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―西空域、中層―
[体当たりの衝撃は、軽度だった。
だが烏羽の全翼のほうは、無理にsunshowerに突っ込んだのと、ブラックボックスからのオーバーフローに機体がついていっていないようだ。
吹っ飛んでいくアルトキュムラスに追撃をかけようと、男はトリガーを引く。
光が目に眩んでも、その機体反応はナノアイで掴んでいる。
男は、烏羽の全翼が一部rainstormに巻き込まれようと、カノンを放とうと、した。
そのとき。
せかいは、あかくそまった]
な、なんだとー。
[男は、光に包まれた]
[ガクン、と身が浮く。落ちているのだ]
起きて、動いて、スネイルネン!!
まだ…クロノさんが空に居るのに…!!!
[左側のパネルを何度も叩き、右側のパネルを何度も弾き。空を見上げようとして何も見えない事に気付く]
[男は、数秒、いや感覚だともっと気を失っていたように思った。
その気を失っている間に、聞こえた声。
それはクヴォルから発せられた音か。
それとも、堕ちたメテログラフトの響きか。
男はわからなかった]
クッ…
なんだ、今のひかりは。
[閃光弾とは違う、ひかり]
チッッ
話を聞かせろ。
[男はトリガーを引く。しかし死仮面の口、カノンの発射口から出た黒い光は、アルトキュムラスを引き寄せる。
男は傷ついた烏羽の翼で、牽引しながら西のピットを目指した]
[赤い光は暫くするとアルトキュムラスの中に吸い込まれるように、消えた。
その光を見たものは他にもいたかもしれない。
光に包まれてる間、外部からの干渉をまったく受けないことに気付いたのは
光が消えた後、弾幕の破弾が降りかかってきたとき。
ロジャーは不思議そうに何度も右手の掌を開いたり握ったりしてみた。]
うーーーーーーん
あっ、おじさん!!!!!!
今の見た?見たーーーーーー?
[通信はオープンのままだ。
舌うちが聞こえた。
ロジャーは目を丸くしたまま、興奮して思わず話しかけた。]
[くん、とカノンに引き寄せられる。
アルトキュムラスはゆらゆらしながら、西のピットへ*導かれる*]
[男は、機体の速度が会場に来た時の速度より出ていない事に、苛立った。
あの不思議な光はなんだったのか。
男にはわからない。そしてこの胸にうちにあるものも何なのか]
チーフ、西ピットに至急来てください。
[男は、追尾してくるBFがいないか、警戒をしながら西のピットへと向かった**]
スネイルネンが……ぁうっ!!
[クロノから聞いた、コアを止めるという事がどういう事なのかを今身を以って知った。
フィールドバリアに受け止められても、しばらくの間は操縦席から動かなかった]
つ…バリアに、落ちたのかしら…。
スネイルネン、もう聞こえないかも知れないけど。
ううん、きっと聞こえているわ…だから聞いて。
私の我侭をずっと聞いてくれて、ありがとう。
[身を起こし、座席後部へと這って行く。
そっと核の納められている箇所を撫でた]
聞いた?クロノさん、もう一度あなたに乗せろって。
だから、また一緒に空へ行きましょう?ロジャーくんとも約束しているんだから。
行けるわよね。
このままなんて、嫌…。
[核のある座席後部分に縋り付いて語る。涙声は止まらない]
ふぅむ。これはユージーン殿の霊能者COと見てよいのでありましょうか。
ウィリアムさんの使っていた『クローズド回線』がシャノン殿との共鳴のことで間違っていないとするならば、残る灰は…なさにーにーとマッシマー殿?
共食いはあり設定でしたか…いえ、ありだとしてもシャーロット殿の動き方はシュウさんとつながりがあるようには考えにくいものでしたし…
ふぅむ。
問題は。
現状灰の方々と、占いが使えるほどの接点を、今までに作れなかったことでありますな!!
…どうしよ。
―― 南エリア/中層 ――
[発狂弾幕。]
≪カ・エディーリの歯車…
カ・エディーリ。その言葉が何なのか知っているか?≫
[静かな声。クローズドチャンネルに流れる。知らない事を知りながら、知らないだろうと思いながら、クロノは続ける。]
≪それはかつて、ラントに居た科学者、
ミミ=カ・エディーリアト…。
歯車を組み合わせる事により様々な形状のエネルギー弾を放つ機構を発明した科学者の名を縮めたものだ。
その他、ラントの基礎科学を全て作り上げたのも、
ミミ=カ・エディーリアト。
その為、ラントでは、「カ・エディーリの父」と呼ばれていた。
「ClockWorks.rant」、
ラント語では、「カ・エディーリ」、と言う。≫
[クロノは、静かにクローズドチャンネルに言葉を紡ぎ続ける。]
[白く描かれた光球に色彩が宿る。
赤と橙、黄色が入り混じり、どくん、と脈動した。
それは変光星の迎える断末魔か――光球の周囲に数十個の光弾が出現、全方位に向けて放たれた。
供給は止むことなく、次々と連なって直線状の壁を構成。
受け止めようなどと考える余裕すら無い]
っ、無理、避けて――離れるしか、これ、
……っ!!
[さらに弾幕の種類が加わる。
小型の弾が幾重にも、曲線を描く軌道で撒き散らされた。
遠方から見たそれは、あたかもヒマワリの種子を模したような形を描いていた。フィボナッチ数列。
弾幕を生み出す数式に基づいた安全圏を、しかし探し出すことは不可能だった]
密度が、濃すぎて、――!
[盾状に変化させたフィールドを次々と食い破っていく弾幕。
左右から吹き付ける豪雨のような光球の中。
被弾箇所は多数、警告音が止む様子もない]
[眼下では、天球に加勢する蝸牛がレーザーの雨を降らせ、黒騎士が大樹を生む。
天球が放つ弾幕はいよいよ以って激しさを増し、傷ついた機体と水晶竜は、そばにいるだけでも持ち堪えるのは困難だ。
これでは、あるいは切り札を切ったところで切り抜けられるかどうか…]
…シャノン殿!
貴殿の意思を問います! 僚機であるならば小官の後ろへ!
[いつか、格納庫で出会い、紹介された機体。それ以上のものではなかったし、ウィリアムとクローズド回線でなにかを話していたことも知らない。ただ、先ほどウィルアトゥワがその後ろに隠れようとしたような挙動を見れば、共闘の余地はあるように思えた]
…弾幕の相殺を小官とウィリーさんの火炎で行い、シャノン殿には後方からの火力支援をお願いしたく思うのでありますが…
[ウィリーとシャノンの意思を問うようにそれぞれに提案する。…現状思いつく中では最善。とはいえ、自分の機体は万全に程遠い状態だったし、ウィリーもここに至るまで火炎を加減なく使っていた。見ればシャノンも機体に小さくない損傷を負っている。
現状を切り抜けることだけを考えても分の悪い賭けだったが…]
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