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なら、邪魔をするな…!
[狼様がいたいのは嫌だ、その言葉にきつく声を上げて。
それでも眼差しはただ、獣の動きだけを見据える。]
……ッ、
[がむしゃらに伸ばさる腕に、手を引っかかれながら、
銃だけは奪われぬように、抱き込むように庇う]
[少女は、ずりずりと這いずっていきます。
いつの間にか、羊さんをつけてない方の腕の包帯からは、赤い血が滲んでいました。
かたつむりのような速度でゆっくりと進んでいくのですが…べちゃり。おねーさんの血で滑ったのか、崩れ落ちるよう潰れてしまいます。]
>>81
グガァアアアアッ
[ベルナルトがカチューシャとの間に立ちふさがる。
獣は、それでも戸惑うことなく、その前脚を伸ばした。
それはベルナルトの背に伸ばされる。]
[獣と少女と間に立ちはだかる影が見えた、
距離が近すぎる、その巨大な爪が振り上げられた。
銃を抱き込んだまま、身を沈めて転がるように駆ける。]
だめだ……ッ、
[不思議と“彼”を撃つことには、躊躇いがなかった。
ずっと こんなにも 痛いのに。
凍れる水面のように、心は漣だつことすらなく]
―――……、ッ
[青年に向かうその黒い大きな背に向けて、
白い指はただ、トリガーを引いた。
急所を狙うほどの技量も狙いもあるはずもない、放たれた弾丸の行方を見ることなく、転がる勢いのまま床に倒れて]
>>85
――……ギャウンッ
[ベルナルトに爪がかかったか否か。
その刹那、轟音とともにその背中に弾丸が命中する。
小さいが、確かに凶器のそれは、獣の中に突き刺さり、その体内で止まった。]
――…・・・グ……ガァアアアア
[獣は動きを止め、その背から、自らの赤黒い血を噴出しはじめる。]
やだやだやだやだぁっ!!
[すでに狼の方も、カチューシャの方も、見ていなかった。ただただロランの銃を奪おうとする動き。]
あっ!
[胸元の傷の痛みに、一瞬腕が引き攣る。その隙を見逃さず、ロランが抜け出す。]
ロラン!!
[銃が構えられるのが見えた。手を伸ばす。引き金に駆けられた指。とっさの思考はとても単純。]
う、あ、あ……
[銃の前に体を投げ出した。けれどそれは腕をかすめただけ。血は流れても、威力は殺せず。
……獣の、悲鳴が聞こえた。]
[大きな獣の体越し、サーシャとロランが視界に入る。
獣を前に揉み合いをしているのはどういうことだろうか。状況を把握しかね、奥歯を噛み締める。
開いたクローゼット。壁に残るのは、弾痕――?]
――――っ!
[振り上げられた人狼の前脚、身を翻し押さえ込もうと咄嗟に腕を前へと伸ばす。
力が適う筈もない。まともに受けるのは愚策だ。
しかし避ければその爪はカチューシャを容赦なく襲うだろう。]
[獣の爪が肩を貫くとほぼ同時か。
正面から、白い閃光が迸るのを見た。]
……おーかみ、さま?
[苦しそうな声。吹き出す血。何が起こったのか……理解はゆっくりと。]
う……ああああああああああああああああああああ!!!!!!
[たたきつけるような叫び。倒れたロランに駆け寄り、その真っ白な首に手をかけた。]
ぐ……
[そして、獣化が微かに解ける。
もちろん、完全ではなく、上身のみ、顔も獣と人の間のような姿になっていく。]
……おま……え……
[その背からはやはり血が流れるが、弾丸は貫通しておらず、身体の中の鉛に眼が赤に黒に点滅した。]
――……ぐ……
[そして、一転後ずさると、窓まで背を向け、肘でその窓を割った。
とたん、吹き込む、夜の冷たい雪と風…。]
−回想つづき−
え、どうして…?
[呆然と咆哮が聞こえた先を見つめた。杳として様子が知れないが。
2度目の咆哮が届いた頃、]
あ、こっちに来る…!?
[まだ傍にいればダニール、そしてシュテファンの遺体に視線を向けた。
表情は強張らせたままー*]
[そして、一気に車内に入り込む雪と風、
それは瞬時、そこにいる面々の視界を真っ白に染めるだろう。
その強風が収まった時、
そこに獣の姿はなかった。*]
…ダメっ!!騙されちゃダメぇっ!!
[叫ぶ声も、つかもうとする手も届かない。]
違うの!それは、私じゃないの!!
にせもの、なのに……
――……ミハイ ル……
[指先はトリガーに引っかかったまま、
凍ったように動かない、ずるずると肘をついて立ち上がれば、彼へと伸ばした片手が落ちる]
………ッ、
[咄嗟のことに何が起きたのかもわからぬまま。
訪れた窒息感、喘ごうにも呼吸は塞がれて、
ただ苦しげに眉根を寄せる]
[振り返り、呆然とその光景を見ていました。
身を挺して自分をかばってくれたべるにーさん。
必死に止めようとした、ローラお兄さん。
銃を奪おうとする、こわいおにーさん。
そして、窓から落ちようとしている…ミハイルおじさんを。
少女はただ、見つめていました。]
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