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聞いてないの?
あぁ………窓から逃げたんだ。
[窓ガラスの割れる音に、成る程と]
[聞こえた銃声の、数は正確に答えた]
結構響くよね…
血と火薬で、鼻が曲がりそう
― 廊下 ―
[移動中誰かとすれ違っただろうか。
ロランの匂いを追うのだが、それ以上に匂ってくるのは鉄の匂い。そして、火薬の匂い。]
――……
[嫌な感じがするのは、撃たれた場所から血が流れているからだけじゃない。]
[薄暗い室内、窓の外、
降る雪の白さだけが仄かな灯りのように、綺麗で。
手を伸ばそうとしても、やはり届かない、けれど]
――……、い
[血が失われているせいか、寒さに口唇が震えて。
それなのに、傷口だけが焼けるように熱い。
目蓋が重くて、
とてもおもくて]
[目を閉じてはいけない、と思うのに]
[そして、匂いに確実に、その撃たれた人物が特定できた。]
ロランッ
[そして、顔を歪めて、ロランの血の匂いを嗅ぎ分けていく…。
やがて、一室の個室の前までくると開けようとして、鍵に阻まれ、ノブをガチャガチャさせ、ノックした。]
ロランッ
くっ
[獣の鼻は確実にそこにロランがいることを確信していた。
完全体だったら、そんなドアを壊すなど、そう難しくもなかっただろう。
しかし、現段階では、それは、おそらくはかなりの命を削る作業だったが…。
自分でもなぜそうするのかわからない。
だけど、気がつけば、ドアに体当たりを繰り返す。
やはり傷は新たに破れ、赤黒い血が飛び散った。
が、幾度めかの、何十回めかの体当たりで、ドアが開けば…]
ロランッ
[床に血だまりを作っている白い女を発見しただろう。]
けーだーもーのー…。
[そう呟きながら、ベッドのシーツを引っぺがし、
肉片と血だまりばかりのシュテファンにふわりとかけた。
それは、すぐに血が染みだして、赤黒く染まっていく。]
…気休めにもならないわね。
……ぅ
[ナイフを無理矢理投げたところで、力尽き、ずるずると壁伝いに崩れ落ちた。
誰か女の人の声が聞こえる。ナタリーか、サンドラか、いずれにせよカチューシャのしたことを信じてもらえるとは思えない。]
……ろら、ん……
[戻らなければ。手当てしないと。ゆっくりと食堂車に背を向ける。ロランが別の部屋に逃げ込んだことなど知らないから、一歩一歩、シュテファンの部屋へと。]
痛い……痛い……
[うわごとのような、うめき声。
この間の人狼騒ぎはあんなにも幸せだったのに。さっきまであんなに昂揚していたのに。
狼がそばにいるのに、どうしようもなく辛かった。]
……ぅ
[ナイフを無理矢理投げたところで、力尽き、ずるずると壁伝いに崩れ落ちた。
誰か女の人の声が聞こえる。ナタリーか、サンドラか、いずれにせよカチューシャのしたことを信じてもらえるとは思えない。]
……ろら、ん……
[戻らなければ。手当てしないと。ゆっくりと食堂車に背を向ける。ロランが別の部屋に逃げ込んだことなど知らないから、一歩一歩、シャノアールの部屋へと。]
痛い……痛い……
[うわごとのような、うめき声。
この間の人狼騒ぎはあんなにも幸せだったのに。さっきまであんなに昂揚していたのに。
狼がそばにいるのに、どうしようもなく辛かった。]
[鍵の破られる音を、遠く、聞いていた。
間近に黒い影が差せば、重たげな眼差しが見上げる。]
――……ミハイル、
[薄闇の中、女の顔色は蒼褪めて。
頬は赤黒く血で汚れて、ひどい有様だったけれど。
それでも少し微笑ったように見えたかもしれない]
[怖いおにーさんに投げられたナイフは、肌をかすめていきました。
それに塗られた毒によって、少女はいずれ命を落とすかも知れません。
それでも少女は後ろを振り返ることもなく、銃を羊さんの内側へと隠し、食堂車に向かって走り続けます。傍目に映るこの光景を利用するため。捕まって組み伏せられて殺されるのを防ぐために。
生きるために走り続けました。文字通り、必死なのです。
食堂車へと着くと、怖いお兄さんは諦めたのか、追って来る様子はありません。とりあえずそこで一息つくことにしました。]
…ごめんなさい。
[そう呟いて、足元の燭台を手にして、ゆっくりと廊下に出た。
隣の、シャノアールの部屋から冷たい風と話し声が聞こえる。]
そういえばガラスの割れる音や銃声がした、ような?
[何処か上の空で呟いた。
状況を把握しなければ、とシャノアールの部屋に足を運ぼうとしたが、
食堂車の方からうめき声と何か引きずるような重い音が近づいてくるのを感じた。]
なんで、お前が、
[撃たれているんだと…顔を歪める。]
――……誰だ、やったのは。
[殺すと言っていた相手が実際死に掛かって、それに激しい怒りを感じている。
いろいろ矛盾をしている。
だけど、感情は止められない。
白い女が薄く微笑んだことに、背中の傷よりも胸が痛んだ。]
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