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次の日の朝、吟遊詩人 が無残な姿で発見された。
――2days
現在の生存者は、桐生 茜、セイバー、梧桐 曹、ランサー、蒲生 延、キャスター、瀬良 悠乎、バーサーカー、名塚 聖、アーチャー、眞奈 みなみ、キラー、九鬼 聖法、平 芽祈 の 14 名。
[少女は魔力に動じる事はない。
当然だ、この程度動じるようのならば最初から会話の主導権を奪われるわけなどない]
一流の魔術師と思っただけだよ。
そうですか、お気をつけて。
[去っていく悠乎、その後姿からは隠しきれなかった僅かな焦りが見て取れた]
[悠乎を追う事はない。
完璧に見えた少女も最後に僅かな焦りを見せた
ならば付け入る隙は十分にある、こちらが焦る必要などなかった]
瀬良悠乎、か。
エリートの家系だけあって厄介ではあるね。
[どこかで見たことがあったのは気のせいではなかった。
瀬良家、魔術師の家系として有名だった。
仕事の関係できっと一方的に知る機会がいつかあったのだろう]
[携帯電話を取り出してボタンを押す。
掛ける相手は自らの相方ではなかった]
僕だ、至急依頼したい件がある。
瀬良悠乎、眞奈みなみ。
および瀬良、眞奈両家の環境を調べてくれないか?
報酬? 分かっているさそれなりの対価はしっかり払うよ。
[仕事上でよく使う取引相手だ。
自分と同じく魔術使いであり、報酬さえ支払えば口も堅く裏切る事もない。
腕はそれなりだが使い勝手の良い相手としてよく利用していた]
[携帯電話を使っていて思い出す、ダビデが紛失した携帯電話の存在を。
予備はまだあるが出来れば回収しておきたい、補充にはなかなか手間が掛かるものだから]
でないな……。
[幾度かのコールが鳴るが応答はなかった。
諦めて発信を止めた。
もう少し様子を見て再度掛けなおせばいいと思い携帯を*胸にしまった*]
/*
本当はGPSで検索したかったんだけど、時間軸がみなみの方はまだ夕暮れまで来てないと思うから下手に検索するとまずいとおもってコールにしてみました。
/*
そして、気づけば女性マスターとばかり接触する聖。
今の電話での調査以来も女性のみ、まったくむっつりスケベなマスターですね!
―― 自宅 / 三日目夜 ――
[ ブブ... 静かな音を立ててFAXから紙が流れ出てくる。昼間に実家へと頼んでおいた蒲生家の情報が届いたのだろう。
屋敷の場所は既に確認してある。左之助が帰ってきたら、蒲生家へと向かうかどうするかを話し合おうと思っていたのだが…。]
帰って、こないね。
[ すぐに戻ってくるような風体で駆けていったのに、どういうことだ。]
――中央ブロック・学校の屋上――
[脈動する傷を、感覚の深いところで確かめるように目を瞑っている。
傷口には風。破けたマントの下の肌を、優しく風が。顔は仮面に阻害されて触れることは出来なかった。
冷たく優しい月夜のそれは、血も砂塵も混じっていない。
けれど。
もう少しだけ、バーサーカーは没していたいと思った。
矢先、耳から乱す小さな足音。
眠りに就き始めた街の中、特に誰もいなくなった学び舎。それが小さな体の歩幅であろうとも、階段を駆ける音はよく反響した。
立ち上がりかけて、座る。
既に、意識の没頭の中へ彼女の魔力は紛れ込んでいたから。]
[錆付いた筈の扉が、しかし確実に開かれる。
巨躯は貯水タンクの陰から立ち上がり、姿を目で確かめた。
走ってやってきたのだろう。息が切れている。
扉は重たかったのだろう。膝に手をついて俯いている。
それでも、口から滑り出るのは自身のサーヴァントへの不満。]
―― 古美術店・ 三日目夜 ――
[梧桐が心配し始めて間もなく、左之助は帰宅した。]
ええい!ツカサ、飯だ飯!
[酷くいらついた様子を隠そうともしない左之助に、梧桐が何事があったのか問うてくる。
左之助は神社で出会った切り裂きジャックと、そのマスターの事について話した。]
あいつ、俺の姿になって槍で相対してきやがった!
全くふざけた野郎だぜ!
[そう言いながら、冷蔵庫から麦茶を出して勢い良く飲む。]
あと、あいつダビデ王がどうとか言ってやがったな。
誰かの真名なのかね?
王なんだから女では無いだろうが、仮面か商店街であった奴かも知れねぇな。
[左之助は声のトーンを落としてそう言った後、手近な椅子に腰掛けた。]
[仮面は相変わらず笑み模様。
二人の距離を抜ける風にも、月明かりにも、揺らぎは無い。
凡そ感情も見て取れない直立。
――マントから取り出す折れた剣。
川に没した時のままだったからだろう、血と雫が混じって潤いある赤を未だに付着させていた。それを手にしたまま、マスターへの歩を踏み出す。
少女の不満は聞こえている。
発見された以上、何を言い返しても無駄だろう。
それに、戦争を勝ち抜く意見として、彼女の言葉は寸分の狂いなく今の狂戦士よりも正しいのだ。身を滑る月の香りと一緒に受け流しながら――沁みさせながら。
一歩ずつ、けれど確かに、二人の距離を詰めた。]
[胸に去来したのはいつの記憶か。
――仮面はやはり、笑ったまま。]
……しっかり掴まっていろ。
泣き言は聞かん。
[小さな体を抱き抱え、走り出す。有無を言わせず。
応急処置をしたと言っても、抱えて走って跳ねるには痛む。
もう繋がっているはずの右腕もポロリと外れそうだし、足に受けたはずの衝撃だって袈裟に斬られた創傷に届く。更には少女が腕の中で何かを言っている。
――最後が一番響き、そして心地よかった。
戦場では幾度も抱えた命の危機。
血液の喪失。体温の剥奪。意思の混濁。剣戟の狂宴。
そのいずれでも、無かった。
己の身を案じているのかいないのか分からないその言葉は。
強いて同じだったとするならば――――。
夜風を切る。月影を縫う。
少女を抱えたまま、グラウンドへと飛び降りた。]
投票を委任します。
バーサーカーは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
って、ダビデぇ?!
[ 麦茶を飲み干した左之助が次に教えてくれた情報に、思わず声が裏返る。]
古代イスラエルの王じゃないか。またかなりの大物が喚ばれていたものだ… 王としての格なら、信長よりも上なんじゃないか?
…いや、あの仮面の男は、少なくとも違うと思うよ。
商店街であったのは少年だったっけ。ダビデ王なら、若くても青年か…もっと年老いた姿で現れるんじゃないだろうか。まだ、私たちが見ていない存在の可能性も考慮しておくべきだろう。
[ 指を折り、これまでに集めたサーヴァントの情報と人数を、整理しはじめた。]
[ 夏らしく熱いものを、と麻婆豆腐にしたら左之助の反応が少し面白かった。そういえば新撰組の時代にこんな食べ物が日本にあるわけもなかったか。
次からの献立はもう少し考慮しよう。そう考えながら左之助が留守にしていた間に自分が得た情報を伝える。]
…とまあ、そんなわけで明日は蒲生のお殿様のお屋敷をちょいと見てきたいと思うんだが、どうだろう。
[ でもそこの英霊は女魔術師なんだろう?としかめっ面をする左之助に、いきなり戦うと決まったわけじゃないとかなんとか、食事の後も明日の予定などを話し合い、夜は深けていった――]
[辿るのは、繋がっている魔力の糸。既に呼び出したときとほぼ変わらぬまでに落ち着いた繋がりは、自身のサーヴァントの場所へ導くには十分だった。
――学校。その上のほうに、いるのだときつく。門を飛び越えて、中へと侵入する。途中、不自然に廊下に投げ捨てられた古臭い投網。いやな予感もしたが、そのまま上へと走る。
錆付いた扉を開けると、そこに仮面があった。]
……バーサーカー。どういうつもりだ。何故こんな場所にいる。無理に工場にもどれとは言わない。いや、戻ってくれるのならばそれが一番いい。
ここは、人が余りに多い。途中に古びた投網もあった。まさか生徒に手を出してはいないな? いや、過ぎたことだから、いい。騒ぎになっていないようだから、何もなかったのだろう。
その怪我で、マスターから離れてどうする。もし他のサーヴァントに襲撃されたら。
お前は、気配を断つことかできないのだろう。なら、見つかりやすいとは思わないのか。街の中で、こんな所に留まって。
私に、私の知らない場所で、サーヴァントを失えというのか?
[答えはない。ただ、バーサーカーが近づいてくるのが目に映った]
[バーサーカーに抱えあげられると、一旦口を噤んだ。月光を受けて、仮面が笑う。
笑っているのに、そうも見えず。
走り出した足。筋肉が揺れているのが分かった。傷口はふさいだけれど、それだけで、まだ痛みはあるはずだった。]
自分で走れる。バーサーカーお前の武器はその身体だ。なら、もっと気を使ってくれ。魔力を削られるこっちの身にもなれ。戦闘と関係ない場所で、それを長引かせるな。
わかってるのか。
この聖杯戦争において、私にできることは魔力の供給だけだ。だから、それについて気にすることはない。
私はお前を頼る。だから、お前も私を頼れ。それが相手を信頼するということだ。
[グラウンドが視界に入る。誰もいないそこに、まだ温かい風が吹く。
落ちないように、その肩に手をかける。気づかれないように、ゆっくりと*+癒し始めた+*]
豆腐は知ってるが、この赤いねばねばしたものは、どうも気色悪いな。
……お、でも結構いけるか、こりゃ。
女の英霊ってのは気がのらねぇが、お殿様にはちょいと興味あるかな。
街を見て回ったが、今は侍も城も何にもねぇ時代なんだろ?幕府だって無くなって随分経っている見てぇだし、侍の末裔ってとこなのかね。
[既に武士という存在がはるか過去のものになっている事に一抹の寂しさを覚えていた左之助は、蒲生の話を聞きやや明るい表情になる。]
今日は遅い。まあ、全ては明日か。
[左之助は、ある程度話のきりがついたところで、ソファに座ったまま眠りにつくことにした。]
――未明・南ブロック・廃工場――
[廃工場へと辿り着く。
日常の残り香を身に浴びたせいだろう。あれほど痛んでいた傷は鎮まり、奥に潜んでいた――が鎌首をもたげる。]
ク。
[それは笑い声となって仮面から漏れた。
腕の中にはおとなしくなった少女。どうやら眠ってしまっているらしい。
バーサーカーは、こっそり癒しの術をかけられていたことも、少女がナヅカヒジリと相対していたことも知らない。]
後先を考えずに走り回るからだ。
魔力の消費を案ずるなと言われた途端にこれでは、先が思いやられる。確かに多少は回復しているようだが、今は――。
[皮肉の言葉が途切れる。
少女の寝息があまりにも安心し切っていたからではない。
廃工場の入り口に、見覚えのあるシルエットが見えたからだ。]
――――。拾ってきたのか。
[まだ乾ききっていないのだろう。風にも靡いていない。
頂点に付着した血もそのまま。
だとするなら、彼女は川に入ったということだろうか。
いつ、どこで、どのような状況で。
――考え付く可能性は少な過ぎた。]
[廃工場へと入り、小さな体をそっとソファに横たえる。
決して起こさないように、そっと下ろした。
平時は魔術師以外の顔は見せないというのに、こうして眠りこけている姿は平穏そのものだ。仮面は暫く見下ろした後、折れた剣を握り直した。
ぐー、ぱー、ぱー、ぱー。
ちょき。
右腕の調子も悪くは無い。
バーサーカーは眠るマスターへ背を向け、入り口へ向かった。]
――古美術店・早朝――
[しばしの睡眠をした後、左之助は目を開けて辺りの気配を探り、特に異常が無い事を確認する。
密かに外を窺うと、「気配遮断」をした上で空の白む街へと繰り出した。
目的地は西ブロックの神社である。]
――西ブロック・神社・早朝――
やっぱりいないか、まあ当たり前だな。
[神社に着くと「気配遮断」を解き、辺りに気を配るが既に切り裂きジャックの気配は無かった。]
そう言えばあの子供はどうなったのかね。
まあ、人が来てたし、あのままほったらかしって事は無いだろうが……。
[そうつぶやきながら、昨日の英霊の痕跡を探すが見つかるはずも無い。
諦めて手元に槍を出す。軽く体を動かしたい気分だった。]
――4日目・西ブロック――
[未明の内に回ったのは、東ブロックのビル群や、新興住宅地のマンションの間。先日、マスターを抱えて走った時に出来なかった戦闘の想定、それと――折れてしまった武器をどうすべきか。
街をうろうろしながら考えていたわけだが、残念ながら打開策も見つからず、空が白んでしまっていた。
迷い込んだのは、この国独特の家屋が立ち並ぶ場所。
飛んで跳ねてを繰り返していたらこんなところに来てしまっていたようだ。バーサーカーは馴染みの無い風景を見回しながら、適当な筋を辿って行く。]
マスターに修理を依頼したところで可能かどうか。
武器が無いのであれば、戦法が無いわけではない。
が…………。
[袈裟に斬られた傷も、右半身を縦断していた傷も、いつの間にか浅くなっている。左掌の傷はいつの間にか塞がっていた。
しかしまだ完全とは言えない。]
いや。万全を望むことそのものが贅沢か。
……どうやら私の感覚も鈍っているらしい。
クク。彼女に毒されたのか、或いは――。
[そこはかとなく朝餉の匂いも漂ってくる。
――平和だ、と仮面は思った。]
[相手の姿をを思い起こし、それを動かして斬り交える。
それは左之助が生前、よくやっていた訓練方法である。
今思い起こしているのは、黒い影の形をした自分。
相対しながら、切り裂き魔が言っていた「我々の中にいる」という言葉を思い起こす。
確かに生前、左之助も人を斬っていた。
それは治安維持のためだったが、人を斬る事に酔う事は無かっただろうか。
元々幼いころから争い事は大好きだった。
喧嘩を挑み相手を負かす事、その延長上に武器を持っての立合いがある。
かつては士道を守るため、今は願いをかなえるため。
そう理由付けて、戦いに明け暮れてきた。]
……もし聖杯を得て、昔の家族の元に戻ったら、自分は争いを捨てられるのだろうか。
[そんな疑問が心を満たす。
もし戦いも戦う理由も無くなったら、自分は容易く闇に沈むのでは無いだろうか。
昨日出会ったサーヴァントのように。]
切り裂き左之助なんて、語呂が悪いってもんだぜ!
