情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
[11]
[12]
[13]
[14]
[15]
[16]
[17]
[18]
[19]
[20]
[21]
[22]
[23]
[24]
[25]
[26]
[27]
[28]
[29]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
遅延メモが残されています。
桐生 茜は九鬼 聖法に投票を委任しています。
梧桐 曹は九鬼 聖法に投票を委任しています。
ランサーは九鬼 聖法に投票を委任しています。
蒲生 延は九鬼 聖法に投票を委任しています。
キャスターは九鬼 聖法に投票を委任しています。
瀬良 悠乎は九鬼 聖法に投票を委任しています。
バーサーカーは九鬼 聖法に投票を委任しようとしましたが、解決不能でした。
名塚 聖は九鬼 聖法に投票を委任しています。
アーチャーは九鬼 聖法に投票を委任しています。
眞奈 みなみは九鬼 聖法に投票を委任しています。
キラーは九鬼 聖法に投票を委任しています。
平 芽祈は九鬼 聖法に投票を委任しています。
桐生 茜 は バーサーカー に投票した。
セイバー は バーサーカー に投票した。
梧桐 曹 は バーサーカー に投票した。
ランサー は バーサーカー に投票した。
蒲生 延 は バーサーカー に投票した。
キャスター は バーサーカー に投票した。
瀬良 悠乎 は バーサーカー に投票した。
バーサーカー は 名塚 聖 に投票した。(ランダム投票)
名塚 聖 は バーサーカー に投票した。
アーチャー は バーサーカー に投票した。
眞奈 みなみ は バーサーカー に投票した。
キラー は バーサーカー に投票した。
九鬼 聖法 は バーサーカー に投票した。
平 芽祈 は バーサーカー に投票した。
バーサーカー に 13人が投票した。
名塚 聖 に 1人が投票した。
バーサーカー は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、瀬良 悠乎 が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、桐生 茜、セイバー、梧桐 曹、ランサー、蒲生 延、キャスター、名塚 聖、アーチャー、眞奈 みなみ、キラー、九鬼 聖法、平 芽祈 の 12 名。
投票を委任します。
ランサーは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
[思考だけが、漂うように。叶えられなかった願いを、ただ思っていた。
魔術を、教えられる前に。生まれる前に。戻れるのならば。
0から、全てをやり直せたなら。
――――儚い、願い。
だから、最期に選んだのは、死。本能の、部分が、そこに、飛び込んでいった。
叶えられなかった。
自身が呼び出したサーヴァントの願いを。それを、謝ることが出来なかった。
消滅したのだろうか。座に戻ったのだろうか。あの英霊は。
――スパルタクス。もっと、名前を呼べば良かった。]
[鳴き声が、聞こえた。猫の、声。
ああ。
無事でいるだろうか。
緩やかな死。
ただ、願った。小さな願い。叶えられるかもわからない、願い。
その猫が、無事であるように。あの英霊のことを、覚えていてくれるといいと。
消えてしまうまでに*思い続けた*。]
投票を委任します。
平 芽祈は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
投票を委任します。
キャスターは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
――中央通り・古美術店・早朝――
[梧桐と左之助は浅い眠りを終えた後、少し早めの朝食を取っている。]
お、この黄色いのは一体何なんでい。
[「それはスクランブルエッグって言う物だよ」
そう答える梧桐にへえと一言返し、食事を続ける。
訪れた沈黙の中で、箸と食器の音だけが響く。
「今日、またお殿様の所に行ってみるかい?」
今度は梧桐がそう切り出したので、何でもいいぜと左之助と答える。
再び訪れる沈黙。
いつに無く盛り上がらない会話が、昨日の出来事のためだと2人には解っていた。]
[1人のサーヴァントと1人のマスターの消滅。
聖杯戦争に敗れた者たちの姿、それを目の当たりにしても高揚感など沸く事は無く、2人の心に影を落としている。]
左之助にはキラーに対する憎悪は無い。
動機はともかく、マスターを確実に消すというサーヴァントの役割を忠実に果たしている。
少女の姿をしたマスターも、ある程度は覚悟してこの戦争に挑んでいたはずだ。]
こちらが甘すぎるんだろうな。
[梧桐を見ながらそう思い、それは俺もかと左之助はつぶやく。
目的の薄さからか、生前より戦いへの態度が享楽的になり、同時に槍の腕が鈍っている気がした。]
投票を委任します。
蒲生 延は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
投票を委任します。
桐生 茜は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
―中央ブロック・ホテル―
[ホテルへ戻りダビデと対峙した。
己の判断の誤りをまずは謝罪する]
すまなかった。
無駄に魔力を消費した。
[あの場で手を出して何か意味があったのか?と言われればNOである。
少女が助かる見込みはなかった。
魔術師同士の戦いの結果なら当たり前の話を自分は受け入れることができていなかった]
[ 味のない料理を口に運ぶ。
食べなければ力はでない。ただそれだけの理由でする食事が楽しいはずもない。
――こちらが甘すぎるんだろうな。
左之助の言葉に、僅かにだけ首を動かし頷く。聖杯戦争に関わった以上、昨晩のような光景を見るのは当たり前のことでしかない。それは判っていたつもりだったのだが。
戦う相手として、見られなかった。それがきっと問題だったのだろう。だが…。]
そろそろ、ちゃんとした方がいいんだろうね。
[ 声を震わせないように努めて。
後を引く性格なのは重々承知している。だが、気持ちは切り替えなければならない。]
お殿様に… 決闘を申し込んでみるか。
[ 馴れ合わないように。
戦いを挑む方が、気は楽だ。食べ終えた食器を食卓に置きながら、左之助に今日の行動を提案した。]
投票を委任します。
梧桐 曹は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
[
――……夜半。
女だけに許された、あの心地の良い倦怠感を味わいながら。
主の求めに応じて、物語を紡いで、いつしか主が眠りに落ちたころ。
その異様は、そこにとあった。
その数、実に四騎。
聖杯戦争に召喚されしサーヴァントの、半数超。
それが、精々、百数十メートルの範囲にと密集していたのだ。
ましてや、その現場は自らの敷いた陣の付近。
死人とて飛び起きるだけの条件が、そこには揃っていた。
主を叩き起して状況を伝え、現場へと駆け付ける。
本来ならば、それが正しい行動だった。
――だが。
穏やかな表情を浮かべて眠る、主の横顔に。
ただ、東ブロックの陣へと意識を飛ばして、情報を蒐集するだけに留めた。
]
[ダビデはマスターの軽率さにきっと怒っていたのだろう。
その口調は何時もより強く感じた]
いや、本当反省してる……。
プラスになった面もあるからそれで許してくれないかな?
だから、明日からの対策を話そう。
[気持ちの切り替えの為、顔を両手で叩いた。
辺りに音が響き渡る、少しヒリヒリするが戒めには丁度良かった]
[
――……脱落したのは、仮面の主従だった。
ああいった存在が"届く"のだろうかと、その未来に微かな羨望すらも抱いた、幼い魔術師。
終わってしまった自分には持ち得ない、大いなる可能性を内包した少女――その芽は、狂気にと手折られた。
黒い影に弄ばれ、ただ、血に染まる肉塊にと変わり果てていく、その残忍な処刑が終わりを迎えたとき。
]
――……叶うならば。あの存在は、この手で。
[
――震える手。初めて抱いた激情の赴くまま。
ゴドウと名乗った、あの魔術師の腕のなか。
服だけを残して消えた少女にと手向ける誓いを、静かに呟いた。
ただ――この決意が果たされるかどうかは判らない。
恐らくきっと、あの場の誰かが、似たような思いを抱いているだろうから。
]
まず、ランサーのマスターの顔が確認取れた事。
そして、瀬良悠乎とそのサーヴァントの脱落。
[昨晩の事実を淡々と述べた]
まず、サーヴァントだけど教会での情報だと六騎しかいまだに召喚が確認されていないらしい、だとすると一名脱落で残りは五騎。
アーチャー、これは君だ、ダビデ。
キラー、イレギュラークラスで切り裂きジャック。
ランサー、これは昨日のサーヴァント、槍を振るっていたから間違いない。
ここまでは確定、そして残りが信長とキャスターだ。
信長と昨日消滅したサーヴァントがどのクラスかは現状不明。
キャスター、キラーについてはそこまで怯える必要はないだろう。
だが、信長とランサーとやり合うならそれなりの覚悟が必要だ。
余力のある今のうちに信長を探し出し叩く。
あるいは、勝てる見込みが高そうなキラー、キャスターを優先して叩き、信長とランサーの相討ちを狙う。
[そこまで話すと一息ついた。
ダビデは自分が話した内容について考えていたのだろう。
言葉を発する事はなかった]
とりあえず、僕は少し休息を取ろうと思う。
その間に君の考えを纏めておいて欲しい。
[ダビデの肩を軽く叩いた後にシャワールームへと向かった]
−自室−
[あの後、お茶を飲み作戦会議をしていたが、その途中で茜が眠ってしまった。
恐らく、精神的に何か疲れたことがあったのだろう。
セイバーは茜を寝床まで運ぶと、その横の壁を背に座り休み始めた。]
[―― ゆらりとしたまどろみの中、飛ばした式神の一つの近くで、大きな力のようなものが、膨らみ、弾けた。
きらきらと、赤い破片が舞う。
暗闇の中、それは自ら光を放ち、目を奪われた。
―綺麗だと、思った。
思わずそれに手を伸ばして、掴めずに、手の間をするりと抜けて、そして消えた。]
―ワンルームマンション―
[ゆっくりと目を開ける。
どこかで、誰かの魂が消滅した。微弱な魔力の式神では、それを特定するまでには至らなかったが、その魂の波動には、どこかで触れた気がした。]
……確か、あの仮面…。
[呟いて、ふと横を見ると、昨日と同じように信長が側にいて、どきりとした。]
お、おはよう…。
しかし、僕は本当なにやってるんだろうね。
ダビデのことを言えたもんじゃないよ。
[シャワーを浴びながら昨日の午前中を思い出す。
携帯を餌に眞奈みなみを呼び出しダビデに場合によっては自身で始末しようとした。
結局の所、機会には恵まれなかったのだが……]
チャンスがあっても、僕に出来たのかね?
[当然ながら返事が帰ってくる事はなかった。
魔術師なら何度もこれまでに殺してきた。
しかし、それらは殺す事を戸惑う事もないような外道達だった。
一般の魔術師を戸惑いなく殺せるか、そんな事は今まで考えた事はなかったし、考えたくもなかった。
昨日の悠乎のような死体を自らが作るなんて事はご免だった]
でも、この先はやらざるをえないんだよな。
やっぱり、僕は魔術は嫌いだ……。
でも、だからこそ、僕に聖杯が必要なんだ。
[魔術の戦争に身をおきながら魔術を嫌う。
呟くのはそんな矛盾した思い。
しかし、魔術なしには自分は成立しないのも確かである。
結局の所、自分も矛盾と苦しみを心に抱きながら聖杯の奇跡にすがるしかないのだ**]
投票を委任します。
名塚 聖は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
[信長の言葉に、こくりと小さく頷いた。]
話の途中で寝ちゃったのね…。
……運んでくれてありがとう。
[そう言うと、今見た夢の内容を話し始める。]
昨夜、誰かの魂が消滅したみたい。
詳しい事はわからないけど…おそらく二つ。
片方は、あの仮面の男だわ。
[その後に小さく呟く。]
……綺麗な魂だった。
[この場ではキャラとしてのRPを崩さない。
つまり中身は出さないでください。
ただし墓上のシリアスはいりません。
キャラ同士の楽屋裏として雑談でも鍋でも恋愛でもなんでもしてください。]
別に良い、苦になどならんしな。
むしろ、前から軽すぎると思っているほどだ。
[礼を言う茜に、笑って答える。]
昨日……か。
一度、確かめにいくべきかも知れねぇな。
前から…って、ほ、本当はそんなに軽々しく触れたりするのは駄目なんだからね!
そもそも、重いなんて思われたら、死んだ方がマシだわ…。
[笑う信長に、赤くなりながら早口で捲くし立てる。
確かめに行くべき、という信長に、小さく頷く。]
場所は東ブロックの方かしら…。
痕跡でも拾えるといいのだけれど。
なんだ、嫌だったのか?
そういう風に見えなかったから別段気にしていなかったが。
[ふむ、と顎を撫でる。]
今度は東か。
ならば準備をしたら向かうとしよう。
……。
[思わず口をぱくぱくしてしまう。このサーヴァントは、自分に何を言わせたいのだろう。]
…そんなの、言わなくたってわかるでしょ!
[この鈍感男!、と心の中で叫びつつ、眉間に思い切り皺を寄せて睨む。]
…そうね、少し呪符を用意してからの方がよさそう。
[おそらく、キャスターと思われるサーヴァントと対峙した時の状況を思い出して、そう言った。]
−蒲生邸−
[起きてすぐ、キャスターから昨夜の出来事を報告された。
銀髪の少女と、仮面のサーヴァントを思い出す。
戦うべき敵が減った。ただそれだけ。]
――そうか。
今日は中央ブロックに赴く。支度を急げ。
[短く告げて、自身も準備を始めた。]
/*
うーむ
キラーのゲラゲラ笑いは萌えるのだけども。
ん? という部分があるので、割と結構疑ってたりというか。
バーサーカーと同じIDの人が他にいなければそちらを疑っているところです(何が
がもーさんとセイバーは中身すぐわかったんだけど。がもーさんは始まる前のコメントで……。
とかいって違ったらあれだな。
ふむ、そうなるとだな。
俺が思っている方で正解って事でいいんだな。
[そうして、睨んでいるアカネの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。]
そうだな、用意は万全にしておけ。
もし誰かが脱落したとしたら、一気に局面が動く可能性がある。
[「決闘を申し込んでみるか」
そう言った梧桐の目を左之助はじろりと見る。
やや沈んではいるが、確かな決意を秘めた光。
おそらく、なけなしの勇気を振り絞ったのだろう。]
……いいぜ、やろうか。
[左之助にとっては今まで会ったサーヴァントの中で、シエラは最も戦い難い相手である。
戦いの場で相手に躊躇無く槍先を叩き込めるのだろうかと自問するが、上手く想像ができなかった。
女の姿とは言え向こうも英霊である。かすかな気の迷いが致命傷にもなりかねない。]
自分を試すにゃ良い相手かもしれないな……。
[梧桐にそう言いながら、左之助は自身の気持ちを引き締める。]
…知らないわよ!
勝手にそう思ってればいいんじゃないっ!?
[撫でられるのに身じろぎしつつ、曖昧な返答をする。
続く信長の言葉に、一瞬空気が冷える。少し硬い顔で、ゆっくりと頷いた。]
うむ、今の反応で確信した。
嫌とは言わないからな、アカネは。
[くっくっと笑いをかみ殺す。
その後、優しく撫でていた手を離すと床に座りなおした。]
それじゃ用意を済ましてしまえ。
ちゃんと飯も食っておけよ?
[信長の軽口に、今度は返答せずに、ふいっと顔を背けた。]
…ごはん、と言っても、当面これしか無いんだけどね。
[苦笑しつつ、箱から昨日と同じ携帯食品を取り出すと、ピリっと*封を開けた*]
[スパルタクスは今回の聖杯戦争の資料を取り寄せた。中には一つのクラスの脱落が報告されている。そこに至るまでの詳細な顛末。
「座」にいる自分の分身も呼び出され、参加しているらしい。関心がないわけがない。スパルタクスは一字一句余さず読んでいた。
しかし、どうしても腑に落ちないことがあった。]
バーサーカー?
仮面のサーヴァント?
ばかな!
奇妙奇天烈愉快痛快崩壊怪しさ全開。
そんな英霊が存在するわけがない! 英霊たる証、宝具すら使用していないのがその証拠!
だのに。
よりによって私の名を騙るとは……。
小癪也!
どこのどいつだ!
[スパルタクスは資料を握り潰した。]
[
――……それにしても、と。
身支度を整えながら、小さく嘆息する。
中央ブロック――あの街区を訪れるのは、気が重かった。
主には知らせていないが、あそこには、自らの罪がある。
召喚されて、最初の夜――主が意図したのは、恐らくは霊脈を通じての吸収。
しかし、手段の指定がなかったためか。
"霊脈で繋がる地域の民"から、"精を吸って蓄える"――令呪が自らに強制したのは、その二点だった。
結果。
深夜の街を探索するうちに遭遇した"霊脈で繋がる地域の民"を前にして、令呪の強制力が――主も自らも望んでいなかった方向にと――働いたのだ。
あの記憶が、あの街にはある。恐らくきっと、二度と消えない罪の記憶が。
]
――……いつでも出られます、マスター。
[準備を終えて、+主へとその旨を伝えた。+]
[――解説しよう。
今回、瀬良悠乎によって呼び出されたスパルタクスは、バーサーカーというクラスで召喚された。故にクラス特有の側面が付加された。
狂戦士クラスを召喚するための二節を組み込んでいない限り、『狂戦士』に該当する特性が必要となる。
即ちあの仮面は、狂戦士としての素質を象徴した特別なものだったと言えるのだろう。
座のスパルタクスが憤慨しているのは多分そんなところである。]
いかん。怒鳴れば腹が減る。
腹が減れば動きも鈍る。
[食せそうな雑草を漁っている。]
おお、これはまだ茶色くないようだ。
こちらも白化は少量……食せないこともない。
――四日目午後/自宅マンション(東ブロック)――
[寒気で目が覚めた。見れば太陽はとうに姿を消しているのか、視線をやった窓の外は暗闇で何も見えなかった]
……っ、あ、違う……。
[寒気は時間帯のせいでなく、闇は太陽のせいでない。誰かが、このマンションの近くで魔術を使っているのだと気付く。様々な物を黒く塗り潰すような、魔術。それが何なのか、この時みなみが知る事は無かったが、嫌な予感に体を起こした]
[みなみの呼びかけに対する返事はなく、部屋に気配を感じる事も出来ない。意を決して扉を開ければ、案の定、伽藍とした空間がただそこにあるだけだった]
キラー……?
[キラーが負っていた怪我の事を思う。英霊ではなくとも、キラーは決して弱いサーヴァントではない。だが、決して万全な状態ではなく、対サーヴァント戦を一人で勝ち抜けるとは思えなかった。胸を支配する猛烈な不安に、思わず玄関へ向かう]
出かけるのは良いが、戦う場所はどうする。
昨日の屋敷って手はあるが、令呪反応した以上向こうも警戒してるだろうし、日中だしなぁ。
流廻川辺りにでもおびき寄せるか?
