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イライダ が参加しました。
イライダは、求婚者 を希望しました。
― 研究室 ―
[一軒の家。
階段を降りて地下室に降りれば、そこは先生が研究に使っていた部屋。
散乱する書類の一枚を拾い上げる。
何となしに、それに目を落としては]
これから、どうしよう。
[自分独りしか居ない、この部屋で。
自分にすら聞こえないような小声で、呟いた]
やっぱり、ここも片付けなきゃ、ダメよね。
[上の階。
先生が使っていた身の周りの物は、ある程度片付けた。
残るのは研究室に残る、これら。
書類と、高く積まれた本。
その本の間に、一つの写真が挟んであるのを見つけて。
ゆるりと頁を開く]
― 自宅→外 ―
[暫し揺り椅子の上でまどろんだ後、
閉じこもっていてばかりでは駄目だと。
水車小屋の方まで散歩へ出かける]
…………っ。
[季節は夏だと謂うのに、
身体を突き刺す様な冷たい風に身を竦めて。
ゆっくりゆっくり、転ばないように歩みを進める]
[暫し歩みを進めれば、その先に見えるのは凍れる水車。
氷に閉ざされた湖にて、死したように動かない水車は、
見るたびに不吉な予感を女の胸の裡に届ける]
――――…気のせいだと、判っていても。
あまりぞっとしないのよねえ、あれ。
[紅い眸で一瞥した後、
冷たい風に金の髪を嬲らせながら。
こんこん、と。宿屋の戸をノックした]
はぁい、アナスタシア。
相変わらず、辛気臭い顔してるのね。
[いつもの軽口を謂いながら中へ。
子供の頃からの知り合いである彼女とは、
こうして軽口を言い合うのが常となっていた。
何度も訪れ、勝ってしったる様でスツールに腰を下ろし]
ウォッカ…って謂いたいけれど……、
ミルクを頂戴。昼間からアルコホルは、この子に悪いものね。
[今まで友人に見せた事のない母親の顔で微笑み、
下腹をそっと撫ぜた]
[しばらくして、カウンターにことりと音を立てて、
置かれる湯気の上がるマグ。
それを手に取り、ふぅ…っと息を吹きかけながら]
はちみつの香りがする。
ふふ、あたいの好み覚えていてくれてたのね。
……スパシーバ。
[マグへ口を付ければ、
ミルクとはちみつの甘さが、女の凍えた身体を優しく温める]
……ん、甘い。
[マグの縁を親指の腹で一度拭った後]
で、そんな辛気臭い顔をしてどうしたの?
[と、女主人の顔を曇らせる理由について、
尋ねる様に紅い眸を向け*微笑んだ*]
[本に挟まれていた写真には、亡くなった父、自分。そして先生が写っている]
先生、何処に行ってしまったのかしら。
『研究で森に入ってしまったのだろう』
『森の奥深くまで入っては出て来れない』
『見つからないのだから、きっと森に行ってしまったのだろう』
[二週間も姿が見えなくなって、村の人々は口々にそう言う。
そうなのかもしれない。
違うのかもしれない]
[しん、と静まった研究室。
写真の端を、指でそっと撫ぜる]
……。
[先生は居なくなった。
だから、もう居ないけれど、死んでいるとは限らない。
今日も、ここにある物を片付けてはいけない気がして。
ぱたんと本を閉じると、積み上げてあった場所へ戻す]
ん。
[軽く息を吐いた所で、玄関のある方から呼ばれた気がして。
研究室の扉を鍵閉めて、階段をあがっていく]
『イライダ、これを』
私への、手紙?
ごくろうさま、ありがとう。
[村にいる配達係が手渡してくれた手紙。
それは「アナスタシアの宿へ」との趣旨が書かれた、役場からの手紙だった**]
― 村長邸 ―
[家に戻ると、暖炉のある居間では火の側でミリーツィヤ(警察)の人間と老父がなにやら深刻そうな表情で話をしていた。父は専ら聞き手に徹し、喋り続ける役人に対して時折頷くだけだった]
『小さくなったものだ』
[厳格な父。上の兄達は勉学の為、多大な援助を受け続けていたが、末の子である自分はただこうして眺めるだけの存在でしかない]
それでも――
『この村が嫌いなわけではない』
[あの日、共に村を出ないかと言ったアイツにも答えた言葉。一緒に村を出ていればどうなっていたのだろうか]
身勝手な噂と、無責任な想像力、疑念が都合の良い結論を急き立てる。
[異郷の地で首に痣をつけた友は、遺体であっても友のままだった。牙が伸びた跡もなく、鋭利な刃物で割かれた腹に人肉が詰まっている事もなかった]
くれぐれも無根拠な噂に対し、村人は軽挙妄動せず、各々留意されたし。
[必要とあらば村に廻す為の書状の下書きを書き終えると、文鎮を置き直して筆をおいた。後は父がこれを見て、注文をつけられてから清書すればいい。そもそも書状そのものすら出さない可能性も高い]
些細な事だ。そして
(どうでもいいことだった**)
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