[左之助は何かを振り切るように、影の自分をなぎ払った。]
[傷ついたのであればそれは等しく代償だ。
かつて少女は、言った。
これはお前が起こした戦争とは違うと。
だが、こと戦争に於いて無血勝利などあり得ず、戦闘を繰り返せば消耗は必定。武力を以って他者の願いを、未来を蹂躙すると決めた時点で、武力に逸った者には罪が決定している。
ならば身に刻む損傷の蓄積は。
罪と贖いの繰り返しを具現したものに違いないだろう。
それは、日常を変わらず謳歌する街の中にいても同じ。]
……そうだ。
昨日の青年なら何か知ってはいないだろうか。
[歩きながら、マスターの守りを任せた青年を思い出す。
傷一つつかずに帰ってきたところを見ると、きっと約束を守ってくれたのだろう。礼の一つも言いたいと思ったが、昨日の川原へ行けば会えるかもしれないと夢想するほど、バーサーカーは乙女ではなかった。
折れた剣を懐へしまい、辺りを見回した。
通り抜ける風。
鳥が雲と雲を縫って、白い空の向こうへ去って行く。
――仮面は少しの間、時を忘れた。]
[青年に武器をせびるプランを考えながら、やがて珍妙な町並みの中で一際珍妙な建物を目にする。
教会は見慣れていたが、神社は知識としてしか知らない。
厳かに構える門を見上げて、バーサーカーは立ち止まった。]
これは――見事。
[バーサーカーに芸術審美のスキルなど備わっていない。
だからその感想を口にしたのは、無心から。
誘われるように石段を登り、中へと歩いて行く。
僅かに届く、風を切る凶器の音。
聞きなれたものだったからだろう。バーサーカーは特別に驚くこともせず、歩みを進めた。]
[門を潜る――と、人影が見えた。
周りを見渡す。どうやら他には誰もいないらしい。
人影の手には、長物。およそ穏便とは懸け離れた武器。]
む。
サーヴァントか。
[いつぞやは気配遮断によって見逃した相手。
異様な、しかしこの国の人間と然程違わない容姿。
サーヴァントの雰囲気と言えば長物だけ。だからだろう。
懐へ手を伸ばすことはせず、神社を眺めながら言った。]
続けていいぞ。
もうすぐ朝だ。……いや、もう朝という括りになるのか。
マスターも夜以外の時間帯での戦闘は好まないと言っていた。
[少しだけ仮面は男へと向き、]
――君が、戦いを望むなら。
話は変わらざるを得ないだろうがな。
―― 早朝 ――
………。
[ あまり、いい夢見ではなかった。気分が沈む。
隣に寝ていたはずの左之助の姿はない。よくよく、出掛けるのが好きなようだ。]
いや、お墨付きっていう意味じゃなかったんだけどね、一文字。
[ 呆れて呟く。昨夜最後にした行為は、お互いの存在をより近く密にするためのものだった。
まあ、最終的には一対の御守りを互いが身に付けておく事になったのだが。
どうにも、ツカサには左之助に気配遮断を行われるとマスターとサーヴァントという魔力的繋がりさえ追えなくなってしまう。
ならばとツガイの御守りで互いの所在を把握しようと試みたわけだ。]
ふむ。
[ 御守りに意識を集中させれば、左之助が神社の辺りにいることが読み取れた。これならば、まあ、いいだろう。]
[あまり戦いたい意志が無さそうなバーサーカーに左之助は少し戸惑った。]
何でぃ、戦うために入ってきたんじゃないのかい。
しかし話は聞いていたが、本当に仮面つけてるのな。
それで街中を闊歩たぁ、大した歌舞伎者じゃねぇか。
生前は能か何かでもやってたのかい。
[会話に応じて様子を見る事にする。]
[どうやら相手も襲い掛かってくる気配は無い。
見れば、玉砂利の上を小鳥が歩いている。]
クク。それが困ったことに、武器が無いんだよ。
肉弾で戦も出来ないことは無いが。
昨日、織田とやらにやられた傷が芳しくなくてな。
[とても愉快事を語るように、事情を隠すこともなくさらりと言ってみせた。
自身の殺し合いの技術に対する自信の表れなのか、戦い以外については頭がよろしくないだけなのかは、笑みを貼り付けた仮面からは見て取れない。]
これは――伊達や酔狂ではめている訳ではない。
ノー、とやらが何かは知らないが。
――そうだな。
自身への戒め、或いは未練といったところか。
[指で仮面をこつこつと叩いてみせた。]
残念ながら、生前もはめていたわけではないんだ。
―― 中央通り→西ブロック ――
[ 蒲生の屋敷に行くとはいっても、それは勿論、左之助を同伴させてである。一人で行くなど愚の愚。ツカサは左之助と合流するべく移動していた。
朝早くに出歩く事など、しなくなって久しい身として自転車を漕ぎながら見る街の景色はなかなかに新鮮なものではあったが、そんなにのんびりとした気分でもない。]
というか、なんで神社なんかに…て。そういえば槍の鍛錬でどうとか言っていたな。朝錬にでも出たってわけか。
[ 武芸者というのは勤勉だね…と勝手に感心しながらペダルを踏む力を強める。次の角を曲がれば、神社が見えてくるだろう。]
武器持ってねぇって、んなわけねぇだろ。
お前さんの宝具何なんだよ、すっとぼけた野郎だな。
信長に会ったのか、アチャラナータが何とかって言ってなかったかい?
それ言うと滅法強くなるんだよな、あいつ。
ふーん、戒めね……生前のことかい。ま、現世に出てくるくらいだからいろいろあるんだろうな。それは俺も同じよ。
[左之助は態度を決めかねたまま、流れで会話を続ける。]
[懐からぽっきりと折れた剣を取り出す。
刀身はもう10cmも残っていない。元々が刃こぼれの酷いものであったから、ただのガラクタと言っても差し支えは無いだろう。]
他にも武器はある。しかしそっちは戦闘には使えない。
……その辺りの小難しい規則は分からんから聞くなよ。
主とする武器はこれになる。
だが、これも織田に折られた。
宝具については……そうだな。
[小鳥に近付いてみた。だが玉砂利を踏む音は予想外に大きかった。バーサーカーが声を漏らす暇もなく、小鳥は飛び去ってしまう。
難しいものだな、と呟き。]
無念そのものが宝具。とでも言っておこうか。
[続き、信長、という名前に首をかしげた。
前後関係から織田のことを言っているのだろうと想像し、また遠くに舞い戻ってきた小鳥へ近付く。今度は慎重に、ゆっくり、驚かさないように。]
アチャラナータ。
……すまないが聞き覚えは無い。
しかし――そうか。奴はまだ力を隠していたのか。
[あと少し、あと少しで小鳥に手を伸ばせる。
――しかし影が重なった瞬間、飛び去ってしまった。]
もっと人を殺し続けたい。
――などという理由で英霊化する輩もいそうだが。
私の場合は君の言う通り、生前が納得いかなかった類だろう。
[君もそうなのか、と仮面は男へ向く。
容貌はこの国の人間にも見えるし、さりとて放たれる威圧も濁ったものではないように見える。だからこそ、少し意外なものを見るように。]
無念が宝具ねぇ、何だか禅問答みたいな感じだな。
まあ、世の中納得いかない事だらけよ。
昔、日本の勢力が2つに割れ、俺はお国を守るために戦っていた。
ところがいつのまにか、敵がお国の側になっていやがった。
抗って抗って抗いぬいて、誰が撃ったかも解らない、無数の銃弾を浴びて俺は死んだのさ。
そして誰だか解らない無縁仏として葬られた。
納得なんてできねぇやな。
[一気に言い切ってから、少し落ち着きを取り戻す。]
……おっと詮無い事を話しちまったな。
[そう言い、戸惑う気持ちを楊枝をつまむ事でごまかした。]
―― 西ブロック・神社 ――
………。
[ ツカサは樹の影から出られないでいた。
左之助以外の魔力を感知したため、身を潜めつつ境内へと近づいてみれば、聞こえてきたのは二人の英霊が交わしていた会話であった。
仮面の男に語る、左之助の言葉。新撰組の隊服を見つけたときと同じ色をした表情。
意図せざる状態で聞いてしまったことを後悔し、そしてツカサはいま姿を出すべきかどうか、結論が出せず動けなくなっていた。]
[男は楊枝を摘んでいる。
きっとそれは、バーサーカーが仮面を叩く仕草と同じ意味合いを持ったのだろう。言葉は明瞭であったことが、逆に彼の内に押し隠されたものを代弁する。]
――君がつまらない話だと断じてどうする。
[男が持つ槍。気持ちがいいほどまっすぐな槍。]
守るべきものもあり。
抵抗してでも貫き通したい何かがあったのだろう。
[折れた剣を懐へと隠す。]
――この国は、平和に満ちている。
少なくとも、私にはそう見えたが。
それは……お前が守りたかった国とは違うものなのか。
それとも、守りたかったものは別にあったのか。
私には知り得ないことだが。
[ふと、入り口に、見覚えのある男の姿を見つけた。
視線の先には槍を持った男。
耽っているようなので、話しかけずに近付くことにする。]
この前は世話になった。
礼を言う。
[すれ違い様にそう残し、バーサーカーは神社を後にした。]
……まあ、正直俺にも良くわからねぇのよ。
何かを守りたかったのか、それともそれを口実に戦いたかったのか。
何か自身に未練があることは確かだ。
始めは戦いにかまけて振り返らなかった家族の事だと思ってたんだがな……。
[楊枝をいじりながらふと脇を見ると、木の陰からこちらを窺う梧桐の姿が目に入った。
予期せずサーヴァントの間近に梧桐がいた事は、左之助を動揺させる。]
あの馬鹿、こんな所で何してやがる……。
[思わず声が出た。]
しかし、丁寧口調のキャラは久しぶりですね。
キャラ被ってる時は、なりきる為、独り言も同じ口調になるので、至って苦痛です。(ぁ
[神社から去った後、素直に廃工場へと戻ることにした。
結局のところ何を守りたかったのか。
気付けば誰のものともわからない死体となっていた。
槍の男の話を思い返しながら、バーサーカーは歩いた。
走ることはせず、ゆっくりと歩いて帰路についた。
――傷が、また少しだけ痛んだ*気がした*。]
[俺は何かを守りたかったのか、それともそれを口実に戦いたかったのだろうか?
左之助はそんな事を考える。何か自身の中に未練があることは確かだった。
気がつくとバーサーカーが立ち去って行く。
ふと、バーサーカーの視線の先に梧桐の姿を見つけて、ぎょっとする。
思わず出そうになった声を抑えた。]
?!
…ああ、娘さんによろしく。
[ 声をかけられ、少し驚く。が、なんとかそれだけを返し、樹の影から姿を出しつつ仮面の男を見送った。]
[バーサーカーが立ち去った後、左之助は梧桐に声をかける。]
お前、そんなとこで何してるんだよ……危ねぇな!
英霊とすれ違って無事とは全く運がいいぜ。
[そう言って背中をたたいた。]
あ。ええと…。
[ 仮面の男を見送り、振り返る。自分の姿を見て目を丸くしている左之助へすまなそうに声をかけた。]
すまない。話は途中から聞いてしまった。
[ 困ったような顔のままで。]
投票を委任します。
平 芽祈は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
うぉと?!
[ 背後では、息を呑むような気配があった。なにか声をかけなければと深く息を吸い込んだ瞬間、逆に背中を叩かれていた。]
………ああ。昔から悪運だけは強くてね。そっちこそ、他の英霊と出会ったってのに武器を交えないなんて、どんな心境の変化だったんだ。
[ 努めて、笑顔。そして一度、家に戻らないかと提案する。]
そうするか。
[左之助は梧桐と共に帰途に着く。
自身の願いが揺らいでるからだろうか、ふと梧桐が何を願っているのか気になった。]
そういや、お前の願いって……やっぱり亡くなった奥方に関する事かい。
[彼女は左之助と妻であるまさの子孫らしいが、何代も下という事で今ひとつ実感はわかない。
だが、早くに死んだであろう事は、左之助にも同情の念をわかせた。]
投票を委任します。
桐生 茜は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
投票を委任します。
ランサーは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
ああ、言ってなかったなそういえば。
[ 願い、と言われて最初に頭をよぎったのは、流派の本流へという実家の願い。そのためにこの聖杯戦争に参戦しているとしてはいるが、ツカサはそんな願いを聖杯に求める気など毛頭なかった。]
………マナカを。
妻を、甦らせる事が出来れば。それを願って、私はこの戦いに参加したんだ。
[ 視線を下に落としながら、ぽつぽつと、自分の願いを語る。今でも、共に過ごした時間は鮮やかに思い出せるけれど――]
あいつと、共にいたい。それが、私の願いなんだ。
[ 多くの言葉が口から出掛けたが、それらを飲み込み、ツカサはそこで話すのをやめた。]
そうか……。
[梧桐の表情を見ると、本当に願っている事だとわかる。
左之助にはそれが少し羨ましかった。]
俺も呼び出された時の願いは、かつての家族と会う事だったよ。
……でも今は良く解らねぇ。
そのうち解るのかも知れねぇがな……。
[左之助は楊枝をつまみながら、曇りがちの*空を見上げた。*]
[ そのまま、家の近くにまで無言でやってくる。引いてきた自転車がカラカラと小さな音を立てている。
…自分の、口下手さが嫌になる。]
ええい。
朝から暗くなってどうするんだ。まずは勝つぞ、一文字。この聖杯戦争を勝ち抜くんだ。考えるのは、それからでいい。
飯を食ったら出掛けるぞ。お殿様に会いに行こう。
[ ぱしん、と両手で自分の顔を叩いた。驚く左之助に言い放ち、到着した自宅の*扉を開いた。*]
梧桐 曹は、九鬼 聖法 を投票先に選びました。
投票を委任します。
梧桐 曹は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
投票を委任します。
蒲生 延は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
投票を委任します。
アーチャーは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
投票を委任します。
眞奈 みなみは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
投票を委任します。
キャスターは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
[―暗い床に、倒れている。
ゆっくりと顔を上げると、いつか見た蛾が頭の上を、くるりくるりと舞う。]
(…来ないで)
[蛾の模様が、まるでこちらをじっと見ている目玉のように見えて、背中がぞくりとする。]
(……嫌)
――早朝・蒲生邸――
[
――……サーヴァントは、夢を見ない。
眠るさなかに過去の記録が再生されることこそあれ、終わってしまった存在が、ユメを抱くことはない。
だから、それは。
その、記憶にはない光景――来る日も来る日も魔術と武術の鍛錬を続ける、幼き少年の姿は。
]
[目の前まで来て、またふわりと天に昇り、ゆっくりと降りてくる。
そして、まるで責めるように、見つめる。]
(まだ……戦える)
[床に爪を、立てる]
(だから……
私を…『私』でいさせて―― ]
―北ブロック ワンルームマンション―
[叫び声を上げそうになり、目が覚める。]
……あ…。
[そこは、いつもの見慣れた自分の部屋。
閉められた厚いカーテンから、明るい日差しが漏れている。
それをぼんやり見つめながら、徐々に頭が覚醒してきた。]
(…私、どうしたんだっけ…)
[頭がズキリと痛む。]
(敵と戦っていて……それから…)
[痛む頭を抑えながら、ふと脇を見ると、そこには信長が居た。]
…っ!
[心臓がどきりと鳴った。]
ちょ、…びっくりさせないでよっ!
――午前・蒲生邸――
[
――……サーヴァントは、夢を見ない。
眠るさなかに過去の記録が再生されることこそあれ、終わってしまった存在が、ユメを抱くことはない。
だから、それは。
その、記憶にはない光景――来る日も来る日も魔術と武術の鍛錬を続ける、幼き少年の姿は。
]
――午前・蒲生邸――
[
――……サーヴァントは、夢を見ない。
眠るさなかに過去の記録が再生されることこそあれ、終わってしまった存在が、ユメを抱くことはない。
だから、それは。
その、記憶にはない光景――来る日も来る日も魔術と武術の鍛錬を続ける、幼き少年の姿は。
]
[寝ている眉間に皺がより、時折口が微かに動く。]
……夢でも、みてるのか?
[その様子から、決して良い夢ではないだろう。
起こすかどうか悩んでいる内に、ゆっくりと目が開いていく。
安堵の息を漏らすと同時に、此方を見た茜が声を上げた。]
……吃驚とはご挨拶だな。
一晩中横についていた奴に対して礼を欠いてるとは思わないか?
