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おーい、誰か、シュテファンさんの面倒を見て貰えませんか?
[まあ、とりあえず人のいるところに連れてくれば、
誰かが面倒を見るだろう。
そう考えると、シュテファンが座り込んでいた扉の前に
戻ることにした]
[扉を開くと、鉄の臭いと赤い色が飛び込んで来る。
あの村で散々嗅いだ、イヤな臭いだ。
もう、あんな騒ぎはゴメンなんだがな。
軽く舌打ちをすると、
それでも何かの冗談であることを期待して、
中を観察する。
相変わらず、醒めた男だな。
こんなんだから、狼だと疑われたんだ。
そんな考えが頭に浮かぶが、
意味もなく騒ぐ振りをしても仕方ないと考え直す]
[部屋の中をじっくり見ると、
部屋は最初の印象の通り、
誰かの血で真っ赤に染まっているようだ。
床には、血をぬぐったようなタオルが何枚かあり、
案内人の残骸があった。
残骸と言っても、顔は残っていたから、
案内人だと判る。
案内人の表情に恐怖という感じはない。
襲われた時の叫び声が聞こえなかったんだから、
一瞬で殺されたんだろう。
とすると、この壁の血は心臓が止まってから、
人狼に塗りたくられたものなのかな。
人狼は、悪趣味じゃないとなれないとかあるのかね。
ため息を吐くと、残骸を確認する]
―食堂車―
[ずるずると、半ば引きずられるようにして肩を貸され、食堂車へ連れて来られた。
しばらく椅子に座って焦点の合わない眼差しで震えていたが、やがてゼンマイ人形のようにぎこちない動きでとぷとぷと大振りなグラスにウォッカを注ぐと一気に飲み干した。
元よりさほど酒に強い方ではないが、ショックのせいで酔いは回らない。
そのまま座席に座り込んで、訪れる者に「案内人が―ラビくんが死んでます」と人形のように繰り返している。]**
[残骸は、やっぱり本物のようだ。
まあ、前の村で見せられたものに似ているというだけで
医者でないから、死体が本物だと断言などできないが。
首が獣に喰いちぎられたように、胴体と離れている。
この時は、さすがに返り血を浴びたはずだ。
その血は、あのタオルでぬぐわれているか。
それでも、血で汚れた服がないか
確認してみた方が良いだろう。
もっとも、人狼は裸で襲撃しているのかもしれないが。
まあ、その辺は何もしないよりはマシだろう。
身体の方は、獣に切り裂かれたように散らばっている。
手足よりは、内臓を喰われている感じか。
内側が引きずり出されて、捩れているように見える。]
[頭の方は、顔をわざと残したのかもしれないが。
髪の方は血でべっとり濡れている。
この調子だと、後頭部が割られて、
脳ミソも食べられているのかもな。
あの時みたいに。
でも、今回は顔が残してあったから、
誰が襲撃されたか判ったけど。
もし、残骸を列車の外に捨てられたら?
誰が襲撃されたのかも判らなくなる?
まあ、その時は、その時か。
とりあえず、生き残る為の対策を立てなきゃ。
前の村での経験や対策を考えながら、
食堂車に戻ることにした。]
[個室の寝台に横たわり目を閉じた。
何故だか眠れなくて、寝返りを何回もうっている内に、
遠くから悲鳴が聞こえてきたような気がした。]
…誰?
[一人きりの部屋で呟いた問いに返ってくる声はなく。
そろそろと起き出すと、廊下を覗き込んだ。
人の行き来はあるだろうか。]
−→食堂車−
[ひとまず食堂車に向かうことにした。そこなら誰かしらいるだろうと。
人に会うことがあれば、悲鳴をきいた話をするだろう。
食堂車に入ると小刻みに震えている写真屋の姿が目に入った。]
シュティファンさん…だったかしら?
どうされました?
[近づいて、声をかけたが、呟きを繰り返すばかりで。]
ラビさんが、死んでる?
[思わずぐるりと辺りを見回したが、その姿はみえず。
それは一体どういうことですか?尋ねてもまともに答えは返ってこないだろう。]
[状況が見えないのは不安だが、
心細そうな人の傍を離れるのは躊躇われて。
しばらくするとイヴァンがやってくるのがみえた。
彼が何か話し出そうとすれば、耳を傾ける*]
えーーと、確認してきました。
まず、皆さん、落ち着いて下さい。
騒いで、状況が良くなることなんてありませんから。
俺は医者じゃないんで、本物か確認は難しいんだけど。
案内人のラビさんが、獣に襲われて亡くなっているようです。
状況から言うと、
どうも人狼が出たという話は本当のようですね。
で、前の村でも、人狼が出た時に経験から、
人狼対策を取らないとまずいと思うんですが。
まずは、今晩、ラビさんが食堂車を出てから、
シュテファンさんの悲鳴を聞くまでの
皆さんのアリバイを聞かせてくれませんか?
誰かと一緒にいたとか。正直に。
俺は、二等車で1人で寝ていたんでね。アリバイはないです。
それから、荷物の中身の確認もさせて貰います。
女性の荷物は女性で確認して下さいね。
その後、昼間は人狼が出ないはずなんで、
人狼が隠れていないかの家捜しをしましょう。
もし、誰か隠れていれば、それが一番怪しいんですけどね。
あ、後、シャノアールさんが占い師さんなんでしたっけ?
占い結果はどうなっているんでしょう。
他にも、占い師だと言う人がいたら出てきて下さいね。
前の村でも、そういうことはあったから。
とりあえず、それだけやったら、後は対策を考えましょう。
人狼を退治する為に。
[うーん、電車が止まらないなら、
怪しい奴には1人ずつ、電車から降りて貰うしかないな。
放り出されても、雪の上とかに落ちれば、
無事かもしれないし。
電車の中でリンチにするよりは良いでしょ。
それで、出来れば、今日から夜は全員食堂車で過ごして
貰えれば人狼も動きようもなく、
目的地まで無事に行けるはずなんだけど。
前の村でも、パニクって閉じこもった人が
やられていったからな。
まさか、俺以外の全員が人狼でもない限りは、
全員一緒が一番なんだけど、さて、どうなるかな**]
―食堂車→個室―
[シュテファンとすれ違う時に、「奥さん」と声を掛けられる。]
奥さん……
[返事ではなく、その言葉のみを反復する。
愛する夫は、もう居ない。
後手に扉を閉めた。
人狼の前には無駄と知りつつも鍵の閉まる音を立て。]
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