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――北東エリア→中央エリア・低空――
[到来した黒色のビームは闇霧に呑まれ、消散していく。影の中に紛れ、少女は機体を方向転換。『ファフニール』の攻撃圏から全速力で脱出する]
……なんだか、相性悪そう、あれとは。
他の誰か、共闘できる人とか居れば、いいんだけど。
――コクピット内――
[中央エリアへと『アンギャルド』を駆る少女に、その内心でもうひとつの声が呟いた]
――使ってしまえば、いいのに。
あれも――というより、他のどの機も、ターゲットなのだから。
優勝するためには、他の機体すべてが撃墜されなければならない。「マシマさん」が言ってた通り、でしょう?
それとも――誰かが数を減らしてくれるのを待ってるつもり?
“あたし”は?
何というファンタジックな機体。
そろそろ、クロノは墜ちた方が良いよな。
気合と勇気と、近接武器があれば大体破壊出来るんだぜ!
―東空域―
[アルトキュムラスを追っている最中、北東から中央に横切る機体を見つける。
漆黒と、黒の機体]
黒ばっかりは、気に喰わないな。
[男は機体を反転させ、光を収束させる。
黒竜と漆黒の騎士、二人を分断させるような光の弾の流れを打ち出す]
ヴォルレイ、シュート。
[チャージ弾を含めた弾幕が、二つの機体が競り合っている空域に向かう]
[シュウの通信には、とりあえずは納得したというように返す]
……なるほど。この通信も、この機体も、設計書も見なかった事にしておく、という事か。
わかった、内緒にしておこう。
何、私も口が軽い人間ではない。黙っていて欲しいと言われた事に対して他言はしないさ。
おい、そこのお前。
我が物顔でのさばっていられるのも、そこまでだ。
[光弾は、一部黒竜の尻尾を掠めるも、新手に気付いた黒竜が暗黒のブレスをこちらにもしかけてきた。
黒竜に向けた光弾が、欠き消えていく。
『その程度の光、呑み込んでくれる!』
男はそれに驚かず、さらにブラスターを叩き込んだ]
ブラスター、散射。
[夜の帳が、その火で照らされるように、霧散していく。
それもつかの間。
『ハッ――烏ごときが、堕ちろ!』
夜の帳が開けたところから、黒竜が突っ込んでその獰猛な爪を突きたてようとする]
[シュウが優勝したいと考えていた理由を教えてくれたことについては少々意外であった。通信絡みのやりとりで秘密主義を貫いているとも考えたがそうではなく、機体に関しての事を知られたくないのかもしれない、と思う]
優勝か……。
君にどんな事情があるにしても、そこに関しては簡単に優勝を譲る、とは言えないな。
出来る事があるとすれば、私が他の機体を落とし続ける事、ただそれだけだ。……こういうのはどうだろう。二人で手を組み他の機を落としていき、君と私とで最後の二機になるようにする。
最後の二機になったら……その先は遠慮せずに撃ち合う。君が勝てば優勝杯は君の物だし、私が勝てば優勝杯は私のものとなる。
もちろん、この機体や何かの秘密は他には口にしないし、BFについても「この機体には危険な欠陥があった」と言って破棄する。
もっともどうしても私を信じられないようであれば、君の言うように真っ先に私を狙っても構わない。
…ふんっ。
なにをバカな。
ピィピィ泣いていたのはそちらの部下殿でありましょう?
[睨みつけた敵機から、嘲る笑い声が届く>>24。その言葉はどこか的外れで、かえって戦意を奮い立たせてくれたけれど、返した言葉は内心の憔悴を映したように普段よりもいささか辛らつな言い方になった。
でも、今はこのくらいがちょうどいい。憎み憎まれているくらいがちょうどいい。そうすれば、目の前の戦いに集中できるだろうから―――
そう。BF戦闘ならば怖くないのだ。自分と、フヅキと、リトルアースがあれば、どんな戦況も切り抜けることはできると信じられる。
でも、“アレ”はダメだ。“アレ”はそんなこちらの自信も思想も思考も全部一緒くたに薙ぎ払って刈り取ってそしてその先にあるのはあああダメだこわいこわいこわいアレはダメだダメだあんなものがあってはならないそれが叶わないならいますぐここからにげ―――]
――中央エリア・低空→中空――
[機体の後方に、東から迫る光弾の群れを感知。回避警告は無し。ターゲットロックされてはいない様子。旋回しつつ、少女は高度を上げた]
――今の。狙ってきて、ないよね。
[華々しく飛び交う弾幕のこぼれ弾を自動回避させつつ、周辺空域の戦闘状況をチェック。仮設AIが最優先で戦術目標としているのは変わらず、『ファフニール』の姿]
『ニーナ、頑張って』
[その時、また聞こえた、声。明るく、励ますような響きを持って、こちらの耳を打った。
―――先ほど垣間見た情報が真実なら、その声も、フィルターがかけられたものかもしれない。第一、相手は、マリアは、ウィリーは、『―――』は、こちらがそれを盗み見たことさえ知らないのだ。励ましを、そのまま受け入れるのは、あまりに虫のいい話だと思う。
でも―――それでも、その一言が、重く圧し掛かっていた何かを打ち払ってくれたのは、たしかだった。
ぎゅっと、一度、瞑目して、瞳に溜まった水気を払う]
……ありがとうございます。………―――殿。
[固有回線を使っていながら、なお大事な秘密のように、小さな声で呟いた。
それは、縮めれば『ウィリー』という呼び名となる、男性の名前。それで、先ほど垣間見たものがなんだったのか、相手には伝わるだろう。
そこにあったのは、決して恐れるべき…あるいは憎むべき情報などではなく、けれど、決して不用意に踏み荒らしていいものでもないはずだった。ならば、それを知ってしまった自分はどうするべきであるのか。まだ、分からない。
けれど、分からないからこそ、分からないまま、ここで負けて落ちてしまうわけにはいかない]
…フヅキ、弾幕兵装乙・丙連結。
リミテッドコード・ムーンエイジ 出力充填開始。
同時に敵弾幕を解析して回避行動の補助を願うであります…。
[覚めた思考で機械的に指示を下していく。見たところ弾幕の密度こそ濃いがその軌道は直線的で、しっかりと見ていればリトルアース本来の機動力だけでもかわしきれる。むしろ低速の機動力と小さな機体のリトルアースのほうが、機動力の高い戦闘機型BFよりも回避しやすいだろう]
(…45…50…60…)
[一つ一つ光弾を交わし、フヅキの警告に従い側面からの反射レーザーをかいくぐりながら、バイザーに映った出力の高まりを確認する―――]
――中央エリア・中空――
[拡大ウィンドウが追加され、新たな戦術要素が表示される。格納庫で見ていた機体。クヴォルフィリア、黒い全翼機の姿]
助けて――くれた、んじゃないよね、まさか。
[彼の機体の動向から意図を察しようとしつつ、辛辣な雰囲気をその身に漂わせた青年の姿を思い浮かべた]
[黒翼の大烏と暗黒竜。絡み合いながら戦う様子を見、少女は小さな笑みを唇に浮かべた]
でも、――結果的にそうなら、それでいいじゃない?
ユージーン、加勢、するよ!
[無論、経緯としてはその反対の状況ではあるが。背に纏った外套から、細く収束したレーザーを発射、黒竜の動きを牽制しつつ接近を試みた]
課長代理 マシマは、シルバーコレクター ナサニエル・ウエクサ を投票先に選びました。
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