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−回想・廊下−
[廊下を出たところで何人か集まってるのに気づく。
ミハイルとロランの死を伝えると、サーシャが血眼でカチューシャを
探していることをきかされる。そして、複数から負傷したベルナルトを頼まれたが、
本人はよろめきながらも、ユーリーやダニールの後を追っていった。
応急処置はエーテルがしただろうか。
ユーリーに渡されたタオルと救急箱を抱えたまま、溜息をつく。]
…サーシャさんも、かなり深手を負ってたようだけど。
[本人が求めなければ無理に手当する気はない。
とはいえ頼まれるとつい体が動くのは習性だろうか。
サーシャはどうなるのだろう?本懐を遂げることができるのか。
返り討ちにあってしまうのか、それとも…。]
[サーシャの耳元で。…は繰り返す]
なぁ、頼むから落ち着けよ
手を離せ
何があったのか、教えてくれ
こんなに傷ついて
あんなに取り乱して
な、まずは体を楽にしろよ
俺に任せろよ… な?
[サーシャの事など、何にも知らなかったが。せめて安心させれば手が緩むかも知れないと。優しく優しく、言い聞かせるように]
−回想−
カードはあまりやったことないわね。
でも、トランプ占いは好きだったわ。
[恋占いとかいうのでなく、パズル感覚で。]
[サーシャのナイフを掴む手から力が抜けたのなら。もう一度手首を強く握り、捻り上げる]
[ナイフは彼の手から零れ落ち、床に落ちた…]
ん、エーテル……?
怪我、してない?
[ナイフを手放せた事に安堵の息をつき、近付いて来た女性を見上げた]
― 食堂車 ―
[視界が霞むのは、出血の為だろうか。
鎖骨の下から肩にかけての貫通傷は依然血を流し続けており、痛みを痛みと感じるだけの感覚もそろそろ無くなりつつあるようだ。]
………やべえ……
輸血も治療も出来ない此処じゃ、
銃の傷なんか……殆ど致命傷だわな。
[ロランが撃たれたと叫ぶサーシャの声が蘇る。
ロランの死因が銃によるものであれば、撃ったのは誰なのか。
食堂車の灯りの元へと辿り着けば、感覚の残る右腕で机の淵を押さえ、体を支える。
と、その机に何か文字が書かれている事に気づいた。]
[腕の中に女を捉え、甘く恋を囁くかの様に……サーシャに語りかける]
あぁ、こんなに傷ついて。
ロランを目の前で撃たれ。
待ち望んだおおかみさまの、ツーペアの助けにもなれず。
二人はお前を置いて、生き絶えた。
……これは……
[確かめるように数度、右へ左へと視線が往復する。
意識を失う直前、銃弾が狼を射抜いた直後、人狼の顔がヒトに近く変化しなかっただろうか。
白靄に沈む直前の記憶が、始めて鮮明に蘇る。]
………ミハイルとサーシャは人狼仲間、か。
[思考力の落ちた頭は、裏付けを得た事で容易くそれを鵜呑みにする。事実、己の目撃した情景からは最も高い可能性でもあった。
暫くその文字を見つめていたが、やがて食堂車の先へと走り出した。]
ああ?なんか、そここそこそ何言ってんだ?
[アナスタシアとロランのこそこそ話に、イラだった声をぶつける。
シュテファンの1時間コースは何か八つ当たり的なものになるかもしれない。]
サン、サン……。
居るか?
居るなら、幾つか教えておきたい事が在る。
まずは銃の使い方だ。
これはリボルバーだから、構造は単純だ。
撃鉄と呼ばれる後ろの部分を手前に引き上げて、それから引き金を引く。それだけで弾は出る。
的に当てようとするのは難しい。使う時は外れようがないよう、接射するんだ。押し当てて、引き金を引け。
今、私が居る部屋。
入って直ぐの物陰に、銃を隠しておく。
これはお前が使え。
いいか? これはお前が使うんだ。
医療道具でも使って、適当に隠しておけ。
解ったな。
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