あそこなら人通りも少なそうだ。
[出かける支度を整え、「気配遮断」をしたまま玄関をくぐる。]
[原田左之助と名乗ったランサー。真名は解らぬものの、女のキャスター。アーチャーのダビデ。原田が口にした信長と言う名前のサーヴァント。
キラーが何かのクラスを則ってこの場に存在するとしても、ライダー、バーサーカー、アサシンの三つのクラスのうち二つはこの場に存在するはずで、みなみはその二つのクラスのサーヴァントに関する知識を何一つ持っていない事に気付き、唇を強く噛んだ]
今行くのは、自殺行為、だもんね……。
あの魔力は、サーヴァントじゃなくって、マスターだと、思うけど。
せめて、使い魔を派遣すれば。
……うー、無理だよね。結界があったら、魔術師の使い魔です! って宣言してるのと同じ事になっちゃう。
[みなみは動物を使い魔として使役する事を得意としない。人払いの結界を張られた場合、使い魔に仕立て上げた一般市民の命が危険に晒されるだろう。それに無論、ダメージはこちらにも来る]
信じる、しか、ないんだよね。
――信じよう。
[目を閉じて、みなみは自分とキラーとを繋ぐ回路に意識を集中させる。頭に浮かぶ、魔術師キラーの言葉と顔。弱りきった様子と、自嘲的な笑み。呼び出した時に見た、あの不気味な笑い声をあげる影と、みなみと同じ魔術師でただの人間だと言ったキラーは違うように見えてならなかった]
群体としての力を使える方が、そんなの、強いに決まってるけど。
サーヴァントとして、聖杯戦争を望む者としては、キラーにそう在って欲しいと思うべきなんだろうけど。
でも――
[ふと胸にキラーの声が聞こえたような、気がした。だがその声が齎したのは無事を確認出来た事による嬉しさではなく、より濃い不安の色。みなみは玄関に座り込んだまま、祈っていた。魔術師の彼が主導権を握ったまま、部屋に戻ってくると]
[明らかに腹を下しそうな雑草を集めたスパルタクスは満悦であった。しかし副菜だけでは満たされない。
主菜を集めるため、スパルタクスは鉄を削り始めた。]
焦げた鉄がまた美味いのだ。
歯ごたえも十分。
これを超える主菜を、私は知らない。
気取り屋のローマの民にはそれが分からんのだ……。
−蒲生邸→中央ブロック・駅前−
[キャスターを振り返る男のあまりの多さにうんざりしながら歩く。]
開けた場所、建物の死角、あらゆる情報を頭に叩き込んでおけ。戦場で使えるものは全て利用するのだ。
それと、こんなところで仕掛ける馬鹿はおるまいが、魔力の感知は怠るな。
投票を委任します。
眞奈 みなみは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
眞奈 みなみが「時間を進める」を選択しました。
[スパルタクスは食事を始めた。
メニューは雑草と鉄の塊。ビタミン(?)と鉄分(?)が程よく配合されている。
故に擬音はこうなる。]
[*むしゃむしゃ*。]
―― 蒲生邸 ――
………留守、だね。
[ これは参った。
道すがらにどうやって流廻川まで誘き寄せようか、いきなり戦いとかなった場合はどうするかなどを話し合いながらやってきての空振り。ちょっと寂しい。
どうするよ、という左之助の言葉に。]
うん、まあ、まずは戻ろうか。
[ 軽く肩を落としながら、中央ブロック方面へと足を向けた。]
[
指示されるまでもなく、周囲の探査は続けていた。
何しろ、主の言うところの"こんなところで仕掛ける馬鹿"には、一度、出会っている。
まだ人の疎らな早朝と真昼間では、自ずと事情も異なるだろうが、警戒するにしくはなかった。
]
はい、マスター。
――……この場で戦闘を挑まれる可能性が低いのでしたら、指輪を外しますか?
それだけ感知範囲が広がりますし……一般人の視線を逸らせる暗示くらいなら、心得ていますが。
[
ふと思いついて。
人の多さに辟易しているらしき主にと、付け加えた。
]
そうだな。
[キャスターの提案に頷いて、草の指輪を外した。]
俺が知らないマスターやサーヴァントも多い。見つけ次第知らせろ。戦闘しないにしても先手は取りたい。
蒲生 延が「時間を進める」を選択しました。
[肩を落としている梧桐に「しまらねぇなあ」と声をかけ、後に続いて歩き出す。
人通りの多い、中央ブロック方面に向かうようだ。]
令呪頼みって奴かい。
あそこで反応した所で、相手に何を出来る訳でもねぇが、まあ伝言くらいは言えるかね。
[そうつぶやく。]
[
主に倣って、草の指輪を外す。
抑えられていた魔力が解放され、視える範囲が数倍にと広がる。
――しかし、そうだったか。
言われてみれば、自分だけが接触して、主が出会っていない相手も多い。
共通した認識があるのは、織田信長――セイバーの主従と、戦争を脱落した仮面の主従。
それに、商店街で一文字――昨晩の戦いで槍を用いていたから、恐らくランサーだろう――と、少年の姿を確認したくらいか。
]
[
あの少年については、ライダーかアーチャーのどちらかだろう。消去法で導いた答えだった。
――仮面のサーヴァントと、闇色の影。
両者と戦った経験からして、そのいずれかがバーサーカーである可能性は高い。そう判断していた。
そうでない一方は、恐らくアサシンだろうとも。
いずれも近接戦闘を挑んできたことからアーチャーではあるまいし、徒歩のライダーというのも考えにくい。
なにより、あの狂気。
狂気といえばバーサーカーの専売特許のように思われるが、アサシンとて相応のものだ。
彼の暗殺教団に君臨する、山の翁――"大麻飲み"の長。
その狂気と狂信は、彼らの標的と成り得る立場であった以上、よく知っている。
何しろ、あの当時、暗殺者の影に怯えぬ王侯貴族など存在しなかったのだから。
そういうことで、あの少年の正体さえ知れれば、未だ巡り合う機会のない、六騎目の相手の正体も知れるというものだった。
]
―― 中央ブロック・駅前 ――
すげー人ごみだな。こんなんじゃ令呪反応しても解らないんじゃないのかい。
[交通の要所なのだろう、行きかう人の多さに慣れてない左之助は辟易する。]
一応俺も魔力に注意を払うが、これだけ人が多いと顔知らない相手じゃ解んねぇかもな。
[そう言って、辺りに魔力を感じないか気を配る。]
[そこまで思考を巡らせて。広がった感知野のなかに、二つの魔力を感じた。]
――……マスター、早速ですが。
魔術師らしき反応と……それと一緒に、もう一つ。かなり微弱な魔力ですが……感じ取れます。
[その詳しい方向と距離を、主へと伝えた。]
さっそく来たか。
この状況で仕掛けてくるような相手であれば、結界を仕掛けたエリアまで引き込む必要がある。
一旦、視認できる距離まで近付くぞ。
[キャスターの示す方向へ向かった。]
うん、やっぱこんな手探りでうろつくのも効率悪いね。
[ 如何にもな場所にいくか、人通りの多いところに行くか。後者を選んだことを軽く後悔しつつ駅前を歩く。]
…と?
[ 突如、強大な魔力を感知して左之助の顔を見る。]
なんか、当たったらしいよ。行こう。
[ 発生した魔力源へと、足を向けた。]
らしいな、すげぇでかい魔力を感じる。
これは相当な奴だぜ。
[梧桐の少し前に立ち、楊枝をつまみながら歩みを進める。
ふと行き交う人ごみの中に、一際目を引く女性の姿が目に入った。]
シエラか……やはり英霊だったのかい。
横にいるあの男が召喚者か?
[彼が武家の末裔と聞いていた左之助は、マスターの方にも興味があった。
2人をまじまじと見詰めながら近づいていく。]
[探知した魔力の先に、見知った顔の主従を認めて。小さく、溜息を吐いた。]
――……よりにもよって、ですか。
[
魔術師の本拠を堂々と訪ねるような相手だ。
よもや、この雑踏のなか、問答無用でということはあるまいが。
――念のためにと。
東ブロックのビル街、北ブロックの公園、そして流廻川への移動経路を脳内で組み上げておく。
]
[2人の下に来ると左之助は軽く手を上げて、話を切り出す。]
よう、シエラ!
今、お前の家行って来たんだけど留守だったんでこっちに来たんだわ。
お前、大した魔力じゃないの。
始めてあった時は全然魔力感じなかったけど、猫かぶってたのか、初対面と言え人が悪いや。
[そう冗談めかして言った後、脇にいる男の方を向く。]
お初にお目にかかる。俺の名は原田左之助、幕末の剣士だった男だ。
聞けばそちらは武家の末裔とか。
今の世の武家も体を鍛えたり、帯剣したりしてるのですかね。
もしそうなら、1回サシで手合わせしてみたいもんだ。
まあ、横のお嬢さんが許してくれないとは思うが。
[左之助は視線をシエラと蒲生の間に走らせて、楽しげにそう言った。]
ここからが本題なんだが、決闘を申し込みに来た。
場所は流廻川付近。あそこなら人通りもほとんど無いだろうからな。
細かい場所は、まあお互いの感知で解るだろ。
今から共に移動しても良いんだが、途中人気の無い所も多々あるからなあ。
行くまでにぴりぴりするのは性にあわねぇ。
あと俺たちは目立ちすぎるってのもある。
時間は3時間後くらいでどうだい。
[そう一気にまくし立ててから、相手の反応を見た。]
え、ええと……。
[
目を白黒させて、言葉を詰まらせる。
最初は本当に気付いてはいなかったし、騙すつもりもなかった。
が、結局のところ、厚意を利用する形となったのは事実ではあった。
サーヴァント同士として出会ったなら、どのように言われても仕方があるまいと、覚悟はしていたのだが。
それが、笑顔で決闘を申し込まれるとは。
]
[ふざけている様に見えて、左之助にも計算はあった。
要するに「やり合いたいけど女が許してくれないよね」と言っているわけで、武士が相応の自尊心を持っていれば受けるだろうという思いがあった。
もちろんそれは、彼が生きてたころの概念ではある。]
――東ブロック・マンション――
[気配遮断。アサシンの能力をベースにするキラーのそのスキルは、かなりの質を誇る。あの状況で追っ手から逃れることができたも、それが無ければ難しかったであろう。
玄関で意識を失っているみなみを一瞥し、割り当てられた部屋へと入る。
気配遮断は続けたまま、部屋の隅の影へと身を潜めるように座した]
丁寧な挨拶痛み入る。貴殿といい、信長といい、堂々としたものだな。
蒲生延、蒲生家24代目の当主だ。先日は大した持て成しも出来ず失礼した。あまり気の利かん奴でな。
[言ってキャスターを見やった。
続く言葉を聞いて、全身の血液が逆流するような悦びを感じる。こうなってはもう止まらない。]
良かろう。“死損ね左之助”の槍捌き、存分に楽しませていただこうではないか。
[今にも抜きそうになる逸りを抑えて、ランサーを睨みつけながらその提案を呑む。]
3時間後だな。了解した。
よいな、キャスター。
投票を委任します。
キラーは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
キラーが「時間を進める」を選択しました。
おっと、その名を知ってくれているのですかい。
さすがは武家の末裔、油断がならねぇや。
先日の事は気にしないくだせぇ。こちらも突然の訪問でしたからねえ。
話は決まった、ではこれにて失礼。
じゃあな、シエラ、3時間後に会おうや。
[左之助は来た時と同じように軽く手を上げ、去っていく。]
おい、ツカサ、何鳩が豆鉄砲食らったような顔してるんでい。もう行くぜい。
[左之助はそう言うと、梧桐を連れて流廻川へと*向かった。*]
決闘の申し込みとは律儀なことだ。
ゴドウという魔術師、なかなか面白い。
予定が変わった。一旦戻るぞ。
[冷たい笑みを浮かべたまま屋敷に*戻った*]
[
――反対しなければならなかった、のだろう。
もっとも、その結果がどうなるかは明白だった。
主は令呪を使ってでも、一文字――原田左之助の挑戦を受けただろう。
]
――……三時間、ですか。
[
それまでに、主を翻意させることは出来るだろうか――いや、出来るはずもない。
そのような説得を試みるだけ、無駄なことだった。主の歓喜に水を差し、機嫌を損ねるだけになるだろう。
そう――……主は最早、止まるまい。
一切の手出しを認めず、ただ一介の戦士として、英雄にと挑むに違いない――英雄にだ。
近代の英雄とはいえ、英雄は英雄――もしも、主がそこに届くとすれば。それはきっと。
]
――……考えたくは、ありませんね。
[大股で歩む主の背を眺めて、*+小さく首を振った。+*]
―― 流廻川・昼前 ――
さてと。どのくらいで来るものかね。
[ 河原を一巡りし、人避けの結界を張り終えて左之助へと話しかけた。]
罠らしき結界がこの河原一帯に仕掛けられている。解除を試みたがどうにも私では手の施しようがない代物だった。あのシエラというキャスターが仕込んだものかも知れないし、誘い込まれないよう注意してくれ。
[ 感知できた限りの、罠の大まかな範囲を説明する。その配置を完全に感知できた自信がない上に、どのような罠かさえ把握できていない。どれだけのアドバイスになるかは判らないが、調べられた限りの旨を伝えた。]
[見知らぬ女にどつかれた。
スパルタクスは危うく鉄を丸呑みしそうになった。しかしそこはスパルタクス。何とかごっくんしてみせた。
改めて女を見る。
仮面が無い、と口を尖らせるということは、記録にあった今回の最初の脱落者に違いない。
青年はじっと見つめた。
手にはグラディウスで削った鉄の塊。見るからに舌が腫れ上がりそうなほど辛そうな、赤い雑草がたっぷり振りかけてある。
両者の間に流れる重々しい雰囲気。
胃の腑に落とす鉄より重く、研がれた刃の殺意より鋭く、青年は女を見つめ――]
――――食うか?
[真っ赤な鉄を差し出した。]
−蒲生邸−
[屋敷に戻って何をするでもなく、静かに過ごしていた。蒲生正宗の手入れを終え、布で包んだ後、身支度を整える。
ランサーたちと別れてから、もうじき3時間が経とうとしていた。]
そろそろ時間だ。行くぞ、キャスター。
何でぇ、既に敵の手が入っているのかい。向こうさんも本気だねえ。
向こうが呼び出しに乗ったのは、案外このためもあるのかもしれねぇな。
ふーむ、結界の位置はなるべく頭に入れるが、位置からして全部回避は難しそうだ。
[左之助はそう言うと、辺りの魔力に気を配りつつ、キャスターたちを待った。]
[
――……流廻川へと向かう道を、主の後ろについて歩く。
主と左之助が戦うということは、同時に、自分がゴドウという魔術師と相対することになる。
まさか、一対一の決闘を申し込んできた側から、介入はするまい。
だが、仮にもこの身はサーヴァント。
人間の魔術師を相手には、遅れを取ることは、まずないだろう。
だからこそ――……どうやって対応するべきか、難しいところだった。
]
――……見えてきましたね。
ん……どうやら、人払いの結界を張ったようです。舞台は整えたと、そういうことでしょうか。
[迷いを残したまま。河原に立つ二人の影へと、視線をやった。]
−流廻川−
なるほど、あちらも準備は万端というわけか。
[キャスターの言葉に冷たい笑みを浮かべる。]
キャスター、戦闘中ランサーが範囲に入ったら結界を発動させろ。それ以外は俺たちの邪魔をしなければ何をやっても構わん。
――ただし、殺すなよ。
[蒲生正宗の戒めを解き、ランサーたちに近寄った。]
待たせたな。
−流廻川−
なるほど、あちらも準備は万端というわけか。
[キャスターの言葉に冷たい笑みを浮かべる。]
キャスター、戦闘中ランサーが範囲に入ったら結界を発動させろ。それ以外は俺たちの邪魔をしなければ何をやっても構わん。
――ただし、殺すなよ。
[蒲生正宗の戒めを解き、ランサーたちとの距離を縮める。]
待たせたな。
こちらもいま来たところですよ。
[ お約束的に、言葉を返す。]
人避けの結界は施しておいたけれど、何があるか判らん。他者を巻き込まない事だけは約束してもらえるか。
[ すでに戦う気満々に見えるガモウに話しかけながら、左之助を前に出すかのように、一歩後ろへと下がる。]
おうよ、早速始めようか。
[左之助は蒲生にそう声をかけ、槍を手にキャスターの姿を見る。
彼の今の目標はキャスターである。
先ほど会った時、蒲生に「手合わせを願いたい」とは言ったが、それは決闘を受けさせるための挑発であり、まさか本当にマスターが人の身で自分に向かってくるなどとは今の左之助には予想できてはいない。]
ツカサ!気合入れていくぞ!
[左之助は槍を手にキャスターに向かって走り始める。]
[
魔術師を殺せば、左之助が消える可能性がある。
単独行動スキルの有無や現在の魔力量にもよるが、敵が消えることは許さないと、主はそう言っているのだ。
各種の強化呪文を主へと掛け終えて、半歩。
]
――……どうぞ、ご存分に。
−東ブロックへ移動中−
[さて、現在2人は肩を並べて――むしろくっ付きそうな程近づいて歩いているわけだが、これにもひと悶着あったりした。
茜が『近すぎる。もっと後方に離れろ』と主張するも、信長の『不自然で怪しい。何より咄嗟の時に反応できない』という発言により主張は却下され、現状が出来上がっているというわけだ。]
黙ってばっかりだとつまらんぞ。
少しは口を開け。
………………。
今のところ、善方の願いを持っていそうなのはランサーかキャスターなわけだが……。
[鉄をもぐもぐしながら観戦したい。]
さて、どちらが「主役」となるかな。
よかろう。
[ゴドウの言葉に頷いて蒲生正宗を構え、己の獲物目掛けて駆けた。]
どうした原田。
貴様の相手はこの俺だッ!
[弾丸のように走るランサーに向けて、切り払いの一撃を仕掛ける。]
[ 基本、聖杯戦争において戦闘を行なうのはサーヴァントだとツカサは考えていた。
ただし、相手のマスターを狙うのは戦術として有効なものであること、また、ガモウが武闘派魔術師である事から自分が狙われる可能性は充分に考慮していた。]
勿論だ。こちらは気にせず全力で行け、一文字!
[ 三本の絵の具を取り出すと、指に挟みいつでも動けるよう、戦場全体に意識を拡大した。]
[苦虫を噛み潰したような表情で、横を歩く。]
…口を開いたら、罵倒しか出てこないんだけどっ!
[ぷりぷり怒りながら、高いビル群が聳え立つ方へ向かう。]
……正直、この辺は、私の力が落ちるわ。
この場所での戦闘は、出来れば避けたい所ね。
[
身構える魔術師に、さして動揺の色はなく。むしろ、戦う気でいるようだった。
余程の自信があるのか、どうか――どうやら、一つ、確かめねばならないらしい。
]
――……ゴドウ様、でしたね。
戦うにせよ、何にせよ。一つ、伺いたいことが。
あの仮面の主従とは、どういった御関係でしたか?
[
昨晩、あの少女を看取ったのは、この男。
もし仮面の主従と協力関係にあったのならば、自分の情報を得ている可能性があった。
宝具は兎も角として、真名を知られているかどうかだけは、確認しておく必要があった。
]
さて。
観戦の間に反省会でも行おうか。
[仮面をはめた。]
まず、剣を勢いで折った辺りから何かおかしくなったわけだが。
実は最初は、「瀬良悠乎の魔術で修復できる」ことになっていたのだ。なので安心して叩き折った。一本はセイバーに折られたものだが、もう一本は自身で折ったものだ。
しかし途中から「サーヴァントの武具を魔術で修復出来るのは如何なるものか」という疑問が生じ、段階的に「魔術で武具の修復は不可能」となってしまった。
投影魔術を習得しているならまだしも、私はバーサーカーだ。自力で武器の修復はもちろん出来ない。ということで武器は失われた、ということだ。
今になって思えば、セイバーの自然治癒で万全に近いほど回復しているのだから、私も自然回復で武器が直ることにしてもよかったと思う。
何だと?!
[蒲生に対して油断していた左之助は、切り払いへの反応が一瞬遅れ、脇腹を浅く切り裂かれる。
身を翻して体勢を整え驚愕の目で蒲生を見るが、やがて目の色に喜色が浮かぶ。]
ハッ……アハハハハ!
こいつあ、こいつあ……面白れぇ!
あんた気に入ったぜ!いいぜ、遊ぼうか。
[改めて蒲生に向かい、槍を構えなおした。]
宝具も使用のタイミングは無かったし、唯一、使用出来そうなキャスター戦は見事に時間切れだった。翌日、キャスターを四次元迷子にしてしまったことから考えると、戦闘を持ち越すべきだったかもしれないとも思う。
そしてまともな戦闘を一度もしていないということにも繋がるわけだが……こちらは私が悉く戦闘の返し方を間違った。
互いの呼吸を読む術が無ければ戦闘は成立しないと思い知った。もう少し精進しようと思う。特に最期のキラーとの戦いは迷惑をかけてしまったな。
ランサーに介錯を貰おうと思った時期もあった。
尤も時間が時間だったので、進言する勇気は無かった。今になってはこの判断は正解だったと思う。仮にツカサに頼んだとしても、彼はとどめを刺した事実に妻を思い出してしまったかもしれないからだ。
[マントの中から漁師の槍を引っ張り出した。]
後、マントの中の武器とか仮面とかは申請していない事柄だったので、戦闘に使用出来ないという制約は課してみたが。
やりたい放題に見えたら申し訳なかった。
[ 左之助に斬りかかっていったガモウの姿に一瞬動揺を見せるも、顔には出さない。二人がかりで左之助を攻撃するのも、確かに有効な戦法だと考えたからだ。
だから自身へと相対し話しかけてきたキャスターの姿には、背筋にひやりとした汗が流れた。
――参ったね、キャスターが全力でこちらを狙うとなると流石に厳しすぎる。]
さてね。それを聞いてどうするつもりだい?
