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……そだね。
[愛美には、頷いて]
杏ちゃん。私たちの部屋でさ、ゆっくりしよう?
鈴ちゃんは、私と愛美ちゃんと同じ部屋だから。
そのうち、戻ってくるだろうし。気になることは、そのとき、ね?
すまない。
じゃあ、今度はちゃんと確認する。
[あわてふためいて、顔を真っ赤にして目を逸らす二越に悪戯っぽく笑いかけた。
そして手は繋いだまま身体だけ離し、左手を胸に当て……恭しく一礼する]
荷物をまとめよう。
多分、すぐに日恋はやってくる。だから、この島を出る準備を。
僕らは……僕らの意志で、この島を出る。そうしたい。
[言い切って……微笑みを浮かべた顔を上げる。真正面から見つめた]
行こう。二越。
[かわいい。じゃなくて]
……いこ、杏ちゃん。
ここにいて、鈴ちゃんと鉢合わせても、なんでしょ。
[立ち上がる杏に、手を差し出して。
その手を杏が取ったなら、202号室へと連れて行こう。
本当は鈴とが一番なのだろうけど、杏が望めば、一緒の布団で寝るつもり**]
じゃあいこう。
[矢口が伸ばした方とは逆の手へ腕を伸ばす。]
どんな愚痴だって聞くんだから。
そんな顔しないで。ね?
[202号室へと向かう。ほんとにかわいいなぁ。]
ん、 …うん?
[…よくよく考えたら確認を取られても、
恥ずかしい事には変わりが無い気がした。自業自得だ。]
――ん、わかった。
[荷物。…そうか。私物も其れなりに部屋に広げている。
洗濯物も放置したままだったし、
…自分の意思で。此処を出るには色々準備をしないと。いけない。
少しだけ …いや、正直少しどころじゃない。
杏とか、矢口とか、碓氷とか。…離れるのがすごく、本当に寂しい。
…嗚呼、けれど。]
うん。行こう、西野くん。
[正面から向けられる視線を、しっかりと見返して。
繋いだ手を漸く、 少しだけ名残惜しげに ゆるりと離した。
自分たちの意思で此処から出る、*その為に*。]
…。
[差し出された二つの手。
ちょっとだけ、キョトンとした。
きっと自分は、相当しょんぼりしていたのだろう。
ちょっとだけ、顔がくしゃりと歪んでから]
行こ、か。
[ちょっと情けない顔をして笑って、
それから二人の手を其々握った。
子供みたいに、両の手に別の人の手。
繋いで、少しだけはしゃいで階段を上がった*]
―207―
[月が綺麗だ。
ベッドから眺めた夜の明かりは、一層幻想的に見える。]
………。
[中辻がひっそりと佇んでいる。]
……僕は、いい男になれるかな。
強く、なれるかな。
普通の、………出来るかな。
[中辻は何も言わなかった。
阿太郎も、応えを待つことはせず、背を丸めた。]
[中辻は、そっと撫でたようだった。]
ずっと、友達は中辻さんだけだった。
きっとこれからもそうなんだろうって。
……でも、やっと。
心配かけないで、済む気がする。
[阿太郎は、頑張るから、と呟いた。
中辻は、――――でした、と呟いた。]
[中辻は、自立を誓う言葉を聞き届けた。
ほんの微かに、頷いたようだった。
阿太郎が目を瞑る頃には、中辻の気配は聞こえなくなった。
こうして。
一番の友達だったねぼすけ幽霊は、阿太郎の前から姿を消した。]
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