……ん。
[
――……眠りに落ちた主を見守るうち、いつの間にか、自分まで眠っていたようだった。
睡眠を必要としないサーヴァントの身とはいえ、生前には縁もなかった緊張の連続で、流石に神経が参っていたのかもしれない。
寝起きでぼやける視界を擦ってみて、ふと、指先に湿り気を感じる。
]
――……涙?
[
はっきりとは覚えていない。
ただ――目覚める前。
なにか、切ない気持ちを抱いたような、そんな気がした。
]
[涙の理由は、判らなかった。ただ、ふと思い立ったことがあった。]
――……なにか、食べるものでも用意しておきましょうか。
[
自分で食するわけではない。
ただ単に、主が目覚めたとき、温かい食事くらいはと。
なんとなく、そう思ったのだった。
]
[
未だ寝息を立てている主を起こさぬよう、静かに寝台を離れ。
広い屋敷のなかを幾らか彷徨い歩いたあとで、目的の場所へと辿り着いた。
さて、どんな料理を作ったものか。
自らの祖国の味は、さて、異国人たる主の舌に合うだろうか。
生前の記憶を手繰ってみて――そこで、ふと。
国の重鎮たる大臣の家に生まれ、何不自由なく育ち。
魔術師として生きたあいだは、使役の魔術を使いこなし。
魔術を捨ててからは、王妃として生きて。
]
そういえば――……料理、したことありませんでした。
[一晩中、という言葉を聞いて、顔がかぁっと赤くなる。]
だ、だれもそんな事頼んでないわよっ!
[礼を言うべきだ、と頭の片隅ではわかっているものの、脊髄反射のように、違う単語が口をつく方が早い。]
…そういえば、戦闘はどうなったの?
貴方の方は…無事?
[探るように、信長を見る。]
ふむ、確かに頼まれてはいない…な。
余計なことだったか?
しかしまぁ、たとえ余計だったとしても一晩目を覚まさない主を心配した上での行動だ。
大目に見てくれると助かるのだが、な?
[そうして、見様見真似で包帯を巻いておいた茜の頭を撫でる。
流石にこういったことを自分でした事はなかった為、多少不器用な見た目となっている。]
昨日はお互いのマスターが戦闘不能ということで痛みわけだ。
何、特にダメージは残っていない。
投票を委任します。
瀬良 悠乎は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
よ、余計なんて言ってないけど…。
[ばつが悪そうに目を泳がせた。どうもこのサーヴァントは、自分の苦手な返し方をしてきて、困る。
しどろもどろになりながら、頭を撫でられて、眉を下げたまま下からそっと見上げた。]
…そう、そんな事になってたの…。
とりあえずは、良かった。
[ほぅ、と小さく安堵の息を吐いた。]
まぁ、今日は昼までは安静にしとけ。
何か調べてほしいこととかあるなら、俺がやってくるからよ。
[ぽんぽんと頭を軽く叩く。]
魔力の方も供給源が見つかってないからな。
アカネの次に俺まで魔力不足になったら困るだろ?
[軽く叩かれて、むぅ、と小さく不満の声を漏らす。]
調べたいこと…。
[目を瞑って、前日に飛ばした式神に意識を集中させる。名々、それぞれに大きな木や森のある場所にたどり着いているようだが、供給に足りるような霊場になりうる場所は、見つける事が出来なかった。
ただ― ]
…飛ばした式神の一つの近くに、妙な気を感じた気がした…。
おそらく…何か術を使ったか、他の者の式神の気配…。
まだ、出会っていない誰かのもの、ね。
―― 蒲生邸・門前 ――
てわけでこちらがお殿様のお屋敷なわけだ。
[ どん、と立派な構えをした門の前に堂々と立ち、左之助に説明する。
なんらかの様子見をするかと聞いたら「相手はお殿様なんだろ?こそこそしねーで堂々と行こうぜ堂々と!」とまあ、予想通りの言葉をもらったので真正直に正門までやってきた。
深く息を吸い込み。]
たのもーう!
[ 二人して、大きな声で挨拶。]
投票を委任します。
キラーは、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
…南西の方。
旧住宅街がある所ね。
場所は…。
[目を瞑って、信長の額にそっと両手を振れ、蝶から送られてきた視界を繋ぐ。
どこかの小さな神社が見えた。]
ここね。見えたかしら。
――……御客人、ですか。
[
未だ眠っているらしい主を起こすべきか、どうか。
僅かに迷って、自身で応対するべきだろうと結論を出した。
主への客ならば、そのとき考えればいいだけだ。
]
――はい、少々お待ちを!
[
紫色の煙を噴き上げる、濃緑の粘液が溢れる鍋。
微妙にふよふよと動いている、青いゲル状の物体。
何故だか足が生えてきた、焼き魚らしきもの。
異界と化した台所を背に、玄関へと小走りで向かった。
]
……うむ、把握した。
調べ終わったら直ぐに戻る。
大人しく待ってろよ?
[心配するなと微笑み、がしがしと茜の頭を撫でる。]
じゃあ行ってくる。
念を押しておくが、何かあったら躊躇せずに令呪を使え。いいな。
[そう言って、信長は部屋から出て行った。]
[ 凛とした声が屋敷の奥より聞こえた。]
小間使いさんかな。まずはお殿様に対面させてもらえるよう素直にお願いするか。
[ 会話ができると信じて疑わない態度で、声の主を門の前で+待つ+]
[がしがし撫でられて、髪の毛が乱れる、と抗議しつつ、部屋を出る信長を見送る。]
……。
[ドアが閉まる音がして、足音が消えると、そのままマットレスに倒れ込んだ。]
(…頭が……痛い…)
[眠りたくないのに、泥のような眠気が襲ってくる。]
(…眠るのが……怖い。)
[何故怖いのか。
その理由もわからないまま、段々と視界が暗くなっていった]
――四日目・午前/マンションの一室(東ブロック)――
[瞼を通してもその色がはっきりと伺える、強い陽射しに目を開けた。焼き付いた橙色が、血の赤色をフラッシュバックさせる。昨日、キラーが神社で吐いた血の色――]
……ぜんぜん、違ったなぁ。
[昨日のキラーは、アーチャーやキャスターと戦った時とは全く違った。喋り方や立ち振る舞いのみならず、戦いにもそれは顕著だった。ただ力を振るうよりも、相手を翻弄する事にも目的を置いた振る舞い]
[キラーはみなみの呼びかけにも応えることはなかった。
左肩を貫かれ、右腕が折られている。その傷は未だに治っていない。ただ一人で意識の主導権を手にしているがためか、アーチャー戦で見せた再生の能力はまったく機能していないように見えた。
荒い呼吸を繰り返し、部屋の隅で座り込んでいる]
[
ふと、自分の衣装がサーヴァントとしてのそれであることを思い出す。
鎧兜を身に着けているわけではなかったが、白絹のローブ姿が目立たないかといえば、なんともいえない。
考えてみて、問題があるようだったなら、記憶操作で誤魔化すことにしようと決めた。
――細かい術は苦手なので、客人の何日分かの記憶を吹き飛ばすことになるかもしれないが。
]
ええと……ゲタというんですっけ、これ。あ、歩きにくいですね……。
[慣れぬ履物で蹌踉めきながら、+扉にと手をかけた+]
[静まりきった部屋に、一音一音発する人間が違うようなあの声も、或いは昨日聞いた声も、響く事は無かった。内部に耳を済ませてみても、応答は無い。静かに立ち上がり、キラーが使っている部屋の扉をノックする]
キラー? ね、大丈夫?
入るよー。
[気に掛かることがあった。サーヴァントが怪我を負えば、その回復の為に流れる魔力の量は必然的に増える。だが、今回はその傾向を見出すことが出来なかった。キラーとみなみとを繋ぐ回路自体には何の異常もないはずなのに。その懸念に急き立てられ、扉を開ける]
[左之助は梧桐を後押しする言葉をかけつつ、敵のマスターかもしれない人物に正面から会いに行くという、梧桐の度胸に舌を巻いている。]
まあ、自分の屋敷で派手な事をするとも思えないが……にしても、のほほんとしてやがるな、こいつ。
[相手もさすがに計算外ではないだろうか。左之助にも不安はあるが、それを通り越し、向こうの出方に興味があった。
「気配遮断」を実行しつつ様子を見る。]
え……、だ、大丈夫、かな、って、思ったんだけど。
大丈夫じゃ、なさそうだね……。
[意図的な無視ではなく、本当に気付かなかったように見えるキラーの口振り。みなみは決して得意分野ではない回復魔術を思い出そうとする。だが、一歩一歩と近寄れば、伝わる憔悴の程度にそれらが打ち消されていくのを感じた]
―午前 中央ブロック・ホテル―
[睡眠から醒めたマスターの気配。少年は追っていた活字から目を上げた]
あ、おはようございます。
……それにしても色々な説があるのですね。
[部屋の中央へ移されたソファの周囲には、昨日同様に六芒星形に配置された宝石。足元ではB6サイズの安っぽい単行本が山になっていた。いずれも昨夕、近くの新古書店で適当に見繕ってきた物である]
[曰く――
『戦国ちょっといい話・悪い話』『真説・織田信長』『闇の紳士録 世界猟奇殺人事件簿』『切り裂きジャックは誰なのか?』『新装版 堕靡泥の星』『対決!戦国武将VS幕末志士』など、など、など。
明らかに学術向けではなく大衆向けの、誇張や歪曲、ないしは捏造を含んでいるであろう内容だったが、ある意味ではそれらこそが伝説の源となる。ゆえに少年は飽きもせず、一晩中じっと読み耽っていた]
……実際、ノブナガの宝具を特定できそうな、決定的な逸話も見当たりませんでしたし。ジャックに関しても、共通するのは主に女性を狙った、凶悪連続殺人というくらいで。
[それはそうだろう、と洗面所に向かいながら青年が答える。
桶狭間の奇襲に始まって、金ヶ崎の退き口、延暦寺焼き討ちに長篠の合戦、本能寺の変に至るまで。
信長はいわば伝説の塊だ、と]
では――逆に。ノブナガのあり方自体はどうだったでしょう。
私の受けた印象だと、どういう書かれ方であれ、強烈な個性や自己主張、といったものが感じられました。それは英霊にとって方向性を決定付ける重要な要素です。ちょうど、ジャックの存在が“猟奇事件の集合体”であるのと同じ様に。
――第六天魔王。
奉られた異名は核のひとつになり得るのではないでしょうか。
[軽く肯定の言葉が返る。併せて、“悪魔”ならば君が退治するにはうってつけだ、とも。そう笑って、青年の姿は扉の向こうに消えて行った]
まあ、私は英霊ではないからな。魔力を回復に当てようにも、大量の魔力を消費する素養がないのだ。
私の弱さを見ただろう? あんな化け物たちとは違い、私はただの人間なのだよ。怪我などすぐに治るものかね。
[そう言ったキラーは、自分の言葉に自嘲の笑みを浮かべる]
……群体としての力が使えるのなら、傷を負った者が深層に隠れるということもできるのだが、今はそうもいかないのが困りものだ。
[
横にと滑る扉を開け放つと、夏の陽光が正面から注いでいた。
眩さに目を細めて、並んだ二つのシルエットにと深く頭を下げる。
]
と……お待たせして、申し訳ありません。
主は未だ寝んでおりますので、御用件ならば私が――……?
[
客人の片割れ、その姿を認めて。
――……何処かで見たような、と。
僅かな疑問が理解と驚愕へと変わるには、ほんの数瞬で充分だった。
]
ああ、はじめまして。私、梧桐と申しますが、此方、蒲生家のご党首に少々お話を伺いたいと…
[ 門が開き、顔を出した挨拶をはじめたが、その言葉は途中でとまってしまった。
出てきたのは絶世の美女であり、しかも日本人ではなかった。てっきり小間使いが現れるものだと思っていたために声を失ってしまったのだ。
この女性がキャスターなのだろうかと思うがそれにしては魔力がまるで感じられない。とにかく言葉をと考えるも、その前に女性の瞳が驚愕の色を湛えるのを見て。
視線の先…左之助へと振り返った。]
[キラーが自嘲的な笑みを浮かべるのを見て、衝動的にキラーを抱き締めた。体が勝手に動いた、と言う表現が正しく、みなみ自身も自分に驚いた]
……、わたしには、あなたの怪我をすぐに治してあげられるような回復魔術は使えない。頑張っても、絶対に時間が掛かるもん。
でも、それじゃあ、困るよね……。
[多数派が主導権を握っている時に出来る事と出来ない事。召還した日に目の前で見た戦闘と、そして、昨日見た戦闘では、受けたダメージならば圧倒的に前の方が大きかったはずだ。また一つ、疑問が氷解していくのを感じる]
お前さんは……シエラじゃねぇか!
[マスターらしき人物の屋敷にいるという事は、少なくとも関わりはあるのだろう。商店街であった時とは違う、異国風の衣装を見てサーヴァントもありうるのかと想像する。
だが、今のところ魔力は感じられなかった。]
……よっ、奇遇だな、良い絨毯は見つかったのかい?
[そう声をかけて出方を見てみる。]
投票を委任します。
名塚 聖は、九鬼 聖法 に投票を委任しました。
[みなみの行動に驚く。傷を負った腕に痛みが走るが、気にはしなかった]
自業自得と言えば自業自得だがね。
……彼の者の宝具を見ておきたかったのだ。そして、できることなら参考にしたかった。我々には、ダビデ王の撃ったような、英霊なら誰でも持つ宝具などないからな。
彼らに対抗するには……作らねばならぬ。
[作る。そう言ったキラーは笑っていた。それは、生前の彼の特徴を裏付ける……魔術師の笑み]
ランサーの宝具は盗めなかった。だが、そもそも無意味な話だったかもしれんな。どうせ紛い物など使い物にはならぬ。ジャックにはジャックの宝具を用意するべきであろう。
もし……それができれば、あの愛しき腰抜け共はまた自信を取り戻せるだろうしな。
[
どうして、何故、気付かれていない?
――咄嗟には、言葉が浮かばなかった。
念の為にと草の指輪を填めていたことすらも、直ぐには思い出せないほどの驚きだった。
もし――"シエラ"と呼び掛けられていなければ、自ら正体を晒していたかもしれなかった。
]
あ、ええ……はい、お陰さまで。
あのときは、碌にお礼も出来ずに、申し訳ありませんでした。
[内心の混乱を必死に抑えながら、今一度、小さく頭を下げる。]
―明け方・廃工場―
[走っていた。駆けていた。転がるように、荒く息を吐いて。
段差に躓いて、あ、と思ったときには転んでいた。
小さな手。見ると、掌をすりむいていた。
それだけではない。指には切り傷や擦り傷、褪せたベージュの服から出た手足には、青痣がいくつも。
前髪が顔にかかる。薄い茶色の髪。
空を見上げた。厚い雲に覆われた、灰色の空。下には石畳。
遠くから聞こえる、怒号のような、歓声。
呆けていたら、手が差し出された。大きな、厚い掌。見上げると、目を覚ました。]
朝、か?
[見回す。まだ薄暗いソファの上、一瞬何故そこに眠っているのか、判らなかった。]
−教会−
おかしいわ。
とっくに6人のマスターが発見されているというのに……。
何故、ライダーのマスターだけ見つけられないのかしら。
これはくっきーの努力不足だわ。きっとそう! んも〜ぅ!
