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−教会−
[九鬼のもとに届けられた報告書を纏める。
それは、バーサーカーとそのマスターの消滅についての記録。
先日、教会を訪れた少女の言葉を思い出す。]
……猫に懐かれたサーヴァント。
その優しさが敗北に繋がったのでしょうか。
[芽祈は、猫用に作った渦巻き形のクッキーを、再び台所で蹲る猫に食べさせる。]
聖杯に沈んだバーサーカーの魂。まずは1騎、ということですわね。
[報告書を綴じ、九鬼のデスクに静かに+置く+]
[もぐもぐもぐもぐもぐもぐもりもりもりゅ]
ところで。
「瀬良悠乎女子高生ばあじょん」とやらはどうしたのだ。
この計画書にはちゃんとかかれてあるぞ!
他マスター、特にツカサを篭絡するのではなかったのかね。
[分厚い資料を取り出してばんばん叩いてみせた。]
私は確かに反英霊としての契約を望んだ。
――今にしてみればこそ、馬鹿馬鹿しい願いだと思える。
故に私は間違っていたのだろう。
過去は決定した。
彼らも私も故郷へは帰れず、土にも還れなかった。
それが結末であり、変え難い過去だ。
もう私達の時代は終わっていた。
これからは君達の時代だったんだ。
それを、恨む道理も羨む道理も、あるはずがない。
私は今回の聖杯戦争に於いて敗北した。
故に、英霊として召喚される契約を切れないことは残念だ。
またいつか呼び出されるかもしれない。
きっと次の私がそれに気付き、契約を破棄するまで。
私は繰り返すのかもしれない。
[――それでもきっと。
悉くが打ち破られるに違いない。
生前の未練を怨恨と羨望に変えてやってきた亡霊如きが、人々の貴き理想である英霊と、それを繰るこの時代の魔術師(ねがい)に、勝てる筈もない。
きっと――悉くを、越えて進んでくれるに違いない。]
―午後・蒲生邸―
[
――主の傷は、思っていたよりも深かった。
脇腹の傷はそれほどでも――幸いにして、臓器は外れていたので――なかったが、
深く肉を抉られた肩口の傷は骨にまで達していて、腕を動かすことも辛いはずだった。
よくあんな状態で、刀を構えられたものだ――半ば呆れを覚えながら、必要な薬品を調合していった。
]
バーサーカー、消えるのはまだ早いぞ。
少なくとも今日いっぱいは今のままでいいだろう。
まあ私もろくに顔がだせるわけではないが。
――……痛みますか。
[
自らの手で外科的な治療を終えていた主は、脂汗を浮かべて応じた。曰く――当たり前だ、愚か者。と。
サーヴァントと正面切って斬り合って、痛みを感じる命が残っているだけ僥倖だ。
そう思ったが、口には出さなかった。
魔術による身体能力の向上と、結界を発動した瞬間に生じた僅かな隙。
幾多の小細工と偶然に後押しされてではあったが、あの一瞬、確かに主の刃はサーヴァントへと届いていた。
――だから、咎めることは出来なかった。
極小とはいえ、可能性は示されてしまったから。
細い細い、絹糸よりも尚細い糸であったとて――それを手繰った先に、至るべき場所が確かにあると知ってしまったなら。
――それが、魔術師というものの救い難い性なのだ。きっと。
]
[溜息を吐いて、調合した二つの薬を主にと差し出す。]
――……こちらの無色透明無味無臭なものは塗り薬です。感染症を抑え、傷口周辺の組織の癒着を助けます。
それと……こちらは飲み薬です。造血と体力回復、痛み止めの効果があります。
[
フラスコのなかでは泥炭色が泡立って、凄まじい刺激臭と共にコバルトブルーの煙を噴き上げている。
これを飲めと言われれば、自分ならば断固として拒否する代物だ。ちなみに味も、とっても苦くしておいた。
珍しいことに――ほんの僅かに、主の表情が引き攣ったようにも見えた。
]
……きちんと飲み干してくださいね、マスター。
[
極上の笑顔を浮かべてやって、退室する。
何も言えないにせよ――……まあ、このくらいは。
]
[――助けたかったのは。
他人の死をただ傍観している、自分の心だったのですか――
少女とは名乗り合いをしただけの関係、どうしても助けたいと思うほどの仲ではない。
なのに、手遅れになった姿をみて体が勝手に動いた。
ダビデの言葉通り心が耐え切れなかったとしか言いようがない]
僕の心は弱いのは当然だ。
なんていったって、どんな願いでも叶う奇跡の聖杯に願うのが魔術の存在しない平行世界への移動だからね。
[魔術教会の人間が聞いたら激怒するような願い。
だけど、自分に取ってはどうしても叶えたい願いである。
魔術のある世界に存在する限り、自分はきっと、魔術使いを止める事ができない。
だったら、魔術ない世界に行けばいい、それだけの話だった。
それは子供のように単純な発想で、魔法に頼りながら魔法と魔術のない世界を目指す矛盾した願いだった]
[シャワールームから出るとダビデの残したルーズリーフがそこにあった。
内容を読むとおおむね自身が考えていた事と同じ内容ではあった]
ダビデは頭を冷やしにいってるんだっけ……。
余計な気を使わせてしまったな。
[ベッドに倒れこみながら信長のクラスについて考えているうちにいつの間にか睡魔に+捕らわれていた+]
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