[ 元より答えられるほどの関係を持っていたわけでもない。そして何を意図した質問なのかから読めなかった事もあり、時間稼ぎを兼ねて質問を質問で返した。]
[自身も強いものとの対決を願っていたが、果たして人の身で英霊と戦うと言う発想が出来ただろうか。
そう左之助は自問する。
すぐに答えは出ないが、実際にそれをやろうとしている男が目の前にいた。
その事に喜び、左之助の気持ちが享楽に傾いていく。
すぐに決着をつけるのは勿体無い気分だ。
相手の腕前を見ようと、軽く踏み込み、浅い突きを放ってみる。]
[髪を撫でられて、ひゃぅっ、と小さく叫んでしまう。]
…くすぐったいからやめてよっ!
[大きな声で怒鳴ってしまい、はたと気付き、手で口を押さえた。
ふくれながら、数歩歩くと―]
……っ。
[妙な違和感を感じた気がして、立ち止まる。
神妙な顔で、隣を振り向いた。]
…待って、ここいら一帯に結界が張られている…。
[
どこまで自分の情報を得たのですか――まさか、馬鹿正直にそう訊ねるわけにもいかない。
仮面のサーヴァントと、交戦もせずに同行していたことから、少なくとも敵対はしていなかったことは確かだが。
]
――ええ、まあ。
あの少女は、あの歳で、私の主を圧倒するほどの才能を持っていました。
そんな彼女が、他者と慣れ合ったというのは、少し興味がありまして。
さすがはサーヴァント、今のをかわすか……ッ!
[手応えがあったと思われた一撃をかわされ、驚きと共に歓喜の声を上げた。槍を構えなおすランサーに対し、正眼に構える。]
気に入ってもらえて光栄だ。
[笑みを浮かべて得物を構え、再びランサーとの距離を詰める。]
む。
ランサーが戦闘享楽に傾きつつあるのか。
…………。
いや、聖杯の情報から考えて、最後に聖杯を破壊する選択肢も残されているか。まだだ。まだ地上が混沌に塗れそうだと判断するには早い。
きっとなんとかなる。はずだ。
怒鳴るな怒鳴るな。
[茜が己の口を押さえた手を、上から押さえる。]
まったく、純な奴だ……っ。
[その時、体全体に違和感が走る。]
ああ……、誰か仕掛けてるな。
[距離を詰めたところに襲う突きの一撃。常人であれば避けようも無いが、日頃の鍛錬が延の身体を動かし、キャスターの強化が助けた。]
――ッ!
[右に避けながらさらに距離を詰める。避けきれず、左の脇腹を掠める穂先。
痛みにも怯まず、ランサーに切り上げの一撃を放った。]
[目の前の鉄に向かってハリセンを飛ばした。]
いらん。
スパルタクス、その顔は私という存在を忘れたか。ならば、仕方ないな。
私も……本来の私に戻ろうと思う。
本来の私、と言うか、なりたかった私だな。
[少し考えた。リスクが大きいと判断する。けれどやってみたい事柄だった。]
[ 何かを、誤魔化したな。
説明された理由に心の中で否を唱える。主が生身でサーヴァントと相対しているこの期に及んでその質問は悠長すぎる。
考える。この状況下でわざわざ質問してきたのには勿論、意味があるのだ。察するに、何かを危惧しての確認なのだろう。であれば――このキャスターは、ハルカたちに正体を知られているのではないか。ならば…。]
そうだね。こんな立場での出会いでなければ、もっと判り合えただろう。惜しい奴らを亡くしたと思ってる。
[ どういった関係だったか…その質問に、軸をぶらした回答を返した。]
キャスターの眼から見ても、立派だったかい、彼女の才覚は。
[ そして、会話を延長するように質問を投げた。]
口調を変えるのは後回しにして、バーサーカーのことをなんと呼べばいい。
スパルタクスって長いんだ。
語感も硬いし。
スパたんでいいかな。スパたんっていうと、別の人を思い出すんだが。
それともお父様がいい?
……………………。
………………。
…………。
………。
どうした。
ツカサの角で頭でも打ったのか?
[女があまりにも妙なことを言い出すので、女の頭を揺さぶってみた。面識は無い……はずなのだが、なんとなく仮面をかぶるのが恐ろしい。
今は記憶を巡るのはやめておこう。]
いや、君が認識しているスパルタクスと私は別人だ。
私があのような無様な戦いをするわけがあるまい。
[蒲生の切っ先が体をひねった左之助をかすめ、服の一部を裂く。うっすらとにじむ血。]
かわしたつもりだったんだがなあ。
[どうやら相手は魔力による強化が行われているらしい。
軽くステップを踏みながら左之助は距離を置く。]
これは、なめていると危ない……か。
じゃあ、ちょいときつめに行くぜ!
[今度は思い切り踏み込み、わき腹めがけて槍の柄を振る。
鋼の塊が風を切り音をあげながら蒲生を襲った。]
…キャスターね。
[先日の戦いの時に、踏み込んだ結界と同じ波動を感じる。
さすがに、不利な土地の上に、結界まで仕掛けられていては、手も足も出ない。]
…出来るかどうかはわからないけど、解呪してみる。
このままでは危険だもの。
[そう言うと、大きく深呼吸してから、印を組んだ。]
――……そうですね。驚くほどに、魔術の展開が早く、巧かった。
あの歳であれならば、長ずれば、どれだけのことが出来たのでしょう。
それに、私の主は、彼女の術を"魔法"と呼びました。本当かは判りませんが。
この時代には、"魔法"とされる術は五個しかないそうですね――私の時代には、まだ二桁ほどはあったものですが。
兎も角、私などより余程、魔術師らしい魔術師であったと思います。
[
魔術師が立ち位置を変えるのを、特に意味があるとも思わず。
名を知ることもなかった少女の評価を、淡々と口にした。
]
…神は社殿 仏は仏殿
山の神は山へ
水神は川へ
身膚を離れて
眷属集めて
白紙 御幣 花べら
花みてぐらへ
[いつもなら、足元からわずかながらにも補助してくれる、大地の力が無い。加えて、魔力はAランクのキャスターの敷いた陣。
じわり、と、額に汗が滲む。]
別人と言われてもな。仮面を被ってみるといい。
バーサーカーも猫がすき、というわけでもなかったとは思うのだが。
それに、今の内はいいかもしれないが、明後日には又新しい面子がやってくる。そのときどう対処するつもりだスパルタクス。
後覚えてないだけで、実際にあんな戦い方をしたのは自分だということを忘れるな。
私もだが。
[目を、ぎゅっと閉じて、念を込める。]
…奥々九奥かんぴら
いかずが山へ 御引きのけを
(お願い、届いて…)
―― 頼み 参らする
[一瞬、青い光が茜を取り巻き、どこかでパシンッと乾いた音がした。]
ふ、加減などするからだ。
[ランサーの軽口に答える。しかし言葉とは裏腹に、ランサーの身のこなしから己の攻撃がこのままでは通用しないことも悟った。]
結界は、まだか……。
[ちら、とキャスターの様子を伺う。
――と、そこに襲ってくるランサーの一撃。咄嗟に蒲生正宗で受けようと試みたが間に合わない。]
グ、う――ッ!
[ランサーの一撃が脇腹を抉るのと同時に、身体ごと吹き飛ばされた。
そのまま河原を転がる。]
[仮面を見た。何か嫌な予感がする。
かぶってしまうとその場で世界が崩壊してしまいそうな。
じわり、汗がにじむ。
きっと赤い鉄が辛かったからに違いない。]
フ。
私は部屋の隅にすっこんでいよう。
断固としてあれが私だとは認めないぞ。
はっきり言おう。
印象が薄すぎる!
故に皆、私のことは覚えてなどいまい。問題はない。
[なぜか涙が流れた。不思議なものだ。
見られるのは恥ずかしいので隠すものを探した。
手には仮面。
おおこれはちょうどいいところにちょうどいいものが。
仮面をかぶってそっぽを向いた。]
―中央ブロック・ホテル―
[少年は怒っていた。昨夜の聖の行動は、マスターとしての一線を踏み越えていると明らかに感じられたためだった]
――魔力の消費よりも、問題は行動の意図です。
相手はキラー。アサシンの能力がベースとすればマスターに
とってはどのクラスよりも危険な相手です。
何故、自ら隠れ場所を明かすような真似を?
[生前の軍歴からしても――或いは、魂に刻まれた苦い罪の記憶からしても。戦いにおいて、自軍の損害は当然のもの。だが、それを自ら招くような事は。罪、だった]
――ヒジリの魔術、拝見しました。確かにそれなりの威力はある。
しかし、私にとっては脅威ではありません。
この身に帯びた、主のご加護の前には。
あの程度の詠唱規模の魔術では、貫通できないのです。
同様の能力があの場に居たサーヴァントに備わっていたら、
どうする心算だったのですか?
[憤りが言葉を包む衣を剥ぎ取っていく。
評価や批判ではなく、非難の刃をマスターに連ねた]
――あの魔術師を助けたかったのですか。手遅れだったのに。
それとも、助けたかったのは。
――他人の死をただ傍観している、自分の心だったのですか。
[一瞬して、言うべきでない言葉だったと気づく。
それらを受けても、気持ちを切り替えて戦況の分析に移った青年に、内心で謝罪の言葉を述べた]
[はぁ、と大きく息を吐く。足元が少しふらついた。]
……全部消す事は出来なかったけど、結界の「楔」の一つは潰せたみたい。
効力を弱めるというか、綻びは作れたと思う…。
さすがに、キャスター。
魔力は段違いね…。
[ 魔法がまだ、二桁…。
何気なく喋る彼女の言葉から、彼女の存在していた時代の推測をはじめる。正体に辿り着くには、さすがに情報が足りない。]
魔術の頂たるキャスターにそう評されるとは、彼女も誇りに思うだろうね。…まあ、生きていたならば、だけど。
[ 視界の隅にて、左之助たちの戦闘を確認する。ランサーの英霊たる左之助に対して互角に近い戦いを見せるガモウ。参ったね、やっぱりかなりピンチなんじゃないかな。
焦りは、顔に出さない。代わりに、キャスターへと問いかけた。]
あんたんとこのお殿様、すごい気合いが入っているじゃないか。彼、どんな願いがあるってんだい?
反省点か……全体的に動きが硬かった。
もっと破天荒なPCにしておけば、昼間だろうが歩き回れただろうに。
魔術師協会のエリート、という身分だっただけに、その辺りの融通が聞かなかった。私は真面目だからな。
あと、こんな口調だった所為で、序盤とても喋りづらかった。返しに30分もかかっていた。だめだな。
そもそも、魔術系統の選択を間違ったように思う。
素直に火だの水だのにしておけば。
申請した後でそもそも魔術師には効かないのだから攻撃力としては余りないな、と思ったのだが。
一応基本は等価交換、だと思ってるから、切り取った時間をどこかで元に戻す、という作業が必要になってくる。それで補いきれなかった分は身体に溜まる。
生きてるうちは魔力でカバーできる。
けれど死んだら、カバーできなくなって朽ちることになった。
まだまだぁ!勝負はこれからだぜえ!
[左之助は振った槍を切り返し、刃のある部分を前にして、吹き飛び、転がる蒲生へと走り寄る。
気づかぬうちに結界へと足を踏み入れていた。]
おっと。
[ふらつく茜を後ろから抱きとめる。]
嗚呼、キャスター相手にそれだけできりゃ上出来だ。
相手は英雄の格を持つ魔術師、人の身じゃ抗う事すら困難だろう……よくやった。
歩けるか?
願い、ですか――……恐らく、きっと。
[
――いま、願いの最中にいるのだと思います。
答えようとした、そのときだった。
結界のなか、自らの世界にと侵入した異物の感覚。
咄嗟に、結界に魔力を通して。
セイバーの主従に対したものと同種のそれを、呼び起こした。
]
[七つではなく、六つのクラスで引き起こされた聖杯戦争。
不在はどれなのか。
昨夜までで判明しているのは弓兵、槍兵、殺人者。
東ブロックに張られていた結界の規模と精度は恐らく、魔術師のサーヴァントが作り出したものであろう。
残るは剣士、騎馬兵、狂戦士。
その中のどれかに仮面のサーヴァントを当てはめるなら、狂戦士が最も相応だと思われた。
とすると、ノブナガは経歴からして剣士と騎馬兵のどちらか。
ゆえに、不在となるのもそのどちらかではないだろうか。
それらの推測を、聖の居ない間にルーズリーフに書き留めた]
……すみません、ヒジリ。暫く、私は頭を冷やしてきます。
…………。
これは私の闇であり、封じようとした自身への戒めでもある。
友を殺す度に、私も私を刻んだ。
一人を殺す度に私も死んで逝く気がした。
仮面は奴隷としての象徴であり、狂気の具現でもある。
同時に、私が友を殺したように、私も友に殺されたかった願望でもあった。
そして此度の戦いで「消滅」した。
二度と被るつもりは無かった。
[仮面をコツコツと突付く。]
しかし、君がこの方が心地良いと述べるのであれば。
この姿で、もう暫く付き合うこととしよう。
[抱きとめられて、わたわたしながら]
あ、歩けるわよ。これくらい大丈夫!
……たとえ、相手が神様だって、負けるわけにはいかないわ。
そうでしょ?
[まだ少し荒い息のまま、にっこりと微笑んだ。]
投票を委任します。
アーチャーは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
それを言うのなら、私も消滅している。
もう、「私」であった存在はどこにもない。
そうだな、私も殺されたかった。いや、死にたかった、というのが正しいか。
魔術師としての闇に、もう飽いていたのかもしれない。
聖杯が手に入ったら、生まれる前までに戻りたかった。
叶えていいものではないとあきらめたが。
男らしいところだろう。
武に生きる姿は時に原初を写す鏡ともなる。
そう、研ぎ澄まされた刃のような。
純粋たる殺意、闘争本能、行動理念、そして――願望。
私もおん、ガボボボ
[マスターからあふれ出る凄まじい力によって発言が封じられた!]
[転がりながらも体勢を立て直し、走り寄るランサーに備える。脇腹の傷を気にしている余裕は全く無かった。
――とその時、ランサーの周囲の景色が歪んだ。躊躇せず、こちらもランサーに向かって駆け出して突きの一撃。]
――マンション一室→東ブロック――
[衝動的にマンションを飛び出した。扉が開く音と、待ち人の気配がみなみを起こした。帰ってきたキラーに声を掛けようと、起きようとして、そして、やめた。自らのサーヴァントは無事だった。けれど、みなみが待っていた人は帰ることが無かったのだと悟った]
何やってんだろう、わたし。
……バカバカしい。
[結界が作動し、左之助の体がずしりと重くなる。]
くっ……何だこりゃ……。
[左之助は自らの気を集中し、それを軽減しようと試みる。
それには成功したが、足が止まっていた。
瞬間、繰り出された蒲生の突きに反応が鈍る。
まともに腹に食らった。]
[目頭がじわりと熱くなった。悲しみと、苛立ちと、絶望。それらを感じるべきでないと思う理性。携帯電話を開き、ある番号に電話をしかけ、止める。その番号に掛けると言う事は、今までみなみが堪えて来た全ての事を溝に捨てると言う事だ]
――そんなの、出来るわけ、ないよね。
でも、でも、あと、どのくらい耐えればいいんだろう。耐えた先に何が待ってるんだろう。
[それまでの間、あの禍々しい影、キラーとやっていけるのだろうか。サーヴァントとして受け入れるべきなのかと言う思いを抱かずに居続けられるのだろうか]
[勢いで刃を突き出したところで、左之助の体がずしりと重くなる。]
くっ……何だこりゃ……。
[左之助は自らの気を集中し、それを軽減しようと試みる。
それには成功したが、足が止まっていた。
瞬間、繰り出された蒲生の突きに反応が鈍る。
まともに腹に食らった。]
君は何か勘違いしている。
[生まれる前からやり直せたなら。
自身を誰かが殺してくれることを願っていたから。]
その者が死したその時に、過去は決定している。
覆すことなど誰にも出来はしまい。
死した後は望めば現れ、望まれなければ現れない。
死者とはそういうものだ。
そして決定した過去も同じ。
自身で変えることも出来ないが、死によって決定した過去は、生者達によって評価され、或いは利用され、或いは深き眠りにもつくだろう。
故に人間は、
生涯の最期に、納得の行く結末を求めるのではないのか。
故に私は私の正体に納得している。
さあ、早くこの呪縛を解くのだ!
[スパルタクスを「仮面の下を口外してはならない」呪いと縛りが取り巻いている。それは一人の魔術師(マスター)から発されたものでありながら、令呪による強制、いや、世界の修正にすら勝る――!]
そ、その腹に、……金物を食わせるのは、久しぶりだろう……。
蒲生正宗の……味は、いかがかな……?
[傷口の痛みで気を失いそうになるのを堪えて、にやりと笑った。]
[ 風景の一部が、異界と化した。]
一文字?!
[ 結界に巻き込まれ、動きの鈍る左之助。ツカサの叫びが届く前に、ガモウの刀が左之助の腹に突き刺さっていた。]
生まれる前から、というのは、聖杯に願うとしたら、の話だ。
魔術師というのはおかしなものだ。
人の命を重んじているようで、軽く見ている。
その矛盾には気づいた。
私の犯した罪は消えない。そしてその罪は魔術師である限り、増えていくのだ。
ならばどうすればいい。
魔術師を辞められるのか。
やめられないと、知っていた。ならば私は命を断つしかない。これ以上、人を殺めないために。
私の生きた時間とは、なんだったのだろうな。
父や母の魔術を後に残すことも出来ず、己の望みもかなえられず、ただ死を望んだ。
29年を無為に過ごしただけではないのか。
その中に、少しでも生きた証があったとするなら、――あの猫を助けたことくらいだ。
…………。
此度の聖杯戦争の男マスター共は。
なぜ、こうもかわいらしいんだ。
どういうことだ、ハルカ!
[揺さぶった。]
―東ブロック・ビルの屋上―
[聖を置いてきた中央ブロックの方角を遠望する。
この街のランドマークである駅ビルは、陽光に照り返されて光っていた。朝夕の日課として行なっている探査への探知結果からは、まだ競争者たちに本拠を知られては居ない筈だった]
……さて。それにしても、あの通りを隔てて向こう一帯、か。
随分と広規模に編んだものだな……。
[少年が居るのは、昨夜、瀬良とバーサーカーが脱落した場所よりは幾分西よりの位置である。蒸し暑い湿度を含んだ風が、屋上を吹き渡っていった]
……この辺りで戦闘になるのは、まずいですね。
夜になれば閑散とする地域だと、ヒジリには聞かされたのですが。
[ゴドウの叫びに、武士二人の戦いを振り仰いでみて。]
――……まさか。
[そこで、信じられない光景を――少なくとも、想像はしていなかった――を、認めた。]
そんなに揺さぶるなバーサーカー。
確かにそうだな。
ここの男マスターたちはなんと。
ああ
バーサーカーも可愛い部分があると思ってる。
―東ブロック・ビルの屋上→路上―
[サーヴァントが放つ魔力の気配を探し、屋上から屋上へとビルを渡り移る。何番目かの跳躍をしようとした時、見覚えのある誰かの姿が、視界をよぎったように思えた]
……誰だろう。
……見間違いか? 見覚えなんて、ほんの数人しかいないのに。
[屋上の手すりから身を乗り出し、視覚を増強する。それは紛れもなく――]
……みなみ。また、一人なのか。
[瀬良悠乎の告白をじっと聴いていた。
仮面はじっとその顔を見つめていた。]
知っているか。
人間とはな、無理解による理解は出来ないものなんだよ。
そして無理解による思考は、他者の否定のみを生み出す。
貧者の思考を裕福なる者は理解が出来ない。
彼らは、望めば何をも手に入れる世界に生きているからだ。そして、手段を選ばず、藁をも縋る想いで明日の生を手に入れようとする生き様を知らない。
故に奴らは「なんと野蛮な」と否定する。
[そっとその頭に手を伸ばした。
ただ、撫でる直前でその手を戻す。
――――ク、とスパルタクスは何かに笑った。]
分かるか。
他でも無い君自信が命を軽んじていたならば。
他では無い君が、魔術師の矛盾とやらに悩むこともなかっただろう。君の思考に命を重んじる「理解」が足りなかったのだとしたら、そうして生涯の最期まで、罪悪と思考の螺旋を昇ることも無かっただろう。
お前は「命を奪った」ということを忘れなかった。
それだけで――――。
[本当にいたのかいなかったのかも分からない存在。
奴隷数万。起こした戦いは「反乱」と認識され、そして故郷にも墓にも還ることの出来なかった彼らは、「その他大勢」としてしか殺されたことを認識されなかった。
彼ら個人個人が「殺された」ことも、そして彼ら自身を覚えていた者は、きっと――――。]
――それだけで、十分だ。
[最期、彼女は一人の魔術師の腕に抱かれて死んだ。
最期、彼女は一人の魔術師の心を揺さぶった。
最期、彼女は――――。
ならば、きっと彼女の姿を見た彼らが、「彼女」を受け継いで行くだろう。きっと彼女の生涯が無駄であったかどうかは、もっと先に分かることなのだ。]
ちぃィ!
