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ー教会内ー
[そこにあるのは清浄な空気。
たとえそこに誰がいようとも、己にはその場所は懐かしく。
主の用件が済むまでは、聖壇の前に膝をついて
祈りを捧げることにした]
[何をするでもなく、何を探すでもなく、ゆっくりと町を歩く。
視察はとっくに飽きていた。
攻勢こそアサシンの持ち味。護り、迎え撃つ布陣を敷くべき場所などあるはずもなし。
ならば有利な地形も不利な地形を選出するのは、攻撃する相手を知ってから考えるべきだ。
そんな論理の末に、視察は道を覚えるためだけの散策と成り代わっていた]
―西ブロック・寺院―
[中央、東、南とある程度の探索を終えた。
最後に向かった西ブロック。
その寺院前で僅かながら、令呪が疼いた]
あらら、他のチームも探索してるってことか。
ファフ、敵だ。
マスター、サーヴァントかはわからないがこの先になんかいるよ。
[そこまでで言葉を止め、眼をファフに向ける。
視線に乗せた意味は、判断を委ねる。
今度は自らのサーヴァントを試す番だった]
天にいます我等の父や
願わくは汝の名は聖とせられ
汝の国は来たり
汝の旨は天に行わるるが如く地にも行われん
我が日用の糧を今日我等に与え給え
我等に債ある者を、我等、赦すが如く
我等の債を赦し給え
我等を誘いに導かず
なお我等を凶悪より救い給え
蓋、国と権能と光栄は汝に世々に帰す
気配遮断は苦手なりにできますが。
必要は無いのでしたね?
[マスターの言葉に、少し考えてから確認する。
そもそもこのマスターは魔力が外に漏れすぎている。令呪の知らせなど無くとも、魔術師ならば一目瞭然で異物と察知するだろう]
───。
[深く垂れた頭を持ち上げて立ち上がり
主のほうを見る。
どうやら話はまだ続いているらしい。
中立と言えどこの空気はひどく己に有利である。
それが発揮できないのはある意味、残念でもあった]
……。
[視線をじ、と向けたのは黒い髪の娘。
着ている服装に興味があった。
それから、先ほどちらりと垣間見ただけの男。
片目が布で隠れていたのを認めている]
(隻眼か…それとも)
[魔眼か何かの類なのだろうか。
しかし考察材料は自分の浅い考えでしかない。
もしもそれが事実であるなら、面倒だとは思えども]
その辺は任せる。
君が一番やりやすいようにやればいい。
みせてくれればいいよ、君の力をさ。
[戻ってきた返事は戦いを肯定するもの。
相変わらずの無表情だったが、どこか気分が高揚してるように見えた]
……。
[どうも、このマスターは好戦的なようだ。
一撃必殺。そんなものを求めるくせに、相手の調査もしようとしない]
……はあ。
[ため息に似た頷きをして、躊躇いもなく、その気配へと歩いて向かった。
自分でも感知できているから、その気配はサーヴァントだ]
(…外見だけではやはり無理、でしょうね)
[先ほどの一組も含めて。
相手のクラスを外見のみで判断する。
それはなかなか難しいことだと思う。
くるくると考えが頭の中で行き詰って、ため息に変わった]
――んー……。
[戦の機微など、知らずとも。
殺気を漲らせ、静寂な空気を揺るがす存在には、自然と気付く。
境内に繋がる石段の。最上段に掛けた腰を、ふわりと浮かす]
まだ陽の神が高くにおわすのに……来るのかなぁ。
来るのよね、たぶん――……タツオは、なんだか、手が離せないみたいだし。
[諦めたように、呟いて。翳した手には、青銅の穂先煌く鋭き槍]
――アイギス持つ大神ゼウスよ。
かつてクレタの都で数多の肥えた牛の腿を焼き、捧げたことを憶えておいでなら、私にご加護を。
[――幸いにして、地の利はある。
急な石段を、見下ろす位置で、迎え撃つかたち。
一本道の石段から外れれば、何が起こるか判らぬ異教の結界。
守りには申し分のない、地形ではあった]
[ファフはどうやら呆れているようだった。
意外と気難しいサーヴァントを引いてしまった様だ]
そう呆れるなよ……。
[返事は戻ってこない。
いよいよ、やばいかなと思いつつもファフの後ろを歩いた]
― 西ブロック・寺院入り口 ―
[石段を登り、そこにいたのは女性のサーヴァント。ずいぶんと華奢な外見。手に持つは槍。
ランサー。一瞬だけ脳裏をよぎったが、すぐに消した。
どのクラスかはあえて考えない。当たっても外れても、それは隙になる。
……バーサーカーだったら、少し面白いとは思った]
こんにちは。
[普通に会話するよりは、いくぶん離れた距離で立ち止まる。見上げるカタチ。見下ろされる立場。
相手の武器が長物ならば、分が悪いのは明白だった]
―― 中央/駅前 ――
[眩しく輝く太陽は天頂こそすぎたが夕刻というにはあまりに高い位置にあった。
その日差しから逃げるように建物の影に佇み、行き交う人々を眺める。]
また、平和げな世の中であるな。
[唇の端を持ち上げるようにして、芝居がかった笑みを浮かべる。]
―教会前―
[新たに現れた主従を視界に収める。
日の光の下、眩く輝くプラチナブロンド。
軽く言葉を投げかける者と、
ごく丁寧に頭を下げる黒衣の影。]
……――…、
歌劇?歌うのか。
[こちらの変換は間違っていなかった。
満面の笑顔を浮かべる青年と
妻(仮)の去っていく姿を見送る。]
…神代より在りし者も、
多く喚ばれているのだろうか。
[呟いた後、教会へ向かうという胡蝶に頷き、内へと足を進めた。
光に透けるステンドグラス。
鮮やかな色彩に目を細めた。]
[現れたのは。髪美しき少女と、剣呑な気配を漂わせた魔術師。
素気のない挨拶には、しかし、律義に応じて返す]
――こんにちは、可愛らしき英雄さん。
折角の訪いだけど、いま、ここは通せないの。
――まあ、一応、訊ねておくけれど。退く気は、あるかしら?
[――見るからにやる気に満ちた相手が、応じるとも思えなかったが]
もし、退いてくれないと。この槍を、贈ることになるんだけれど。
―西ブロック・寺院入り口―
[ファフの後を歩くのを辞めた。
山へと入り茂みを書き分けて進んだ。
こんなときにローブは便利だった……]
すこしは、マスターらしくなんか小細工でも考えないとね。
本当、殺されかねないし。
[本来ならば、常に魔力が漏れ出しているような自分が
隠れる意味等、まったくない。
魔力感知を収めているならば、すぐに気づくからだ]
ま、布石ってことだよね。
[だったら、なぜ隠れるか。
あえて隠れることにより、何か策があるのではないか?
そんな疑念を持たせるためである]
これではまたしても敵役ではないか。
[くつくつと笑い、呟く。]
いいだろう。
その方が性に合うというもの。
また筋書きを考えようではないか。
[頷き、一瞬だけ身を屈めれば。
路地裏の奥へと跳び、影に紛れて姿を消した。]
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