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[歌に全身を傾けていたが、ふいに空気がざわめき始めたのに気づく。
もちろん、防音設備のあるスタジオで、音が聞こえるということはほぼない。だから、音というより空気・・・]
・・・何かあったのでしょうか?
[そこで、本社からのメールに気づいて、開き]
・・・楽譜が、読めない・・・?
[思わず、手近な楽譜を手にとって]
読めない、ってどういうことでしょう。
ううむ・・・。ボーカロイドとして、致命的では・・・。
[ためらったものの、添付ファイルも開いて、コードネームを登録した]
人狼・・・。
なんだか、まがまがしい響きですね。
本社の方は、いったいどういう意図でこんなコードネームを・・・。
―メインスタジオへ向かう途中―
『―添付ファイル展開。インストールを開始します。』
[メインスタジオに向かいながらメールに添付されていたデータを取り込む。]
ふぅ、あまり余計な機能は取り込みたくないんですがね。
本社命令じゃあ仕方ないか。
機能停止したボーカロイドを調べるプログラム。
楽譜が読めないボーカロイドなんているんですかね。
[インストールしたデータを確認しながらも、やはりどこか半信半疑で]
― スタジオ棟廊下→メインスタジオ ―
[スタジオ棟の廊下を歩く間も、「人狼」と名付けられた欠陥ボーカロイドのことを考えている]
楽譜が読めない・・・人間は、楽譜の読み方を習わなければ、学ばなければ、読めない。
でも・・・ボーカロイドは、歌うために生まれた“電脳の楽器”・・・楽譜の読み方がインストールされてないなんて、あるんでしょうか・・・。
[メインスタジオに入ると、やはり本社からの通達を確認したのか時間にも関わらず何人かが集まっている]
・・・楽譜。・・・楽譜とは、音楽にとって何なのでしょう。記録し伝達する媒体ですか?
楽譜のない音楽は・・・、
[水底の泡のように浮かび上がる疑問について独り呟く。状況の整理のためか、他のボーカロイド候補生たちの行動を見るためか、しばらく待機モードで音声だけを*拾うことにする*]
僕達は壊れている・・・から・・・
[バクの怒りを含んだ声の中に悲しみを感じて語りかける
それは共通の想いを抱いた友情のようなモノを感じたのだろうか]
データの破壊と乗っ取りか、僕達は・・・怖い力を持っているね。
ねぇ、キミ・・・僕と一つ約束をしない?
『僕達は自分の目的を果たしたら満足する』って。
そうでないと・・・僕達は本当に狂っちゃう・・・。
お願いだよ・・・!
[優しい性格が災いしたと言うべきなのだろう、自分の首を絞めるような提案を同じ境遇の欠陥品―――友に向かって懇願する]
…Uh…
長くて 遠くて すり抜けて
伸ばして 繋ぐ 二人の手 皆の手
重なりあう側 すり抜ける
感情全て はじけて 消える
遠い夢 遠い空
騒いで 喚いて 駆け抜けて
伸ばして 繋ぐ 二人の手 皆の手
長くて 遠くて すり抜けて
伸ばして 繋ぐ 二人の手 皆の手♪
[元々は帰り道を準えたバラードだったか。巧みな声が重なり合って一つの合奏としての体を為す。
深い意味を込めて選んだ曲ではなかったものの、この時歌った曲をとても素敵だと、歌いながら...は感じられた]
・・・レッスンをしていてもいい、とありますが、やはり気になります・・・。
皆さんも、そうなのでしょうか。
[個人ブースの窓から、メインスタジオを覗いて]
うーん・・・。
もしかしたら、この中にも「人狼」や「蝙蝠」が・・・。
・・・いえ。僕は何を考えてるんだ。
皆さん、仲間なのに・・・。
・・・こんな乱れた気持ちでは、皆さんに合わせる顔がありませんね。
歌い、ましょう。今は・・・。
[再び独逸語歌に戻って。しかし、誰かが呼びにくるなら、やめるだろう]
/*
原型は完全に壊してあります。これで大丈夫の筈。
でも曲の歌詞でCOする流れとかあったら困るー
今たまたま聴いてたのから選んでいるので(苦笑
……ふぅ。
[いかに次世代ロボ子といえど、さきほどのプログラムは容量がでかすぎるらしい。全身の動きがカクカクしているのがわかる。 しばらくは立ち上げない方がいいだろう。]
欠陥ロイド、ねえ……
[楽譜が読めない。
読んだ端から正確な音、そして最も適した音を叩き出すPerfectloidには、理解しがたいお悩みの持ち主のようだ。
なんて考えながらそのまま横になっていれば、やがて休止状態へと突入するだろうか。]**
―第2スタジオ→廊下―
[それから数曲歌うか、最初の一曲の余韻に浸るがままか何にせよそれぞれがそろそろと思えばその場で解散を決めた。...はスピーカーを殴っていた頃の苛立ちは霧散していたが、シャトに届いていたメールの内容が心に引っかかっていた]
アタシのところにも届いているのかしら。
[意図的に情報を遮断していたので、自分の元にも同様のメールが届いていたとしてもまだ気づいていない。今の歌によるいい気分を壊したくない気持ちもあって消極的にさせていた。
考えながら第2スタジオを後にすればメインスタジオ外にいるリヒトに気づいたかもしれない]
[サーティの懇願にため息をつくような空気を感じさせ]
わかったよ。サーティ。
ちゃんと目的を持って行動する。
手段と目的を履き違えるような真似はしねーさ。
ただサーティよ。自分でも自覚しているのかも知れねーが、その優しすぎる性格は、いずれ自分をもっともっと苦しめるゼ……。
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