もしや、ライダー召喚時に事故でもあったのかしら。
もっと丁寧な調査が必要かもしれませんわね。
[事務室の資料を手に、色々+考え込んでいた+]
[瀬良悠乎との対峙の後は大した動きはなかった。
ダビデと合流し書店で信長と切り裂きジャックについて本を購入しホテルで休養を取った]
もっと過酷な状況になるかと思ってたけど。思ったより休息はしっかり取れているな。
[顔を洗い背伸びをしていると携帯がなった。
相手は昨日調査依頼した相手だ]
僕だ……。
・
・
・
・
ああ、分かった、ご苦労様。
報酬は後ほど何時もの口座に振り込む。
[簡素な礼と報酬の件だけを伝えて電話を切った]
いやいや、こっちも邪魔が入らなきゃ、絨毯をこの屋敷まで運んだんだけどな。
[やや驚きの表情が浮かんだようだが、一度会った左之助を見た時の驚きとも取れ、何ともいえない。]
ツカサ、屋敷の主は寝込んでいるらしいが、どうするんでい。
[何故寝込んでいるのか、本当に寝込んでいるのか、色々疑問は沸くが、ともかくそう言ってちらりと梧桐の方を見た。]
そうだ。バーサーカーを見つけて、それから……。
[眠る前のことを思い起こす。夜のグラウンド。笑わない仮面。血の通った体。
傷を、治そうとした。あれからいくら治っただろうか。
思い出したところで、身体の具合を確かめる。魔力回路を開く。流れていくそれはもう普段と変わらない。
だいぶ回復しているようだと、息をついた。]
で。あいつはどこに行った。
[気配は無い。近くにいる様子も無い。ならば又出て行ったのだろうと、立ち上がった。]
食べ物を、買ってこないとな。昨日もまともに食べていない。
パンがかびて無ければ食べられるだろうけど。
[奥へと歩いていく。その途中で、折れた剣に気づいた。]
後で、直せるかやってみよう。
―午前 中央ブロック・ホテル―
[窓辺に向かい、カーテンを開けた。外の陽射しは既に高く、外の暑さを思わせる。街路には時折、人の行きかう姿も見えた。
――だが、その中には。あるいは人ではない者も混じっているかもしれないのだ。闇色のサーヴァント、ジャックのように]
……娼婦殺し、か。
[少年の時代にも当然の事、春をひさぐ商売は存在した。それよりも遥かに豊かなこの時代なら尚更、人の欲望を満たす事を生業にしている者は多いだろう。そう考え、表情を曇らせる]
サーヴァントには、自分のマスターは、殺せない……ならば。
それ以外の娼婦であれば殺せる、ということか。
……ミナミ。
ありゃ、知り合いかい一文字。
[ 呟いて。蕎麦屋で聞いた話を思い出しながら、じ、と女性の様子を伺ってみる。
ここで再会したという事実が、ただの偶然であろうとは思い難い。魔力が感じられないのは気になるところだが、それでもこの女性がキャスターである可能性は極めて高いのだろうと考える。]
ん? ああ… そうだね、一文字。
[ 話を振られ、女性の方へと向き直り。]
ええと、シエラさんでしたか。いえ、実は蒲生のご党首にお話を伺いたかったのですが… まだお休み中であるならば、また出直したいと思います。ご党首は、お昼よりご予定とかありましたか?
[奥までいくと、紅茶を入れる為のお湯を沸かす。
無事なパンを見つけて、一緒に口にした。
テレビをつけると、朝のニュース。ノイズ交じりのそれは、関係のないニュースを流していた。]
まだ何も起きていないか。
昨日学校のニュースも出ないようだし。
[何も無かったのだろう、とようやく安心した。
食べ終わると寝汗を洗い流し、ソファのところへと戻る。手に持つのは折れたままの剣。手を翳して剣に宿る力を調べる。
魔力らしきものは、無い。宝具というわけでもなく、ただ生前使っていたものをそのまま呼び出しただけなのか。]
なら、戻せるか?
[両手に持つ。じ、と刀身を見つめた。]
[瀬良悠乎、瀬良家の跡取り、魔術刻印を保持
魔術協会の一員としての評価はかなり高い。
今回、突然日本へ帰国。
瀬良家自体は根っからの魔術師家系で名門と呼ぶに相応しい一家である]
うーん、本当優秀だね、ほぼ、情報無しって所か。
さて、もう一方はどうかね。
[眞奈みなみ、眞奈本家には該当の名前はなし。
眞奈家自体は古くから存在するも可もなく不可もなくといった家系で特筆すべき魔術師もおらず名門と呼ぶには厳しい]
こっちも、だめか。
あいつ……、腕落ちたのかな?
[送られてきた情報に落胆しながらもモバイルバンキングで報酬の支払った]
−西ブロック・蒲生邸−
[治癒に専念した。魔法的な治癒ではなく、極めて原始的な治癒。
長年積み重ねた、外科的な治療法であった。
皮膚を縫合し、骨を再組成し、神経を再接続する。
どの行程にも激痛が伴ったが、キャスターの秘薬によって軽減されたおかげで、意識を失うことなく完遂した。]
蒲生 延が「時間を進める」を選択しました。
―午前 中央ブロック・ホテル―
[昨日から何度か繰り返していた確認事。少年が落としてしまった携帯電話への発信。二晩経っても、唯一登録されているアドレスである、聖の携帯には連絡は無いままだった]
……やはり、壊れてしまったか、ミナミに電源を切られたか、しているのでしょうか。
[てきぱきと必要なやり取りを終えた青年に、昨日聞かされた推測を声に出し、彼の判断を促した]
……ジャックの、宝具。
確かに、宝具は、サーヴァントが英雄として生きていたときに、愛用していたものだって、聞いてるよ。
ランサーが、あの宝具を持って強いのは、ランサーが英雄だった時に使っていたからこそだもんね。
[キラーが宝具を持たないことは、彼が"英霊ではない"と言う証拠でもあるのだろう。みなみはぼんやりと、彼がこうしてここにいることが、奇跡なのかもしれないと考えた。他の英霊が宝具を使い、真名を以って作り出す奇跡のような――]
わたしに出来ることは、少ないけど。
キラーが戦ってるときに、手伝うことも出来ないけど、でも、魔術師として、マスターとして、何か出来ることがあるなら、
[その携帯が鳴るのは、二度目になる。バイブ機能を解除したのは、次に電話が鳴った時は出ようと、そう思っていたからだ。それでも電子音が止み、暫くの間は隣の部屋へ戻る気にはなれなかった。キラーから体を離し、言う]
……すぐ、戻ってくるから。
放っておけないし、その怪我は、早くなんとかしなきゃいけないしね。
[二人のマスターの調査結果をダビデに伝えた。
同時に携帯の話をする]
そうだなー、電源が切れてるのか、
あるいは圏外にいる可能性も考えられる。
念の為メールを送っておこう。
眞奈みなみが本当に持っているならば、色々と使い道はあるかもしれないしね。
[携帯をなくして困ってる旨を書いたメールを素早く送った]
[左之助は梧桐に声をかける。]
なあ、ツカサ。今無理なんだから昼も無理なんじゃねぇかな。後日改めてってのはどうだい。
ともかく一旦引き返そうや。
[もしここがマスターの居場所なら解ってしまった以上、どうとでもできると言う思いが左之助にはある。
無理に約束をする必要は無い様に思えた。]
[自室へ戻ると、ベッドサイドに置かれた携帯電話に視線を落とした。電話を拾い上げると、不在着信が一件と、メールが届いていた。不在着信から結構時間が空いている事を確認し、メールを開く]
……ふ、普通だ。
でも、うーん、そうだよね。もしかしてわたしが拾ったってわかってないのかな。
[一体どんなことが書いてあるのかとびくびくしながら開けたみなみだったが、その文面に思わず首を傾げ、少し笑う。窓の外を見る。雲ひとつ無い空をただじっと見つめ、何も考えないように深呼吸を一つした]
[外科的な治療は終わった。が、意識は朦朧としたまま。キャスターの話をぼんやりと聞きながら、夜を過ごした。
思いのほか心地よかった。こんな静かな夜も悪くない。
――そう思いさえした。]
……。
[起きると一人。
頭を振って安穏とした意識を振り払い、思考を活性化させる。
そして、民衆から“戦時の徴収”を行った。
失われた魔力が充填され、力がみなぎる。]
[
あの主のことだ。
相手の目的が、真実、話をすることであったとしても、この主従が再び訪れれば、否応もなく戦いを選ぶだろう。
なにしろ、この屋敷は昨日の公園のような即席のものではない、云わば本城なのだ。その好機を逃すとも思えなかった。
]
はい。
申し訳ありませんが、主は午後、外出する予定が入っています。
私も同行を命じられておりますので、午後においでになっても、お出迎えが出来ません。
御名前を頂ければ、主に、来訪があったことをお伝えしておきますが……?
[
完全な嘘ではなかった。
あの主は、瀕死の重傷を負った翌日でさえも、戦いを求めて街を歩くだろう。
それに、出来れば。
自分をただの一般人と思い、恐らくは純粋に、この身の安全を案じてくれた借りがある。
このサーヴァントとは、まだ、戦いたくはなかった。
]
す、すごいタイミング……。
せっかちなんだね。もしかして今流行りの携帯依存症なの?
[メールを送ってきて返事も待たずにすぐに掛かってくる電話に、通話ボタンを押すやいなや、挨拶もそこそこにみなみは笑いながら問い掛ける]
[剣に、魔力を通してみる。代わりは無かった。魔力を持つ剣であれば、自分の魔力が浸透することは無い。
バーサーカーのそれは、馴染むわけでもなく、拒否されるわけでもなく、ただ折れたものとしてそこにあった。]
持ち主ににて頑固だ。
サーヴァントの剣なのだから、勝手に元に戻ればいいのに。
折れたのを元に戻すだけならできるが……武器としてはどうかな。
[ただ修復するだけなら。そう思って術をかける。変化は無い。やはり頑固だと思った。]
[治療中、キャスターの声が聞こえた。玄関で誰かとやり取りしている。
通常であれば令呪の反応で気付く距離だった。だが、肉体の治療に集中していたため、それを見逃していた。
治療を終えて疲労した精神を、肉体ごと投げ出して休む。
消耗はピークに*達していた*]
[昨晩までと違いコールを鳴らしてすぐに通話は繋がった]
恐れ入ります、私はその携帯の持ち主で名塚聖と申します。
いきなりで恐縮なのですが、携帯を落として大変困っております。
できればすぐに引き取りに行きたいのですがいかがでしょうか?
[話す内容はあくまで携帯をなくした一般人を装う]
――4日目午前・南ブロック・廃工場――
誰が頑固だって?
[剣を手に取りながらぶつくさ呟くマスターに突っ込みが入る。麦藁帽子をかぶったままのその男は、いつの間にか廃工場に戻ってきていた。
少女の手にはもう一対の折れた剣。
見比べながら、定位置の割れた窓際へ向かう。]
売ればそれなりに金になるかもしれんぞ。
どうだ、それを足がかりに古美術商でも営んでみるのは。
そうですか、それは残念です。
[ シエラの言葉に、小さく頭を下げる。]
私はゴドウという者です。また日を改めて伺いたいと思いますので、どうかよろしくお伝えください。
…それじゃ帰ろうか一文字。つき合わせてすまなかった。
[ 一礼して、元来た道を帰ろうと左之助の方へと振り返った。]
[伏せっているのに外出するのかい。
左之助は相手の回答に少し違和感を覚えた。]
おう、それじゃ帰ろうや。
じゃあ、またな、シエラ。
[そう言って軽く手を上げ、梧桐と屋敷の外へと出て行く。]
―午前 中央ブロック・ホテル―
[セラと、マナ。
どちらとも少年にとっては馴染みのある響きだった。もしかすると、彼らの家系の源流は自分の故郷に近いのかもしれないと埒もない想像が脳裏に浮かぶ。
具体的な情報は特になし。マスターからそう告げられ、思考を切り替えた]
……どちらにせよ、排除すべき競争相手ですから。
サーヴァントなら兎も角、人間の魔術なら、よほど手の込んだものでもない限り恐れはしません。
[ゆえに、情報の重要性は聖にこそ高かっただろう。そう気づいて黙り、落としてしまった番号に連絡を取る彼の様子を見つめた]
[聞こえた声に振り返らず、言葉を返す。]
頑固はお前だ。
売る? サーヴァントの剣を?
……。
[暫し考え込んだ。]
だめだな。時代的には申し分ないが、実際にそれだけの時間が経ったものではない。
英霊は、時間に縛られないはずだからな。
もっとも、使われた素材から年代が割り出せるなら、高く売れるかもしれないが、どちらにしても折れている。
装飾品としても、価値は薄い。
[冷静に言い放つと、バーサーカーの方を見た。]
[丁寧な口調と物腰。落としたときの状況を踏まえれば、名塚と言う男がアーチャーのマスターであることはほぼ間違いない。キラーが居る部屋の方をちらりと見遣った。言う訳には、行かない。けれど、この携帯電話は返すべきだと、みなみは思った]
……連絡が遅くなってこちらこそ、ごめんなさい。
ええと、人が多くて会い難いかもしれませんけど、駅前が解りやすくて良いかな。
名塚さんがそれで良いなら、わたしはすぐに行けるけど。
――ゴドウ様、ですね。
確かにその旨、主にお伝え致します。
[
踵を返した魔術師に、一礼して。
今一人、やや釈然としない表情を浮かべる男の言葉に、小さく応じる。
]
……はい。また、いずれ――……。
[頑固呼ばわりされても、バーサーカーが何かを答えることはない。どこ吹く風がマントを揺らす。
続く考察。それはとても冷静で、緻密で、徹底で。
バーサーカーは立ち止まり、思わず少女の方を見た。]
…………。
[見た。じーっと見た。じーっとじーっと見返した。
いや、考察としては間違っていない。いないのだが。]
ク。
ククククク……!
[そのギャップがあまりにも可笑しかったのだろう。
天を仰ぎながら笑い出し、割れた窓の桟へ座った。]
[最初の笑い声から一転、相手の対応は誠実なものになった。
丁寧な応対は正解だったようだ]
ええ、それでかまいません。
それでは、すぐに交叉駅に向かいます。
ではまた着いたら連絡します。
[約束を取り付けて電話を切った]
―― 西ブロック・蒲生邸より離れて ――
[ 右手を軽く持ち上げ、ぷらぷらと振る。掌に隠された令呪は以前ハルカと出会った時と同じような反応を見せていた。それはつまり。]
うん、そうだろうなと思って行ったけれど、やはりあそこのお殿様はマスターだね。
しかしあのシエラさんがキャスターでいいんだろうか。魔力が全然感じられなかったけれど何かあるんのかね。
[ 呟くようにして小声で左之助に話しかける。その足取りは、とりあえず*駅前へと向けて*]
[電話を終えると見つめていたダビデに向き直る]
恐らく、眞奈みなみでまちがいないね。
今から駅で会う約束を取り付けた、ダビデ、君が接触してくれ。
僕は正確に顔を把握していない。
それに相手も恐らく僕がマスターと気づいているだろう。
ジャックを仕掛けてくるかもしれない、その場の判断は君に任せる。
[ダビデを信頼しているからこその指示である。
どんな場所でも彼なら答えてくれるはずだ]
な、なんだ?
