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[保留通信の展開と共に、頭痛は引いていった。それでも少女はどこか、痛みを堪えるような表情のままだった]
私は、シュウ。
“プレイヤー”の一人。
……今ではもう、生きているのは私だけ、かもしれないけど。
[気持ちを落ち着けようとするかのように、暫くの間を置いた]
あなたはどうして、この回線に接続できたの?
“これ”が何なのか、知っているの?
/*
“プレイヤー”は実は日本語上のトリックという。
英語にすれば
×PLAYER(競技者) ○PRAYER(祈祷者)
の想定。
[もう一つの回線の向こうから聞こえてきたのは、少女の声。今まで姿を見てきた参加者の物とは違う。少なくとも格納庫での直接のやり取りは無かった者だ]
ああ、私はナサニエル・ウエクサだが。
お嬢さん、あなたのお名前は。同じBFの大会に参加していて、かつこの回線で繋がりがあるとなれば、名前くらいは知っておかないとと思って。
そして単刀直入に聞くが、この回線は一体何のための物なんだ?
[彼女の言葉に、「友軍」という言葉があるのが気にかかった。彼女は何か、どこかで戦っていたのだろうか。それも一人で。それを推測させるには十分である。]
シュウ、か。いい名前だな。
[次に続いた言葉は、さらに興味を引く物だったが、まず彼女の質問に答えるのが先だ]
回線に接続できた訳か。通常の回線とは異なるスイッチが偶然用意されていたから、としか言いようが無い。
少なくとも、前にロボット達に見てもらった時はそんな事は無かったはずなんだが……。
だから、これが何であるかも全くわからない。
[自宅のテレビモニターの前で息子がかぶりつくように見ているのは、きっとアーネストが捕らえた映像。
いつの間にか黒い烏の上に身を翻していた赤き狼。
鋼の白鳥は、更に上から急降下をかける!]
/*
>>*10
もしかして、って思ってたけれどこのナサニエル、設定的に襲撃能力なくない?
LWあたし決定っぽいふいんきをひしひしと感じるの。
私からはもう一つ質問がある。
……プレイヤー、とは何だ?BFのプレイヤー、という意味では無い事は察しているよ。
そうならば、生きているのは私だけかもしれないなんて言葉は出ないだろう?
[生きているのは私だけかもしれない、という言葉に何やらナサニエルの中に感じる部分があった。
自分も生まれた時から一人で、父親や母親の顔は知らない。そこから一人で生き、そこそこ遊んで暮らせる程度の財産を持つようにはなったが、何故自分には家族がいないのか、と考える事もたまにある]
―― 戦闘空域/南西エリア/上限高度域 ――
第二陣。
[更に間髪をいれず。
次は、メテログラフトの前に赤い光が現れる。
中央エリア/高層…ゴードンに群がる機体達に向け、赤い光弾の粒が、クロノの機体から見てXを描くように二度放たれた。
勿論、交差する点にはゴードンの*機体がある。*]
[回復した周囲の映像を確認しつつ、ナサニエルの反応を観察する。詳しい事情までは知らないようだ、と少女は考えた]
単刀直入に、というなら――BigFireを停止させるため、よ。
正確にはその為の作戦に用いる秘匿通信だけれど。
[GalacticAssembly社が研究・開発していたNBXシリーズ。
五機までが製造されたその機体には、BFの“核(コア)”に対する特殊な干渉能力が付与されていた。同型機と指揮所の間で交わされる秘匿回線。その一つに、青年の姿が映っていた]
[あの青年には「わざわざどうもでした」くらいは言った方がいいだろう。無論大会が終わった後で、だが。
さて。少女は今ホログラムペーパーに戦闘空域付近の見取り図を映している。
戦闘空域をぐるりと取り囲むように客席型BigFireが並ぶ他、観戦スタンドが東西南北に一箇所ずつ用意されている]
そのうち南の観戦スタンドは実況・解説の人が入っていて一般人の入場が一部制限されている、と……。どこにいるんだろ。あの飲んだくれのおっさんのことだから客席でおとなしくしているとは思えないんだけど……っていうか客席にいたら身を乗り出しすぎてうっかり落ち……いやさすがにそれはないか。
[お手伝いモードが抜けた口調で独り言をつぶやく少女]
一回連絡入れてみましょうか……
[その間にも小型モニターにはめまぐるしく変化する空の状況が刻一刻と映し出されていた。
映し出されるのは漆黒の機体と赤い機体(>>85)――]
[ふと、外に漆黒の騎士型のBFが見えた。
それがこの回線の向こうにいる少女の物だとは知らないが、そこに思い出すものがあった]
……あれは、あの実験惑星で作られていた物だ、な。
20年前に、事故で惑星自体が廃棄されたダレイオスIIIの。
……いい名前? そう。
私の本当の名前かどうかもわからないのに。
[棘を含んだ言葉を呟き、ナサニエルの答えに首を傾げた]
……偶然? そうなのかしら。
私には、何かの手が関わってるようにしか思えないわ。
本当に、わからないの?
―中央空域上限高度―
…しぶといでありますなぁ…
[上空からのレーザー雨も難なくかいくぐり、下方からの滝のような弾幕をいなしていく赤い機体に、感心を通り越して呆れたような声。中には近接戦闘を仕掛ける気もいるようだが、なかなか決定打には至らないようだ。
その間にも、メテオシャワーのコードは実行され、順調に小型機をなぎ払っていたのだが。
パイロットスーツに内蔵されたアラームが、視界外からの大量弾幕を感知した旨を知らせる。バイザーに表示された『それ』に向き直り]
…んー…相手している余裕は…
[ちらりと各兵装稼動限界の表示に目を向ける。結論。無理]
…ないでありますな。
少々大盤振る舞いが過ぎたであります。
[もっとも、最初から大盤振る舞いせねばゴードンを落とせない、という判断からだったのだが…結果として、それは功を奏したわけでもなさそうで]
ひとまずおさらばであります!
フヅキ、コードをスターリィスカイに移行、スターダストは格納して待機、出力をコメットに!
[同時にピットの位置を検索…近いのは、2(4)4(4)(1:北 2:南 3:東 4:西) 3(3)(1:上層 2:中層 3:下層)だろうか]
『武器フチョウ スグ帰ル』
[そんな短い文章を、余裕があるときに閲覧できる保留メッセージとして送信すると、機体下方に戻ったコメットの噴射により、南西から放たれた弾幕が追いつくよりもなお早く、ピットにすっ飛んで行った]
[その赤が刻まれる刹那。
男はトリガーを引いた。
――大気が、蠢いた。
ゴードンの近くに居合わせた機体は聞いただろうか。
亡霊の呻き声のような、金切り音が]
…シュート!
[男は、その低い声で強く音を発した。
赤い機体は何かを感じ取ったのだろう。爪先を翻して、それの方向を逸らす。
その後に、赤黒い軸線が、西の空を凪いだ。
赤い三つ爪の一つが、被弾し、ひしゃげていく。
そのまま赤い機体は距離を取り、烏羽の全翼は下へと降下していった]
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