[斜めに掠った金属の塊に体の半分程を吹き飛ばされながら、ソレは涯てのない天へ落ちていく。
ガトリング砲はBabylonの外壁と床の継ぎ目に衝突して大破する。
銃の持ち主が落ちてくることはなかった――脱落表示ははるか空の向こう――]
― 4F ―
[ Irvine、Musha、Merlinの三者の混戦は、MerlinをIrvineと錯覚したMushaの攻撃で、はっきりとした優劣が付いていた。
Merlinのクラスタが、巨大な手術台めいた台の上で文字通り「解体」されるに至り、更にMushaの首が巨大なメスで薙がれ、9つのドームの柱の間に体がバラバラに吊り下げられ、Irvineの勝利が確定した。]
− target lose −
− target lose −
[ はっきりとした明瞭な殺意、否、愉悦のようなものを湛え、こちらを向くIrvine。塔の縁に居る。彼の背景は、雨。]
Little Dancer、あなた彼と敵対しているのなら。
私に力を貸してくれないかしら。
この雪で攻撃を仕掛けて欲しいの。
[ 離れたLittle Danceに囁いた時だった。
目の前がいきなり青く染まる。青い青い部屋。周囲の様子は見えるけれど、出られない。]
!?
これ、……。
[ 狼狽の表情を浮かべる。
更に警告メッセージが目の前に流れてゆく。]
いずれかのプログラムを削除しなければ、バックアップを一つ消去する……?
[ 青い部屋の外では、pierrotが何事か言っているのが分かるが一つも声が聞こえない。seraphは拘束が行なわれている故に、無力だ。]
( 彼らを消す事は出来ないわ。
残るは、この睡蓮のプログラムだけれど。
私は……選べない。いいえ、)
選ばない事を選ぶ。
[ 呟いた瞬間、硝子が砕け散るような綺麗な音が、自身の内部で響いた。
LOGICが初期に設定していた、back upが消去される音。蒼が砕けるようなその音を聞きながら――]
[ Little Dancerだろうか、それとも別の事情だろうか。
兎も角も、Irvineが意識を逸らしているその中、Irvineへタックルを行なった。
否、タックルというよりは縺れ合いながら落ちる。
あまりにも無謀。自らの補佐AI−seraphのペナルティが解除されていないとはいえ、あまりにも無謀だった。]
『ロッテ――――!!!!』
[ pierrotの叫びを後方に聞きながら、Irvineと共に「塔」から落ちる―――。
そこには偶然に「塊」が迫り、既にMushaとMerlinとの戦闘でBack upが0になっていた「Irvine」が呑まれるのに丁度良い態勢で交差する。
Irvineと縺れ合った腕が解け、自らは「塔」をそのまま落ちて遥か下のグリッドへと落ちてゆく。]
あらゆる処刑具が武器とは悪趣味な……付き合いきれないな。
『そんなこと言ってる場合じゃないよっ! アーヴァインが敵対してた二人を倒したよ! こっちに来るかもよ!』
それがどうした。
ならば逃げるまで――
[その時、離れたところから私を呼ぶ声が(>>119)。
声色から誰かは分かった。振り向かずに応対する]
何を言ってるんだ?
奴と敵対などする気は……
[だから、彼女が青い部屋に呑まれたことにも気付かぬままだった]
『そんな悠長なことを言ってる場合じゃないって! アタシ知ってるんだよ!』
[だが、私の思いとは裏腹にECLATANTが前に出てきた。
羽の輝きに合わせて、彼女の手近に舞っていた雪が――空中を舞う炎に変化する。
そして、彼女が何かを言いながら放つ炎の弾はアーヴァインを狙い撃つ]
『この塔には、この殺し合いには――の』
[ 落ちてゆく中、視界に映る青白い文字は―――]
− Analyze Target ...ira...−
[ 既にsetされていたtarget、その解析が、*始まる。*]
[その言葉の先を聞くことはできなかった。
それは炎の放たれる音のせいか。
アーヴァインにタックルを仕掛ける女性の補佐AIの叫びのせいか。
それとも――]
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