[ 手にしていた絵の具をキャスターの足元へと投げつければ、それは途中で爆ぜて赤銅色の煙とない膨れ上がった。
そのまま、左之助へと向けて駆け出した。]
[今までの薄皮1枚とは違う確かなダメージ。煮えたぎるような腹の痛みに耐え、左之助は笑う。]
く、はははは!やるじゃねぇか!
ふざけやがってぇぇえ!
[左之助の宝具である槍に、爆発的な魔力が集まっていく。
人間の蒲生相手なら容易く命を奪える大技を左之助は今まさに放とうとしていた。]
[手を伸ばしかけたバーサーカーの手を、少し残念そうに見た。]
……私は忘れない。私が殺した者達のことも、私が生きていたことも、聖杯戦争で出会った人たちのことも。
もちろん、おまえのこともだ。バーサーカー。
おまえは私を娘扱いしたが、私から見れば、バーサーカー、おまえは子どものようだった。
[くす、と笑う]
―東ブロック・ビルの屋上―
[昨晩の少女は、見殺しにした。
助けようとしたマスターを非難さえした。
それが、“戦争”と呼ばれる行為に求められる非情さだと、当然のように確信していた。
だが視線の先の娘に対しては――それが当然だと思えなかった]
何故、だろう。
別段、見た目が彼女と似ているわけではないのに。
……弱さ、から?
……あるいは、率直さ、から?
[思い起こされる生前の記憶。バトシェバとの出会い。
生真面目すぎる夫、ウリヤに顧みられる事のなかった女。
彼女の寂しさと弱さに付けこんだ罪。
出て行くべきか、否か。煩悶を抱え、その姿を追い続けた]
[
一瞬の自失。
その隙に、ゴドウの魔術が視界を覆った。
危険を感じて身構え、風の呪を唱えて、煙を吹き払ってみれば。
戦いの場へと駆ける、魔術師の背。
そして、左之助の槍にと集中する、魔力の渦。
――……あれは、拙い。
考えるまでもなく、サーヴァントとしての本能が、そう告げていた。
極限の鍛錬を積み、魔術の小細工を駆使し、神秘を抱いた古刀を振るっても。
――宝具にだけは。人の身では、届きはしない。
]
[
――……ならば、どうする。
いまゴドウを殺したとて、直ぐ消失するわけでもない。主を殺す時間に充分過ぎるだけの時間は残されているだろう。
で、あれば――ゴドウを殺さず、左之助を止めさせる必要があった。
]
――いかせません!
流砂よ、捉えろ!
ريگ سريع
[
一帯の地面を、足を呑み込む流砂と化す呪。
だが、間に合うかどうか――それを、駆けるゴドウの前方へと撃ち放った。
]
[これまでと明らかに違う、膨大な魔力の渦がランサーの槍に向かって収束していくのを感じる。]
む、……っ。
[それでも、出来ることと言えば、一つしかなかった。
蒲生正宗を正眼に構え、ランサーの一撃に備える。]
な…この!
[ 足元が流砂と化す。即座に絵の具を足元へと投げつけるも、変化はなかった。干渉力が違いすぎる。]
く、一文字…ッ
[ 為す術なく足をとられ、ツカサは腰まで流砂に埋もれた。]
――東ブロック アパート――
[部屋の隅で、影のように座り込んでいる。時折ぼやけた輪郭から顔が湧き出、ブツブツと何事かを呟いた。
みなみが外に出て行ったのには気づいたが、キラーは動かない。昨夜に起こったことが、キラーに何をもたらしたのか……ブツブツと、ブツブツと、浮き上がり消えていく顔たちは呟き続ける]
[信長の言葉に、思わず下を向く。]
…じゃあ、私は…
[その後に言葉を続けようとして、突然、左手の令呪が引きつるように痛んだ。]
……近くに、マスターが居る…っ!
[硬い声で、信長に告げた]
――……彼を止めなさい、魔術師!!
[言って。主の願いを訊ねた、ゴドウの言葉を思い出して、付け加える。]
願いが――貴方にも、生きて叶えたい願いがあるのでしょう!!
こんなところで、死にたくはないはず! そうでしょう!?
[決定的な一撃を放とうとした時、左之助は流砂に埋もれていく梧桐の姿を見る。
続けてキャスターの方へと目を向けた。
今放てば、シエラはツカサを殺すだろう。
マスターの同時消滅と言う事態が頭を掠める。
左之助は次に取るべき行動に悩んだ。]
[ 背中越しに、鋭い魔力の気配。脅しとも交渉とも取れるキャスターの言葉。選べる答えはひとつしかない。だが果たしてそれに乗っていいものか…。]
一文字。
[ こちらへと迷う瞳を向ける左之助。その顔を見て、やはり現状には他に手立てがないと悟った。]
………判った。助けてくれるなら、うちのサーヴァントにも手を引かせよう。
[ 不利な交渉にはならぬよう、言葉を選びキャスターに答えた。]
シエラ!同時だ、俺が槍を納めるのと同時に魔法を解け!
いいな!
[左之助はそうシエラに叫ぶと、ゆっくりと高まった魔力を押さえていく。]
よし。
バーサーカー。明日誰が来るのかわかったところで、歓迎の準備を整えよう。
いつまでも何もない空間で遊んでいるわけには行かない。
しかし夏だからな…コタツは出せない。
プールとかいいかもしれないな。
それともサウナか。
[左之助の言葉に、頷いて。ゴドウへと、言葉を向ける。]
――……安心して下さい、約束は違えません。
それに……。
[
――もう、誰も殺したくないんです。口のなかだけで、小さく呟いて。
流砂と化した地面を、元にと――埋まったゴドウの身体を、大地へと浮かばせながら――戻していった。
]
勝手な事を――。
[キャスターを制しかけて、思い留まる。宝具の一撃は、どう足掻いてもヒトの身で耐えられるものではない。
桁違いの強者との戦いで得た悦び。一度きりでは満足するに程遠い。]
く、致し方あるまい……。
[ランサーの槍に集まった魔力が徐々に収まるのを感じながら、憮然としながら構えを解く。]
[槍を納めた左之助は腹部を押さえながら、梧桐の元へと歩み寄る。蒲生とすれ違い様]
あんた、生まれる時代を間違えたな。幕末なら歴史に残る剣士になれたぜ……。
[と、声をかけた。]
と、とと。
[ バランスを崩しかけ、なんとか堪える。そのままキャスターとガモウを見つつ、左之助の元へ。]
すまない、下手をうった。
[ 小さくそれだけ伝えると、改めてガモウへと向き直る。]
今日のところは、ここで痛み分けとしましょうか。
[だが――
告げた途端、令呪の痛みが止んだ]
……?
[勘違いだったのだろうか。もう一度、注意深く辺りの様子を探るも、気配は見つけられなかった。]
ごめんなさい、気のせいだったかも…。
……それは顔を見てもいいということだな。さっき見たけど。
バーサーカー。その。ええと。
[何かもじもじしている]
マントの下はどうなってるんだ?
ふ、嬉しい事を、言ってくれる。……なるほど、時代、か……。
[ランサーの言葉に、笑みがこぼれ、緊張の糸が切れる。
――と同時に、がくんと崩れて膝をついた。
苦痛で笑みを歪めながら、ゴドウの言葉に頷いた。]
く、……無様な姿を見せてしまったな。
[召喚されたサーヴァントは七ではなく六騎。
そしてもう一つの大きな異常。
イレギュラークラス、『キラー』。
みなみがその渦中にあるのは明らかに思われた]
『召喚されたのは7騎でなく6騎。
今回の聖杯戦争の異常を調べなさい』
[何かのために、と渡されていたメモ帳に書き込み、何枚も破り取ってテニスボールを包む巻きつける。距離と落下点を観測し、みなみの足元に向けて放った]
かまわないが、別に愉快なものでもないぞ。
特にどうということもない――。
[カポっと仮面をはずした。
英霊として昇華されるに至った人々の認識から「修正」されて行く。見る見る内に体格が変わり、骨格が変わり――。
しかしそれは、瀬良悠乎にしか知ることの出来ない事実。
どのような正体であったのかは、瀬良悠乎にしか知り得ないこと。
再び仮面をかぶると、また体格は「修正」された。]
マントの下?
君は珍妙なものに興味を持つんだな。
そうだな、例えば――。
[漁師の槍、投網、盾、70cmの二対剣、変えの仮面、
木製の弓、木製の矢、湾曲した剣、鎖、その他諸々。
剣闘士試合で必要な物品はあらかた揃っているようだ。
その奥は、暗くて見えない。]
―東ブロック―
[みなみのすぐ傍らで、転々と弾み、転がっていく黄色いボール。突然降って来たボールに驚き、立ちすくんだ彼女だったが、周囲を見回すと、テニスボールを拾い上げて慌てた様子で姿を消した]
――……大丈夫ですか、マスター。
[
膝を突いた、主の許へと歩み寄って。
直ぐに治療しなければ危ないというほどの怪我ではないことを確かめ、胸を撫で下ろす。
]
――!
[茜が謝ったその時、何かがビルの屋上から放たれるのが見えた。
目標は此方ではない、が。
その発射地点に、何者かがいる。微かに感じる魔力からそう確信した。]
アカネ、口をしっかり閉じておけ。
……噛むぞ!
[即座に茜を抱きかかえると、異常な跳躍力をもって目標地点へと駆けていった。]
行こうぜツカサ、提案するまでも無く痛みわけだ。
いや……俺が英霊な分、あちらさんの勝ちってとこかもな。
シエラ、お前さんの召喚者は大したもんだったぜ。
[そう言った後、梧桐を促して歩き始めた。]
―東ブロック・雑居ビル屋上―
[今まで感じられなかった魔力の波長。
恐らく、このエリアに張られた結界がそれを遮っていたのだろう。
近づいて来る速度は明らかに人のものではなかった。
緊張を走らせ、給水塔の上へと飛翔。
何者かの姿を見極めようとする]
……男? いや、もう一人抱えている。ということは――
ん、ああ…。
[ 膝をついたガモウから目を離せずにいたが、左之助に呼ばれ我に返る。]
…それでは、また。
[ 言葉少なくガモウとキャスターへ一礼し、その場を後にした。]
……やはり、サーヴァントだったか。
[茜をその場にゆっくりと立たせる。]
先刻何処かへと投げた物、攻撃には見えなかったがなんだったんだ?
……大丈夫だ。戻るぞ。
[意識を集中させて再び立ち上がり、キャスターに答える。]
ふ、……また、か……。
[ゴドウの言葉に笑みを返すと、そのまま彼らに背を向け、歩き始めた。]
[
本人にそのつもりはないのだろうが――左之助の言葉は、痛かった。
何故か――その理由は、とうに知れていた。
罪悪感に、堪えかねて。僅かに数歩を、踏み出して。
去ってゆく主従の背に向けて、叫んだ。
]
――……"ランサー"!!
……シエラでは、ありません。
私は、キャスター……聖杯戦争に召喚されし、魔術師のサーヴァント。
貴方が親切にしてくれたシエラは――……きっと、別の誰かです。
[
――届いたかは判らない。だけど。
口にしなければならないことだった。きっと、自分のなかの何かのために。
]
―東ブロック・雑居ビル屋上―
[即座に戦闘、というつもりは無いようだ。
互いの距離を目測しつつ少年は答える]
テニスボールですよ。中身は。
初めまして、と言っておくべきでしょうか? 異国の英霊よ。
[風が止み、コンクリートの上に足がつくと、視界に入った人物を見る。]
…サーヴァント?
[まるで、少年のようだと思った。けれど、微かに伝わってくる魔力の大きさと、漂ってくる雰囲気が、どこか異質なものを感じさせた。]
ボール……、鞠やお手玉のような物か。
[気が抜けたように息を吐く。
虚言ならばもっと他に言いようがある。
マスターが見えないあたり、己のマスターへの通信手段課何かだったのだろう。]
それはすまなかったな、少し警戒が過ぎたようだ。
初めてお目にかかるな、異国の英霊よ。
[炯炯と強い眼の光。他を圧する存在感。青年に備わったカリスマは、恐らくこの国では自分をも大きくしのぐだろう。異名の数々を思い出した]
――それにしても、様々な名をお持ちのようだ。
曰く、戦国の革命児。
曰く、時代の先駆者。
曰く、仏法の破壊者――第六天魔王。
織田上総介信長公とお見受けして、間違いないか。
[第六天魔王、その言葉が出た刹那、頭に何かの痛みが走る。
だがそれも直ぐに治まった。]
――成程、我が名を知られているなら是非もない。
此の身はセイバーのサーヴァント、織田上総介信長に相違無い。
そして、それを知るお前は何者だ?
その名を知っているのは此度の戦に於いては刃交えし三組。
お前の顔は初見のはずだが……?
[去り際に聞こえた叫びに、左之助は立ち止まる。
振り返ろうとしてそれを止め、再び歩みを進める。]
……解ったぜ、キャスター。
[心の中でそう答えた。]
[晒された姿に、息を呑んだ。
仮面をとった姿は、とる前とずいぶんと変わっていて。]
……スパルタクス。
それは、ずるい。
[マントの下の武具たち。それは魔術師として目を見張るものだった。遺物。
その奥は暗く。]
ずいぶんと色んなものを持っているのだな。重いだろう。
使えない武具なら、おいていけばいいのに。
私の名は宝具に直結しすぎています。
故に、アーチャーとのみ、お答えしましょう。セイバー。
[この国で生まれ育ったらしき傍らの娘に視線を流した]
……そちらの魔術師であれば、或いは学びの過程で私の姿を目にした事があるやもしれませんね。
随分と理想化された姿ではありますが。
[何故か、初めて対峙するサーヴァントが、信長の名前を知っていた事に驚いた。そして―]
……第六天魔王?
[聞き慣れないフレーズ。
けれど、何故か気になって呟いた。]
何がずるいのかさっぱりだ。
[明らかに「正体」について狼狽している。
既に仮面の下となった素顔はクク、と笑ってそれを眺めた。]
……確かに武具としては使えまい。
だが、私は奴隷として生き、奴隷として死んだ。
先ほども言ったが、それはもう決定された結末だ。
友を殺し続けたことも。
私が――――帰してやれなかったことも。
棄ててしまうわけにもいくまい。
[マントを閉じ、「使えない」武具を幽閉する。]
――そういう事ならば仕方があるまい。
互いの名も名乗れぬとは、無粋な戦もあったものだな。
[腕を組み、小さく息を吐く。
わかっていた事だが、この戦は己が知る戦と違いすぎる。
互いの名に誇りを乗せて吼えられぬなど華が無い。]
その言葉からすると、名の知れた大層な英雄の様だな。
ふむ、強者との喧嘩というのは恋と同じく心が躍り熱くなる。
どうだ?ここで死合うというのは。
[薄い笑みを唇に。なるほど、悪役として描かれた際に誇張された苛烈さも、幾分かは真実らしいと感じた]
既に三組との交戦、ですか。噂に違わぬ迅速ぶり。
ですが、真名を名乗れないのと同様に、今は私には戦う気持ちはありません。
[一拍置き、真摯な表情で理由を述べる]
――此度の聖杯戦争。
七騎ではなく六騎しか召喚されておらず、本来あるべきではない役割(クラス)の者までが召喚されているとしたら。勝者への恩寵がどうなるかも不確かだとしたら。
セイバー、貴方はそれでも戦いを求めますか?
ずるい。ずるい。ずるすぎて私が私でなくなってしまいそうなくらいだ。
いやそうではなくて。
棄てるんじゃなくて、おいていけばいいのに、と言ったんだ。それだって重いだろう。
思い出を下げているのなら、重さはないのかもしれないが。
…………。どちらも同じことだ。
共に背負うのでなければ、置き去りにするのと変わらない。
背負い続けるのでなければ、忘れてしまうのと変わらない。
帰してやりたかったし、せめて墓を立ててやりたかった。
だが、もうどちらも叶わないと決定されている。
彼らの思い出を――いや、無念を。
この身に纏わず戦いに赴くなど、どうして出来よう。
[アーチャーの言葉は予想外のものだった。
まさかその様な事態になっていたとは予想など付きよう筈も無い。
だが、驚いたのは一瞬。
その後は再び楽しげな笑みに戻る。]
ハッ、愚問だな。
確かに求めるものが得られる保証はないかもしれんが……。
――男たるもの、生まれたからには天下を夢見るもんだ。
目の前に派手な喧嘩があったなら、混じらなきゃつまらねぇ。
勝者にならなきゃ気が済まねぇ。
そして何より……。
[そこまで言うと、横に立っていた茜を抱き寄せ肩を抱く。]
[アーチャーと名乗った少年に声をかけられ、体がびくりと震える。
何か、圧倒させるようなオーラのようなもの。相手にはそれがあった。
だが、気圧されるのが悔しくて、強く相手を睨み付ける。]
……。
[真名を名乗らないのは、術師としての自分にはよくわかった。
呪術において、名を知られるという事は致命傷になる場合がある。
けれど―
続く言葉に、眉間を寄せる。]
[献立を考えながら立ち尽くしている。]
…………。
ふむ。我々が脱落したことは必定だったようだ。
[地上のらぶ模様を眺めている。ひゅーひゅーしたい。]
[アーチャーと名乗った少年に声をかけられ、体がびくりと震える。
何か、圧倒させるようなオーラのようなもの。相手にはそれがあった。
だが、気圧されるのが悔しくて、強く相手を睨み付ける。]
……。
[真名を名乗らないのは、術師としての自分にはよくわかった。
呪術において、名を知られるという事は致命傷になる場合がある。
けれど―
続く言葉に、眉間を寄せ、口を開きかけた途端]
……っ!
[抱き寄せられて、言葉を失った]
[自らの求める儘に歩み、それが風狂の道となった天性の傾奇者。雑多な書籍の中に、そういう評価を下していたものがあったと思い出した]
聖杯戦争に勝つことだけが目的ではないのでしょうね。
個々の戦闘に勝つことも、貴方にとっては手段でなく目的、と。
剣の英霊たるに相応しく、勇猛な方だ。
[彼がそのマスターを抱き寄せる様子に、潮時か、と察する。
跳躍に備えて脚に力を込めた]
ですが――私はやはり、此処で戦うには準備が足りない。
間合いを見ても、此方に有利とは思えませんから。
おさらばです、セイバーとそのマスターよ。
[肩が怒りのあまり、ぷるぷると震える。]
…人が、一言も発しないうちに、なんて事をしてくるのよ馬鹿ーーっっ!!!
[緊張が解けたのも相まってか、がーっと一気に捲くし立てる。]
うう…。
どんな目で見られてたのか…考えたくない…。
[羞恥のあまり、思わずその場に崩れ落ちそうな気持ちになった。]
そういえば、私の真名は誰にも知られていなかったな。
…………。いや。
この国では知名度は低い。
知られていたところでどうということも無いんだが。
何って…肩抱いただけだろ?
