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[姉の部屋に閉じこもったまま、いつもサーシャのいた窓際から外を眺める。
マーシャと愛しげに呼びかけててくれる、声が、聞こえた気がした――]
姉さん、どこ…。
[いつしかそのまま夜はふけて――]
― 第一幕・了 ―
―昨日・夜の村道―
[霧がかり暗闇に覆われた村道。けれど歩む足取りは慣れたもので、迷いは無い]
人狼、か……。
[ぼそりと呟く。ミハイルは、確かに「いる」と言っていた。そしてそれは、間違いのないことだと思う。
何故なら]
……………………。
[ふと足をとめた。
いつの間にか青年の周りを取り囲むように、動物の群れが輪をなしている。何かを訴えるように、まるで通せんぼするみたいに、動かない。無数の瞳は、青年の姿をした何かを見つめている]
森におかえり。僕は大丈夫。
人狼なんかに、やられたりはしないから。
[あくまで穏やかに告げる。その言葉に嘘は無い。
冷たい風が吹き抜けて、コートの首元に仕舞っていたマフラーが外れて靡いた]
[やがて観念したように、青年を囲んでいた気配が還っていく。其れを何処か遠い目で見守りながら、ぼんやりと思う]
(………別の何かに、殺されてしまうかもしれないけどね)
[一度顔を伏せ、再び歩き出す]
(それでも、「あの子」は宿に居続けるのだろうから)
[やはり足取りに、迷いは無く]
(だったら僕は、彼女のそばに居たい)
[転々とした足跡は、宿へとまっすぐ伸びて行った**]
サーシャは、イライダのために――。 ( B17 )
/*
イヴァン妖魔CO確認。
サーシャ求婚者の目もあるのか、占い師なのか。
しかし、このままだと占い師のお仕事終了してしまいますね。
人狼(呪狼、智狼):フィグネリア、ナタリー 囁き狂人:ロラン
占い師:? 霊能者:ミハイル 妖魔:イヴァン 聖痕者:?
求婚者:(ウートラ)、? 照坊主:?
*/
"居る事になった者"に対して、俺から簡単な話をしておく。
[外からの人が消え、亡骸が運び出され、宿の扉が閉ざされた後、
人が集まれば、...は予め決められていた事のように話し出す]
本当に人狼の襲撃か、それに見せかけた殺人かはわからない。
[実際は"いる"のだろう。最初から老父の様子は
ロランよりも詳しく識っているようだった]
アナスタシアがここで人狼に食べられたように殺された。
俺たちが泊まっているこの宿で。
[虚しさと莫迦らしいを意識の底に沈めながら、口を開く]
村の方ではこの宿にいた俺たちと、
第一発見者のミハイルの中に人狼がいると看做すことにした。
村の全員を人狼容疑者にする訳にはいかない、そんな判断だろう。
(元々、その為に集められたのだから――)
既に村の者は、俺達を人狼容疑をかけられた
可愛そうな被害者ではなく、
自分達まで容疑者、被害者にしかねない災厄と見ている。
[村人個人個人の内心はどうあれ、
過激で軽率で無責任な声ほど大きくなるし、
煽動する者が存在すれば当然勢いはそちらに流される]
俺たちの中から人狼を見つけるまでは、
宿の外には出られないと思ってくれていい。
無理に出たら恐らく――
宿の外に居る皆は、昨日までの村の皆とは別人となり、
その者は人狼として扱われ、命はないと覚悟してくれ。
[噂に踊らされ、人が死ぬ。疑う事で、人が死ぬ。
どこにでもある話だった。
それがこの村でも行われるだけに過ぎない]
俺たちに与えられた時間はあまりないと思ってくれ。
人狼を見つけられずに長引いた場合、
この宿ごと、火をかけることが検討されている。
[判断するのが父だけならば、今日にも火をかけていることだろう。
薪を大量に用意させていたのは、最初からその心算もあったに違いない]
人狼と共に死ぬか、
人狼を見つけて生き残りに賭けるかは、
その方法も含めて、皆で考えて決めてくれ。
この事に関して、俺は主導的立場をとる気はない。
資格もないかもしれないしな。
[そう言ってから、少しだけ間を置いた]
怨むのなら、この状況でアナスタシアを殺した思慮のない者を怨め。
村を恨むなとは言わない。
ただ、生き延びたとしても死んだとしても村を、赦して欲しい。
これは俺の我侭だ。聞かなくても全く構わない。以上だ。
[これが最後の仕事だと、心の中で*区切りをつけて*]
[ロランの言葉に顔を上げる]
人狼を見つけたら?
一人?二人?それとも三人?
[皆殺しになるのを待っているとしか思えないと、告げる言葉尻は強く]
兄様、違いますか?
[続く言葉は、ふっと熱を失って]
(そう、恐らく父は知っている)
[直接ロランに「人狼の存在が認められそうな場合、ここの者を人柱として始末する予定だ」と最初から告げていたのだから。ロランを含めて]
(隠したいものが多いのは知っていたが、その中に人狼の存在そのものも含まれているとは思わなかったが)
[道理でと、自分が街で拒絶された友の亡骸を引き取る事すら許されなかったのかと理解する]
(人狼という言葉すら、消したかったのだろう。あの人は)
[結局、異郷の地でただ死んだとしか扱われず、人目を避けて、自分の手で密かに埋めることが妥協点だった]
(人狼と取引をしているなんて馬鹿な話はあるまい。
となれば、この村自体が末裔村であるとか、
人狼に関わる金にまつわる話だとか、
俺の知らない何かがあるのだろう。
調べる術はないが。それに興味もない)
[となれば今頃、別に集められているだろう従業員達もこれからどうなることか]
(関心が低かろうとも、自分の息子の命を「不満や、不公平感を与えぬ為」という理由だけで差し出せる人だ。仮にアナスタシアをこの村に置いていたのさえ、この日の為だったとしても驚きはしない)
この状況に焦るのは人間か、人狼か、それとも……。
[...は昏い悦びに浸る自分に、軽い嫌悪を覚えていた**]
[ロランの言葉に手を休める]
兄様、いったいどうやって終わりを判断するというのでしょう。
[静かに問いかけるが、あきらめの色は、ない**]
― 自室 ―
[天気が良くなっている事を期待しながら、昨晩は眠りについたけれど]
昨日より酷いわね
この、天気。
[窓の外で不安を誘う霧は。
まるで宿と外界を切り離しているかのよう。
ぼんやりと、昨日の事を思い出す]
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