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――空港――
じゃあな。また会おう。
[笑顔で手を振るバートンに、こちらも笑みで応える。
出発口をくぐる彼の背中を見送った。静かに、弱々しく、手を下げる]
…………。
[もう笑みは消えていた。憂いを帯びた表情で、ぼんやりと辺りを見回す。
満面の笑みを見せて、親らしき大人に手を振る少女。握手を交わし、再開を誓い合う男女。
しんみりとした雰囲気の者達も勿論いたけれど、その場で泣きはらすような者はいない。
皆、別れに蹴りを付けてここにいるのだ]
[別に、バートンとはそれほど親しかったわけではない。
誰にでも親しく話す自分でさえ、すぐに転校が決まった彼とは休み時間などのちょっとした間でしか親交がなかった]
[それでも。
少し前まで普通に生活の一部を、居場所を共有していた者が去っていくことは、どうにも耐え難かった。
彼がいない空席を受け入れられるまでは、結構な時間がかかりそうだった。
何かが欠けるのは、とても、痛い。]
……どうしたら。
[その後の呟きは、声にはならなかった。言葉にすること自体が嫌だった。
どうしたら。どうすれば。
別れというものを、認められるのだろう]
[三つ編みを留める資門中のリボンは、心とは裏腹に、静かに静止していた。
「転校」について知るのは、まだずっと先のこと**]
ありがとう…。私もケインと一緒にいると、とっても落ち着く…。
そうだね…。ずっとこのままで、いたいね…。
[といってぎゅっと抱きしめると、その身をケインに預けけた]
[想像をはるかにこえたわがままに、しばし固まって。
ああだから名前を呼ばれなかったのか、とどこか冷静に納得して。]
ユト、なんか、…かわいいです
[くすくすと笑みを浮かべる。]
―某日―深夜
[普段のバーではない一見のバーに入る]
えっと…ブラッディー・バージ…
(いや、今日は多少アルコールが入ってもいいか)
ジンライム、ジンはボンベイで、ライムは生果実で
[と頼むと、奥に見覚えのある銀髪に華奢な後姿、顔は見えない]
そうか…苦学生は大変だな。
[従兄弟のことが思い浮かぶ]
…
[出されたカクテルを少し早いペースで飲む]
――期末試験後――
まあ、こんなもんだろう。
[割とひどい点数をあっさりと受け入れた。
現国は対象になった評論が気に入らず寝て、数学も英語も途中で飽きた。集中力は、前日に海水浴や生徒会の予定の詰めで使い果たしたらしい。
歴史だけは高得点を叩きだして、とりあえず補習は免れた。
どちらにしろ、補習さえ回避できれば、試験はどうでもよかった。
懸念は、ほかにあった。]
なあ。誰か、ひとけの少なそうな海岸と宿を知らないか?
[誰とも無く聞いた。
直前まで予約を入れていた宿が手違いでキャンセルされてしまった。他の宿を取り直しても、予定していたビーチからかなり離れることになってしまった。
それならば、いっそ他に空いている場所がないかと候補を洗い直しているところだった]
…わたしも初めてなのですよ
[少し照れたように笑って]
ん……父に「ヴィーア」と呼ばれてるのと、ハンス兄さん――従兄弟に「ヴィー」と呼ばれてる以外はみんな「シルヴィア」ですね。
[うーん、と思い出しながら言って]
ユトが呼んでくれるなら、なんでもいいですよ?
―バーにて―
すみません。マスター。あの厨房にいる方に任せられている
一番得意だと思う料理を
[酒は早めに切り上げ頼んだ。出てきたのはカルボナーラだったか
それは見覚えのある銀髪の後姿次第]
(話がしたいな)
[そう、ふと思った]
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