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え……でも、これ、どうしよう。お爺さん?
[すでに作業を再開し始めていた弟の方へと、不安げな視線を投げる。しかし、返ってきたのは楽観的な調子の声]
『心配するな。そう書いてあるんだろ? ここまで来たらたぶんこうなるってのはもう、俺達の方じゃ話してあったのさ。だから、シュウは気にせずに戦ってこい。
勝ち取るんだろう――“Golden Bough”を?』
……う、うん。じゃあ、けど――
『気にするな。集中しろ。コイツの処置だって、まだお前の手も使わなきゃならないんだからな』
[言うや否や、老メカニックから少女へと、補助の指示が飛ぶ。反射的に答え、BFの修繕作業へと戻っていった]
「うん、フヅキ。ボクは、黒隗。」
[GRAVEブースから戻ってくると、そんな声が聞こえた。
こちらに気づくと、早速黒隗が報告をする。]
「やっぱり管制装置が駄目になってる。
このまま使い続けるのは難しいよ。
”本館”に要請すれば送ってもらえると思う、けど…」
時間がないな。
設備は引っ張ってくる。
損傷箇所に必要な部位は、なければ他のものを解体して作り上げ、システムの負担軽減や再構成は、黒隗が手伝えるなら手伝うんだ。
[何か言いたそうにしている黒隗を止める。
暫し立ち止まっていた黒隗は、コクン、と頷き、]
[ニーナがどう答えようとも、少女は一つ頷きを返しただろう]
そうですか……
私も、かつては一人で星々を渡り歩いていたんです。
[故郷といえる場所では、星々が星域の覇権をかけて戦いに明け暮れていた。
幼い頃からBigFireに乗る訓練を積むのが当たり前となっている環境下にて訓練課程を終えていた少女は、遅かれ早かれ戦いに出ることになっていた。(その辺りのことはだいたい覚えていた)
だから少女は約三年前、試作機から自機に昇格したばかり、名前も与えたばかりのBigFireにありったけの荷物と金を詰めて、置き手紙だけを残して星域を出たのだ。
戦いの中を飛ぶことが、何か大きなものを背負って飛ぶことが怖かったから]
―― 空 ――
[私は空を回る。空を駆ける。
そうして、修復の様子をチェックした]
[新しいマリアとの接続は問題ない。
経験と学習が足りないので、前のマリアよりは少し反応が鈍いし、知覚領域も狭いが問題はない。兵装は復活している]
[ブレス用の熱の充填も、フルとはいかないまでも半分と少しまでは回復している。私自身の損耗率のチェックに移る]
[翼は重点的に修復されていた。
動かすと筋肉に少し固いような違和感は残るが、機動に支障はない。その分、胴体や手足のダメージがまだかなり残っていた。深刻な内部障害はほぼ回復したが、左足は動かないし、尾も満足に動かないためバランスを取るのが難しい。もちろん、防御力は大幅に下がったままだった]
(……想定の範囲内だ)
[マリアは胸元の端末で、残った機体のリストを呼び出す。
私達3人と、あの厄介なクヴォルフォリア。
シルバーコレクターに、アンギャルド]
『もう、たった6機』
[マリアが呟くと、私は身を翻してアンギャルドのピット上空を旋回した。その機体の発進を待つ]
[逃げたくて、震えそうな翼を無理矢理抑えながら。
ここで逃げたら、私は私でなくなってしまう。
ピットインで、新しいマリアにどんなプログラムが仕込まれているか分からない]
[そうしてずっと、大きなものを背負わずに飛んできた。
今までそうやって飛んで行けたのだから、これからもそうやって飛んでいけるだろうし、今さら新たに何かを背負って飛んだならば、背負ったものの重さで速度が鈍る。そんな気がしている。
だけどここまで勝ち残ってきた面々は、傷つきながらも、何かを背負って飛び続けようとしている。背負ったものを離さずに――再び、空にある戦いの舞台へと上がろうとしている]
[ピットで見つめていた黒いのに気が付く]
なんだ、前の黒いのじゃないか。どうした?私にコア破壊の事でも聞きに来たのか?
[黒いの、ユージーンが空域の変化を知らな、興味の無いはずはないだろう。多分見ているし、傍目から見ればどう見てもコア破壊の犯人であるだろう]
満足か?……正しい事をしている立場から間違った人を見下ろすのは。
私はあの時、墜落する見込みでいたさ。……だが、コアに墜落しそうになったら誰かを巻き添えにしろとかが組まれていたんだろうな。
そこでマシマが撃墜された。
私はそうしてまで生き延びるつもりではなかったが、結果としてそうなった以上、責任は取るべきなんだろう。
「了解。時間内で解決してみる。
計算にも協力するよ。何たってボクは――…」
お喋りはそこまでだ。
さ、やるぞ。
「うん。」
[BFF・アームズラックの損壊箇所の修理の為、グレンはピットの隅にあるボタンを押す。ピット内の重厚な壁の中から、格納されていた修理用設備が現れた。ピット内部の色とほぼ同一で無骨で耐性を重視したデザインだが、幅広い用途に使用出来る。
設備上部には稼動式レールが付いており、各ブースに移動出来るが大半は自社用の設備を使っている事か。
リトルアースの所まで引っ張ってきた後、リトルアースを中心に三面を占めるような位置に設置し、幾つかの機能調整を行う。まるで、潰えた技術を知っているかのように。
ライム色の光をラインの筋に灯らせていた設備は、やがて、リトルアースのカラーと同じように、青と白の光に満ちる。]
これが修復設備だが、他に何か必要なものは?
[ピン、と帽子の前を弾き、グレンはニーナに笑いかけた。]
偶然もあったとは言え、こういう事になったのはBFへの裏切りになるんだろうな。
……だから私は今回で空から降りる。
[本当ならば秘密にしておいても良い事を最初に会い悪印象を持っていたユージーンに話したのはナサニエルの中で何かがあったのだろう。
今回の件はそれだけの物だったのだ]
[ナサニエルの返答に、呆れたような表情になる]
こうまで胸糞悪くなる言い訳を聞く事になるとはな。
だからあんたは万年二位なんだよ。
…甘いな。
別に悪い事をしていると俺は思ってはいない。
俺がここに来たのは、ナサニエル、あんたが倒すべきような相手かどうか見に来ただけだ。
けれど、とんだ腑抜けだったようだ。
[やはり一番の敵は、マリアか
そう呟いて、男はそのままナサニエルのピットを離れようとする]
あと一つ。
あいつの事情も知らないで、勝手にあいつだけを悪者にして、楽しいか?
[通信の向こう側にいて、対立を宣言され、かつ攻撃もされたシュウではあるが、一応相手は女の子だし、味方のいない光景にどこか引っ掛かる物があった]
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