細かいこと気にするな。
[喚く茜に何の事は内容に返す。]
さーて、んじゃもう昼過ぎてるし帰るぞ。
しっかり掴まっていろ。
[そして来たときと同じ様に茜を抱きかかえると、*再び跳躍した*]
あ、あんたには、細かい事じゃないかもしれないけどねっ!
[まだまだ言い足りないようにわめき続けたが、続く言葉は、*風に掻き消された。*]
−教会−
[台所の片隅で、みゃー、という鳴き声と共に蹲る猫の姿。
不在の期間中、一体何を映していたのか。その瞳は憂げな光を宿していた。]
猫は魔力を感知する。
昔からの定石ですものね。
えい!
[7騎の英霊の象徴……アサシンの
――中央通り・古美術店――
[一旦梧桐と店に帰った左之助は、蒲生につけられた刀傷の治療をしていた。血止めをして包帯を巻く時、生前の古傷が目に入る。
左之助の腹部に引かれた横一文字。
かつて自身で腹を割いたときに出来た傷である。]
へっ、「死に損ね左之助」か。
[きっかけは他愛の無い物である。ある武士と口論になり「腹も切れぬ輩が!」となじられた左之助が、ならば見よとばかりに自身の腹に刃物を入れ、割腹して見せたのだった。
口論していた武士は左之助の異様な振る舞いに逃げ失せ、その後仲間から「死に損ね左之助」とあだ名されるようになった。
今となっては若気の至りとしか言いようが無かったが、左之助はこの傷を気に入り、自身の家紋を図形の丸に一文字を引いた形にしたくらいである。
それは、頑ななまでに武士であろうとした証でもあった。]
今は戦う理由も無く、士道も無くか……。
[結果自分は弱くなった。
戦いの快楽はあっても、繰り出す技が鋭く引き絞られていくような感覚は無くなっている気がする。
人間の蒲生に致命打を与えられなかったのも、あるいはそれが原因では無かろうか。
左之助はそう思いながら包帯を巻く。
刺された傷がずきりと痛んだ。]
―― 同・隣室 ――
[ 左之助が傷の手当てをしている間、ツカサは隣室にてそれが終わるのを待っていた。
治癒の術など、扱うことは出来ない。手当ては自分がと申し出たが左之助にそれは断られた。しばらく独りにしてくれとの言。かける言葉を見つけられないまま、ツカサは部屋を出るしかなかった。]
一文字…。
[ 微かに聞こえる左之助の呟き。なんらかの迷いがあるのは、人の心に疎いツカサでも判るものだった。]
[――俺はお国を守るために戦っていた。ところがいつのまにか、敵がお国の側になっていやがった。
――抗って抗って抗いぬいて、俺は死んだのさ。納得なんてできねぇやな。
――願いは、かつての家族と会う事だったよ。……でも今は良く解らねぇ。
先日に聞いた、左之助の言葉。書棚より新撰組に関する本を取り出した。
明治維新の頃、原田左之助は近藤勇との意見の違いから親友・永倉新八と共に新撰組を離れた。そして新八と共に靖兵隊を結成する。が、その後に左之助は靖兵隊を離隊、渋沢成一郎を頭取とする彰義隊に加わった。しかし、戦死した左之助の名前は彰義隊の名簿に載っていなかったという。]
時代が、違いすぎるものな。
[ その胸中は、ツカサには到底計り知れるものではないのだろう。だが…。]
[ 襖の向こうの、左之助を見やる。
――振りかざしたその手でおまえはなにを掴むのか。熱く高ぶる勇気は誰のため。
なんとはなしにつけていたTVから、勇壮な歌が流れてくる。
共に目指した場所に答えはきっとあるなどとそんな事を言うつもりはないが…。走り続ける先にしか、掴めるものはない。]
…よし。せめて旨い物を食べるか。
[ ひとつ気合を入れて立ち上がると、ツカサは冷蔵庫の*扉を開けた。*]
―昼頃 中央ブロック・ホテル―
[いつしか太陽は中天にまで上り、じりじりとアスファルトを焼き付けていた。少し長く出続けてしまったかもしれない。そう思い、少年は一旦陣屋に戻ることにした]
……ヒジリ? いらっしゃいますか?
[呼びかけて室内へ入っていく。どうやら、今後の戦闘の為に何かの下準備をしていたらしい。魔術礼装、と呼ばれる武装だろうか。彼の様子を見遣りつつ、ソファに身を沈めた]
――東ブロックの結界範囲を確かめてきました。相当な規模のようです。よほどの理由が無い限り、あの地域でキャスターとの戦闘は避けるべきでしょうね。
急戦に持ち込めるならまだ、地の利を生かさせずに決着を付ける事も出来るかもしれませんが。さすがに全域を駆使されては、私とてどんな被害を蒙るか。
[青年の作業が一段落し、こちらを振り向いたところで、もう一つの――より重要な情報を告げる。出て行った時に残した推測を埋め合わせるパズルピース]
それと。ノブナガとそのマスターに遭遇しました。
戦闘には至らず、その場を離れたのですが――彼のクラスが判明しました。
セイバー、です。
[そう告げて、彼とそのマスターから受けた印象を*語った*]
食すのは構わないが、いいのか。
これまでの要素を統合すれば答は自明。
君ほどの人物なら気付いていると思っていたのに。
[『もりそば』を食べる瀬良悠乎を眺めている。]
この国では、「しらぬがほとけ」と言うらしい。
だから私は直接の答を応えることはしないでおこう。
「みすてりぃ」とやらは、事件に至るまでに全ての要素が提示されているというじゃないか。つまり、「もりそば」の材料もここまでに提示されているというわけだ。
しかし残念ながら私はこの料理しか分からない。
故に私は君に敢えて問おう。
−教会−
[九鬼のもとに届けられた報告書を纏める。
それは、バーサーカーとそのマスターの消滅についての記録。
先日、教会を訪れた少女の言葉を思い出す。]
……猫に懐かれたサーヴァント。
その優しさが敗北に繋がったのでしょうか。
[芽祈は、猫用に作った渦巻き形のクッキーを、再び台所で蹲る猫に食べさせる。]
聖杯に沈んだバーサーカーの魂。まずは1騎、ということですわね。
[報告書を綴じ、九鬼のデスクに静かに+置く+]
[もぐもぐもぐもぐもぐもぐもりもりもりゅ]
ところで。
「瀬良悠乎女子高生ばあじょん」とやらはどうしたのだ。
この計画書にはちゃんとかかれてあるぞ!
他マスター、特にツカサを篭絡するのではなかったのかね。
[分厚い資料を取り出してばんばん叩いてみせた。]
私は確かに反英霊としての契約を望んだ。
――今にしてみればこそ、馬鹿馬鹿しい願いだと思える。
故に私は間違っていたのだろう。
過去は決定した。
彼らも私も故郷へは帰れず、土にも還れなかった。
それが結末であり、変え難い過去だ。
もう私達の時代は終わっていた。
これからは君達の時代だったんだ。
それを、恨む道理も羨む道理も、あるはずがない。
私は今回の聖杯戦争に於いて敗北した。
故に、英霊として召喚される契約を切れないことは残念だ。
またいつか呼び出されるかもしれない。
きっと次の私がそれに気付き、契約を破棄するまで。
私は繰り返すのかもしれない。
[――それでもきっと。
悉くが打ち破られるに違いない。
生前の未練を怨恨と羨望に変えてやってきた亡霊如きが、人々の貴き理想である英霊と、それを繰るこの時代の魔術師(ねがい)に、勝てる筈もない。
きっと――悉くを、越えて進んでくれるに違いない。]
―午後・蒲生邸―
[
――主の傷は、思っていたよりも深かった。
脇腹の傷はそれほどでも――幸いにして、臓器は外れていたので――なかったが、
深く肉を抉られた肩口の傷は骨にまで達していて、腕を動かすことも辛いはずだった。
よくあんな状態で、刀を構えられたものだ――半ば呆れを覚えながら、必要な薬品を調合していった。
]
バーサーカー、消えるのはまだ早いぞ。
少なくとも今日いっぱいは今のままでいいだろう。
まあ私もろくに顔がだせるわけではないが。
――……痛みますか。
[
自らの手で外科的な治療を終えていた主は、脂汗を浮かべて応じた。曰く――当たり前だ、愚か者。と。
サーヴァントと正面切って斬り合って、痛みを感じる命が残っているだけ僥倖だ。
そう思ったが、口には出さなかった。
魔術による身体能力の向上と、結界を発動した瞬間に生じた僅かな隙。
幾多の小細工と偶然に後押しされてではあったが、あの一瞬、確かに主の刃はサーヴァントへと届いていた。
――だから、咎めることは出来なかった。
極小とはいえ、可能性は示されてしまったから。
細い細い、絹糸よりも尚細い糸であったとて――それを手繰った先に、至るべき場所が確かにあると知ってしまったなら。
――それが、魔術師というものの救い難い性なのだ。きっと。
]
[溜息を吐いて、調合した二つの薬を主にと差し出す。]
――……こちらの無色透明無味無臭なものは塗り薬です。感染症を抑え、傷口周辺の組織の癒着を助けます。
それと……こちらは飲み薬です。造血と体力回復、痛み止めの効果があります。
[
フラスコのなかでは泥炭色が泡立って、凄まじい刺激臭と共にコバルトブルーの煙を噴き上げている。
これを飲めと言われれば、自分ならば断固として拒否する代物だ。ちなみに味も、とっても苦くしておいた。
珍しいことに――ほんの僅かに、主の表情が引き攣ったようにも見えた。
]
……きちんと飲み干してくださいね、マスター。
[
極上の笑顔を浮かべてやって、退室する。
何も言えないにせよ――……まあ、このくらいは。
]
[――助けたかったのは。
他人の死をただ傍観している、自分の心だったのですか――
少女とは名乗り合いをしただけの関係、どうしても助けたいと思うほどの仲ではない。
なのに、手遅れになった姿をみて体が勝手に動いた。
ダビデの言葉通り心が耐え切れなかったとしか言いようがない]
僕の心は弱いのは当然だ。
なんていったって、どんな願いでも叶う奇跡の聖杯に願うのが魔術の存在しない平行世界への移動だからね。
[魔術教会の人間が聞いたら激怒するような願い。
だけど、自分に取ってはどうしても叶えたい願いである。
魔術のある世界に存在する限り、自分はきっと、魔術使いを止める事ができない。
だったら、魔術ない世界に行けばいい、それだけの話だった。
それは子供のように単純な発想で、魔法に頼りながら魔法と魔術のない世界を目指す矛盾した願いだった]
[シャワールームから出るとダビデの残したルーズリーフがそこにあった。
内容を読むとおおむね自身が考えていた事と同じ内容ではあった]
ダビデは頭を冷やしにいってるんだっけ……。
余計な気を使わせてしまったな。
[ベッドに倒れこみながら信長のクラスについて考えているうちにいつの間にか睡魔に+捕らわれていた+]
[眼を覚ました、いつの間にか寝ていた事に気づいた。
魔力の消耗の影響が体にも現れていた]
でも、お陰で魔力は戻っているな。
[再度ダビデが残していったルーズリーフを手に取る。
残っているのはセイバーかライダー、どちらにしても強敵にはちがいない。
どちらか正しいのか判断に迷っていた時、その答えを持つものが戻ってきた]
[ドアが開く、入ってくる可能性がある人物は一人しかいない。
先程気を使わせてしまったことが後ろめたかったのか、体が勝手に動いた。
鞄から意味もなく手持ちの魔術礼装を取り出していた]
おかえり……。
[自然に言葉を発する事が出来たか、自信がなかった。
このまま不自然な状態で会話を続けるのかと思ったが、そんな事にはならなかった。
ダビデが持ち帰った情報の存在がそれを解消してくれた]
結界、キャスターか。
解呪できないか確認するべきだな。
そこで対峙するかは別として、不利なポイントは出来るだけ少なくしたい。
[手元の無意味な作業を終えてダビデの方を向く]
信長がセイバーか、ってことはライダーが召喚されていないって事になるのかな。
とにかく、戦闘を避けられて何よりだ。
[その後は、信長とそのマスターの情報について詳しく聞いた]
それじゃ、僕は少し物資の補給をしながら結界の様子を見てくる。
悪いんだけど、遠くからまた見張っていてくれるかな、サーヴァントが襲ってくる可能性がないとは言えない。
[ダビデが静かにうなづくのを少し安心したように見つめた。
隣ではなく遠くでといったのはやっぱり心のどこかで後ろめたさが残っていたからに違いない]
―中央通り―
[ふぅ、と大きく息を吐いて、商店街の中を歩く。
先程まで、散々信長と、買い物に同行するしないの話で揉めていたのだ。
絶対に単独行動をさせない、と言い張る信長に、アーチャーと対峙した時の羞恥もあったため、近所に買い物に行くくらいの事でついてこなくていい!と突っぱね、頭に血が昇ったあげくに令呪の行使も辞さないという姿勢を見せたため、相手が折れた形になった。]
…まったく、どこまで過保護なのよ…。
こんな昼まっさかりに、人通りの多い所で何かあるわけないわ。
[ぶつぶつ呟きながら、道を歩く。]
[歩きながら、ふと、アーチャーと名乗る少年の言った事を思い出す。
『勝者への恩寵がどうなるかも不確かだとしたら』]
……。
[あの時、何故自分は彼に返答できなかったのだろう。
以前の自分なら、即座に答えたはずだ。
「聖杯が本物かどうかなんて、どうでもいい。手に入れる事だけが私の目的だから。」
そもそも、自分には叶えたい願いなんてものは無かった。けれど今は―
そこで、歩みがぴたりと止まる。]
(― 失いたく…無い)
[それを思うだけで、胸が痛くなる。]
(もう、二度と――)
[差し伸べられた手、掴めないままに、永遠に失ってしまった。
あの時から、大事な物は持たないと心に決めていた。
なのに、繰り返す自分は愚かだと、人は笑うだろうか――]
……っ!?
[その時、左手の令呪がピリッと痛む。はっとして辺りを見回した。]
……近くに、にマスターがいる。
[それも、感じる魔力からして、今までに接触した輩では無い、新たなマスターの気配。
思わず、唇を噛んだ。]
―中央通り―
[貸倉庫にはいり荷物を取り出した。
一般的には所持しているだけで犯罪となる銃や爆弾など。
それと取って置きの魔術礼装である。
ダビデはいった「しかし、私にとっては脅威ではありません」と]
確かに脅威にはならないだろうなぁ、僕じゃ。
でもさ、また昨晩のような場面に出くわしたら僕はきっと同じことをするよ。
[どれだけ取り繕っても心の弱さは簡単には克服できない。
ならば、サーヴァントを撃退できるように自らの守りを固めるしかない]
[荷物を取り出していると令呪に痛みが走った。
そしてその気配は近づいてくるようだった]
ついてないね、この場所で敵か。
[倉庫からの出口は一つしかない。
待ち伏せが決まってる中、出て行くしかないのだ]
[令呪の反応の強くなる方に、歩みを進めると、貸倉庫の並んでいる場所に着いた。
慎重に場所を探ると、その中の一つから、マスターのものと思われる魔力を感じる。]
……。
[倉庫の出口は一つのようだ。そこから、充分な距離を保った墓所に立ち、息を一つ吐いてまだ見ぬ相手に告げる。]
…お互い、存在には気付いてるでしょう。
出てきてくれないかしら。
[懐にそっと手を入れて、短剣を握った。]
[降伏喚起のような見下す声が響く。
取り出したばかりの拳銃の安全装置を外していつでも打てるようにした]
女か……、セイバーのマスターか?
[頭に浮かぶのは先程手に入れた情報。
時間を置いた所で状況が変わる事はない。
出て行くしかなかった]
[倉庫から出てきたのは、男だった。
セイバーのマスターかと問われ、眉間に皺を寄せる。
初めて対峙する相手に、自分の情報を知られているのは気に障る。それも、一日の内に二度も。]
そういう貴方は、アーチャーのマスターかしら。
[今まで出会ったマスター達は、アーチャーのマスターでは無い。ならば、目の前に居る男がそうなのだろうと、問う。]
[倉庫から出た先にいたのは女だった。
ダビデから聞いた情報と一致した、セイバーのマスターで間違いない]
質問に質問で返すなって習わなかったかな?
だから、その質問には答えられないね。
[目の前の女はイライラしているのが明らかだった。
怒りは煽れば隙となる、ならば挑発しない手はなかった。
それに今は胸を張ってアーチャーのマスターといえる気分でもなかった]
――東ブロック――
[感じたのは、魔力の気配。元より付近に張られていた結界が放つ強い魔力の匂いで解り難くはあったが、それでも間違う事は無い。その元は複数であるような気はしたが、具体的に何人か、それがマスターかサーヴァントかまでを判別するには至らなかった]
そろそろ、帰んないと……。
やっぱ結界も張ってあるし、危ないもんね。
[体を硬くしたその瞬間。頭上から落ちてくる黄色いボール。息を呑んだ。数秒の間。小さく、良く弾むそのボールは特別みなみに害を成すようなものではないようだった。ボールを拾い上げ、その場から離れる]
――『召喚されたのは7騎でなく6騎。
今回の聖杯戦争の異常を調べなさい』
[綺麗な文字だった。聖杯戦争に関わっている人間で、みなみを狙ってこんな情報を落とす相手は限られている。だがそれを抜きにしても、文字が人となりを表すとするのならば、このメモの書き手が誰かは一目瞭然だった]
どういうこと……? だって、七つのクラスがあって、七体のサーヴァントが呼ばれて、それで……。
[言葉に詰った。それが"異常"だと言うのなら、今回の聖杯戦争に"異常"があるというのならば、みなみは一つ、"異常"を目にしている]
――……というわけで、結界の補修に向かいたいのですが。
[
報告を終えて、主の言葉を待つ。
ランサーとの戦いの最中に感じた、結界への異常。
基点の一つが潰され、結界の内部に、その効力の及ばぬ部分が数か所、罅割れのように生じている。
直ぐに報告しなかったことを咎められるかとも思ったが、叱責はなかった。
ただ、支度をしろと命ぜられたことで、一緒に向かうつもりなのだということが判った。
]
――自宅マンション(東ブロック)――
[息を切らせながら部屋に戻ると、靴を脱ぐ時間も惜しいと言うようにみなみは声をあげた]
ね、キラー、いる!?
―中央ブロック・上空―
――……本当なら、少なくとも夜までは養生するべきなんですけど。
結界の補修くらい、直ぐに済ませて戻ってきますし……。
[
口を尖らせれば、返答はこうだ――お前を一人で動かすと、碌なことにならん。
事実ではあったので、言葉もなかった。
単独行動をした二回とも、サーヴァントにと遭遇している。
溜息を吐いて、空飛ぶ絨毯のコントロールにと集中した。
]
――東ブロック マンション――
[慌ただしく戻ってきたみなみの気配に、キラーは顔を上げた。
ただし、影のような輪郭の曖昧だった姿ではなく……一人の人間の姿で、安定していた]
[相手の言葉にカチンと来て、頭に血が昇る。]
……そう。
まぁ別に、倒してしまえば、どのクラスのマスターかなんてどうでもいいわ。
出会ったばかりだけど…。
[熱くなっていく頭の片隅で、相手の飛び道具に対しての警戒は怠らない。
あれが形通りの武器であるならば、のんびり詠唱を唱えていては、瞬時に自分に風穴が空くだろう。
次の瞬間、素早く懐から短剣を出すと、左腕に切りつける。
周囲に、血が舞った。]
さよなら。
[長い髪を鬱陶しそうに右手で掻き上げる。髪も、肌の色も、身に纏う衣も、影のように黒い。
しなやかな身体を、どこか確かめるように動かし、立ち上がった。大きく息を吐く]
これ、キツゥ……アイツ、こんなことよくやってたわね。
[それは、あの魔術師の声ではなく……若い、女の声だった。
つらそうに眉間を押さえながら、彼女は部屋の外から聞こえた声に応じる]
居るわ。入りなさい、みなみ。
[挑発の効果はこれ以上ないぐらいだった。
目の前の女は怒り魔術の行使を始めた]
血か……。
でも、やらせないよ。
[血を媒介にした魔術、詳細は不明。
ならば血を自らに届かせなければ良い]
Desarrollo de fuerza repulsivo
[自らの間合いに全てを反発させる斥力場を展開した]
…っ!
