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[ヨルは体当たりをするように管理回線に歌を叩きつけている]
(開け)(開け)(開け!)
(伝われ!!)
[無理なアクセスを繰り返すうちに、次第に人格の統制が再び取れなくなっていく。しかし意思だけは強固で]
ボーカロイドに、歌を!
皆に、笑顔を!!
“生”を与えろ!!
─生活棟・自室─
・・・図書室にないわけですね。
思わず・・・持って帰ってきてしまっていたわけですか・・・。
はは・・・僕のうっかりも、酷い、もんだ・・・。
[大事そうに拾い上げるのは、ボーカロイドのエラーの直し方の本。リヒトには使えない技術。
でも、今必要な本。
左手に握ったメモリを、腕の端末に差込、そのうちのデータをひとつ、高速で読み込む。
リヒトの中には、丁度、同じサイズの巨大な空白領域が確保されたところ。うまく収めきることが出来た]
今、行きます。
[唐突に、ソヨは歌いだす。
自分が何だったのかを思い出したかのように]
自分達がどれだけ成長したというのか
法律か 人の目か
周りに順応し 人込みに紛れることが上手くなったその時か
身体一つで外に出た
誰にも知られず外へ出た
知る町並みが知らない世界へと変わる時
有り触れた筈のひとつひとつが 気づかない
自分はどうやって歩いていたんだろう
どうして駆けられていたのだろう♪
─生活棟・廊下─
[走りながら、USBに収められたデータのうち、ひとつを消す。
code:ELEVEN XI]
海派を、僕の創造者を裏切る僕だけど・・・。
こればかりは、お渡しするわけには行きません。
他はお返ししますから・・・。
[リヒトは、自分を突き動かす感情=想いが、外付けカードメモリ=紅によって授けられたものだとは、知らない]
身体一つで走り出す
誰にも咎められず走り出す
知る人たちが知らない人たちへ映る時
有り触れた筈のひとつひとつが わからない
自分はどうやって歩いていたんだろう
どうして駆けられていたんだろう
身体一つで駆け抜けろ
誰にも知られず駆け抜けろ
身体一つで駆け抜けろ
誰にもわからず わかってもらえずに
どうか 最後まで 貫き続けろ 一本のダガーのように!
[カッと目を見開くと、刃物に準えたタイトルとかもうお前黙れな歌詞を一気に歌いきる。無論巧くは無い]
ああ。それと、リヒトさんが何か策アリっぽかったから、それを待っていたってのもある。
はぁ…
…まあいいや。
シャトちゃんさんきゅ♪
領域・・・たりるだろうか?
[不安はあったが、迷っている暇はなかった。自分の命は残り1時間少々。
それだけ持てばいい・・・]
[USBから、収集データをもう一つ、本体に落としていく。
それはバクの能力]
・・・ラボへハッキング・・・。
転音ソヨの現在位置を、割り出す!
俺も随分甘くなったもんだ…
この騒動でライバルを蹴落としてでもオーディションに受かりたい、そう考えていたはずなのに。
ソヨだって、ライバルが減ってうれしいはずなのに…
ヨルも、バクも…サイのやつも…
ったく…よぅ…
[返事もかかずに、暫く立ち尽くしていた]
/*
ごめん。本当にごめんorz
あんなに必死に起動方法を探していたリヒトを差し置いて起こしちゃ駄目だよね。首つってきます(とぼとぼ)
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