[仮面越しとはいえ、あからさまに凝視されれば居心地が悪い。やや仰け反って、バーサーカーを見た。]
……。何故笑う。
[今度は笑い出したバーサーカーに不満そうな視線を送る。]
じっと見たり突然笑い出したりとおかしな奴だな。いや、変なのはわかっていたことだが。
こちらとしては、お前の武器をどうしようか真剣に考えていたのに。
[思惑は一つ。無理をするつもりはなかった。仮にサーヴァントが出てきたとしても、逃げ道の確保に余念は無い。一般市民、と言う、逃げ道。駅前は人が多く、複雑に入り組んだ地下道を思い浮かべながら、みなみは電話を切った]
ごめんね、キラー。
でもわたしは、これが手元にあると……、決意が、鈍るから。すぐに、戻るから。
[小さく呟いた。スタンドにある、父親の写真と視線を合わせ、身支度を簡単に整えると車を呼んだ]
行く時は半信半疑だったが、当たりかよ。
そこのお殿様が異人と結婚したり、異人の兄弟がいなけりゃ、その可能性は高いだろうな。
俺の「気配遮断」みたいなを向こうも持っているんだろうよ。
[ふと、街を楽しげに歩いていたシエラの姿を思い出す。]
やり難い事になっちまったなー……。
[歩きながら左之助はそう*つぶやいた。*]
―午前 ホテル→駅―
[聖の口調と表情から察するに、交渉はうまく進んだのだろう。
交叉駅、という単語を聞いて窓から外を見る。現在の部屋はさほど高層ではない。だが大凡の見当は付いた]
……あ、はい。ミナミと駅前で、ですね。具体的には――
[指定された場所を確認し、分かると思う、と頷いた]
そうですね……ジャックの気配、戦っている最中でも時折薄れるような、不気味な感じでしたから。使い魔か何かを通じて確認して頂く方が安全かと。
……では、行ってきます。
いやいや。
真面目なことは良いことだし、君が言うことは至極真っ当だ。
別に何もおかしいことは無い。
おかしいことは何も無いのだが、それ故に可笑しいのだ。
……………ク、ククッ……!!
クククク……ハッハッハ!!
[拗ねた様子のマスターに、仮面は更に笑いを乗せた。
だが、それは決して彼女を馬鹿にしているわけではない。
彼女風に言うならば――そう。信頼とやらに必要な、相手の理解が一歩進んだといったところだろう。
しかし、バーサーカー自身にも笑い出した理由は分からない。]
クク……いや、それはいいんだ。
武器の今後を考えてくれるのはありがたい。
[ようやく収まってきた笑い。
腹を押さえていた手をはずし、息を整えながら言った。]
君を守りしてくれた青年がいただろう?
……いや、君は覚えていないのか?
どちらでも良いが。最悪、彼を頼ろうと思っている。
[――昼間見た光景。槍の男。
二人の関係性は明らかとなるはずなのだが。
バーサーカーは、とことん青年を「信用」しているようだ。
いや、もしかしたらただ頭がよろしくないだけかもしれない。]
まった、携帯を貸してくれ。
[携帯を受け取る
みなみが持っている携帯電話の番号を入力した]
これでよし。
姿が見当たらないときは電話を掛けて僕の代理できた事を告げてくれ。
[携帯電話を再度ダビデに手渡した]
――駅前――
[相変わらず駅前は人で混み合っていた。結界を張るかわりに、ランサーが出会った時に使ったような、"使い魔"を通行人に仕込む。地下街への入り口を確認してから、待ち合わせの場所から少し離れた位置に立った]
来るのはどっちなのかなー、両方なのかなー。
[長い髪を結って、キャミソールにミニスカートと言う出で立ちは、駅前の人達に簡単に馴染む。魔力の匂いだけは、誤魔化せないだろうが。のほほんとした口調で呟きながら、手の中の携帯をぎゅっと握り締めた]
眞奈 みなみが「時間を進める」を選択しました。
可笑しくないのに笑うな。
ちゃんと理由を言わなければ失礼だぞ。
[笑いのようやく収まってきたバーサーカーに向かって、更に膨れたような顔をする。]
真面目だとはよく言われたが、それで笑われたことは無い。たぶん。
……守をしてくれた?
ああ、ツカサといっていたな。彼を頼る?
[バーサーカーの言葉に、不思議そうに首を傾げた。]
―駅前―
[指定された場所には思ったよりも早く着いた。
およそ400mの距離を、1分。
あくまでも人間の限界を考慮して走ったのだが――明らかにそれは異様に見えただろう。駅前の一角にある彫像。指定された目印を見出だして速度を落とした]
まだ、来てはいないのかな。
[待ち合わせの場所で、ミナミらしき人物を探そうと周囲を見回した]
そうか。ならばもっと笑われるといい。
[他人が笑っているのを見れば、自然と自身も笑えてくる。
そんな光景が、いつか養成所で過ごした時にもあったなと思い出し、…………すぐ後に続く記憶をも思い出してしまい、笑う様子は完全に霧散してしまった。
桟に堕ちていた硝子の欠片を一枚拾い、そのまま離す。
ただ無意味に持ち上げられた硝子。
ただ無意味に堕ちた硝子が、砕け散った。
その過程にも、行動にも、結果にも、意味などない。]
彼はツカサ、というのか。
そう。ツカサは幸い、この辺りの住人でもあるようだ。
……ええと、何と言ったかな。
確か「中央屋」とやらへの道も教えてくれた。
[何か不都合でもあるのか、と少女を*見た*。]
[
――完全に勘付かれたな、と。小さく、溜息を吐く。
霊脈の要点を押さえる旧家に、この結界。
どのみち、隠しようのないことではある、のだが。
]
一文字、ですか――……次にお会いするのは、たぶん、戦場なのでしょうね。
[呟いて。重い足取りで、*屋敷のなかへと戻っていった。*]
[犬の形をした、待ち合わせ場所として有名なその像の前に、一人の少年が現れるのを見た。ぱっと見て目を引くような異端さは外見から無いものの、やはりサーヴァントの力を離れていてもひしひしと感じる]
……なるほどー。
[緊張があった。それでも驚きはなかった。使い魔に渡させ、自分は自宅に居ることも出来たが、そうしなかった数十分前の自分を思い出す]
―駅前―
[みなみだけでなく、彼女のサーヴァントが現れたらどうするか。
判断は任せる、と聖は言った。ならば、すべき事はひとつ。
間違いなく危険な存在である彼の者は、倒さなければならない]
しかし――ここでは人が多すぎる。
巻き込んでしまう訳にはいかないな……それが狙いということか。
[周囲の気配を探ってみる。
魔力のかすかな気配。サーヴァントが放つほどではない規模。
隠れているのだろうか。手にした携帯電話を使うべきかと考える]
……ツカサは、マスターだぞ?
もちろん、親切にはしてもらったが、警戒を解いていいわけではない。
いや、バーサーカー、それでは彼を頼る意味がよくわからない。
鍛冶をしているというわけでもないのだろう?
中央屋?
[そういえばと、ツカサが言っていたことを思い出す。食べ物を買いに。道を教えた。]
それで道を間違ったのはお前だろう。
どちらにしても剣が元に戻らないのなら、新しいものが必要だ。剣を直す当てがあるなら別だが。
だが今の日本で簡単に売ってるとも思えない。
どうしたものか。
[息を吐く。少しばかり悩んで、それから恨めしそうにバーさーかーの方を*見上げた*]
[ダビデは出て行った。
すぐにその背を追ってホテルを出た。
使い魔を放つのは簡単だ、だが使い魔を感知されて警戒されるぐらいなら自分が群集にまぎれた方が良い。
幸い、知られているのは声だけなのだから]
無事、接触は出来たみたいだな。
[視線の先には接触する少年と少女の姿があった]
キャスターが「時間を進める」を選択しました。
[すぐ近くに居た。一昨日遭遇した娘の姿。魔術師。眞奈みなみ]
――こんにちは、と、返すべきかな。ミナミ。
[気さくすぎるような態度は罠か偽装ではないか。そう考え、少年は警戒心をあらわにする]
驚かすつもりはなかったんだけど、驚かせてたらごめんね。
名前覚えててくれて嬉しいけど、わたしはなんて呼んだら良いのかな。クラス名で呼んだ方がいいのかな? アーチャー。
[アーチャーの反応を意に介す事なく、にこにこと笑顔を貼り付けたままに携帯電話をアーチャーに差し出した]
はい、これ。困ってたんだって? ごめんねー。
拾ったは良いけど、戦闘に生かす道も思いつかないし。
それ以外の用途で使う事もしないって、……決めたから。
バーサーカーが「時間を進める」を選択しました。
[油断なく、みなみの周囲に目を配りつつ問いかける。それと同時に、経路(パス)の源――聖がこの近くに向かっていると気づいた]
……彼の者は、どこに居――??
[自分の存在を脅威としていないような口調。屈託の無い表情。
思わず呆気に取られた]
……ああ。そんな事まで気にかけるんだな、ミナミ。
……敵対している同士だというのに。
気に掛けたのは、それだけじゃないけどね。
……もう、気にするのはやめちゃったけど。
[キラーの居場所を問う言葉には答えなかった。敵対している同士だと言う言葉には、そうね、と、笑う]
聖杯戦争の参加者だからって、遭遇したらすぐに殺しあうだけが全てじゃないでしょ?
――わたしは、聖杯が欲しいだけだから。
別にアーチャーが憎いわけでも、アーチャーを今すぐ殺したいとかそういうわけでも無いもん。
――駅前――
[笑顔を向ける娘の声からは、何かを隠しているような陰りも曇りも無かった。差し出された携帯電話に手を伸ばす]
……ダビデで構わない、ミナミ。
人を――マスターを殺そうと思っていないのは、私も同じだ。
その意味では、敵同士ではないと言えるかもしれないな。
[みなみの目的が掴めなかった。
敵でなくとも、競争相手であることは変わらない。わざわざ助けるような真似をする理由は――それがジャックを呼び出した魔術師とあれば尚更、少年には想像しづらかった]
……また、前と同じ問いになるが。
聖杯を手に入れたとして、何を願う?
そなたらの守護を願う、というなら私には理解が行くところだ。
彼の者を呼び出した張本人として。
あのような事件がもう繰り返される事などないように、と。
[白く華奢な腕や脚。彼の時代の常識からすれば、みなみの装いは過剰なほど素肌を露にしていた。娼婦以外ではありえない程に]
けれど、そういう風にも見えない。
聖杯戦争に勝ち抜き、聖杯を手にする。そこまでは良いだろう。
……だが、その先は。聖杯でなくては叶えられない願いなのか?
[対峙する二人の雰囲気を確認する。
その和やかな雰囲気に眞奈みなみをダビデが始末する事は無理だと悟る。
対マスターの為にボールを買い込むようなダビデだ、それも当然だろう。
元々期待してたのは相手側からの仕掛けに対する反撃だったのだから]
本当楽には行かないな……。
そろそろ、本格的に動かないと駄目だね。
[これまでの自分の行動を振り返る。
情報収集に偵察と足場を固める行為ばかりだった。
自身の存在も周りに知れてきている現状だ。
いい加減、前に出るタイミングなのかもしれない]
[少しつつ二人に近づいていった。
会話が聞こえる辺りまで近づくと壁に寄りかかり待ち合わせの振りをした。
聞こえてくる二人の会話で自らの望みを思い出す]
そういえば、ダビデの望みは聞いてなかったな。
ま、僕の望みが叶うのなら関係のない話になるんだけどね……。
[望みについては頭の中から消し去るとそのまま二人の観察を続けた]
――四日目午前/駅前――
さっきも言った通り、わたしはダビデのことを、今この場で敵だって認識してるわけじゃないから。
だから、ダビデがそういうスタンスで嬉しいけど。
……でも、例えわたしが、キラーのマスターでも?
[ダビデと初めて会った時の事を思えば、ダビデがマスターを積極的に狙おうとする類のサーヴァントでない事は想像がついた。だがそれはあくまで、英霊とそのマスターに対してのことだろう。少なくともみなみの、そしてダビデの認識において、ジャック・ザ・リッパーは他のサーヴァントとは違う]
――わからないの。
[ダビデの問いが、以前と同じように胸に刺さった。嘘をつこうと、誤魔化そうと頭を働かせてみても、動かない。何よりも、みなみ自身がそれを望まなかった]
聖杯を手に入れたら、願いなさいと命じられることを願うつもりだった。
今まではずっと、命じられたことが、わたしの意志そのものだと思ってたの。
……だけど、今はわからない。このまま、聖杯を求めて行動する事が良い事なのか。
聖杯を手に入れると言う事は、わたしの願いだけでなく、キラーの願いも叶うっていうことだけど、キラーの願いを、わたしは知らないから。
[聖杯戦争に招かれた英霊にとっての前提条件。7つの呼び名。
そのいずれでもない名称が、みなみの唇から零れた]
……キラー?
[殺人者。
シリアル・キラー。
ナチュラル・ボーン・キラー。
“切り裂きジャック”の悪名高さと、彼自身に相対した経験で知る]
……それが、彼の者の役割(クラス)か。
[続く言葉。
わからない、と、偽らざるみなみの声。魔力の気配は感じる。敵対的でも友好的でもなく、ただ単に“そこにある”だけのものとして。ゆえに純粋な真実味を帯びるのだろう、とも]
みなみ自身の願いではないのか? お前くらいの年頃の娘なら、願うは一つや二つで収まるものでは無い筈だろうに。
望みを叶えるために人は生きている。
叶えたい未来が無いのなら、それは生きていないのと同じだ。
……既に、なのか、未だ、なのかは私には判らないが。
[ダビデに問い返されて、みなみは彼が自らをキラーだと名乗った時の事を思い返した。あの時、キラーは禍々しいと言う言葉が良く似合う笑みを浮かべていた]
……そう。
わたしにも詳しい事はわからないけど、ジャックは、英霊ではないから。
……わたし自身の願いだと、そう思ってたんだけどね。
ダビデには、無いの?