[目の前の空間が、ぐにゃりと歪んだように見えた。]
彼方より飛来する 薄羽の王…
[詠唱を終え、無数の血の刃を相手に向かって飛ばしたが、男の周囲まで飛来した所で、何かにぶつかり弾けて消し飛ぶ。]
……なっ…!
[思わず崩れそうになる体制を、慌てて立て直した。]
[次の瞬間、自分に向けて放たれた渦のような波。
咄嗟に剣印を組み、九字を唱える。]
臨兵闘者皆陣列前行!
[対峙する空間に、5行4列の格子が描かれる。その中央から光が放たれ、重力波とぶつかり合った。]
…くっ!
[相手の攻撃は消せたが、手にびりびりと痛みが走る。]
[相手が放った光で重力波は相殺された。
爆発の余波で少し交代する]
ち、相殺されたか。
[地を蹴り更に距離を取り、敵マスターが動くと予想して本人ではなく周辺に向かって数発発砲する。
サイレンサーつきの拳銃は音を響かせる事なく静かにただ命を奪うべく弾丸を飛ばした]
[立て続けの攻撃によろめき、有利な間合いを取る為に踏み出した位置を、弾丸に狙われる。]
臨…っ!
[格子を描き終わらない内に、放たれた弾丸は茜の右肩を打ち抜いた。]
…ああっ!
[肩を押さえ、痛みのあまり、がくりと+膝をついた。+]
[みなみがドアノブに手をかけたとき、その声は聞こえた。瞬間、頭が真っ白になり、先ほどまで言おうと思っていたことが消える]
あはは、幻聴。幻聴だよね、幻聴。
[乾いた笑い声を上げながら、失礼しますと声を掛けてドアを開け、そして――、すぐに閉めた]
いやいや。
いやいやいやいや。
今、わたし、░▓▒▓█▓░░▓▒の牧野つくしの気持ちが良くわかる。
[ちゃんと中に入って話を聞くべきだと思いつつも、ちゃんと中に入る前に、みなみにはどうしても言っておきたいことがあった]
……ありえねーっつーの!!
[眉間にしわを寄せて、キラーは一度開き、閉まった扉を見つめる。
右肩から三本目の腕が生えた。先端に刃を備えた、鎌のような腕。
酷い音がした]
ハイハイハイ。そういうのイイから。あたしがこうやってられる時間少ないんだしぃ、いいからちょっとこっち来なさい。
[壊した扉を脇にどけて、キラーはみなみを見下ろす]
桐生 茜が「時間を進める」を選択しました。
……い、いやいやいやいやいや!
器物破損! 器物破損犯罪だから!
逮捕だよ、逮捕!
[部屋の扉だと言われなければ解らないような形に成り果てたそれに、みなみは携帯電話を咄嗟に探した]
おまわりさーん!!!!!
[まっすぐに、自分をめがけて放たれる弾丸。]
(……っ!)
[肩を抑えていた手を離し、血まみれの手で印を組む。
次の瞬間、傷口から流れた血が、無数の蝶になり、ひとつの赤い壁のように立ちはだかる。
ザッ、と音がするようにその壁が天に昇って消えると、茜の姿はその場から*消えていた*]
[みなみが取り出した携帯電話を取り上げる。アサシンのクラスをベースにしたサーヴァントの力を使えば、その程度のことは造作もなかった]
令……なんちゃらで縛られてるとかどうとか、よく分からないけど。
殺す以外のことは、できるんだっけ?
[頭痛でもするのか眉間にしわを寄せたキラーは、三本目の腕をみなみの頬に押し当てる]
あなた、さっきの様子からしてジャックと話をしに来たんでしょう?
何かあったんじゃないの?
じ、冗談ですよ、やだなぁ……。
第一、ほら、キラーさんは器物破損以前の問題ですもんねー、あはは。
[頬に触れる冷たい感触に、引き攣った笑顔を浮かべる。キラーが先ほどのみなみの様子を指摘すれば、みなみは慌ててポケットに突っ込んだメモを取り出した]
あ、うん、えっと、そう、そうなの。
そもそも、キラーさんがわたしのサーヴァントとして英霊じゃないのにここにいるってことが、おかしいってずっと思ってた。
でも、おかしいのは、それだけじゃないみたい。
[とどめの弾丸が命中する直前だった。
血の蝶が当たり一面を覆いつくし壁を作り出した。
重力波で蝶を消し去ったときが、時既に遅しで敵魔術師は消え去っていた]
逃げられたか、本当駄目だね僕は……。
傷は与えたからまだましだけど。
[止めをさせなかった事は無念だった。
しかし、無傷の自分に対して敵マスターが負傷した事を考えれば結果はさほど悪くないように思えた]
[キラーはみなみから差し出されたメモを見る。丁寧な文字で書かれたその言葉を、口に出して読んだ]
――『召喚されたのは7騎でなく6騎。
今回の聖杯戦争の異常を調べなさい』
[朗読してから、キラーはその感想を口に出す。……それは、たった三文字であった]
…………ふぅん。
―東ブロック―
[敵マスターとの遭遇戦はほぼ損害無しで終わった。
特に消耗もなかったので元々の予定通り東ブロックに足を運んだ。
目的は結界の解呪、キャスターの魔術を解呪できる自身などなかったが試さないよりはマシだと判断した]
さて、僕の力量が試されるね。
[魔力のラインを通じてダビデより注意が飛んでくる。
「無理だと思ったらすぐに撤退してください」と。
素直に了解の返事をし、結界の一部に触れてみた]
/*
このタイミングでキャスターマスターが帰ってくるなんてwwwww
ヒジリ、超ピンチ!?
そういえば独り言すっかり忘れてた。
興味はない、よね。
それは、なんとなく、わかるけど。
[言葉を選び、慎重に読んだことのある聖杯戦争に関する資料を思い起こした]
でももし、聖杯戦争に勝ったところで、願いなんて叶わないとしたら……?
聖杯を起動させるためには、最低六騎のサーヴァントを捧げなきゃいけない、って、聞いたことがあるの。
でももしそもそも召還されたのが六騎しかいないなら。
―東ブロック―
――……確かに、碌なことにはなりませんね。
[
――結界の付近にまで辿り着いて、その目の前で。
結界にと干渉する魔力の存在を、至近にて感じ取れた。
その旨を主にと報告して、判断を仰いだ。
]
……あー、アイツ、我々は異質だとか言ってたわね。なら、ジャックが二騎分持ってってる可能性はあるんじゃない?
よく分からないなぁ……あたし、聖杯にあんまり興味ないし。
[キラーは興味を失ったかのように、メモをみなみに返す]
あーでも、苗床ってのが芽吹くには、必要なのか。聖杯。
[額に浮き出る汗を拭った。
キャスターが作った結界に干渉はやはり困難を極めた]
これでも大分裏道を抜けているんだけどね。
[慎重に罠をかいくぐって無効化をしていくが気づけばかなりの時間が過ぎていた]
キャスターのサーヴァントたるお前の結界に手を出されたのだ。
俺がどうこう言う前にお前自身の考えはないのか。
多少なりとも己の魔術に自負があるのなら、鼠を捕らえるくらいの仕掛けは用意しておけ、愚か者。
相手はどっちだ。
[ランサーにやられた傷と、魔力の消耗具合などを考えるに、相手がサーヴァントならば今の状態では厳しいかもしれない。]
た、確かに、バーサーカーとアサシンを兼ねてますって言われたらなるほどって思っちゃうけど……。
わたしが知ってるのは公式的に発表されていることだけだし、過去の聖杯戦争に基づく情報だから、それが全て正しいのかどうかはわからないけど。
だけど、起動そのものに必要で、だからこそ、……サーヴァントは消さないといけないっていうシステムだって聞いたよ。
[首を傾げた。捧げるべきサーヴァントの何が聖杯起動の為に必要なのか、まではみなみの知る所ではない。キラーのその説を少し考え込んだ。みなみの視界に、キラーの持つみなみの携帯電話が入り込む]
あ――、思い出した。そういえば、ランサーと戦った時も、教会に行こうとしてたんだった。
教会ならこのことも全部知ってるはずだしっ。
……アタマイタイ。こっちは食うに困って強盗してた路地裏の子供だってのに。
まー、でもなら教会に行こう。もしあたしらが二騎分取ってても、もう半分以上削れてるから問題ないんじゃないかなーって思うけど。魔術なんて分からないし。
[キラーは携帯電話をみなみに放って返す。返答も待たず、玄関から外に出た]
ほら、早く行くよ。
――……自負、ですか。
[
自らの魔術に自負を抱くほどには、魔術を修めてはいなかった。
――魔術師として長く生きれば、そう感じられたのかもしれない。
だが。
主が望むような返答だけは、よく判った。
]
方角は、あちらです。
……不逞な輩を、捕らえに向かいます。舌を噛まないように!
[言って。絨毯を急角度で翻して。一気に、降下していった。]
うむ。
この戦争のバーサーカーはキラーが兼ねてたってことで、私もいいと思うんだ。
仮面?
…………。
……あ、ああ。
いたような……気もするね……。
[上空より降下してくる絨毯の存在に気づく。
銃を抜きありったけの弾丸を絨毯に向けて打ち込んだ]
聞くとは思えないが、時間稼ぎぐらいには……。
[銃に弾を込めながら結界の範囲ないから脱出する。
幸い、解呪は順調に進んでいて結界の範囲は大分狭まっていた]
[
魔力もなにも孕まぬ、ただの小さな金属塊。
そんなもので、サーヴァントたるこの身は止められない。
――だが、主に命中れば、只では済まない。無視して突っ込むわけには、いかなかった。
]
――……そんなもので!
[
風の呪を紡いで、迫る金属塊の軌道を強引に逸らせて。
地上へと降り立って、結界外へと逃げ出した、不遜な魔術師の姿を見遣った。
]
サーヴァントは……随分と、遠くにいるようですが。
……随分と余裕があるようですね、魔術師。
[こちらに視線を向けるサーヴァントとマスター。
飛んでくる皮肉の言葉。
その姿を見た時、一瞬時が止まった。
脳内が美しいといった感情に押しつぶされそうになったのだ。
進入してくる感情を振り払うかのように高く飛び上がり再度、銃弾の嵐を浴びせた]
チャームだね。
まったくもって厄介だっ!!
[残念ながら魅了除けのアクセサリーは用意していなかった。
サーヴァント相手に眼を合わせず戦闘をこなす。
とてもではないが勝利への道筋は立てれなかった]
[放たれた銃弾の一部が身体を掠める。]
銃か、……なるほど、面白い。
並みの魔術師ではないな。
――が。
[マスターが単独となれば、キャスターの敵ではない。特に手を出すでもなく、敵マスターとキャスターの応酬を見守ることにした。]
――……魔術礼装もなしに、飛んだ……!?
[
驚愕を覚えたのは、一瞬。
立て続けに襲い来る鉄の飛礫に、風の壁を編み上げて、主を庇って。
最後の一弾を防いだのと同時、その風を中空の魔術師へと解き放った。
]
――風よ!
باد بچرخ
[迫る風の刃、人間に空中では動きを変える術はない。
ただし、魔術を持っていなければの話である]
Un descenso súbito de gravedad
[詠唱開始と共に重力が展開され、体が無理やり地面へと向かい風の刃を交わす。
無論まともな着地など出来るはずはなく、地面に激突し転がった]
[転がっている最中にマスターの姿を確認した。
刀を差した中年の男、蒲生家のものに違いなかった]
はぁ、はぁ……。
やはり、蒲生がキャスターで正解か。
しかし、噂とは随分違うね、女を戦わせて自らは見物なんてね。
蒲生家の武士道ってのは一般的な武士道とは違うのかね?
[精一杯の虚勢を張りながら立ち上がる。
時間さえ稼げばダビデが来てくれるはず、そう信じている]
[
魔術師の動きは、想像を絶していた。
というよりも、自らの知る物理法則では有り得ない、急激な降下だった。
――そして。その魔力には、覚えがあった。
それが、本来であれば追い討ちを掛けるべきであったところを、手を止めさせた。
]
成る程――……屋敷を探った魔術師は、貴方でしたか。
――それに、あの少女の尊厳を救ったのも。
[屋敷を探っていたのがばれているとは思わなかったので少し驚いた表情を見せた。
尊厳については悠乎のことをきっと言っているのだろう]
さすがだね、屋敷を探ったのをばれてるとは思わなかった。
それと、尊厳? 何の話だからわからないよ。
[キャスターの方を振り向く事はなかった。
サーヴァント相手に自殺行為に近いが完全に魅了されてしまうよりはましだった]
ふ、……鼠風情が武士道を語るか。ならば望みどおり切り捨ててくれよう。
下がれ、キャスター。
[言うや否や、蒲生正宗を抜いて敵マスターとの距離を詰めた。
その切っ先は心臓を狙う。]
え……こ、子供っ? あなたが?
それより、今の――
わあっ!
[キラーの言葉の中に、聞き返したくなる部分があった。どう聞けば良いのかと思案した所で、放られる携帯。無事キャッチした時には既に、キラーの姿はその部屋になかった]
……うう、聖杯戦争が終わる頃には、わたしもこうなってそう……。
[心臓を狙ってくる高速の突き。
キャスターの魔力で強化されてるのが明らかな早さだった。
斥力では弾ききれないと判断した]
Gravedad el movimiento de velocidad alto
[詠唱を完了し刀を回避するが腕を掠めた。
回避できなかった事実が相手の速さをよりわかりやすく認識させてくれた]
――……隠さずとも。私は、観ていましたから。
[
呟いて。
主の指示にと従って、半歩を退いて。
斬りかかった主の刀の行く末を見定めながら、いつでも介入の出来る態勢を保っておく。
なにしろ、主の傷は未だ、完治してはいない。本来ならば、夜までは安静にしている必要があるのだから。
]
[みなみを待たず、一歩、外に出た。
気持ちよい風が吹くのを感じ、それを全身で感じる。不完全な主導権ではあるが、こういうのも悪くない……。
派手に争うような、魔力の気配さえしなければ」
……あー、ねえ、みなみ。これってなんだか、近くでやり合ってるみたいじゃない?
[そちらを指差し振り返って、問いかける]
[交わした先で一瞬の動作で拳銃に弾を籠めた。
今度は連射はせず心臓を狙って放つ。
先程の意趣返しといわんばかりに……]
っ!!
ダビデ、まだか……?
長くは持たないぞ。
[痛み出す傷口。
姿を現さない自らのサーヴァント。
状況は悪くなる一方だった。
しかし顔に浮かぶのは笑みだ。
嘗て師に教えられた、「ピンチの時こそ笑顔でいろ」
そんな言葉が頭に浮かんだから]
―中央ブロック 雑木林―
[人目を避けるようにして、林の中に足を踏み入れる。
その中で、比較的大きな木を見つけると、それを背もたれにして座り込んだ。]
(…このままじゃ、帰れない)
[意識を肩に集中させる。
木々から伝わる、微かな大地のマナで補助しつつも、治癒魔法と言えるレベルの物は習得出来ていなかったため、傷口の表面をわずかに塞ぐのみだった。]
……。
[ふぅ、とゆっくりと息を吐くと、着ていた上着を片方の肩にかけて、少しでも傷口がばれないようにして帰路についた。]
――東ブロック――
[夜がその姿を見せ始めていた。"半分以上削れている"。キラーが何気なく口にした言葉が頭にこびり付いて離れなかった。朝方に見た、キラーが帰ってきた時の影としての姿と共に]
っ、これ、
[みなみが口に出すより早く、キラーが指摘した。こくりとそれに頷く]
うん、サーヴァント同士が宝具を使ってる! って感じじゃないけど、それなりの規模だよね。
[
主の動きが、ふと止まった。
だから言わないことではない――微かに、怒りすら覚えて。
]
――風よ。
باد بچرخ
[
主を狙う鉛の飛礫を、弾き飛ばして。
それでも尚、相手の魔術師に手を出すつもりはなかった。
]
―マンション ドアの前―
[ドアノブにそっと触れる。
ドアを開けるのに、一瞬躊躇しながら、一度深呼吸をして、そっと音を立てないようにドアを開けた。]
……。
[隙間から、うかがうように中を覗き込む。]
[口論の末、余りにも恥ずかしがるもとい拒絶する茜の姿に見かねて折れたセイバー。
だが、待っていても特にする事はなく、何気なく部屋で眼を瞑っているだけであった。
どれほど経っただろうか、扉が開き誰かが此方を伺う気配を感じる。]
お、帰ったか。
随分と長くかかったな。+
[しわを寄せた眉間を押さえて、ほぞを噛む。そちらを見つめて、一拍の間]
アイツがよく言ってたわ。上手くは、いかない……って。
行きますか。今回の聖杯戦争がどれだけ普通とは違っても、結局やることは一つだけ。
[キラーは気配を遮断すると、その気配の方向へと足を向ける。みなみを振り返らずに、若干の嫌悪を込めて言った]
化け物同士の、殺し合い、でしょ?
[
――あの晩の、使い魔を通して観た一部始終。
闇のサーヴァントを捉えた、極大の重力による事象の崩壊。数瞬で蒸発したとはいえ、あれは。
事象の地平線――その先には、時空の特異点が生ずるのだという。ならば。
今少し、あともう何代かを重ねれば、"届く"ほどの家系になるかもしれなかった。
それだけの才能を、終わってしまった存在が摘み取るわけにはいかない。
――……いや、自分に正直になろう。
魔術師としての理由など、この自分には必要ないのだから。
この魔術師は、あの少女を救おうとした――たとえ、手遅れで、無意味であっても。
自分に似た――魔術師としては、不適格な性分の持ち主。
自分は、それを殺したくはないのだろうな――誤魔化すように、小さく呟いた。
]
――……情ハ人ノ為ナラズ、でしたか。この国の、格言。
[キャスターの介入がなければやられていたかもしれない。しかし今はただ、目の前の敵を屠るのみ。]
――“鎌鼬”。
[敵マスターの周囲に風の刃を発生させると同時に、再び距離を詰めて切り払いの一撃を放つ。]
[弾丸は風に再度防がれた。
しかし、相手はなぜか苦しみだして交わす事もままならない状態だった。
キャスターの方向に弾丸をばら撒く。
先程の傷のせいで正確とは言いがたい射撃だったが適度に散らばり牽制には丁度良かった。
その間に残る片手で旨から爆弾を取り出し、蒲生延に投げつけた]
――っ!
[踏み込んだ瞬間、敵マスターの手から放たれた物体が視界に飛び込んできた。咄嗟に切りつけ、それを切断する。再び肩に走る激痛。]
[性懲りもなく、自らへと向かう鉄の飛礫。]
――……ですから、こんなものが。
[
風の呪を唱えて、軌道を逸らして。
その、風によって巻き上げられた砂埃で、微かに視界が塞がったために。
魔術師が、自らの主へと投擲したものへとは、何らの反応が出来なかった。
]
…ただいま。
[顔に笑顔を貼り付けて、信長とは離れた位置に腰を降ろす。
そっと座ったつもりだったが、肩に痛みが走り、ほんの少し顔をしかめた。]
…えーと、なんというか、その。
何件かお店を回ったんだけど、気に入ったものがみつからなくて、何も買ってこなかったわ。
ヒマだったら、どこかに出かけてても良かったのに。
セイバーは、名塚 聖 を能力(襲う)の対象に選びました。
[再び巻き起こる風の刃、しかし今度はマスターの魔術だった。
爆弾をなげた瞬間に向かってきたので交わす術はなかった。
風に切り刻まれながら吹っ飛び、ビルの壁へと叩きつけられた]
くっ!! だけどまだだ。
[キャスターの魔術ではなかったのが幸いした。
大分ダメージは食らったが致命傷ではなかった。
よろめきながらも再度笑みを浮かべながら立ち上がった]
[上手くは、行かない。キラーが言った言葉をみなみも繰り返した。聖杯戦争が始まってから何度、みなみ自身も思った事だろう。何一つとして十全とは行かなかった]
……そうだね。
聖杯戦争から望んでリタイアすると言う道を取らない限り、どんなに謎を追求していったって、終わらないし、終われない。
[何気ないように見えてどこか不自然な挙動。
何かを隠していると同時に、何かを我慢しているような……。]
おい、アカネ。
[顔が歪む、まるで痛みが走ったかのように。]
服を脱いでみろ。
[虚勢の笑みは本物の笑みに変わった。
まちにまった援軍の到着だった]
援護を頼む
僕は撤退する!!
