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[杏をおいて島を出る、罪悪感。杏の助けになれない、無力感。
それらが、混淆して、化学反応を起こして。気付いたら、宙を舞っていた]
ああ――……、
[空を、見上げる。身体を包むのは、一瞬の浮遊感]
こんやは、こんなにも――……。
[その先は、世界の修正とかなんとかで、口には出来なかった。
――ばきばき、ばさり。衝撃と、痛み。植え込みに、堕ちたらしい。
城は砂地だったっけ。まあ、いいや。その辺はアバウトだ]
…。
[ごくり。]
…。
[基本的に、食べられるものであれば、腐っていなければ、大抵の場合は、食べられる。]
…。
[必要なのは、覚悟だ。]
…。
[例えば、今自分が、何かを食べなくては空腹で死んでしまうような状況にあるとしよう。]
…。
[そうした時、目の前の食べ物を、痛んでいる可能性があるからと、逃すことがあろうか。]
矢口とがるしーの続きが気になるけど、
ね む い。
うん、寝よう。そうだそうしよう。
じゃあ、おやすみ、愛美。
[愛美をぎゅっと抱きしめて、頬にキスをして、笑いかけて、戸田の人をハリセンで殴って、それから*寝床へ*]
いや、ない。
[きっぱり。]
…。
[でもそこまでの空腹で刺身とか食べたら体に悪いのは明らかだろうなあ。]
…。
[男は度胸だ。]
…。
[と、匂いを嗅いでから、口へ運ぼうとしたその時である。何やら不思議な感覚が自分を襲ったのは。それは、倒れている人をさらに蹴るという得難い経験をした記憶。遠い昔のようだ。あの時と、ひどく似た、感覚――]
[怪我は……ないんだろうか。
大丈夫なのだろうか。上の様子から目が離せない。
今自分があそこにいたなら、矢口を慰められただろうか。
何もない自分でも――愚痴くらいなら、吐いてくれただろうか。
分からない。分からないが――。]
ガルシア。
今の矢口さんが頼りに出来るのは君しかいないんだ。
クラスメイトが大事だと言うなら。
ずっととは言わない。今だけでもいい。
傍に――…
[――ずたぼろに千切れ始める意識。
祈ったまま、再び消え始める体。
どうやら、神様は許してくれないらしい。
結末は、見届けられそうもない。
それでも。墓下空間(カオス)から消え、病室(げんじつ)に戻る最期の瞬間まで、矢口とガルシアの光景を目に映し続けた。]
[ガルシアの声が、聴こえた]
……んー。綺麗だね。
[なんとか、そう答える。
なんでこんな無茶したんだ、わたし。
火事のとき、茨の茂みに2階から飛び降りて。
その時はいい考えだと思ったんだ、と、答えたのは誰だったかしら]
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