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………………………んっ?
[気づけば妖魔は其処に居た。生きた人の目には、その姿は映ることは無いだろう]
何処だ、ここは。
[ぼけっとしながら辺りを見渡す]
ああ、水車小屋か。
[死人や人外の者には辛うじて彼の姿が見えたかもしれない。
その化物は先ほどまでの名残なのか「イヴァン」と呼ばれる青年の格好をしていたけれど、それは当人にとっては比較的どうでも良いことらしかった。
だって、何も覚えていない]
[宿の中へと足を進めると、寝台に横たわり冷たくなっている少女の亡骸を見つけた]
おや、誰か死んでる。
[まるで初めて其れを見つけたという風に呟いて、覗きこむ]
―――――――…おやすみなさい。
[声に悲しみの色は無く。にこりと笑って、ただ、そう告げた**]
/*
おはようさん。
やっぱり勝手に心臓と止まっていいかなぁ。
▲▼どちらでも対応できるようにせっかく病死フラグたてたし。
狼さんにおまかせするけども〜。
[暗闇に閉ざされゆく眼差しは、けれどかつてイヴァンだった妖魔の、崩れゆくその様をしかと見届ける]
…イヴァン…どうして。
[彼は何者だったのか、本物とはどういうことだったのか…混乱ばかりが頭を渦巻いた]
あ、あつめなきゃ…。
[そのイヴァンだったものの欠片さえ無くなってしまうのは耐え難いことのように思えた。
彼女自身がそうであるから]
ミハイルさんに…。
[オリガの死は未だ知らず、けれど寝込んでいた彼女に知らせる気にはなれなかった。
届けなきゃという想いだけで、床に手を突くようにして砂粒に近づいたなら、持ち合わせていた真新しいリネンにかき集める――。
それは数日前に仕上げたばかりの死と再生の意匠――右上から始まる黒糸と銀糸の絡まる枠組みは下へと延びて底辺を這って左下へと至り、左下には地塗れた長い鎌、絡まる蔦、蔦は上方へと延びて右上へ――終着には蔦の葉からしたたりおちそうな一粒の水滴]
[一粒もこぼさないように丁寧に集めて――それでも手からこぼれ落ちてしまっただろうけれど――ミハイルの部屋の扉を叩く…力なく]
ミハイルさん…。
[男はどんな表情を見せたのだろうか、彼女に知るすべはなく、またその余裕もない。
イヴァンであったものを差しだし、震える声で告げる]
ほんものだって、よかったねって、イヴァンは…、どうして…。
[支離滅裂な言葉は相手に届いただろうか。
己がかつてイヴァンであったものに死を突きつけたことだけは、どうしようもなく理解していた]
/*
ミーシャにぽい投げしてよるきますノシ
やたら刺繍柄が詳細なのはせっかくさいころ振って考えてたのにってだけで意味はない!
[扉を開ければ、そこには。]
…………
[イヴァンだったものを、差し出す娘。]
[真新しいリネンに包まれたそれを、震える手から。]
[取りあげる。]
…………人間だった。
[やがて。]
[支離滅裂な言葉を紡ぎだした、彼女の声を。]
[遮るように。]
あいつは、人間だった。
[見つめる灰の瞳は、氷のように。]
[無理矢理に彼女の細い顎を掴み。]
[上を向かせ。顔を近づける。]
[たとえでなく。
眼と眼がぶつかりそうな、ほどに。]
……おまえも、おおかみと、おなじだな。
[ゆっくりと。]
[静かに。]
[言葉を、紡いだ。]
[彼女の反応もろくに見ずに。突き放すように、手をどかし。]
[扉を、閉めた。]
…………あー。
[そのまま、扉に凭れるように。座り込み。]
[ぐしゃり、と。髪を掻きあげ、息を吐く。]
[わかってる。]
[これは、ただの。やつあたり。]
[それでも、なにかが。]
[自分のなかで、ぶっつりと。]
[切れてしまった。]
[空腹を満たした後眠りに着いていた女は、薄らとその眸を開ける。
身を起こし、極上のワインの様な血肉の豊潤な甘さを思い出し、
にぃ…っとその口端が弧を描いて]
……もうあたいを止められる者はいない。
邪魔な妖魔も、人が殺してくれたから。
[くすくす、くすくす。
弧を描く唇から、漏れ出る笑みが部屋の中に響いて]
此処は餌箱。
あたいと、この子の為に。
村長が用意してくれた、ね。
[下腹を一つ撫ぜ、二つ撫ぜ。
母の顔で歌うように呟いて]
……さあ、ぼうや。
お前の為に、今日はたくさんご馳走を作ろうね。
[女の相貌が紅く血の色に変貌する。
どくん、どくん……と、
胎の中から。
新たなる餌を求める子供の脈動を聞きながら]
さあ――狩りの始まりだよ。
[ゆらりと寝台から立ち上がると、
新しい餌を求めて女は部屋を後にした]
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