[何処にいるか解らないが援護を要請する。
了承の変わりに空から飛んでくる複数の弾丸。
先程まで自分が使っていた弾丸とは比べ物にならない威力のものがキャスターとそのマスターへと向かっていった]
[信長の言葉にびくりとする。]
……お、女の子に服を脱げだなんて、とんでもない事言ってるのね。
そういうの、今の言葉でセクハラって言うのよ!覚えとくといいわ!
[どこか慌てたように捲くし立てるも、肩にかけた上着は外そうとしない。]
[激痛で思うように身体が動かない状態で、歯噛みしながら戦っていた。そんな中、傷を負っても笑みを浮かべて立ち上がる相手に興味を持つ。距離があるのを幸いに、攻撃の手を止めて声をかけた。]
貴様、ただの鼠ではないな。
切り捨てる前に、名を――。
[問おうとした時、得体の知れないものが飛来してきた。]
終わらないし、終われない、か。
あたしたち、これ終わったら消滅しちゃうんだけどね。きっと。
[キラーは諦めの入った口調で、呟くように言った。みなみには、聞こえないように]
――……っ、アーチャーですか!?
[
サーヴァントとの気配は、まだ、遠い。そう、油断していた。
だが――未だ自分が知らぬ主従は、アーチャーとライダーのみ。
想定していて然るべき事態、その筈だったが。
]
マスター――……!!
[
自らは、その場から全力で跳んで。
適う限りの魔力で以って、主に向かう魔弾を、阻止するための呪を編んで。
背後で炸裂した衝撃にと吹き飛ばされ――石の壁へと叩き付けられて、視界が白くなっていくのを感じた。
]
痛っ…!
[肩を掴まれ、思わず叫んでしまう。
慌てて口を塞ぐも時すでに遅く、肩の傷口からは血が滲んでいた。]
……これは、その…。
[言い訳をしようと口を開くも、咄嗟には上手い言葉が出てこない。
思わず目を逸らした。]
[掴んだ指先に感じる若干の水気。
それは赤い、紛れもない血液によるものだった。]
これは、一体如何した。
[肩を掴んだまま、鋭い眼差しで茜に顔を近づける。]
――誰にやられた?
[痛む体を動かしながらビルの合間を走った。
ここで逃げ切れなかったらどうしようもない。
また、ダビデには非難されるんだろうなぁと思っていた時だった]
おいおい、洒落にならないって。
これは……、まずい。
[目の前に大小二つの魔力を感じとる。
大きな方は明らかに人間のレベルではなかった。
絶望を感じ取った。
故に顔は笑顔だった、こんな時に笑ってしまう自分の癖が少し悲しかった]
[キャスターの生み出した障壁によって防がれた何か。それでも衝撃は壁を越えて伝わり、延の身体が弾け飛んだ。ビルの壁に背中から衝突する。]
ぐ、フ……ッ。
[一瞬呼吸が止まる。それを整えて状況を確認すると、敵マスターの気配は既に消えていた。]
[気を失ったキャスターの姿を見つける。主人を守るために、自分の守りが疎かになったのだろう。]
……手のかかる奴だ。愚か者め。
[言いながら、両腕でキャスターの小柄な身体を抱える。再び激痛が走ったが、しっかりと抱えたまま屋敷に*向かった*]
[肩から手を離されずに、もう隠す事のない痛みに顔を歪める。]
……離してっ!
[強い眼差しに少し怯えながらも、こちらもまけじと睨み返した。]
…マスターと会ったのよ。
それで一戦交えたってわけ。それだけの事!
[自分が逃げた苛立ちから、吐き捨てるように言いながら、おそらく、アーチャーの。とぼそりと小さく付け加えた。]
[ビルとビルの合間、暗く暗い路地裏に、その男は現れた。
魔力を持った人間。しかし、その総量からしてサーヴァントではないだろう。ならば、マスターか。
長い時間走ってきたのか、それとも手傷でも負っているのか、その息は荒い……が、偶然出遭った自分たちを見ても、その口には笑みを浮かべていた]
……行く手間が省けたね。
ハァーイ、どうも初めまして。……かなぁ? なんか、匂いが知ってる人っぽいけど。
[キラーは訝しげにその風貌を見、そして諦める]
ま、あたしには魔力の質なんてわかりゃしないか。
何故助けを呼ばなかった!
――何故、令呪を使わなかった!!
[睨んでくる茜に、思わず怒鳴ってしまう。]
アーチャーの、マスターか……。
[思い浮かぶのは昨日の英霊。]
[目の前にたつのは切り裂きジャック、キラーのサーヴァント。
そしてマスターの眞奈みなみがそこにいた]
こりゃ、どうしようもないね。
温存してる場合じゃない。
アーチャーのマスターたる名塚聖が令呪をもって命ずる!!
こい、ダビデ!!
[手の甲に何かが失われていく感覚が走る。
それと共にあたり一面を光が包んだ]
……。
[怒鳴る信長に何も言い返せず、下を向く。]
…こんな事に令呪は使えないわ。
何かあった時、どうやって貴方を止めろっていうの…?
[思い出すのは、宝具を使った時の、信長の狂気の目――]
……私だって、令呪を授かったマスターの一人よ。
そんな簡単にやられはしないわ…。
―東ブロック―
[契約によって結ばれたマスターとの経路(パス)。流れ込む魔力が、質・量ともに瞬時に数倍まで増幅された。それと同時に強大な強制力が発生。令呪の使用によって齎された、サーヴァントにとって絶対的な命令が少年の身体を突き動かす]
――了解です、ヒジリ。今、すぐ!
[足下のコンクリに跡を穿ち、少年は高々と跳躍する。否――それは既に飛翔と呼ぶ方が正しかった。数秒の間を隔てて、彼は青年の元へと辿り着く]
――お怪我は、ありませんか。マスター?
[令呪の使用と共に現れた少年に、キラーは驚く]
凄い。それってそんなこともできるんだ。殺すなって言いつけるだけじゃ無かったんだね。
で、出てくるのがアンタか……。縁があるって言うのか。
まったく、どうせすぐ他にやられて死ぬから、相手しなくていいって言ってたんだけどなぁ。
[アーチャーを冷たく見据え、キラーは呟く]
でも、こっちも時間無いのよね。
――東ブロック――
[初めてアーチャーと会った場所を彷彿とさせる路地裏だった。息を切らし走ってきた男はキラーとみなみをみて笑い、そして、令呪が放たれる。ほんの数秒後、アーチャーが目の前に舞い降りた]
……初めまして、名塚さん。
声だけは聞いたことがあったけど、こうやって対峙するのは初めてね。
俺を止める以前に、お前が死んだらどうする!
最も優先すべきはアカネの命だろう。
優先順位を間違えるな!
[より強く詰め寄ったせいか、いつの間にか壁に押し付けていた。]
相手の傍にサーヴァントが潜んでいたら如何する?
そうでなくても、相手が先に呼び、その刹那切りかかられたら如何する!
――いいか、人は簡単に死ぬ。
たとえ其れまでにどれだけ栄光の時を得ようとも
たとえ、どれだけの苦難を乗り越えようとも…… 。
いとも簡単に死ぬ。それを忘れるな。
怪我は気にする事はないよ。
[嘘だった、今すぐにでも治療が必要だ。
とてもじゃないが戦える状態ではない]
何の因果かしらないけど、女言葉を話してるけどさ。
切り裂きジャックを倒してくれ。
[壁に手を突きながら命令を下した]
[キラーが漏らした言葉に、文句を努力して殺す。それよりも、時間が無いと言うキラーの言葉に違和感を覚える]
……? それって、どういう……
[口を開きかけて、耳に入る名塚の言葉。今までみなみがみてきたものとは決定的にこの場は違う。それは、この場にマスターが居ると言う事]
[目の前のサーヴァントは切り裂きジャックとは大分雰囲気が異なった。
しかし、纏うまがまがしい空気が同じに思えた。
だからこそ、ジャックと断定して命令を下した。
そして声を掛けてくる、みなみを振り返った]
ああ、はじめましてだね。
先日は携帯をありがとう、自らでいかなくてわるかったよ。
[何気ない会話だった。
戦争中とは思えないそこらじゅうで溢れてそうな言葉だった]
[仮面に涙を描き加えた]
これでいい。
[作業を終えたところでお腹が鳴った]
身体がなくても腹は減る。か。
バーサーカーの食べ物は食べたくないし、ここは何か作るべきなのだろうな。
[この主導権は、仮初め。ほんの一時、群体のジャックの意志を抑え奪っているに過ぎない。
バーサーカー戦。マスターの少女を殺し、一度に複数のサーヴァントに攻撃された。高揚と、恐怖。それは群体の意識に葛藤となり……。
その、群体間の混乱につけ込んだだけの不完全な奪取]
(ま、アイツみたいな力業なんて元から無理なんだけど)
[心中で呟き、鋼片を取り出す。かつてダビデの撃った鋼片は、加工されて小さな凶刃となっていた]
これをアンタに向けるってのも、皮肉な話ね。
―東ブロック・路地裏―
[昨夜とも、その以前とも異なる、細身の姿。闇色は変わらないがまた何らかの変容を遂げたのか、と想像しつつ出方を伺った]
――それは、言われるまでもなく。
[青年の命に短く返し、手にした投石紐を再度活性化させる。視線はみなみの位置だけを確認し、姿を留めようとはしなかった]
……時間?
存在しうる時間ならば、確かにお前にはもう、さして残されては居ない。私に打倒されるのだからな、キラーよ。
[答えた矢先。キラーが手にした鋼片に気づく。矢尻を模したような形状。秘められた剣呑な魔力は、悪しき毒を思わせた]
……私に?
アーチャーたる私に、飛び道具で競い合おうという心算か?
……あっ!
[壁に押し付けられ、痛みから思わず声が漏れる。
信長の言う事は、いちいち正しい。それは自分でも良くわかっていた。
けれど、――アーチャーと名乗ったあの少年。
彼の言った事が自分の中で、焦りと混乱を生んでいた。
飛び道具を見ても、引かずに戦い続けたのはそのせいだ。すべては―]
(…失いたく無い)
……ごめんなさい。
[『人は簡単に死ぬ』と信長は言う。それが自分の胸を締め付けた。それはすでに知っている痛みだったから、その言葉は痛かった。]
[謝罪の言葉で、熱くなっていた頭が我に返る。]
すまん、熱くなりすぎたな。
……痛かっただろう。
[掴んでいた肩から指を離す。
その肩には血が滲んでおり、肌を赤く染めていた。
その肩を、優しく指先で撫でる。]
治せるか?
必要なら薬か何かを買ってくるが。
どういたしまして。
あなたもあの場所に居たんでしょ? それなら、残念だったね。
[初めは普通に。少しずつ少しずつ、みなみの声が魔力を孕み始めた。名塚に害を成そうとするものではなく、しかし、その準備であり、牽制]
[少年は見覚えのある武器を構える。投石紐。
かつて、ジャックの存在を半数以上消滅させた宝具。おそらく今まともに受ければ、その魂の一つすら残るまい。
だが、それを見て女性の姿をしたキラーはニィィ、と笑う]
我々なら、気軽に攻撃できるんだね。
悪だから。
アンタは化け物。だけど、崇高すぎて甘すぎる化け物。
アンタは目的のために手段を選んでる。罪の浄化とか、えっらそうなこと言いながら、それを手に入れようとはしていない。アンタ、結局はそれを望んでないんじゃない?
[対峙するのは名塚であっても、キラーとアーチャーから目を離すことはしなかった]
たぶん、そういう意味では、ないと思うんだけど。
[でもそれに近いのかもしれないと、みなみは胸中で呟く。キラーはアーチャーに勝てないと、そう思ったから時間が無いと言った訳ではないような気がした。それでも、キラーが醸し出す雰囲気は、それに近い未来を暗示しているように見えた]
[
――……自分は、敗北けたのだろうか。
闇よりも冥い、孤独。この世界に光はなく、温度はない。
この堕ちていく感覚は、一度、味わったことがあった。
嫌だ――……と。
願いを叶えられずに、消えることではなくて。
ただ純粋に、あの無価値な虚無へと堕ちる恐怖が、意識を支配していた。
]
[信長の言葉に、首を振る。]
…心配してくれて、ありがとう。
[肩に触れる手を見つめながら、小さく呟く。]
…表面を塞ぐくらいなら出来るから、大丈夫。
痛みくらいは我慢すれば、なんとでもなるわ。
幸い、弾は貫通してるみたいだし。
[――そんな、絶望のなかで。凍えそうな躯に、暖かな体温を感じて、引き戻された。]
――……ぁ……?
[
――滲む視界は、未だ明るくて。
映った姿と微かな揺れが、自分が、主の腕に収まっていることを、伝えていた。
]
――……もう、少しだけ……。
[
それは、傷付いた主にと負担を掛けるだけのエゴ。
それでも、どうか――この瞬間だけは。この一片の優しさに、全てを預けていたかった。
]
[みなみの言葉は自分が何を狙ってた行為が読まれていた事が感じ取れた]
いや、どっちにしてもだめだったね。
あの場で君を殺していたら、ダビデに怒られちゃうからね。
いや、見事な戦略だよ。
[口から出た言葉は皮肉だった。
気まずくてダビデの方は向かなかった。
魔力が集まりはじめたのを感じて自身も魔力を集める]
[歪に笑む闇色のサーヴァント。唇から洩れる言葉もまた、少年にとっては歪なものでしか無い。昂然と言い返す]
無論だとも。その身で味わって知っていよう。
悪を討つ一撃――お前がそうであると知っている限り、私の宝具は何よりもお前を倒す為に使われる。
罪の贖いをこの手に齎すのは、お前の死によってだ、キラー。
間違った手段は正しい目的をも歪める。
咎無き者を手に掛けてまで果たされる目的など、私には無い。
……アカネが俺の宝具を危惧するならば、もう宝具は使わん。
[未だ壁に背が触れている茜の頭を抱きしめる。]
だからもう無茶はするな。
――心配をさせるな。
[アーチャーの答えには、首を振った。下らない、と]
路地裏のゴミ捨て場に捨てられて、喰う為に人を殺してたあたしには、なんとも崇高なお話しだこと。
アンタ相手に飛び道具なんて無謀はしないわ。そもそもアタシは切り裂き魔。飛び道具なんて使わない。
だから、これはただのナイフ。小さいでしょ? でも、これでいいんだって。
[言って、キラーはそれを収束させる。自分の存在を。自分の意味を。魔力というものに乗せて、収束させる]
(そんな便利な眼など、持ちはしないのでね。ただ、感覚ならたくさんある)
(苗床の力を借り、我らが群体の六感を全て用い、対象の死を感知する)
(それを捉えるのは、彼の者の撃った鋼片を加工した、聖なる刃だ)
(私が知る中で……最も、我々に相応しい能力だよ)
[微笑みながら、キラーはビルの壁をそのナイフでなぞる。ゆっくりと、滑らかに。
その軌跡に沿って、壁が、切り裂かれた]
研ぎ澄まされる狂気――あいつは、そう言ってたわ。
[名塚の言葉ににっこりと笑った。恐らく名塚はある部分では勘違いをしているのだろう。だがそもそも、もしもみなみがその言葉を皮肉と取るような女だったのならば、今彼女はここに立っていない]
ありがとう。それでご飯を食べてるようなものだから、嬉しい。
ダビデが高潔な人間だから、だと、思うけどね。
――ところで、あなたもその戦略に乗ってくれる?
[宝具を使わない、と言う信長に、少し複雑な顔で下から見上げる。]
…どうして…。
[この人は私の事ばかり優先にしてくれるのだろう。
色々と問いかけたかったが、抱きしめられるとふいに涙が滲んで、それを隠すように*目を閉じた*]
[冗談ではない、乗る訳がない。]
ごめんだね、どうせチャームされるならキャスターの方がまだましだよ。
[流されても更なる皮肉で返す。]
眞奈みなみ、一つだけ聞いてもいいかな?
君は切り裂きジャックを使って得た勝利で喜べるのか?
魔術師とはいえ、少女を切り裂き蹂躙した上の勝利でも良いのかな?
[ダビデが同じような事を聞いてるとは全く知らなかった]
[対峙する距離はまだ近すぎる。キラーの始動を捉えられたとしても、みなみの魔術がどのように作用するかは不明。だが――退けなかった。生まれ出ずる脅威。その性質を見極める方が重要だ]
――『キラー』の名の通り。
殺傷し殺人し殺戮する事の具現が、その宝具か。
[恐怖によって彩られた幻想が禍々しい者の手の中に顕現する。
存在の強度はすなわち、ヒトの思い描く理想ではなく悪夢の強さ。触れられたならば直ちに死に至る、魔を宿した鋼がそこに在った]
[信じられないほどの負荷が全身にかかる。それを感じ、その女性は自分の役目は終えたとばかりに目を閉じた]
アイツの作ったこの宝具。これを届けるのが、アタシの役目。
じゃ、そういうことで。せいぜいがんばりなさい……ジャック。
[そこには、五本の腕を備えた、禍々しい異形があった。
その腕の一本は、先端に鎌を備えず……鋼片の刃を持って]
…………ゲラ。
[力を手にし、薄く笑う異形。それが、駆ける]
[アーチャーの口からその言葉を聞くのは二度目だった。"間違った手段"。キラーは本当に間違った手段だったのか。腑に落ちない。胸に残る違和感]
(……キラーが英霊でないように、秩序の元に存在する存在じゃないことは確かで。
この聖杯戦争に異常があるとして、本来呼び出されるべきサーヴァントじゃないっていう意味なら、間違った手段なのかもしれないけど、でも)
[胸の中をずっと蟠っていた疑問が、皮肉にも名塚のその言葉でみなみの中で溶けようとしていた。笑顔は崩れない]
あなたのいう少女が、魔術師なら、この聖杯戦争のマスターなら、もちろん喜べるよ。当たり前でしょ?
それとも――、あなたはこう言うつもり?
携帯電話を使ってわたしを呼び出して、隙をみて殺そうとしたあなたと、キラーがしていることは別物だ、って。
人を殺すと言う点では同じなのに……、あなたの手も、キラーの手も同じように汚れているのに、あなたはキラーとは違うんだと、そういうつもり?
[あれは、“死”そのものだ。
最上級の警告が少年の全身を凍らせ、解凍する。
たとえ主の祝福があると言えど“ヒトが死ぬ事”自体は防げない]
――マスターっ!
[背後に立つ青年を振り返りもせずに、背後へ身を躍らせた。
マスターのジャケットを引きずるようにして、接近するキラーの攻撃範囲から逃れようと跳ぶ]
[彼女もまた魔術師だった。
この戦争においては彼女の言う事こそ正論だった]
なるほど、魔術師だな。
少女については君の言うとおりだ。
僕は魔術師じゃないから、出来れば人なんて殺したくないよ。
だけど、キラーはその性質上一般人にも被害を与えそうだったからね、手段は選ばなかったよ。
[実際はできなかったけどね、と心の中で呟いた]
僕が聞きたいのはそれが正しいかどうかではなくて、君が納得できるかだね。
キャスターが「時間を進める」を選択しました。
[アーチャーが逃げようと、そのマスターを掴み逃れようとする。キラーはその行為に、怒りと歓喜を覚えた]
モット。
モット。
もっと、ハヤク。
[腕が二本減った。それは瞬時に足となった。虫のようなおぞましい姿に変貌し、その足で跳躍する。
研ぎ澄まされる狂気――それは、全てを殺す魔眼などではなく。
英霊という完成された化け物に対し、ジャックが持つ……成長という名の宝具]
うむ。やはりバーサーカーはジャック・ザ・リッパーに相応しいな。この際兼ねてしまうといい。
……仮面?
