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[令呪――聖杯のシステムを通じて呼び起こされた強大な魔力の障壁。擦過した斬風すらも弾き、少年には一筋の傷も無い。
着地し、金剛剣を振り切っての跳躍を終えつつある敵手に向けて、次弾を放つまでの時間を――そう、考えた瞬間だった]
……私、は。
[――異変は、少年の内部に起きていた。五感が消失している。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。それだけではなかった]
[今どこに立っているのか。
己が手にしているのは何なのか。
自分が今なすべきことは、何なのか。
意識さえも虚無の中に放り込まれたように、空白で埋め尽くされる]
[喪われた五感、そして意識。淡く輝く光点を見出した、と感じた。それを手がかりに、自らを呼び戻す]
……そうだ。
……私、は。
[回復した意識。それが求める強い衝動があった。
右手の宝具を元の形状に戻し、身を起こす。魔力で編んだ剣を何処からともなく引き抜いた]
……死な、なければ。
[少年が手に在るは断頭の剣。
かつてゴリアテから奪い、その首を断ち切った因縁の剣。
ゆっくりと掲げ、自らの首筋に突き立てようとする]
Ay amor――
[一度、目ばたいた。幻聴のように響いた麗しい声。
だが少年は変わらず、ゴリアテの剣の切っ先を見つめる]
ダビデっ!
[令呪の生んだ光が瘴気に包まれ塗り替えられる。太陽が染めた橙色までもを消し去り、辺り一体がその渦に包まれたようだった。
目を凝らしてみれば、真っ直ぐに向かっていったそれはダビデを傷つけることがなく、けれど吸い込まれていった瘴気は確実にダビデを蝕んでいるようだった]
だめ――っ!
[再び響く、声。今度ははっきりと聞き取れた]
Ay amor――
生きて!
[声の主を、思い出す。眞奈みなみ。
再びの契約と契りとによって結ばれた、己がマスター。
そう気づいた瞬間、剣を握った手の自由が取り戻された]
[少年の視線の先にあるのは、跳躍しての斬撃から着地を終えた異装のサーヴァント。黄金の剣が音も無く持ち上げられ、こちらへと振り返ろうとする]
……みなみ。逃げ、ろ。
[波旬の隙を見逃さず、ランサーの槍が大きな軌跡を描いた。
切り取られた真円の空間。
放たれた光の円盤。両者の間を白光が疾駆した]
[足先の感覚が無い。膝も、脚も、腰も。全身の存在感すら希薄になったようで、立ち上がることが出来なかった]
……これが、奴の……宝具、か。
……死に至る、病。絶望という、名の。
[侵蝕を一時的に食い止めているのが、たった今みなみが行使した令呪の効果であるのは明白だった。冷え冷えとした暗渠が少年の心身を蝕んでいく。全身に行き渡れば、そこに在るのは確実な、死そのもの]
[言葉を失った。姿はいつも通りの儘なのに、急速に繋がった先から感じられるダビデの気が失われていくのが悲しかった]
そんなダビデを置いてなんて、行けるわけがっ……、
[ない、と続ける前に、ダビデの口から零れる、"死に至る、病"と言う言葉を聞いた。
――どんな魔術がその病に効くと言うのだろう。令呪に出来る事には限りがある。今それが齎している効果のように、その時間を少し延ばす事しか出来ないだろう。再び訪れる無力感に唇を噛んだ。そしてそれこそが、ダビデが逃げろと言った理由だと解れば、何も言う事は出来ず。小さい子供が駄々をこねるように首を横に振りながら、みなみはその手を伸ばし、ダビデの手に触れた]
……私は、もう持たない。みなみが令呪で命じたのでなければ、
……とうに、死んでいる、筈、だ。
[視界に白霧が掛かる。虚無という名の無明が迫っていた。
歯を食いしばり、強い光を眼差しに込める]
……ここから離れろ。今、すぐに。
私が倒れたら、逃げる。その約束、だ、ろう?
[みなみの手を一度だけ握り締めて、引き剥がす。
拳を形作り、送り出すように彼女の脚を押しやった]
っ、ダビデ……!
[息が詰って、上手く息も、声も出なかった。目から光が消えていくのが手に取るようにわかる。ずっとここに留まって居たい気持ちに負けそうになる。繋いだ手の暖かさが、尚更に名残惜しかった。それでも、約束を思い出す。みなみの、自分の意思でした再契約と、その時誓った言葉を。ダビデの拳が行けと言うように、脚に触れた]
――ありがとう。
ダビデと出逢えて、本当に良かった。
[言いたい事は山ほどあって、けれど、精一杯涙が零れないように笑い、それだけ言うのが精一杯だった。立ち上がり、背を向けると一気に走った。振り返る事は出来なかった。一度でも振り返れば、その足が止まってしまいそうだった]
――→流廻川――
[無我夢中で走り続け、河原に差し掛かると漸くみなみはその足を止めた。息が上がり、その場に座り込む]
……っ。
本当に、終わっちゃったんだ……。
[視界に入る手の甲。三本の線は、もう既に目を凝らさなければ見えない程になっている。その手に、涙がぽつりと落ちた。聖杯戦争が始まってから、涙を零した事は二度。過去を悪夢として見た時。ジャックが、"魔術師"としての人格を失って帰って来た時。けれどその二度とは違い、今度はもう、止まらなかった]
[聖杯戦争に負けたと言う事は大した事では決して無かった。だがその間に、沢山の大事な物を無くした気がした。例えば、ジャックやダビデ。どちらとも、ずっと一緒に居たいと思った気持ちに偽りはなかった。例えば、ずっと縋ってきた目標。本家の命令に従い続けることや、父親の期待に応え続けること。それだけの気持ちで動く事は、もう出来ないだろう]
――でも、間違いだなんて、思ってないよ。
これで、良かったんだ。
[今もしもやり直せるなら、きっと自分は、ジャックともっと向き合おうと努めただろうと、みなみは思う。けれど、それ以外のことに悔いは無いと言い切れた。聖杯戦争に参加した事も、今ここに居る事も、全てを含めて]
[風が一際、強く吹く。みなみの背後では今も尚、原田と蒲生が波旬を相手に戦っているだろう。その心配はしていなかった。原田と蒲生の二人ならばきっと大丈夫だと、信じられた。終わり行く夏の、更けて行く夜。露出した肌に風は寒いはずだった。けれど、みなみは不思議と誰かに包まれているような暖かさを感じていた。死して尚、ジャックやダビデが守っていてくれているような、そんな気がした]
――これで、良かったんだ。
[最後に零れた涙を拭う。掌を解けば、そこにはダビデに貰った石がある。それをポケットに再び入れて、空を見上げた。声には出さず、微笑んでありがとうと呟いて。みなみはようやく、*歩き出した*]
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