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[赤錆びた雑居ビルの非常階段を、男は下りて行く。他に人の姿は無かった。降り注ぐ雨滴は空中に漂う浮遊霊を洗い流す為の聖水。時折吹き付けては男の頬を濡らした]
今日は随分降る事だ……ん?
おい、じいさん。
退きな。
[階段出口に座り込んだ人影は動かない。肩を竦めた男が横を通りすぎた刹那――ずざ、と軋る音を立て、老人は男に襲いかかった]
[老いて落ち窪んだ目は異様な精気に満ち、くわっと開いた口腔から涎が糸を引いて迸る。鉤爪状に開かれた十指が生身の肉を千切り取ろうと伸ばされ――撃墜された]
――うるせぇ。
[男は左の裏拳を老人の顔面にめり込ませたまま、完全に活動が停止した事を確める。コンクリの床にずるずると崩れ落ちた『動く屍体』から薄い靄が抜け出ていった]
[流れを読んで一歩踏み出して]
[けれどその途端、昨日知り合った青年の顔を見つけて]
あ。
[ついそっちに気を取られたものだから]
[流れに乗り損なってしまった]
[弾かれるようにふらりと流れから逸れて]
あっ、ごめんなさい。
[立ち止まっている少年に軽くぶつかるような形で]
[娘の足も止まった]
[〈ケイオス・ヘキサ〉D層三四八番街。
その一画、唐突に現れるスラム。
混沌の街が育つ内に霊走路網の雑音が寄り集まって発生した呪的空白地帯。通り一つを隔て、最下層よりもなお剣呑な空気がこの一帯には漂っていた]
ちっ。
くたばるつもりなら、もっとマシな場所があっただろうが。
[恐らくは今朝ごろ死に、雑霊に取り付かれたのであろう。
再び動かなくなった屍体に向け、男は銃を抜き放った]
[D層の辺境、雑霊どもの吹き溜まり――それでも、この場所に行き着くしかなかった者は居るのだ。
この老人のように。そして、己のように]
はっ。知ったことか――。
[自嘲の声を洩らし、止み始めた雨の中を男は歩いていった。生気と活気に満ちた、通りの《向こう側》へ――]
人を見ていたって……。
何処に居たって居るじゃないか。
[首を傾げ、
視線を先程見つけた頭巾頭へと向ける。
相手も此方に気付いた様子で]
あ。
やっぱり、ホリー……ぉ?
[看護婦が、少年にぶつかってとまる。]
ああ。わたしの名前を尋ねているのでしょうか。
わたしはポールと呼ばれていました。
[としどろもどろな牧師の顔を更にじっと見詰める。]
わたしは何か意味不明なことを言ったでしょうか?
酔いどれ ドナルド が参加しました。
いや意味不明と言うか、こう。
……ちょっと今まで接触したことのないタイプといいますか。
ポールさんと仰るのですね。
[にこりと微笑む]
[D層第348区]
[人込みを縫うように歩く彼の目に映るのは、平常と変わらぬ市民の姿]
[S.E.A.T.の制服が珍しいのか、すれ違う幾人かが彼の姿を見送る]
『──ザ...ザザッ』
[腰に下げられた携帯無線から絶え間なく現状報告が伝えられる]
……たった一匹の吸血鬼を殺せば、数千を殺す必要はない。
[手立てがあるわけでもない。遭遇できるかどうかも怪しいところだ]
[再び、携帯無線が現状を告げる]
『──第348区の閉鎖は完了』
『各員は消毒準備及び最終確認急げ』
区画閉鎖完了、か。
[このままでは彼も無辜の市民同様、「消毒」という名の爆破に巻き込まれて死んでしまう]
[しかし]
──。
[歩みは止めない]
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