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何が……ああ、
[言葉の意味を理解するまでに、少々の時間を要した。]
人狼がこの部屋で暴れてやがった。
カチューシャが人狼に襲われかけてて……後ろでロランとサーシャが何か揉めててな…縺れ合って倒れた所までは見たけど、そっちはどうなったか分かんねー。
どっちかが攻撃たのか、人狼が急に苦しみ始めて、窓が割れて………それで、…それで?
あー……
獣の爪受けちまったもんで、其処から先は…悪い、覚えてねー。獣は死んだか逃げたかしたんじゃないかと…窓から。
[茫漠とした意識、説明をしようとする言葉も断片的で要領を得ないものにしかならなかったが、倒れる直前に見た物をダニールに伝える。
そして、この部屋で見た者が消えている事に気づくと、表情を曇らせた。]
― 自室 ―
[ロランが撃たれたことはさすがに知らない。
ただ、ロランから撃たれたというのに、彼女のことを恨む気など微塵もないことに気がつく。
むしろ、撃たれて、今も流れる痛みが、確実に正気を保たせていた。]
――……ッ
[人狼としてではなく、人間としての意識が高まれば、顔は歪んだ。]
[そのとき、声が聞こえる。>>131]
は?
[それはサーシャの声で、呼ぶ名はロランだった。
その声色に、ロランに何かが起きたこと、容易に想像できる。]
――……ち
[動けば傷からは流れ落ちる血。
だが、身体は立ち上がり、廊下に出る。]
――……
[声のする方向へ。
ロランの匂いを探して、二本の脚で歩き出す。]
だーかーらー、俺は死体とか、ましてや惨殺死体とか、駄目なのっ!
血の匂いとか、最近じゃ自分の鼻血にだって参ってるのに!!
……と、人の俺は叫ぶけど。
目の前に転がってるなんて、皿の上に置かれた料理みたいなもんじゃん。
ただ食べるだけ。
楽で良いよな。
……と狼の俺は冷ややかに言う。
何叫んでるんだ。
うるせぇ。
それより、オレの獲物、見てないか?
[それは、力ないが、かなり低い暗い声…。]
―個室―
[止まない後悔という思考が意識を保たせる。
気を失ったままのサーシャを、置いてきてしまったことが、思い出される。あれの狙いはサーシャに向いていたのに。
3発目の銃声を聞いた覚えはないけれど、意識が保たれていなかったのかもしれない、確証はない。]
……ああ、
[じわりじわりと、白を染めてゆく赤。
銃創を抑える手は生温い鮮血に塗れて――
残る弾丸はあと2発、もっとも銃はもうこの手にない。
ましてこの状態では、引き金を引けるかどうかもわからない。
これではもう止めることは――殺すことは出来ない]
なんかもう、滅茶苦茶ですねぇ…。
[自分が与えた羊の人形を抱えた少女が、大変な事をしでかしている。
写眞店の男の魂は軽く呻いた。]
これで人間不信になるほど深い付き合いでもないのが救いですけれどもねぇ。
まあ、それでも無事、朝を迎えて欲しい人は居ますけれども…。
[果たしてそれは叶えられるのだろうか。]
聞いてないの?
あぁ………窓から逃げたんだ。
[窓ガラスの割れる音に、成る程と]
[聞こえた銃声の、数は正確に答えた]
結構響くよね…
血と火薬で、鼻が曲がりそう
― 廊下 ―
[移動中誰かとすれ違っただろうか。
ロランの匂いを追うのだが、それ以上に匂ってくるのは鉄の匂い。そして、火薬の匂い。]
――……
[嫌な感じがするのは、撃たれた場所から血が流れているからだけじゃない。]
[薄暗い室内、窓の外、
降る雪の白さだけが仄かな灯りのように、綺麗で。
手を伸ばそうとしても、やはり届かない、けれど]
――……、い
[血が失われているせいか、寒さに口唇が震えて。
それなのに、傷口だけが焼けるように熱い。
目蓋が重くて、
とてもおもくて]
[目を閉じてはいけない、と思うのに]
[そして、匂いに確実に、その撃たれた人物が特定できた。]
ロランッ
[そして、顔を歪めて、ロランの血の匂いを嗅ぎ分けていく…。
やがて、一室の個室の前までくると開けようとして、鍵に阻まれ、ノブをガチャガチャさせ、ノックした。]
ロランッ
くっ
[獣の鼻は確実にそこにロランがいることを確信していた。
完全体だったら、そんなドアを壊すなど、そう難しくもなかっただろう。
しかし、現段階では、それは、おそらくはかなりの命を削る作業だったが…。
自分でもなぜそうするのかわからない。
だけど、気がつけば、ドアに体当たりを繰り返す。
やはり傷は新たに破れ、赤黒い血が飛び散った。
が、幾度めかの、何十回めかの体当たりで、ドアが開けば…]
ロランッ
[床に血だまりを作っている白い女を発見しただろう。]
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