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想定内も何も。
これだけ事象が限られているなら、幾つかのパターンに備えておくだけだよ。
仲間が使える場合は任せて。使えないなら売り渡して。
ベルナルトが裏切るなら殺して。裏切らないなら使って。
邪魔が入らないなら殺して。邪魔が入るなら、確実にそれが出来そうな場所まで逃げて。
今、死体が一つ増えた。運転手のものだ。
もし、私がこのまま殺されてしまったら……大変な事になるかも知れないね?
[返ってきた囁きに、なるほど、と感心していたが、
最後の言葉にしばしの絶句。]
…今、運転士室?先頭車両にいるみたい。
運転士を殺したって。早く行きましょう。
[サンドラがふらつくようなら支えながら、先を急いだ*]
― 運転士室 ―
シャノアール………?
[少女の手からナイフが離れる。
赤く染まった刃の意味は、運転手の死体から溢れる血を見れば一目瞭然だろう。]
いや、カチューシャ……か?
まさか。でも、あいつ………そんな筈は。
[困惑に首を振り、疑念は消えない。
しかし、血の海に膝を付き、手は自然と伸ばされる。
有り得ない万が一、その可能性に引き摺られるように。*]
………、……。
[涙を見れば、言葉に詰まる。
カチューシャをよく知る者であればこれが本来の少女であるかどうか判断がつくのだろうが、自分には分からないのだ。
苦渋の表情の末、結局は、少女の目の前に座り込む。]
……こいつは、お前がやったんじゃない。
大丈夫。大丈夫、だから。
[涙を流す少女に言い聞かせようと繰り返す。
運転手を殺したのは、「カチューシャ」ではないのだと。
血の付いたナイフを一瞥しただけで遠ざけもせず。]
べる…おにーさん…。
[縋るように、少女はべるおにーさんの胸へと飛び込みます。まるで、助けて助けてと、叫んでいるかのように。涙を溢れさせながら。]
[どん、と。袖口から出したもう一本のテーブルナイフを、その胸に突き刺します。突き刺し、そしてねじり込むように。抉り込むように。]
……。
だから、云ったのに……。
―――ぐ、あぁッ………!
[急所を辛うじて逸れた人狼の爪跡から、ほど近い場所。
胸を突き刺し抉るその刃は、息も出来ぬ程の衝撃と激痛とを伴って、深々と身体に埋まり]
…っ……は……っ、
は、はは……やっぱり、か。
シャノア……ル……ッ……
[渾身の力を振り絞ってシャノアールを殺そうとしたのだろうか、腕が伸ばされる。
しかし、その手は少女の首元を掴む事無く静止した。
腕の中の少女の眼は、見慣れてしまった女の物で。
冷ややかなその色を捉えれば、憎悪と、憤怒と、悲哀と、ありとあらゆる感情が綯交ぜになり、最後に僅かばかりの安堵とが浮かんだ。
それぞれの感情が何に対しての物なのか、薄れ行く意識の中ではもう分からない。]
…………、………
[止まった指先が僅かに空を切り、やがて静かに背中へと下ろされた。泣いていた少女を宥めるような、撫でるような動きで掌が数度上下した後、落ちる。
シャノアールが離れれば、男の身体も容易に床に崩れただろう。]
−食堂車−
[>>77ナタリーの手当てを受けながら、椅子に腰をかけて深呼吸をする。]
ありがと…。平気…。なんかあんたに迷惑ばっかかけてるね。
[ナタリーの分析を黙って聞いていたがベルナルトが危ないと聞くと]
ああ、追いかけよう。
[迷わず立ち上がったが、わずかにふらつく。ナタリーがそれを支えてくれたが、大丈夫と首を振った]
[ナタリーに武器を探すように言われ、周囲を探すがあまり手ごろなものは見当たらない。
細い棒のようなものが見当たり、なんだろうと取り出してみるとシュテファンの私物だったのだろうか。破損した三脚のようだった。持ち手の部分を破けたスカーフで縛り滑り止めにする。
こんなものかね、と調子を見ていたが、>>78ナタリーの言葉に度肝を抜いた]
運転手を殺した!?
この列車はどうなるんだ!?
あのバカ娘・・・・・・・!
ベルナルトは…
[...は痛む傷を押さえながら前方へ急いだ]
>>87
背徳の賢者には、騙されるなよ?
[そう云うと少女は、擦れ違う様に。どさりと、支えを失ったベルナルトの躰が倒れる。]
……。
[ごしごしと、袖で涙を拭う。]
……冷えそうだな。
[ベルナルトを見下ろし、感傷に浸るのは僅か数秒。運転手の黒いコートを取り、返り血が跳ねているそれをばさりと羽織る。少女にとって大き過ぎるそれは、黒い外套のようで。]
あーあ。
……下らない。
[それから、がこんと。列車のブレーキを掛けた。]
ぅおあっと・・・・・!??
[...はナタリーと共に急いで移動していたが、急速に列車が速度を落とした。
車体が大きく揺れてバランスを崩してとっさに壁に手を突く]
ちょっと…。列車、停まった!?
まあ……割と愉しめたよ。
きっと。
それじゃあ、な。
[手をひらひらとさせながらベルナルトに声を掛けると、扉を開け。少女はこの列車を降りて行った。白み始めた空は段々と赤みを帯びていき、見る者に夜明けを感じさせた。]
[...は運転室のドアに手をかけて一気に開く。そこは既に血の海で、その中にベルナルトも倒れているのが見てとれた。]
ベルナルト・・・・・・・。
[遅かった。
間に合わなかったようだ。
しかし、まだベルナルトの息はあるようだが、立派な体躯の青年が、少女に返り討ちにされたというのか。
カチューシャはどこに行ったのか]
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