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それで、彼はどんな事を言っていました?
昨夜か――その前の晩の戦闘について、何か?
[純粋に興味があった。一昨晩はキラーとの戦闘を遠望したに過ぎない。ランサーとの直接の接触は一度会話し、離れたきり。それでも好漢、という印象の強い男だった。サーヴァントを失った娘に、彼はどんな言葉を掛けたのだろう]
[ユメを見ていた――……なにか、懐かしいユメを。]
――……ん……。
[
ぼんやりと滲む視界。どれだけの時間、眠っていたのかどうか。
アーチャーと思しきサーヴァントからの狙撃を受けてからの記憶が、定かではなかった。
――なにか、怖くて怖くてたまらなくて。泣き叫びたくとも、声すらも出なくて。
そんななか、ふと。自分を拾い上げてくれた、あの温もりは。
幸せだったあの頃に、陽だまりで肩を寄せ合って眠った妹のものか。
幾つもの夜を越えるたび、いつしか優しくなっていった王のものか。
それとも、もしかしたら……――
]
――……まさか、ですよね。
[
――呟いて、小さく首を振ってみて。
どこか険のとれた表情を浮かべて、自分を眺めている、主の姿をと認めた。
]
――……!?
お、おはようございます、マスター!?
偶然っていうか、情報収集に、来ていたような気がするよ。
……会ったのは、あの場所だから。
[宝具を使って戦闘を行えば、それを察知する事は容易い。みなみ自身も召還を行った後に、キラーと共に流廻川へ戦闘の痕を感じて向かった事を思い出した]
そうだね。マスターの資格を持った魔術師を全員殺そうとするタイプにも、マスターを直接狙おうっていうタイプにも見えないし。
わたしの姿を見た瞬間、ジャックと戦いたいって言ってた。だから、ジャックはもう居ないよって。
それ以上の事は、何も聞かれなかった。
相手が誰で、とか、そういう詳しい事は、何も。
[交わした言葉はそう多くは無いが、原田の人間性が良く現れていたような気がした。聖杯戦争に勝つ事だけを目的にしているのではないのだろう。だからこその、あの言葉]
……代わりにね、励まされたの。
わたしはまだ若くて、器量と度胸があるから、聖杯が無くたって大抵の願いが叶うだろう、って。
[廃工場の床を張り替えている。入口付近にはくつろぐためのソファやテーブル、がいくつか揃えられていた]
よし。あとは物を並べるだけだ。
[転んでも痛くないように、マットを敷き、その上にイグサで織られたゴザを。大型モニターは皆が見える場所に設置した]
一仕事したことだし、メロンを貰おう。
ところでバーサーカー、「マスクメロン」は仮面にかけていたと思ったのだが、ウォーターメロンでは意味がない気がするな。
[仮面に向かって突っ込みを入れた]
なるほど。
資格がある魔術師を全員排除する、か。それは考えなかったな。
[みなみが示唆した勝利手段の一つ。実行する者が居たとしたら、“悪”の存在である事は間違いなかった]
――が、彼もまた自らの練り上げた技で、他のサーヴァントと直接対決したいのでしょうね。セイバーと良く似た武人、か。この国の英霊は、皆そうなのでしょうか。
[何気なく、呟いた。続くみなみの言葉から察せられるのも、その印象を裏付けるもので。少年はこくりと頷いた]
そうなの?
わたしは、だからサーヴァントを失ったマスターは教会へ保護を求めに行く事も選択肢だって、聞いてたよ。
[聖杯戦争に参加すると決めた魔術師達は、それなりの覚悟を持って参加しているとみなみはずっと思っていた。呼び出される英霊がそれに対しどう反応するかは想定出来ないが、マスターが絶対命令権を持つ以上、勝とうとするのならばその行動は不思議ではない]
わたしは、セイバーには会った事が無いから、解らないけど……。誇り高き人なんだね。
ダビデは……? ダビデだって、マスターを進んで狙おうとするようには見えないけど、それは、なんで?
[時折小さな声を上げる寝顔。その姿を眺めていると、夢の中の気持ちを取り戻せるような気がした。
――その時、小さな顔が揺れて、可憐な声が目覚めを告げた。]
遅い。何時だと思っている、愚か者め。
[おろおろとするキャスターに、ぴしゃりと言い放つ。]
今日は南ブロックへ向かうぞ。
アーチャーに狙われた場合、開けた場所ではやっかいだ。
工場群ならば死角も多くやり難かろう。
場合によってはそれを逆手に取って罠に嵌めることもできる。
[疲労とダメージの蓄積で昨夜の激戦も察知できなかったため、手持ちの情報から判断した結果だった。]
[みなみに向き直り、正面から見つめる]
聖杯を求める理由。
聖杯戦争に、再び加わる理由は、みなみの中にありますか?
[尋ね、言葉を切り、少年は自分の内心を探る。
同じ問いを投げつつ、みなみへの答えにもなるように言葉を探す]
……私は、本当のところ、今、揺れています。
私と主義の異なる誰かを犠牲にして、私の願う理想を求め続けて良いのかどうか。あるいは、それは間違った手段なのではないか、と。
マスターだけを狙撃して、葬っていくのなら、まだ道は楽でしょう。けれど、”英霊の座”に上げられたのではない――ある意味では一般人でしかない現世の魔術師を、その為だけに殺すのは私には違う、と思えるのです。
……けれど、もし。
みなみが私のために犠牲にならない、と約束するのであれば。
私は、貴女に契約相手たることを望みたい。私はまだ私の理想を捨てきれない。
勿論、そうなれば、他のマスターやサーヴァントからの攻撃対象となるでしょう。その時には、私は全力でみなみを守ります。ただ、完全に守りきれるとは約束できない。
それでも良ければ、私に協力してくれませんか。みなみ。
−北ブロック−
[あれから準備を終え、部屋の外へと出た二人だったが、
明確な目的地はなく、どこへ行こうかと考えながら歩いていた。]
相手の居場所が分かれば容易な話なんだがな。
[
寝起きの無防備な姿を――というより、恐らく寝顔をも――見られた。
ある意味で、一糸纏わぬ姿を晒したほうが――というか、既に肌を重ねてはいるし――まだ、気が楽だった。
羞恥と混乱に思考の大半を占められて、主の言葉も碌に頭にとは入らずに。
道すがら、何を話したのかもよく判らないまま。
主の背中にとついて歩いていれば、いつの間にか、現代の工房が集まる一帯へと達していた。
]
――……?
[
――……僅かな魔力の残滓を感じて、ふと、我に帰った。
どこかで感じたような、そんな魔力の、仄かな名残。それを、主へと報告した。
]
……正確な位置はわからないかもしれないけど、式神の感知できる範囲内なら、魔力を使われた気配があれば気付けると思う。
[そう言うと、飛ばした式神に、意識を集中させる。]
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