自分の願いを見失うこと。
本当にそれが自分の願いなのかって疑問に思うこと。
[ダビデの紡ぐどの言葉も痛かった。目を伏せる。けれど同時に、自分はその痛みを求めて、ここまで来たのかもしれないとみなみは思った]
……わたし、もう行くね。
またね。……、キラーの居ないときに。
[最後の言葉は、ダビデに届いたかどうか。聖杯を求める気持ちは変わらない。"今の"キラーの事を心配する気持ちも嘘ではない。だがそれと同時に、ダビデに死んで欲しくないと言う気持ちもあった。少なくとも、今は]
私にもあったよ。歩むべき道に迷った事は。
だからこそ、主に従った。それが迷いから逃れる術だと信じて。
[答えても、みなみの表情には憂いの色が濃い。かぼそく寂しげに揺れる葦を思わせた]
……だが、君は自らそうすることを『選んで』いない。キラーを喚び出してしまった原因も、同じではないのかな。
いずれ必ず、分かれ道は来る。その時、君が迷わないように私は祈っておこう。
[みなみの後ろ姿を見送りつつ、少年は自嘲した。甘過ぎる。あれは明らかに対立者ではないか。
他の全員をマスターの座から追わずには、聖杯戦争に勝利する事など出来ないというのに。
――それでも、彼女への害意は湧いてはこなかった]
……迷える子羊、か。
[少年のもっとも初めの経歴。羊飼いの末の子。群れからはぐれた仔がいれば、どこまでも探し歩いた。一匹たりとも欠けさせないように]
[戦の中で部下が、敵が、死んで行くのを当然だと思うようになったのはいつ頃からだったろう。王として冠を頂いた時か。その以前からか。
少年には思い出す事が出来ず、自らの立ち尽くす姿をマスターがどのような思いで眺めているか、気づく事も*出来なかった*]
/*
わーい初回墜ち。
序盤落ちを望んでいたけど微妙な心境なのは何故だ。
最期、キラーの手にかかって死にたいというのはPLのわがままでもありますが、生き残るEDは見えないので、かといってマスターの手にかかるのも…(避け専な問題で
なら少女の外見を利用してキラーの手にかかるのが良さそうだ。とか。
マスターであればがもーさんか聖さんあたりなんだけども、それは避けておきたい。
聖さんならともかく。とか。
*/
/*
(村内が)昼間だから死に行くためのフラグが建てられないなぁ
結構マスターは魔術師も一般人も殺しているので、それに対する疑問というのを持っていて、その辺りの葛藤を出せればいいなぁと思うのだけど。
―北ブロック ワンルームマンション―
[ふと、目を覚ます。
いくらか眠ってしまっていた。
カーテンから漏れている日差しの強さからすると、それほど時間はたっていないようだ。ゆっくりと、体を起こす。]
……。
[自分の内に意識を集中し、探る。
残っていた魔力は、万全とは言えなかった。長く、深い息を吐く。]
(…三度、敵と戦った。いずれも、勝ててはいない…)
[ギリ…、と爪を噛む。
自分に充分な魔力があり、信長に供給出来ていれば、勝てていたのではないか― どうしてもそう思ってしまう。]
[山を抑えられ、代わりの霊場も見つけられない。
――いや。]
(……霊場は、ある。)
[心あたりはあった。しかし、そこは考えたくない場所でもあった。]
……っ。
[思わずシーツをぎゅっと掴む。その手はわずかに震えていた。]
(ためらっている…場合じゃない)
[何かを決心したように、勢いをつけて立ち上がる。
ふと、頭に巻かれた包帯に触れた。]
……。
[お世辞にも、綺麗に巻かれたとは言えない包帯。
それに、ふ、と笑うと、ゆっくりと外し、丁寧に折り畳んだ。
それをハンカチで包み、そっと懐にしまう。
まるで、大切な宝物のように――]
――自宅マンション(東ブロック)――
[考えないでおこうと決めた事が再び湧き上がり、みなみの頭を混沌の色に染め上げる。ダビデに背を向けて歩き出した時、何度振り返ろうと思ったことか。出来る事ならば全ての事情を説明し、歩むべき道を示して欲しかった。けれどもしもそれをすれば、自分はまた『選ぶ』事なく『流される』だろう]
そんな事言ったって、どうしたらいいかなんて、わかんないけど……。
でも今は、そんな事言ってる場合じゃないよね。
[みなみは雑念を振り切るように、勢い良く自宅の扉を*開けた*]
――中央ブロック――
[梧桐の横を歩きながら、左之助は朝出会った仮面のサーヴァントを思い起こす。]
敵相手に過去をまくし立てるとは、俺も焼きが回ったかね。
[仮面の男の立ち振る舞いからは、戦士の匂いを感じた。
そして生前に納得のいかない類だとも言っていた。
共感してつい口が軽くなったのかもしれないと、左之助はそう思う。
同時に自分には悔恨があることも強く意識した。
家族の事とは別にある思い、それはまだ、ひどく漠然としていて形には*ならなかった。*]
―西ブロック外れ 竹林―
[昼なお暗い鬱蒼とした竹林に、足を踏み入れる。
細長い、竹の枯葉を踏みしめながら、整備されているのかされていないのか、よくわからない獣道のような道を進んで行く。]
……。
[一歩進むごとに、足取りが重くなる。
ここは、余計な記憶を思い出させて、それがまた、自分の神経を苛立たせた。
どのくらい進んだろうか。
ピリッとした電流のようなものを感じると、竹林の奥に、ようやく建物らしきものが見えた。]
…相変わらず、結界だけはちゃんとしているのね。
[自分がここに来ている事も、すでに感づかれているだろう。]
[目指す先は、建物の奥―
その建物に掲げられた表札の名は『桐生』]
……。
[幼い頃、自分と同じ顔をした少女と、かくれんぼをした庭。
そんな記憶を、頭を振り払って無理矢理消した。]
「戻ったのか」
突然、背後から声をかけられ、びくりと振り向いた。
(しらじらしい…)
[苛立ちを、顔には出さないように]
(どうせ、何もかも「視て」いたくせに――)
[声をかけてきた男に、ゆっくりと頭を下げる]
「…どうだ、戦いの方は。]
[ねぎらいでも無く、心配でも無く、科学者がデータを取るように、単なる確認の為の言葉。]
……問題はありません。
[歯を、ギリ…と噛んで、感情を抑えた。]
[茜の言葉に、ふむ、と小さく呟き、顎に手をかける男。]
「…漆路山を、抑えられているようだな。
『餌』を喰いに来たのだろう?さっさと摂取していくがいい。]
[その言葉に、一瞬で頭に血が昇る。]
(………っ!)
[わかっている。この男が自分を人間としては見ていない事は。
むしろ、生き物として認識しているかどうかも怪しい。
私の事も、姉の事も。]
……はい、お父様…。
[すべての感情を押さえ込んで、その男に*答えた*]
―昼過ぎ 駅前―
[こちらへと歩み寄ってくるマスターの姿に気づき、少年は複雑な表情を向けた]
マスター……。
ひとまず、目的の物はここに。
[受け取った携帯電話を見せ、預かっていた方を返却する。だが内心の惑いを示すように、少年の表情は晴れなかった。歯切れ悪く言葉を連ねる]
……マスター、それで。
先ほどの会話で、なのですが……みなみから聞き出せた事が。
彼の者……ジャックは、英霊ではない、と。
『キラー』という役割の“何者か”に過ぎない、と。あの娘は、そんな風に言っていました。そのようなクラスは本来、存在していないのに。
[少し考えるように間を置く。唇をきゅっと噛んで、口を開いた]
聖杯戦争に、何か異変が起こっているのではないでしょうか。
ここは一度、教会に直接赴いて、監督役と面談してみるべきかと思います。
―― 中央通り・自宅 ――
[ 昼食は素麺と玉子豆腐。なんだかんだ暑いとはいってもどちらかといえば冷夏に類されてしまいそうな今夏。夏らしい食事はそろそろ潮時かもしれない。
で、昼からはどうするのか。左之助に問われて、そうだな…と口の中で呟く。ふと思い立ち、財布から地図を取り出した。]
………ふむ。
結構律儀みたいだね、あのお嬢さんも。すぐにポイ捨てとかはしなかったんだ。まあ、ここに捨てられている可能性も否定は出来ないけれど。
[ 地図の中、この街の南ブロックにあたる…廃工場の並ぶエリアに赤い小さな点が浮かんでいる。それは先日、ハルカに手渡した地図につけておいた“絵の具”の在り処を示すものだった。
と・一人でうんうん頷いていると意味がわからんと言わんばかりに左之助が覗きこんできた。]
いやなに、朝の仮面の英霊がなんだか気になってね。彼と会ってみようと思うんだ。一文字も一緒に行くかい?
…判った。それじゃあ、支度して出掛けようか。
[ なにやら複雑な表情をした瞳には気付かない振りをして。頷いた左之助に簡潔に告げると、ツカサは出掛ける準備を+*する事にした*+]
−西ブロック・神社周辺−
ふむ…何もそれらしいものはない、が。
[そこまで言うと、ガリガリと頭を掻く。]
成果なしで戻るってのもなぁ。
だが、もう結構な時間経っちまったし。
「戻るかどうか悩みどころだ、と腕を組む。」
セイバーは、瀬良 悠乎 を能力(襲う)の対象に選びました。
セイバーは、バーサーカー を投票先に選びました。
九鬼 聖法は、瀬良 悠乎 を投票先に選びました。
九鬼 聖法は、バーサーカー を投票先に選びました。
[去って行くみなみを無言で見送った。
攻撃を仕掛ける隙がなかった訳ではない。
ジャックの存在、そしてみなみに対するダビデの態度があったからだ。
タビデがみなみに抱く特別な感情。
それはたどたどしい報告の言葉からも明らかだった]
イレギュラー、か。
そうだな、挨拶もまだだったから、それも兼ねて教会にいこうか。
[イレギュラーは確かに問題だ、しかし倒してしまえば良いだけの話である。
教会までの道程で考えるのはダビデが抱いた感情についてだった**]
[
聖杯戦争の開幕から、数日。
遭遇したサーヴァントは、既に五騎。
加えて、この屋敷に対する接触が二度。
本調子とはいえぬ主を置いての外出は、流石にリスクが高過ぎた。
]
に、しても――……存外に、簡単に調べが付きましたね。
[
――キラー、織田信長。それに一文字。
偽名、或いは通り名などである可能性は、勿論ある。
それでも、何かの手掛かりになるかもしれないと、屋敷の書斎に籠もって、数時間。
主が目覚めるまでの時間は、無駄にはならなかった。
厨房に立って、冷めてしまった料理を温めながら。
集めた情報を整理して、思い浮かべた。
]
[
――織田信長。その名は、直ぐ知れた。
蔵書を紐解くまでもなく、棚にと並ぶ幾つもの背に、その名があった。
主は知っていたのだろうが、自分でその伝承を知ることに、意味があった。
そして、一文字。
僅か百五十年前。この国が、長き太平の世から醒めんとしている頃。
そんな時代に名を馳せた、旧時代の戦士団。
その指揮官の一人が、一文字という綽名を与えられていたのだという。
最後に、キラー。
こちらは、ほかの二人ほどには確信が持てなかったが、候補となる人物は絞り込めた。
一方は、一文字が殉じた世界が未だ盤石であった時代。
四十数名の戦士に屋敷を襲われ、討取られた国の重臣。
もう一方は、先日に街を歩いた際に目にした、この時代の絵巻に語られていた存在。
新世界の神と呼ばれているという、目付きの悪い青年。
まあ――あとの判断は、主に任せよう。
]
−北ブロック−
[結局何の成果もなかったが、時間も夕刻が近くなったということもあり、一度戻る事にした信長だったが。]
……どこいったんだ、おい。
[部屋に茜の姿はなく、部屋はもぬけの殻だった。
すぐに探しに行こうとするが、令呪からの魔力は変わりなく流れてくる事から、無事なことはわかる。]
……待つほうが良い、か。
−昼 蒲生邸−
[ゆっくりと身体を起こして、具合を確かめる。肉体、精神、共に疲労は回復したと思われた。痛みはキャスターの秘薬でかなり抑えられている。]
…………。
[そう言えば、キャスターは誰かと会話していなかったか。――そう思い出して寝床から起き出すと、キャスターの気配を探り、台所へと向かった。]
はいはい、どうぞー。
[教会の奥から、若干の気の抜けた声が聞こえる。
そしてその声の主はアーチャーの姿を見ると、暫くその姿を眺めた後やんわりと口を開いた。]
ふむ……、迷える守護者よ。
この神の家に何の御用でしょうか?
――……ああ、丁度良いですね。
[
主が目覚めるのを、ふと感じて。
どうやら出来たての、温かな料理を供することが出来そうだ。
口許が綻ぶのを自覚しながら、配膳をはじめた。
]
[台所に入ると、何とも言えない光景が視界に飛び込んできた。
異様な物体。強烈な匂い。そして楽しそうなキャスター。]
……何を、している、……。
―北ブロック マンションのドアの前―
[部屋の中に、人の気配がする。
ふぅ、と一つ息を吐いて、ドアを開けた。]
…ただいま。
[言ってから、このセリフを言うのはいつ以来だろう、とそんな事を思っていた。]
どちらにしても。
武器を何とかしないことには始まらないな。肉弾戦で持てばいいが、あんな戦いはごめんだ。
[昨晩のバーサーカーの姿を思い出した。]
夕方から出るぞ。それまで、もう一度剣が直るか試してみる。
[ソファの上で折れた剣を手に取る。ゆっくりと息を吸った。]
Появление первоначальной
[唱えると、僅かに痛みが走る。どこに、というわけではなく、どこかが。
剣は元には戻らず、同じ姿でそこにあった。]
[主の言葉が、耳へと届いた。まだ疲労が抜けきっていないのか、途切れがちの声。]
――……ああ、マスター。おはようございます。
つまらないものではありますが、食事を用意していました。
その――……宜しければ、是非。
[はにかんだ笑みを浮かべて。立ちすくむ主へと、極彩色の料理を差し出した。]
[ドアを開けると、信長が腕を組んで待っていた。
マスターが近づくのを感じて、出迎えたのだが……。]
――馬鹿野郎!
待っていろっていっただろう!
[その姿を見て最初に出たのは、怒鳴り声だった。]
[目の前に立っていた信長と、その怒鳴り声にびくりと驚く。]
……。
[一瞬、きょとんとした目で信長を見た後、泣きそうな笑い顔になる。]
…ごめんなさい。
―教会―
[二人はさほど待たされる事もなく、温厚そうな雰囲気の神父の姿を目にする事が適った。用件を問う言葉に、表情を引き締める]
……やはり、一目でおわかりですか。
私はアーチャーの役割(クラス)を帯びしサーヴァント。
こちらが聖杯のよるべにて結ばれし、私のマスターです。
[軽く立場の紹介だけをし、本題に入る]
用というのは他でもありません。
此度の聖杯戦争には、何か大きな狂い……ひずみが生じているのではありませんか?
そうか。貰おう。
[短く答え、配膳された席に着いた。そして箸をつける。
色鮮やかな一口。]
……まずい。
[続いて他の皿にも箸を伸ばす。]
……まずい。
[何度同じ台詞を繰り返しただろう。全ての物体を食べ尽くすと、キャスターを見据えて告げた。]
勉強しろ。愚か者め。
[その顔を見て、思わず言葉が詰まる。
完全に勢いを消されてしまった。
はぁ、とため息をつく。]
わかればいい。
――心配するだろうが。
[ゆっくりと頭を撫でる。]
おかえり。大丈夫だったか?
それはもう、私とて教会の人間ですので。
まぁ立ち話もなんです。
どうぞ此方へお座りください。
[そうして、アーチャーに座る様勧める。
アーチャーが座るのを確認すると、己も座って話を続けた。]
ふむ……狂い、ですか。
何かお心当たりでも?
―教会―
聖杯戦争が既に始まっている、という事はご承知の通り。
私も既に数人のサーヴァントと遭遇しております。
ですが……その中に。
本来なら存在しない役割(クラス)の者が紛れ込んでいるのです。
[早朝の路地での遭遇。あの時はアサシンだと推定していた。
だが、駅前でのみなみとの会話。彼女が口にした単語]
『キラー』と、そのサーヴァントの主はそう呼んでいました。
彼の者自身が勝手なクラスを名乗ったのかもしれませんが、その真名からすれば、確かに相応しい名称かとも思うのです。
彼の者の真名――『ジャック・ザ・リッパー』。
娼婦連続殺人鬼として、当時の倫敦で噂にのぼった名。
[欲しかった言葉を言われて、微笑む。]
…うん、ただいま。
[大事そうに、噛み締めるようにもう一度言い、頭を撫でられて、安心したように目を閉じた。]
なるほど、本来の予定外のクラス……ですか。
しかも、その名が切り裂きジャック。
[考え込むように、顎に手を当てる。]
――反英雄が召喚される、というのは実は過去にもありました。
ただそれは、その存在によって英雄を英雄足らしめる。
悪がなければ正義もまた、存在しない……その考えに基づく存在でなければなりません。
だが、切り裂きジャックが存在することによって、存在できる対となる英雄は存在しない。
これでは……必要悪となることはできない。
そして、更にイレギュラークラス、ですか。
[
どうやら、祖国の味は、主の味覚に合わなかったらしい。
――だが、それでも。
何のかのと言いつつも、用意した皿の全ては空になっていて。
緩む表情を抑えられず、主にそれを悟られぬように、深々と一礼する。
]
――申し訳ありません。
この国の味付けを存じませんでしたので……以後、精進致します。
[
――その、"以後"があるのかどうか。
この瞬間だけは、その冷酷な現実を思い浮かべることはなかった。
]
……たく、泣く位なら最初から怒らせるな。
心配することぐらいわかるだろう。
[袖で、涙ぐんでいる瞳を拭いてやる。]
それで、何しに行ってたんだ。
どうしても必要な用事だったんだろう?