…………あ、ああ。
確かマスクメロンのサーヴァントか何かでしたっけ。
[跳躍した異形。上空から腕が撓い、襲い来る。
鞭のように、あるいは蛇腹のように。その先に在るは一つを除いては何れも、鋭い鎌の刃。風切り音を響かせて空間を切り刻む刃の嵐から逃れ切れず、脚に幾つもの裂傷を作った]
くふ、ッ――!
[理由は明白だった。遥かに致命的な脅威――瞬滅の魔刃を避ける為。路地を囲む外壁が次々と切り裂かれ、濛々と砂塵を捲き上げた]
[名塚が何と言おうと、その言葉に傷ついたり怒ったりすることは無かった]
魔術師じゃないから?
出来れば人を殺したくないから?
それなら、今すぐに教会に行って棄権すれば良いこと。
あなただって、同じよ。何も変わらない。
魔術師に何の恨みがあるのかわからないけど、同じ。
ただの、魔術師よ。
[アーチャーと共に距離を置く名塚を冷静に見詰めた。みなみがここまで彼に言うのは、自分と似た甘さを見せつけられたような気になるからだろう]
――決めたの。
納得することにしたの。
納得、出来なかったよ、もちろん。
でもわたしは、今日こうやってここに立つまで払ってきた全ての犠牲を無駄にしたくないの。命令されてここにいるけど、でも、それに従うって決めたのはわたしだから。
だから、わたしは自分の意思でここに居るし、聖杯を諦めることよりは遥かに納得できるって、だから納得することにしたの。
こんばんは。
いや、刻限定義から考えるとおはようか。
マスクメロンのサーヴァント・スパルタクスだ。
見知らぬ女よ。ハルカといったか。
君は腹をすかせているらしいな。
我こそはマスクメロンのサーヴァント。
腹をすかせた君にマスクメロンをあげよう。
[瀬良悠乎にマスクメロンを手渡した。]
[モニターを見ている]
喜べると即答する魔術師は、魔術師なのだろうな。
バーサーカー。
何故だろうな。
私の中で、聖株が高騰している。買わないか。安くしておくぞ。
[仮面を撫でた]
[本命は鋼片のナイフただ一つ。それを見せびらかすように、キラーは鎌腕を振るう。
普段ならば、簡単に終わらす気など無かっただろう。しかしこの相手は秩序と善の具現。初見から、自らを否定する存在であった。
二本の鎌は足を切り裂いた。機動力を奪うための一手。キラーはニィィ、と笑みを浮かべる]
終わリダ。
[鋼片のナイフを振り上げる。
うかつに触れれば消滅する――かつて魔術師が槍の男に言った言葉。その時は相手を惑わせるために言った言葉が、今は虚言でなくなっていた]
ゲラゲラゲラゲラゲラ――――――!
[響く哄笑と共に。腕が、振り下ろされる]
[路上を後転しながら起き上がり、マスターへと大声を上げる]
令呪を! 彼の者を倒すには、貴方の助けが必要です!
[この状況を打開するには、敵手を一撃で沈黙させるだけの打撃――すなわち、宝具の解放が必要だった。だがこの距離はレンジよりも遥かに内側。仮に投じたとて有効な祝福強度は発生せず、却ってその隙が致命的な結果を生むだろう]
[マスクメロンを冷蔵庫に入れた]
それじゃ。そろそろ女子高生になろうか。
色々あって無理かもしれないが。
新しいスパルタクスのために。
[みなみの言葉が耳に入るも反論できる状態ではなかった。
必死に魔術で自身の身の防御を固めるので精一杯だった。
目の前にいるダビデにキラー必殺の一撃が向かってきた]
まずい、あれは回避できない!!
[見た瞬間に悟った、ダビデに向かう刃をかわすことは出来ないだろう。
令呪を求めるダビデの言葉に体が反応した]
飛べ、ダビデ!!
[下した命令は攻撃ではなく回避だった
絶対の命令権によりダビデは万物の法則を超えて飛び上がりキラーの刃を回避した]
何を言っている。
セイバー:織田らぶ長
ランサー:原田左之助
アーチャー:ダビデ王
キャスター:シエラ婦人
キラー&バーサーカー:ジャック・ザリッパー
マスクメロン:仮面の人
数もぴったりだ。
[マスクメロンを冷やす様を眺めている。]
[勢いよく突進してくるキラーの姿が眼に映る。
獲物が消えたとしても急に止まれるわけなどない。
サーヴァントでかわせない攻撃をかわせるわけもなくキラーその刃に体を貫かれた]
な、にやって、んだろうね……。
[血を口から噴出した。
体中がもはや助かる術はないと悲鳴を上げた。
だけど、なぜか顔は笑っていた]
まあ。
なんといおうとおまえは「バーサーカー」なのだがな。
しかし女子高生というものはどうすればいいんだろう。
ギャル文字とやらを使えばいいのか。
それとも流行の言葉遣いをするべきなのか。
……わからない。
[目の前の少年がナイフを避ける。その怪我ではあり得ない跳躍を見せる。
感じたのは、強大なる魔力。先ほど、この少年が現れたときにも感じた力]
邪魔ヲ……。
[感じた怒り。
手の届かぬ場に行った少年。だが、キラーはその加速を止めなかった。いや、止まれなかった、と言う方が正しい。
傷つけ、蹂躙し、楽しむ過程もなく。
鋼片のナイフは、アーチャーの後ろにいたそのマスターを、突き刺していた]
[血にまみれた体をみて改めて自身の死を認識する。
まさに無駄死にである、自らのサーヴァントを庇ってなんて。
だけど、それで良い気もした]
ガハッ!!
[吐血は止まらない、意識も定かではなくなってきた。
だけど、すべき事はすぐに認識できた
キラーの腕をしっかりと掴んだ]
Gravedad de la ruina
[たった一言の詠唱、それで十分だった。
代々伝わる魔術刻印に刻まれた魔術はそれだけで発動する。
地震すら耐えられない重力場を発生させる捨て身の魔術。
発動した重力場はブラックホールとなりその場に大きな陥没を作り出した]
[それは予期せぬ形で現れた。
今にも振り下ろされんとしていた刃の先に、自分ではなく魔術使いの姿。その情景を上空から見下ろす己。驚愕に声を奪われる。
しかし少年には為さなければならない事があった]
聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。
主の栄光は地に満つ。
[聖句の詠唱を挟む。装填された鋼球に、先のものに倍する魔力が収束していく。上空で輝く白い光。一瞬の流星のように]
主の御名において、僕(しもべ)たる我が茲に願う!
――《恐るべき御稜威の王(レクス・トレメンデ)》!
[その瞬間、少年はただ伝説を再現する配役の一部となる。
青年を助ける事が適うか否か。
サーヴァントとしての本能的な思考すらも消え――敵へ目掛けて必倒の光弾を放った]
ええい。
私はマスクメロンだと言っている。
バーサーカーはジャックに譲る。
[「バーサーカー」は多分資料の誤植か何かだと主張した。ちゃんと書き直しておいたぞ。]
女子高生かは分からないが、マスクメロンを二人の前で頑張って頬張るがいい。きっと悩殺出来るに違いない。
私は見守れないがエールが必要ならその仮面を代わりにするがいい。涙を書き加えてしまったようだが。
[生み出される重力場。バーサーカー戦でも受けたブラックホール。だが、それとは比べものにならない魔力規模]
ぐ、ギィィィィィッッ!
[悲鳴を上げる。鋼片をさらに突き刺す。イレギュラーであったためか、それは明確なる死の場所を貫いていなかった。普通に殺傷するには小さすぎる刃。相手はまだ死んでいない。それが故の反撃。
ならば、殺す。
重力場でまったく自由がきかない。だが、刃を動かし、ねじり、その死の場所へと移していく。
だが、その凶刃は終に、届かなかった]
さて。予定より長居しまったな。
折角格好つけたのに台無しだ。
…………。
――――フ。
……いや、これも私らしい幕切れか。
マスクメロンも渡せたことだ。
これで未練なく世を去れる。
寂しさなど明日になれば紛れるはずだ。
ではな。亡霊は改めて消えるとしよう。
バーサーカー、「マスクメロン」のサーヴァントでは恥ずかしいと思わないか。
せめて他の名前にしよう。
そうだ。
復讐者(アベンジャー)はどうだ。
[口調がわくわくしている]
ゲホッ! うっ、ぐ……。
[ねじりこまれる刃に悲鳴を上げる。
痛覚が麻痺してくれれば良かったのにと最後まで下らない事をおもっていた。
瞬間上空より聖なる弾丸が飛来しキラーへと命中する。
弾丸の余波で重力場は消滅し開放された体は空中へと投げ飛ばされた]
[中身]
実はそれは設定提出の段階で(控え目に)追記していました。
スパルタクスってバーサーカーってよりアヴェンジャーだよね。あらゆる意味で。
[それは、一瞬の事。アーチャーが怪我を負い、地面に転がった。そのまま終わるのだと目を閉じれば、名塚の令呪が耳に届く。目を開けた次の瞬間、キラーのナイフが刺さっていたのは名塚だった]
……自分を守れではなく、キラーを殺せでもなく。
ダビデを守ったのね。
[愚かだと言ってしまえば一言で済んでしまう名塚の行為を、けれど笑う気にはなれなかった。浮かび上がるブラックホール。離れているここまで大気が歪み、立っているのが苦しかった。だが、それよりも]
っ、キラー!!
[崩れていく。崩れていく。崩れていく。存在が、魂が、罪悪が。
ジャック・ザ・リッパーが、崩れていく]
我ラが、苗床ハ……芽吹かず、か……。
[崩れゆくキラーの言葉。その言葉の途中からは、単一の声であった。
群体でもなく。魔術師でもなく。女性でもない。
それは、かつてアーチャーの宝具をその身で受け止めた時と、同じ声]
[その声は自嘲気味に笑い、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
崩れながら]
この罪悪の集合体……木の葉が降り積もるように構築された、偏った魂の情報。歪な原初の土。
[それは、ジャック・ザ・リッパーという群体意識の底に流れる、その存在そのもの]
なあ、この不完全な苗床でも、聖杯ならば、産まれ出ることが可能だった……だろうかな?
そして……秩序と善の具現よ。
罪から産まれた我は、やはり悪になっていたのだろうかな。
[力なくそれは笑い、そして]
みなみ。我を受け入れてくれた、者よ……。
[跡形もなく、消滅した]
[地面に叩きつけられた。
立ち上げる事は叶わなかった。
四肢に力を入れても動く事がなかったのだ]
ダビ、デ……。
ジャ、ックは……倒せ、たん……、だ、ね。
よく……やって、くれ、た…。
[もはや視覚すら働かない。
命中までしか確認できなかったがキラーの消滅を確信する]
[ふっ、と光芒が収束し、消える。眼下には霊的基盤を打ち抜かれ存在を維持不能になりつつある“英霊たりえなかった者”の残塊]
……其処から芽吹いたならば、疑いようもなく完全な、殺人のみを規範とする悪。主我も意識も持たぬ“現象”そのものとなっていたのかもしれませんね。
[投擲の反動が消え、少年は落下し始める。空中に投げ出された青年の姿を見つけ、壁を蹴って飛び寄った]
マスター! なぜ……あんな使い方を!
恥ずかしいかと問われれば、バーサーカーなのにちゃんとした戦闘が出来なかった辺りで、既に恥ずかしい。目立つのは白兵能力値くらいなものだからな。
宝具はセイバースキルの下位互換(多分)なのでインパクトに欠けるし、何よりこの面子に通用するとは思えない。
原作バーサーカーの場合は宝具特性が「特定以下無効×12回リレイズ」だから強かったんだなと改めて思い知る。
更にはアイデンティティが分からなくなってコメディに走った私が、バーサーカーを名乗ってはいけない気がする。色々と。というかコメディも割とすぐに霞んだな。
もうマスクメロンのサーヴァントでお願いしたいんだ……。
[そこには何も、残らなかった。キラーの――ジャックの最後の言葉と、魔術師だと言った彼を抱き締めた時の温もりだけが、いつまでも時を超えてそこにある気がした]
……ありがとう。
それから、ごめんなさい。
[呆然ともう何も無い場所を見る。地面は凹み、ビルの壁は歪んでいた。先程とは完璧に違ってしまった景色に、様々な感情が浮かぶ]
ええ……倒しました。
ヒジリの魔術と、私の宝具とで。
彼の者はもう、この街には居ません。ですから……
[だから、如何なるのだ。この世界の規律―恐らくは人類の無意識<アラヤ>―に断定された、“悪”と名づけられた者。
それを討つ事を己は望んだ。だが彼は如何だったのか?
その為に死ぬ事までは、望んでは居なかったのではないか?]
ですから――
[継ぐべき言葉を見つけられず、ただ青年の手を強く握る。
最後の一画だけを残した令呪の光が、淡く薄くなっていく。
凍るような思いが、声を失わせた]
[ダビデの声が消えた。
予想通りの質問だった]
さ、あね……。
僕は、結局あ、まかった、んだ、よ……。
[咄嗟の判断だからなぜといわれても明確な回答は出きない。
全力で宝具を放てば打ち滅ぼせたのかもしれない。
だけど、相打ちでダビデも消滅したかもしれない、きっと無意識でそう考えたのだろう]
眞奈、み、なみ……、まだ、いるかい?
ジャ、ッ、クは、消滅し、た。
君は、どうす、る、つもりだい…?
宝具については奴隷軍召喚にしようかと思った時期もあった。でもZeroライダーの宝具にかぶる。
奴隷軍の無念を威力に上乗せする宝具も考えたが、これはほぼギルガメッシュの乖離剣。
ダメージ返しの報復宝具はもろアンリ。
…………スパルタクスを選んだことがまず根本的な間違いだった気もしないでもない。
["間違った手段"では無いと信じながらも、聖杯戦争にジャックと言うサーヴァントを従えて戦うと言う決意が最後の最後まで出来なかったのは紛れも無い事実だ。あの影を怖いと思い、憎むべきものだと思ったのも事実だ]
……、帰ろう。
[静かに首をゆっくりと振る。太陽はとうにその姿を消し、街をどこまでも暗く染め上げていた。頭上にはただ欠けた月一つが浮かび、星は瞬く事が無い。静かな夜だった]
[答えながら、聞こえてきていたダビデと名塚とのやり取りに思いを馳せる。彼の判断は甘かったのではないと、悪くないと、そうみなみは思った。だがそれを言うかわりに、ふっと先程とは違う笑顔が浮かんだ]
あなたには、負けたわ。
[ジャックの消滅を確認して笑顔を見せた]
そう、か。よ、かった……。
[不意に瀬良悠乎の姿を思い出した。
別に敵討ちなんてつもりはなかった、そんな間柄ではない。
それでも被害者が少しでも報われてくれるならそれでよかった]
[どうするかと言う問いには首を傾げながら、結局答えは出ずに名塚の言葉を繰り返した]
どうするのかな……。
でも、どうするも何も、ジャックは、わたしの、サーヴァントだったから。
出来ることなんて、無いんだけどね。
[青年の呟きと、みなみへの問い。
致死の負傷を負った彼を助ける術は少年の手の中に無い]
――私は、けれど、その甘さこそが、ヒジリに私を呼び出させたのだと思います。
――そして、貴方を良いマスターだ、と感じさせたのだとも。
[少年は自問する。聖杯への願いが叶うなら?
それでも、彼を蘇らせようとは自分には考えられないだろう。
厳然とした数理。ただ一人を救うのと、多くの人を救うのと。
天秤の傾きは間違えようも無かった]
ちゃんと、考えたいの。
[ぽつりと呟いた。今までならばすぐに本家の指示を仰いだだろう。大体彼らが何を指示しそうかは、想像がつく。そう簡単に聖杯を諦める事を良しとする訳が無かった]
……結局悩んでばっかりで、わたしは、何もしなかったから。もっとすべき事はあったはずなのに。
[もう一つ、胸に引っ掛かっている罪悪感とが、みなみの気を重くした]
[負けたとの言葉に苦笑いする。
表情が作れているかも既に怪しかったが]
ぼ、くは、死ぬ。
君は、ま、だ、いき、てる……。
そ、れが、す、べ、てだ。
[そこまで話すと決心がついたように語った]
ダビデと、け、契約してた、たか、いを……つ、づけるといい。
彼は、む、きずだ。
それに、君の答、えは、悪く……、なかった……。
ダビ、デと、なら、うま、くやれる、さ。
[みなみの答えを待った]
[モニターを見ている]
……。私は、良いマスターではなかったかもしれないな。
私なりにはやっていたつもりだが。
この仮面ではなく。
私はバーサーカーを待っているというのに。
[視線はモニターに、手は仮面を撫でる]
[アーチャーの方に視線をやって、それから、目を伏せる。考えたことも無い事だった]
なんで……? わたしは、切り裂きジャックのマスターで、それでも良いと言ったんだよ。
あなたは、それで、いいの?
[ダビデの言葉はなぜか嬉しかった。
自分にとって甘さは恥じるべきものだった。
それを肯定してもらったような気分だったからに違いない]
ああ、君、も、あまい…、か、らね。
似た者、同士だな…。
みな、みと…、一緒…に…、戦うんだ。
君は…、ここで、足を…止める、べ、きでは、ない……。
[手に力を無理やり入れて握り拳を作った]
アーチャーのマスター、名塚聖が令呪により命じる。
名塚聖との契約を破棄せよっ!!
[最後の力を振り絞り一気に叫ぶように言葉を紡いだ。
手に残った最後の令呪が光り輝き消えていった。
その輝きが収まった時、すでに名塚聖という存在はこの世から消えていた]
……ダビデをその身を挺して守ったあなたならわかるでしょ。
今のが死んだからじゃあ次、とは、思えない。
[体内の魔力を共有する人が居なくなった。体の保有する魔力の絶対量が戻れば、体の動きは軽くなる。その感覚を思いながら、地面に横たわった名塚を見た]
……考えたいの。話も、したいしね。
[最後の令呪が起動する。
互いの経路(パス)を一瞬だけ活性化させ、そして消失させた。
もう、青年から送り込まれてくる魔力の波動は感じられない。
触れるほど近くに居るのに――]
先に、進めと。
それが、最後の命令なのですね……ヒジリ。
[――彼自身が持つ、魔力すらも。もう、感じられなかった]
[聖からの魔力が消失するに伴って、令呪の強制力は消失して言った]
……みなみ。その言葉には同意します。
キラーのマスターである事を受容していた、という事実にも。
[小さく息を吐き、みなみを見つめる]
一旦、互いにどうするかを考え、話し合う時間が必要でしょう。
ですが、移動する前に……一度、教会に連絡を入れて頂けませんか? この場の処理は、なるべく迅速に済ませたいのです。
[もはや物言わぬ骸となった青年に視線を向け、黙祷を捧げた]
[魔術使いの家系に生まれ魔術を収めた。
初めての仕事は簡単だった一般人を虐殺した魔術師の始末。
自分が正義で相手が悪とはっきりしていた。
暫くはそんな仕事ばかりで自分が正義の味方だと感じそれを誇りに思った。
だけど、そんな日々はあっさり終わりを迎えた。
自らが殺した相手の真実を知ってしまったからのだ、真実は残酷で、自分が唯の人殺しだった事を思い知らされた。
魔術刻印を継承し、家を継ぐころには完全に歩む道を失っていた。
魔術の世界から離れる事など許されず仕事を続ざるを得なかった。
不幸な事に能力はそれなりにあったお陰で仕事で死ぬ事もなかった。
最後は奇跡にすがる事しかできなかった。
魔術で殺したり殺されたりすることのない世界にいきたい、そんな願いを抱いて聖杯戦争に参加するしかなかった。
結果、死に至った。
中途半端な人生で何も成し遂げる事ができなかった。
後悔があるかと聞かれれば、あると答えるのは間違いない。
それでも満足する死に方だった。
最初に誇りに思った正義の道を貫いて死ねたのだから**]
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
[11]
[12]
[13]
[14]
[15]
[16]
[17]
[18]
[19]
[20]
[21]
[22]
[23]
[24]
[25]
[26]
[27]
[28]
[29]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新