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[実の耳をぎゅーっとつねってから解放して、ススキ花火を手渡した]
お・と・な・し・く ふつうの花火をしーなーさい。
[危ないことがないか気をつけながら、まわりを見守って言いる。ちょっと危ない挑戦をしていた宏樹のことは、ちゃんと人から離れてやっていたので咎めるのはやめた]
ああ、翔平くん相変わらずだな……。
人に向けちゃだめだよ。
[やんわりとたしなめつつ、久美子に同意して]
うん、始めようか。
とりあえず、これ。
[お菓子のポッキリみたいな形の花火を手にし、ロウソクに近付ける。
バチバチと派手な火花が散り始めた]
[微妙にぎくしゃくとした動きを見せた紫籐を、不思議そうに見る。
さっきのことはさっきのこととして、雛にとってはまた別の話らしい]
うん、ドラゴンなの。紫籐くんが話していたから、買ってみたの。
これで300円なんて、すっごいぜいたくな気分。
[そう言いながら、ちょっと興奮しているようだ。どんなものが見られるのか、わくわくして頬が高潮している。
マッチの火をつけて、じゅうぶんに距離を取る。
最初はパチパチと花が咲くように弾けていたのが、ある瞬間から間欠泉のようにとんでもない勢いで銀色の火の粉が吹き上がる。4メートル近いその火柱は雛の目に存分に存在感を示し、やがて、しゅうんと消えて暗闇が残った。
しかし網膜にはしっかりと光の乱舞が焼きつき、しばらくはチカチカと]
…ドラゴン、すごかったぁ……。
[ほんとうにたったの数十秒。でも全然もったいないと思わなかった。
雛は思わず拍手をして、すごい、すてきを繰り返した]
もう一度?
[博の言葉にぱちぱちとまばたきをし、カメラを指さす彼の意図に、少し考えてから気がついた]
うん、いいよ。記念写真ね。
じゃあ、花火が終わったら、お花つけてくる。
お風呂入る前の方がいいな。だって、お風呂上がりは寝る用の格好になっちゃうから。
[はにかんで笑う]
翔平くんの花火、だいぶ離れてたし、大丈夫じゃないかな。
9mくらいあったから。
じゃあ、私はこれもらうね。
[線香花火を一本手に取った。チリチリ音を立てて、小さな星が足元に散る]
[誰もいない方向で一人遊びをしていたら、急に背後が明るくなり、驚いて振り返りました。]
なに!?…わぁぁ!おっきい…
[いつも家族で遊ぶ時は、手持ち花火ばかりだったのって…地面に置いて火を点けるタイプのものを見るのは初めてです。]
綺麗…こんな花火もあるんだね…
[そう言えば、まだ筒型のが…と花火セットの方に目をやって、さっきお空に飛ばしたロケットのことを思い出し、自分で触るのはよそうと思い直します。]
【花火終了後・男子部屋】
[部屋に戻ると、北斗が健二や如月に真剣な顔で話をしていた。
雛がどうとか言っているが、事情を知らないためかける言葉はない。]
……ん。
[雰囲気を壊さないように近くに座ると、会話に耳を傾ける。
聞かれなければ答えないが、宏樹は無人島は行きたい奴が行くのが一番だと考えているようだ。
誰が行っても、みんな案外しっかりしているからいいだろ、と。
また、他人を理由に自分の気持ちを抑えるのは気に入らないとも思うらしい。**]
うん、そうだね。
花火が終わって、お風呂に入る前にね。
[はにかむ久美子を見たら、こっちも少し照れてしまった。
誤魔化すように、消えてしまった花火を片付け2本目を手にする。
赤い火花のお陰で、多少は表情を誤魔化せただろうか]
ぷぇー。
[いくつかねずみ花火は残っていたが、ポケットに押し込んで]
とー、せい、やっ!
[火のついたすすき花火で宙に字を書いてみます]
[その軌跡は自分の名を浮かび上がらせるでしょう]
うん、あれくらいならいいんだけどね。
[ちょっとうるさく言い過ぎてしまったかな、と思ったけれど、翔平は気にしない様子で遊んでいる]
[赤からindigo◆に変わって燃え尽きた花火をタライに入れて、次は線香花火。
チリチリという音が、並んで響く]
[点火しながら聞く口調からは、いつもの樫村のようだ。
微妙に不思議がるも、思考はそこで停止した]
……わあ。
[暗い夜の闇に、湧き上がった光の噴水が映える。
数十秒のショーの間、視線はそこに釘付けだった。
やがて花火は静かに終わる。
光を放たなくなった筒を見つめ、その余韻に浸っている。
聞こえて来た拍手の音に、我に返る]
な、な、凄えよな。
[口の端を緩めて笑みを浮かべ、自分も拍手をした]
久美子ちゃんの約束
・藤本くんに、臨海学校の間に「いいもの」を見せて貰う
・帰ったら「十五少年漂流記」を読む
・花火が終わったら、お風呂の前に花をつけて写真
・お花がしおれる前に押し花に
[うん、と博に頷いて、しばらく沈黙が訪れる]
[線香花火の立てるかすかな音と、砂浜に寄せる波の音。翔平と梨子がはしゃぐ声を聞きながら、二つの小さな火花を見つめる]
……あのね。
[視線はそのままに、ぽつりと口を開く]
[ふと後ろを見ると、ドラゴンが火を吹いていました]
[その幻想的な光景に、思わず目を奪われます]
・・・すごーい。
やっぱり花火って言ったらこういう派手なのだよね!
[火花が出なくなるまで瞬きもせずに見つめているだろう]
うん、すごい。
[紫籐と一緒になってはしゃぐ]
一個しか買えなかったの。もっとたくさんあるとよかったのになぁ…。
残念。
[何だか、すっかりメインイベントが終わってしまったような寂しさまで感じてしまう]
火をつけてくれて、ありがとう。紫籐くん。
[礼を言うと、次の花火を手にとってロウソクで火をつけ、小さく揺らしてその軌跡を楽しんでいる]
……そういえば、紫籐くんは、向こうに行っている人に伝言とか、ある?
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