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/*
あ、やっぱりダメか。
「人狼が餌食えなくて死んだ」ってことにするつもりだったから狂人と切り離せない。
でも自殺したようにみせかけても良かったのかも…。
まあいいや。
*/
―明け方―
[なんともなしに。]
[窓の外を眺める。]
[いや、目は向いているが、見てはいない。]
[濃く漂う霧の匂いに。]
[なにかが、混ざって。]
[ふと。]
[聞き覚えのある誰かと、よく似た声がすぐ傍に、居た。]
――――
[灰の眼を見開いて。]
[なにもないところを振り返る。]
[しばし瞬くのも忘れ。]
[そのまま。]
[やがて上着を羽織ると。家を出た。]
―宿―
[正面から入ると勤勉な従業員の姿が既にあっただろう。]
[が。そんなことはどうでもいいので、目に入っていない。]
[迷わず、ある部屋の前まで辿り着くと。]
[扉を、開けた。]
[驚きはしなかったが。]
[僅かに、顔を顰めた。]
[中を覗き込んだ従業員が奇声をあげるなり倒れるなりしたようだったが、どうでもいい。]
[静かに歩み寄ると。]
[事切れたアナスタシアの。]
[浮かべた、笑みを、じっと見つめ。]
[振り返り、部屋を出た。]
―食堂―
[そのうちに。警察なり役場の人間なりが、来るだろう。]
[適当な席に着くと。]
[手近にあった紙に、なにかを書きだす。]
[いや、書くというよりは。]
[なにかを、聞き取るような、動作。]
……ここに。
[そう云って、来た人間に渡したのは。]
[ここではないどこかの住所と、ここにいない誰かの名前。]
埋めてやってくれ。
[相手がどんな顔をしたか。それもまた、どうでもいい。]
[眩暈がした。]
[珍しく、付き合ったものだから。]
[どうやら、疲れたらしい。]
……はぁ。
[軽く、頭をおさえながら。]
[ソファまで移動すると。]
[そのまま、横になった。]
**
―自室→アナスタシアの部屋―
[誰かがあげた奇声に作業を止めて、部屋を出る。
さて、状況はどうなっていたのか、アナスタシアの部屋の前。
止めるまもなく扉を開く]
…アナスタシアさん?
[彼女の目には詳細は映らず、ただ赤と黒の色彩が飛び込んでくる。
ただ一カ所そこだけきれいなままの白いかんばせ]
…おやすみなさい。
[人狼がいることだけは、彼女は疑ってはいなかったから、この村にも確かにいたのだとストンと納得する。
先ほど仕上がったばかりで、おもわず握りしめてきたそれをアナスタシアの顔にそっとかける]
[一部は彼女の血に染まる]
ごめんなさい、真っ白なものの方がいいのでしょうけれど。
[未だ彼女がそこにいるかのように語りかける。
アナスタシアの顔を覆うのは暖かな土色の縁取り、緑の葉を茂らせた枝を左上にあしらい、右下には一輪の朱色の花の春の意匠のリネン]
受け取ってほしかったな。
[それは、彼女のために用意したものだった。
なぜと問われたなら曖昧に返しておいただろうけれど。
それほど接点があったわけではないが、どこか寂しげな彼女の印象が、頭を離れない。
――もたらされた死を悼む]
[死者のために、自分にできることがあるとは思わない。
積極的に騒ぎに加わろうとも思わない。
ただ、なにも知らずにいることはいやだった。
もしもミハイルが起きてきたなら、アナスタシアの思い出話でも問いかけたかもしれない]
[友人の血肉に胎の中の赤子が喜ぶのが判る。
そっと、下腹を撫ぜて。謳うは子守唄]
ねむれ、ねむれ……ははのみむねで
ねむれ、ねむれ……血肉を喰らって骨までしゃぶりつくして
……ふふふ。
あたいの可愛い子。ナースチャがそんなにお気に召したのかい?
さあ、今日は誰をお前のために喰らおうか。
誰が良いと、思う……?
[愛しげにさすりながら、
女は今日の獲物――<<ナタリー>>について考える]
同族食いはぱっとしないね。
変な物を食べれば、胃がおかしくなってしまうよ。
……悪食な子だね。
[ナタリーが自分と同じ存在である事は、
彼女から感じる人と違う気配で判っていた。
だけど自分から接触する事はない。
女が求めるのは同族ではなくて。
胎の子のための餌だけなのだから―――]
他の子で、我慢しておくれ。
そうそう、<<ドラガノフ>>なんてどうだい?
美味しそうだろう?
[部屋の中、ひそひそと。
子と語らう母の愉しげな声は、暫く続いていた*]
フィグネリアは、ドラガノフ を能力(襲う)の対象に選びました。
―回想―
[イヴァンが自室に下がるのにあわせて>>1:184上、彼女も腰を上げただろう。
あかされた話には少しも触れぬままに、どかぎここちない会話が交わされる]
ありがとう。
[部屋の前まで送ってくれた相手に礼を言う]
イヴァンも気をつけて、ね。
[一体なにを気をつければいいんだろうとは、彼女自身疑問だったけれど。
パタンと扉が閉まったなら、一つため息をついてベッドに倒れ込む。
しばらくするとのろのろと起きあがり、アナスタシアのための刺繍をほどこしはじめる。
どこか後ろめたさと、彼女の悲しみへの共感を込めて。
夜も更けたなら、眠りへと誘われる]
― 昨夜:ロストヴァ家・マリーヤside―
[ダークブラウンの髪に深い蒼の瞳の少女の両親へと詰め寄る声が響く]
姉さんが療養にいったなんて、やっぱり嘘!
昨日みたいにごまかされないんだから。
[宥める母親の言葉をはねのけるように]
…イヴァンもいないし、確かめた訳じゃないけどロラン兄さんの姿も見かけないわ。
[ロランの父親は閉鎖的で、直接確認にいっても相手にされないのは分かっていた]
こんな、人狼の噂が広がってるときに、おかしいじゃない。
ほかにも、姿が見えない人、いる。
[唇を噛みしめて、いらだちを押さえきれないかのようにくしゃくしゃと髪をかき回す]
[お前が気にする事じゃないとの父親の言葉には、きっとにらみつける]
…姉さんが心配じゃないの?
それでも親?
[糾弾する響きに懇願が混じる]
ねぇ、お願い、何か知ってるんでしょう?
[口をつぐむ両親の姿に、悔し涙が光る]
もう、いい。
[サーシャの部屋に飛び込むけれど、昨日ひっかき回した姉の部屋に手がかりはなく。
裁縫道具といった愛用の品が持ち出されていることから、自らの意志で出て行ったのだろうと、昨日は無理矢理自分を納得させたのだけれど]
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