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碓氷。以心伝心だよ。
目や表情、その身に纏う雰囲気から考えていることを読み取るんだ。
そしてさっきは、二越が怒っているように見えた。
[そういうことにしておこう]
[……どうやら、砂糖の有無はただの気分だったらしい。
まったく。髪型の些細な変化にも機微を察するのが、女の子だというのに。
コーヒーの砂糖なんて、コーヒー党には重大極まりない部分に、
気分で変化をつけてくるなんて、なんというか、なんというだろう。
……もてあそばれた? なんかちがうな]
ん?
コーヒーは、淹れるの、好きだから。
言ってくれれば、いつでも淹れるけど。
[まあ、ここにいる限りは。だが]
あ〜あ。。。
[キューの先端にぐりぐりと滑り止めをつけながら、場所を結城に譲る。]
恋愛もおんなじ。
アタシ、不器用なのかな〜。
ジョージは、アタシみたいなのって、どう思うの?
[二越に首を振られた。気になる。なんだろう。]
以心伝心?
わからなくはないけど、西野君ってそんなに二越さんや矢口さんと仲良かったっけ。
[以心伝心は仲がいいからこそできるものだと思っている。
目と目で通じ合う、ような。]
[手番が来たのでキューを構える。順当に3番、4番と落とし次の5番に目を向ける。]
そういえば山田はどうするのさ。
誰か好きな人とかいないの?
[なんか妙に余裕あるよね、と続けながら5番も落とし…手玉が7番とくっついた。]
・・・・・・。
[なんともならない、と肩をすぼめ適当に弾いた。的球でない7番がころころと転がる。]
[なんだか矢口のコーヒーに対する思い入れがすごい気がするのも念波じゃなく以心伝心である]
ああ……じゃあ、次から飲みたいときは頼むことにしよう。
[単純な話、喉が渇いているときに砂糖とミルクたっぷりのコーヒーを飲みたくないのと同様に、砂糖とミルクは気分が示す量が適量だと思う自分は間違っているのだろうか?]
ん〜、好きな人、かぁ。
[眉間に皺を寄せて結城を見る。]
余裕? なんだろね。
ジョージは、もしアタシから恋心を打ち明けられたら、どうする?
[ふと、昨日の碓氷からの質問が脳裏をよぎった。
そのまま手球をセットして、狙うは6番。カツン、硬い音とともにポケットにin
続いて7番に狙いを定め、こちらも快調にin
そろそろ緊張の8番です。]
やだー西野くんってば、私の事よくみてるー?
[小さく笑いながらも、半ば棒読み。椅子の上で体育座りとか、ちまっこく器用に膝を抱えて、カフェオレをずずっと啜る。あつい。
その端っこでコーヒー専門職への就職話が出たようなので
…、ちぇこちゃん。私も、わたしも!と手を上げて主張した。
友人のコーヒーはドリップの所為か大変美味しいので、是非ご相伴に預かりたい。]
仲が良かったと言うか、…
杏ちゃんと、城くん関係で うっかり共鳴したと言うか
…、
[碓氷の言葉に、少し前を遡って――それと思わしき原因を眉を寄せて口にする。
いやぁあれは衝撃的な出来事だった。
と、窓の外の空がちかっと光ったのでびくっとした。
その反動でちょっとカフェオレ零した。
あわてて、手でごしごし拭い……、 伸ばした。
音は無いけど、多分雷。]
ん。
まあ、真夜中とかに突然、頼まれたら困るけど。
常識的な時間の範囲では、いいよ。
[夜明けのコーヒーを飲みたい、とか言われたら、アレだが。
……そりゃあ、疲れてるときは砂糖を増やしたかったり、
短時間睡眠が続いてコーヒーをがぶ飲みしているときはミルクが欲しかったり、するかもしれないが。
まあ……うん、いいよ。西野くんが美味しく飲んでくれれば]
なんだか最近できるようになった気がするんだ。
やっぱり、こういう場所に閉じこめられているからかな。共同生活ってのをしていると、皆の心の機微がだいぶん予想つくようになるものらしい。
[いやいやネーだろ、と思いつつ適当を言う。碓氷はずっとそのままでいて欲しいとちょっと思った]
[どこかから文庫を取り出す。
だが、ページがぐずぐず湿っていたになっていた。
開こうとすると、一部が破けて、床にはらりと散った。
無残に欠損した文庫を暫し見つめた後、ベッドへ放る。]
ふー――……。
[長く、冷たい息。
髪はともかく、服は体の熱で乾き始めていた。
また立ち上がり、犬か猫がそうするように頭を振る。
細かい飛沫が飛び、床に斑が作られた。]
[振るうのを終わると同時くらい、窓の外が光った。
緩やかに顔を上げると、遅れて届く雷の音。
黒い瞳は光を反射し、終えた後も残滓をじっと見つめていた。
やがて飽きれば、目を閉じ、わしゃわしゃと髪を掻いた。
あほ毛が立った。
それには気づくことなく、部屋から出るべく扉へ向かった。]
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