反英雄……救世主を反転させた鏡像ですね。
黙示録の刻に現れる、とかの聖典にある通り。
[少年の時代には存在しなかった、だが今では教会の信徒以外にも広まった未来の伝説。しかし「ジャック」も「キラー」も、それではない。とすれば――? 推測が出るよりも、神父の言葉に二人に衝撃を与える方が遥かに早かった]
――六回、とは?
サーヴァントが六騎しか召喚されていない、と!?
[瞳を拭われて、くすぐったそうに身をよじる。]
泣いてなんかいないわ…
[段々いつもの調子に戻りつつ、問われた質問に少し眉間を寄せて答える。]
…魔力の補給に。ちょっと家の方に…ね。
本来ならば七つすべてのクラスが揃ってこそ、“力の器”である聖杯が満たされる筈。
六つのクラス――しかもその内ひとつは本来は存在しないクラス――のみで、聖杯が願いを叶える事は……。
[続きは言葉に出せなかった。想像が真実になってしまいそうで。もしもその通りだとしたら、少年は何のために喚ばれたのだろう?]
[茶を淹れろ、と言いかけて思い止まり、自分で淹れる。
一口飲むと、とても懐かしい味がした。
そして重要な事も思い出す。]
俺が寝ている間に誰か来たのか。
そうですね。
ですが此処では更に単純に英雄を英雄足らしめる悪役……と考えていいかと思います。
例えるなら、かのペルセウスもメデューサを倒さねば英雄と讃えられなかった、そういう事です。
ですが、切り裂きジャックには彼を妥当した英雄が存在しない。
つまり、そのものの存在によって成り立つ正義が存在しないため、必要な悪と成れない……。
[そこまで言うと、神父は一息をつき覚悟を決めた表情で続きを語る。]
ええ、恐らくは。
ですが、ご存知の通り。
――聖杯戦争は始まっている。
瀬良 悠乎が「時間を進める」を選択しました。
なら、俺の勘違いか。
それならば、先程のアカネの表情は俺の幻覚ということで忘れる必要はないな?
[誰にでもわかる強がりに微笑みながら、軽口で返す。
だが、その後の些細な表情の変化は見逃さなかった。]
――何かあったか?
キラーは、瀬良 悠乎 を能力(襲う)の対象に選びました。
――南ブロック・廃工場――
[驚きの連続だった。
『好青年・ツカサが実はマスター。』
『マスターには剣が直せないらしい。』
『剣が無ければ肉弾戦をすればいいじゃない。』
特に一番目はバーサーカーにとって見過ごせない点だった。地理を懇切丁寧に教えてもらい、マスターの守りを任せ、挙句の果てには地図まで貰い、朝の間に礼まで言ってきた。
もしかしたらマスターに騙されているのではないか。
剣と格闘する少女をじっと見つめたが、どうやらその雰囲気は無い。ならばもしや、自覚が無いマスターだったのだろうか? それでは神社にいたサーヴァントは何者だったのだろうか?
槍の男の風貌を思い出す。
そう、確か彼は…………。]
……何か、銜えていたな……。
[もしやあれを武器に戦うアサシンなのでは無いだろうか。
こう、ぷっと口から吐いてマスターの首に――。
危険な夢想にバーサーカーは身震いした。]
[――始まっている。
たった今、自分でも口にした言葉。だが神父が告げた声には、全く異なる響きが籠もっていた。召喚されたサーヴァントが、六騎だけでしかないのなら。始まっていること自体、異常なのだ]
ジャックが英霊ではない、という意味、判ったような気がします。
けれどそうすると、より恐るべき想像ができてしまう。
本来の条件を満たさないまま、聖杯が起動したというのならば……この聖杯戦争を司る、大聖杯のシステムそのものが、何か途轍もない異変を起こしている。
そう仰るのですね、神父。
どうやらクリクスス以来の好敵手となりそうだな。
[仮面はにやりと笑っていた。いつものこと。
マントからもう一対の折れた剣を取り出した。
濁った刃をじっと見つめている。]
……待っていろツカサ。
君を打ち負かすのは私だ。
そして私を打ち負かす者がいるとすれば……。
フフフフフフフフフフ。
[
主が、手際よく食後の茶を淹れるのを目にして。
そこまで思い至らなかった自分の不明を恥じながら、主の問いに答える。
]
――はい。
この国では、望まぬ客――……というような来客が。
[
主の問いに、僅かに表情を曇らせて。
ゴドウという名の魔術師が、先日に商店街で遭遇したサーヴァントの一方を連れて訪れたこと。
その魔術師が、サーヴァントを"一文字"と呼んでいたこと。
その"一文字"という名と、織田信長、キラーという存在についての所感を述べて、言葉を終えた。
]
[剣をソファの上へ置くと、バーサーカーの言葉にそちらを向いた。]
銜えていた?
……誰が、何を?
[もちろん、バーサーカーの心の声など聞こえるはずもなく。]
―― 中央通り・古美術店 ――
[左之助は梧桐の説明してくれた事にふむと頷く。]
便利な物があるんだな。
それで、その仮面の本拠地に行くのは良いんだが、戦いに行くのかい?
[そう梧桐に聞く。]
目でも悪いんじゃないの?
[勘違いか、と言われ、少し赤くなりながらそう返す。]
……何も無いわ。
しいて言えば、何も変わらない。今まで通り、かしら。
まぁ、端からあの家に、何も期待していないけどね。
[自嘲気味に、笑う]
此処から先は、少しおかしい話になりますがね。
教会はこの地の聖杯を聖杯と"して"はいますが……
――"確認"してはいないのですよ。
ツカサと一緒に……というより。
ツカサの近くにいたサーヴァントだ。
木を割いた、細い棒のようなものを銜えていた。
[朝に楊枝を銜えた極めてこの国っぽい風貌の、槍を鍛錬していたサーヴァントと、そこにツカサがやってきたこと、玉砂利の上の小鳥がどうしても捕まえられなかったことを徹頭徹尾説明した。]
[どちらが口に出したものか。
少年と青年の間に一瞬、視線での譲り合いが生まれる。
結局口を開いたのは聖だった]
「この地に存在する“何か”を、聖杯と看做してはいる……。
だが、実在は確認していない。そういう意味でしょうか」
[少年の胸中にも全く同じ疑問が浮かんでいた。秘蹟や奇蹟を管理することについては最長最古の歴史を持つ聖堂教会でも、完全には見極め切れない“何か”。不穏な黒雲が内心を覆っていった]
[その言葉と表情から、何が起こった大体予想をつける。
先程の言動も、ある種の飢え……いや、泣き声なのだろう。
かつて自分は茜を生きていないといったが、それは異聞の意思ではなく……。]
――そうか。
[それだけ呟くと茜を強く、だが同時に優しく抱きしめた。
暫くそうしていただろうか、茜を腕から離すと微笑んで口を開く。]
さ、少し休め。
外へ出るのは暗くなってからにしよう。
ツカサと、一緒にいた。
あの男か。
槍で鍛錬、ということは……ランサーか?
確信があるわけではないが。
どちらにしても、色々と調べてみないといけない。
日が落ちたら行こう。
その通りです。
かつてこの地で教会が見つけた"願望機"。
それは数十年に一度、どんな願いですら叶えてしまう事象を起こす正に魔法といえる代物。
それを教会は……聖杯としたのです。
教会の監視下に置くために、ね。
[眼を瞑り、顎を撫でる。]
幾つかの時や試みを経て、若干の制御や観測は可能とないましたが。
――根本的なことは何もわかってはいないのです。
過去の英雄を呼び、それを主たる者へと与え、願いをかなえる……ということ以外はね。
アサシンはないだろう。槍を使っていたのだろう?
槍は長い得物だ。暗殺に使うのは考えにくい。それよりも素直にランサーと考える方が妥当だろう。
何故アサシンだと思った?
それだけの理由があるんだろうな。
確かに、セイバー、アーチャー、ランサーと違って使う宝具は色々あるとは思うが。
[バーサーカーの笑う仮面をじっと見た。]
[突然抱きしめられて、息が止まる。]
……っ
[抗議しようと思ったが、上手く言葉が出てこない。
しばらくしてから開放されると、足がふらつき、思わず床にぺたりと座り込んでしまった。]
別に……休みなんて必要無いけど!
[すぐにでも戦える、と、赤い顔をしながら、なんとも説得力の無いポーズで告げる。]
[マスターはランサーではないかと、ごく当然に言ってみせた。バーサーカーとしてはあれはアサシンではないかと主張したかたが、少女との関係はサーヴァント(奴隷)とマスター(主人)。
逆らうことは出来ず、日が落ちたら外へ向かう旨を承知することしか出来なかった。武器が無いことは確かに不安。しかし遭遇したとしても、彼女が言ったように肉の壁となって少女を護ればそれでいいのだ。]
――チ。
[鳴る。泣く。
―――――――死ネ。
仮面の奥で声にならない呪詛が疼く。
頭痛を抑えるように片手を頭に沿え、舌打ちをした。]
[九鬼がもっともらしく解説をしているそのとき、教会の大聖堂の奥にある扉の向こうから、すっとんきょうな声が聞こえてきた]
ああ〜ん、聖杯ちゃんが居ないよぉ〜〜!!!
ん… どうだろうね。
[ 戦いに行くのか、と問われて即座に返せる言葉が出てこない。]
正直、彼に会ってどうしたいのか自分でもよく判らない。戦うべき相手であるのは判っているんだが… なんだろうね、戦うよりもまず、会話をしてみたいと思ってる。
まあ、会って何を話したらいいのかさえ、よく判らなかったりもするんだけどね。
なんだろうね、うまく説明できないな。
ああ、向こうが戦いを望むなら… 戦闘だね。その時は、期待している。
…………。
[頭から手を離す。]
フ。
あまりにも堂々としていたからだ。
後は……そうだな。
[バーサーカーは槍の男の姿を思い出す。そういえばあの時は空が白かった。剣が折れてさえいなければ、きっと剣戟の音だって心地良く響いたに違いない。
窓の外へと目をやって。]
――――勘だ。
[一片のうつむきなく答えた。]
そんな格好じゃ説得力はないな。
[クックッと笑いをかみ殺す。]
まぁ、食事でも何でもしておけ。
まだ日が落ち人通りがなくなるのには早いからな。
[お茶を飲みながら、キャスターの報告を聞いている。]
お前は、この屋敷に敵マスターがサーヴァントを連れてのこのこと出向いてきたというのに。息の根を止めるどころか、罠の一つも、探索の糸の一本も仕掛けずに帰したというのか。
平和惚けした愚か者めが。戦時にあって油断は命取りだと、いい加減知れ。
[不機嫌そうに吐いて、続く報告を聞いた。
一文字と呼ばれる槍使いについては、キャスターの辿り着いた予想に同意する。
キラーについては、キャスターの説は聞き流した。それが一般的な名称であることから、主従で取り決めた呼び名の可能性を指摘する。]
[会話は全てダビデに任せていた。
自らがするのは内容の分析であった]
出所がわからないし、完全な制御もできない?
それじゃ、願いが叶うかも怪しいですね。
管理出来ない願望器を聖杯と呼び、魔術師達に殺し合いをさせる。
聖堂教会にとっては都合の良い代物ってことですね。
[九鬼の言葉には正直呆れさせられた。
理論が分かっていないのに願いが叶うなんていわれても信じる事はできなかった]
[この地の“聖杯”は、人が作り出したモノではなく、発見したモノ。神父の説明に、浮かび出た言葉を淡々と紡ぐ]
神の子の血を受けた“聖杯”。
いかなる願いをも叶えるという、究極の“願望機”。
――しかし、それもまた、伝説の中の存在。教会ですら全てを――
[そう口にした時。
応接室にまで突き抜ける大声が、少年の耳をつんざいた]
[笑う信長を、下から強くにらみつける。
そして、思い切り大きく鼻をならして、顔を背けた。]
たまには従ってあげるわよ!
[そう言って、マットレスの方まで何とか歩くと、壁際に積んであるダンボールの中からカロリーメイトの箱を出して、+封を開けた+]
―教会―
[女性の悲鳴。助力を求めるように神父を見遣っても、どうやら彼にとっては大した事件ではない、という印象らしい。
マスターは聖杯の信憑性を質そうと、更なる質問を紡ぐ構え。
自分が行くしかない、と判断した]
あの、今の悲鳴。何かあった、んですよね。
……ちょっと見てきます!
[そう宣言し、応接間を出て声の聞こえた方へと急いだ]
[みなみが戻ってきたことに気づき、キラーは自分が気を失っていたことに気づいた。時計を見上げると、結構な時間がたっている]
……みなみ、どこに行っていたのかね?
[部屋に入ってきたみなみに、キラーは問いかけた]
……。わかった。どちらにしても、対策は考えておかないといけないな。
[バーサーカーの主張を聞き流し、立ち上がる。奥の部屋に向かうと、トランクから必要なものを取り出す。]
武器がなければ、魔術を使うしかない。だが、私には――。
[写真を見た。裏には日付と、父と母の名前が書かれている。今の写真を送れと手紙には書かれてあった。
苦笑して、零す。]
5年前と変わらないのに、送る必要など。
[ない。その言葉を飲み込む。]
願いが叶わないなら、此方としても話は早かったんですがね……。
[再び深いため息。]
叶ってしまうんですよ。なんでも、ね。
過去数回の聖杯戦争で勝者は当然出ています。
勝者の願いは様々でした…金・権力・そして魔力。
詳しくは言えませんが、それら全てが叶っているのです。
その度に教会が傾きかねないほどに、ね。
[思わず頬を掻く。]
願望機としての性能は本物と同等かそれ以上。
これ以上にやっかいな事実がありますか?
[その時、奥から気の抜ける声が聞こえる。
思わず頭を抑えて皺ができてしまった眉間を伸ばす。]
……すいません、うちの馬鹿です。
あの聖杯という単語も、馬鹿の考えなしの行動の結果ゆえの頭痛が収まらない馬鹿な結果ですのでお気になさらず。
――さて、空気が壊れてしまいましたね。
なにかほかに聞きたいことはありますか?
[そっと扉を開ければ、キラーの様子は心無しか、出掛ける前と比較して良くなっているように見えた。動揺を悟られないように、微笑む]
この間、落し物を拾って、それを返しに行って来ただけだよ。
具合はどう? ちょっとは平気?
[頬を掻く九鬼の飄々とした姿に警戒を高める]
厄介ならば壊してしまえば良いのではないですか?
それが出来ないのは教会側にも何か思惑があるからですよね?
今回六騎しかサーヴァントが召喚されていないのも、キラーといったイレギュラークラスが召喚されているのも教会が裏で何かをしているからではないですか?
[外はダビデに任せて会話を続けた]
[
主の指摘に、成る程と納得する。
殺人者。あるいは、何らかの特定存在に対する絶対的な切り札。
仮に後者が、サーヴァントに対してのそれを指しての呼称ならば。
あのとき無傷で逃げ切れたのは、僥倖だったということか。小さく、溜息を吐く。
]
それで――……マスター、本日はどうしますか?
[言って。いつの間にか中天を過ぎていた太陽を、ふと省みた。]
―教会・大聖堂―
[たしか、この辺りだった筈だ。扉越しとはいえ、建物の構造と大体の方向から見当を付けて大聖堂に入っていく]
……あれは……。
[ステンドグラスに描かれた聖図像。日の光に照らされ、美しく輝いていた。無意識に足を止め、胸に手を当てて頭を垂れる]
……主よ。あなたの恩寵が常に僕(しもべ)の上にありますよう。
―教会・大聖堂→台所―
[聖堂内を奥へ進み、扉に手を掛ける。軽く二度、ノックした]
もしもし、誰かいらっしゃいますか?
ついさっき、悲鳴が聞こえたのですが。どうされました?
[声を掛けて、扉を開く。その向こうでは、一人の少女が茫然と立っていた]
[不審には感じた。だが、口には出さなかった]
ああ、だいぶんマシにはなった。やはりサーヴァントであるのは得だな。右腕は折れているのでまだ修復できないが……左腕は動きそうだ。
[言って、ふと笑う]
サーヴァントか。聖杯戦争などというもの、関わり合いになることすら無いと思っていたんだがな。
だから言ったでしょう。
これ以上にやっかいな事実がありますか?と。
どんな願いでも叶う奇跡。
根源へと至る最も近き階段。
これを教会が壊すという判断をするとでも、貴方は少しでも思ったのですか?
[余りに若い言葉に、内心でため息を付く。]
思惑のない物なんてこの世にありませんよ。
互いの思惑、そこにある利。
それによってこのセカイは廻っているのですから。
[腕を組み、首を鳴らす。]
裏で何か、ですか。
そんな器用な事ができるなら、最初からマスターが全員教会上層部になる様にしたら簡単でしょうなぁ。
うっわ〜〜、人来ちゃったっ!
ど、どしよ? どしよ?
[軽いノックに聞きなれぬ声。慌てていると少年が扉を開いた。]
あわわわ……って、貴方サーヴァントじゃないですか。
いったい、教会の台所にまでどうされたのでしょう???
[アーチャーを見て、目をまんまるにした。]
[時間だと思った。トランクを閉める。立ち上がると、それを隅に置いた。]
そろそろ行くか。
……?
[なぜか、そこを離れ難かった。気にせずにバーサーカーのほうへと戻る。もう、窓から差し込む日は赤く、日が落ちようとしていた。]
―教会・台所―
[台所の様子を見回しながら、困ったような表情で頷いた]
……いえ、一体何があったのかと思ったもので。
聖杯がない、などと聞けば驚きもします。サーヴァントとして現世に呼び出された、まさにその理由ですからね。
[そう言って、にこりと微笑んでみせた]
[直視できない後ろめたさを埋めようと、嘘はついていないと自分自身に言い聞かせた]
そっか、それなら良かった。あんまり、無理しないでね。
今すぐにしなきゃいけないことがあるわけでもないし。
[胸の前で組んでいた腕を解き、軽く羽織ったカーディガンから覗く令呪に目を落とした]
確かにキラーがサーヴァントとしてここに居る事は何度考えても不思議。大して聖杯戦争の事を知らないわたしでもそう思うもん。
ねえ、キラーは、魔術師だったんでしょ? マスターとして関わることも無いと思ってたの?
ほう、それが今の世の飯か。
[なにやらゴソゴソしだした茜が気になり、後ろから覗き込む。
肩に手を載せ、顔は頬の横だ。]
何やら味気なさそうな物だな。
見た目的にも楽しさがない。
そんな事、思うわけないじゃないですか。
僕も成敗を求めるマスターの一人ですから、一応。
[相手の呆れた様子にも笑顔で答える]
壊さないと思ったからこそ、裏を疑っているんですよ。
僕も協会の仕事はしていますからね、教会はあまり信用していないんですよ。
貴方個人を攻めるつもりはないんですけど、それだけ不確定な要素が含むと疑いたくもなりませんか?
独占が出来ないからこそ、一人息のかかったマスターとサーヴァントを隠匿している。
だから、六騎しかサーヴァントがいないなんて考え方も出来ますしね。
その辺は、言い出したらきりがないので止めておきます。
では、貴重な情報をありがとうございました。
[礼をして教会から外に出た]
―教会・台所―
それにしても、神父殿だけでなく貴女までお分かりになるとは。
この時代、聖堂教会の人材は十分足りているようですね。
まことに喜ばしいことです。
[少女にそう続けて、何か困り事はおありですか? と首を傾げた]
昨日と変わらん。我らに有利な地を増やすのだ。信長ほどの破格ならば、これまで以上に念入りな準備が必要となるだろう。
[ふと、キャスターの視線を追う。]
……そうだな。そろそろでかけるぞ。東のビル群はいい戦場になり得る。あの一帯をお前のものにしろ。
[言って、外出の準備をするため、席を立った。]
ふぁ……!
[慌てた様子で、口元を手で押さえる。]
いけない、ごめんなさい。
えっと、あの、実は……。
[バーサーカーのマスターが連れて来た猫に、面白がって"聖杯"という名前を付けたこと、その猫の姿が見当たらない事を説明した。]
ちょっと、猫を頭の上に乗っけて「我こそはライダーニャンコにゃるぞ〜」って言っただけなんですのよ……。
[少しばつの悪そうな表情を浮かべた後、アーチャーの言葉に微笑んだ。]
教会の人間も、魔術師ですからね。特にここに派遣される者は、それなりに魔力感知の能力が高くないと勤まりませんから。
[そう言い、品の良い少年の姿をじっと眺めた。]
あなたは、随分品格のある英霊なのですね。
―南ブロック・廃工場――
[ああ、行こう。
仮面の返事は、郷愁の色に横顔を染めた少女に失われる。
祈りにも似た刹那。
刹那にも似た懐古。
……いや、懐かしいと思うはずも無い。]
…………行くぞ。
[それ以上、少女の顔を見ずに歩き出す。
手には折れたままの剣。
使い物にはならないだろうが、手放すこともしなかった。
境界から注ぐ夕陽が、ぼろぼろのマントを揺らす。]
[廃工場からでようと出口へ向かう。]
バーサーカー、帽子は忘れるな。
それから、人がいるところでおかしな真似はするな。この前投網を使っただろう。
一般人に知られたら、消さなくてはならない。あまり、いい気持ちはしないが。
[不意に手を見た。もう、血で汚れた手。その多くは魔術師だったけれど。]
……聖杯への、願いか。奇跡に頼らねばならない願いなど、興味もない。
ふぅ、おわったおわった。
いやー…面倒臭い。
[椅子の背もたれに身を預けだらりと体を伸ばす。]
一々上の思惑なんて知ったこっちゃないんですがね。
所詮は中間管理職なんですから。
[肩に手を置かれて、もご、と口に入れたカロリーメイトを、思わず噴出しそうになる。]
ちょ、…あんたには距離感ってものが無いワケ!?
[口に入れた分を飲み下し、目を白黒させて怒鳴る。]
…まぁ、栄養を摂取するためだけのものだから、見た目とか楽しさとかはどうでも良いのよ。
[みなみの令呪を見る。一つ減っている令呪。召喚されたときに殺そうとして、令呪で縛られたのだったか。馬鹿らしいことに使わせたものだ、と皮肉げに笑む]
私には兄が居てね。元々家系は兄が継ぐことになっていた。私はその兄の魔術を補佐するような立場……いや、簡単に言えば奴隷か実験体であったか。
知識は詰め込まれたが、前も言ったように魔術師としての腕は三流だ。そういうようには育てられなかったからな。
マスターになどなれるものかね。
―教会・台所―
[少女からの説明に破顔して、得心の表情を浮かべた]
そういう訳だったのですか。なるほど。
ライダーにゃんこ……よほどの伝説があれば、獣でも“英霊の座”に上る可能性はあるかもしれませんが。少なくとも私の知る限りでは、存在しませんね。夢のある、いい話です。
[じっと見つめる視線に気づき、軽く頭を下げた]
名乗りもしていませんでしたね。
教会の方であれば、口外される事も無いでしょう。
私はダビデ。
ご存知の通り、かの聖典に現れる王……の、少年時代の姿です。
[それでも。では自分はどうして聖杯戦争に参加したのか。判らないと首を振る。
廃工場をでて、向かったのは駅の方だった。人通りは多い。だから、大通りは行かずに、狭い路地を選んだ。]
バーサーカーは、やはり今も願いはないのか。それとも、形だけの平和を願いのか。どちらだ?
私は。
まだない。でも、見つかりそうな気はする。参加が目的だった。だから、聖杯を手に入れても願うことはないかもしれない。
個人的な願いでいいのなら、――いや。夢のような話だ。それをもかなえられるのだろうが。それは、願っていいものではない。
[廃工場から出て、学校での出来事をとがめられる。
消さなくてはならないと冷酷に言うが、きっと彼女は何もしていないし、あの後、投網をかけたあの生徒も何とも無かったのだろう。
廃工場の前。いつだったか、猫と戯れた場所。
感慨に足を止めることなく、歩き出す。
言われた通りに帽子を被り直した。]
興味も無い、か。
[呟かれた言葉を復唱した。
麦藁帽子を深く被っていたからだろう。仮面は見えない。
特別な風が流れることなく、道すがら時間だけが過ぎる。
マスターの向かうがままについて行った。]
なるほど……、でも、なんか面白くねぇな。
やっぱ人生ってのは楽しむもんだ。
だが、戦の時とかは役立ちそうだな。
ふむ……、一口貰うぞ。
[そういうとアカネの手にあったカロリーメイトを、手首を握って首を伸ばして齧った。]
ふむ、見た目ほど味は悪くないか。
[そう告げて、思い至る。
あくまでも少年の記憶は彼個人の歴史に基づくもの。
公的な権威としては認めかねる事情があるとも考えられた]
もっとも、教会としては聖典中の存在が現界したなどとは公認できない、と仰るのであれば。私はただの、名もなきアーチャーです。
ところで、貴女の名前をお教えいただけますか?
わー……ダビデ王!
すごいわ〜。知ってますわ〜。
[ひとしきりはしゃいだ後、英霊にむけて静かに微笑む]
ダビデの星の形は、この日本の地にも縁があるという説もありますわね。遠い祖先はひとつだったとも。
きっと、この地でならあなたの力も、それほど制限なく発揮できるかもしれませんわね。
御武運をお祈りしてますわ。王子様。
―― 南ブロック・廃工場 ――
あれ。
[ 小声で、ひとつ呟く。地図に示された地点まできてみれば、ちょうど見覚えのある二人組が廃工場から出て行くところだった。
思わず姿を隠して様子を伺うと、二人はそのまま何処かへと歩いていくではないか。]
…とりあえず、後を追おうか。
[ どうするよ、という左之助の声に、そう答えて見失わないようハルカたちの後を追い始めた。]
え? わたし?
わたしは、平芽祈っていいますわ。
[英霊ダビデに見つめられ、少し照れくさそうに瞬きをする。]
……教会の人間の名前を知りたがるサーヴァントなんて、ちょっとびっくりしちゃいました。
……そう、だったんだ。
確かに魔術師の家系は、魔術を伝えるのって兄弟がいたら大抵は一人にだけだもんね。
なんだか、皮肉、だね。
キラーがもしもマスターになれる資格を持っていたとしても、マスターになりたかったのかどうか、わたしにはわからないけど。
[そして、自分は。そこへまた戻る思考回路。みなみは曖昧に笑い、ふっと溜息をついた]
ふだん明るい時間帯に外を出歩かないからちょっと疲れたみたい。
キラーもそんな状態なら、動いたりしないでしょ? わたし、少し休むね。
―教会・台所―
[“ダビデの星”の伝承は、今では半ば事実と化しているのだな、と小さく少年は苦笑する。そして静かな口調で芽祈に答えた]
私は王子ではありませんよ、お嬢さん。
元々はただの、羊飼いの末の子にすぎません。
主に見出された事をそう仰るのであれば、それは。
誰にでも王子――お嬢さんなら王女――になれる機会がある、ということです。
…………。
[魔術師という世界をバーサーカーが知っているわけではない。
ただ一人だけ、神秘に触れた人間は知っていた。
意見の対立から一度は分裂し、そして――自分より先に戦死してしまった。スパルタクスは結果的に、友であった人物の死の直後を突いて、ローマ軍を撃破することには成功したのだが――。
オエノマウス、そしてクリクスス。
強大な二人の友を失ったスパルタクスにとって、後の結末は分かりきっていたことだった。必ず故郷へ帰してやると約束しながら、必ず自由にしてやると奴隷達と誓いながら、最後は――。
ルクルス。
彼が別の戦争から帰還し、奴隷軍を挟み撃ちにしようとしている。ローマの精鋭、リキニウス・ルクルス。彼が挟み撃ちにしようとしていると。
その戦争とはローマに抗っていたミトリダテスとの戦争であり、つまり彼が帰還したということは、自由を獲得する為の最大の希望が失われてしまったことを意味した。
その情報を聞いたスパルタクスは、もう逃れる術は無いと絶望し、最終決戦を挑んだのだ。]
[――結果は無残な大敗。
中には死骸を磔にされ、下ろすことを許されなかった奴隷もいたという。故郷へ帰りたいと願った奴隷達は、ローマの地を逃れることも、己の死骸を墓に眠らせることも出来なかった。
しかし実は。
帰還したのはリキニウス・ルクルスではなかった。
トラキアを平定したマルクス・ルクルスだった。
同姓の別人。
スパルタクスは一世一代の勘違いで、最後の最後に平静を掻き、引き連れていた万を超える奴隷達に屈辱の最期を強いた。
それが結末であり、決定した彼の過去でもある。]
まあ、素敵。
誰でも王子さま、王女さまなんて。
[満面の笑みを浮かべると、台所の机の上に置いたクッキーの包みをダビデに差し出す。]
伝説の王様は、やはり話しぶりも素敵なんですね。
これ、7騎のサーヴァントの象徴のひとつが入ってます。
何が入っているかは、開けるまでのお楽しみ☆
しかし、あいつらどこに行くのかね。
もしかしたら本拠地を変えるのかも知れねぇな。
まあいい、追いつつ様子を見るか。
[左之助は梧桐に続き、バーサーカー達の後を追う。]
平、芽祈。良い名です。
その名前通り、貴女の祈りが芽吹く日が、近くありますように。
全ての出会いはどこかで繋がっています。“無意味な偶然”など、ありません。名を知るのは、大切なことですよ。
[少女にそう応じて、扉の方を振り向いた]
……さて。時間があれば猫探しを手伝いたい所ですが、マスターはそろそろ此方を離れるようです。私も行かなければ。
短い時間ですが、楽しい会話でした。また会える事があると良いですね。
[
この一帯を丸ごと陣地にとは、主も無茶を言う。
林立する巨大な塔をと見上げて、溜息を吐いた。
――そうして、数時間。
周囲を夕闇が覆うようになって、漸く、作業は軌道にと乗り始めた。
空飛ぶ絨毯(フライング・カーペット)を用意してきてはいたものの、日中から堂々と宙を舞うわけにはいかなかったので。
]
願いを口にすることは易いものだが。
私は――――。
[瀬良悠乎が何かに気付いた様子に視線を向け、
何かを問おうと、返そうとして、止めた。
口にしたのは、「くだらない過去」に関する願いではなく。]
どうした。
[不審が漂う空気への、問い。]
―教会・台所→屋外―
平、芽祈。良い名です。
その名前通り、貴女の祈りが芽吹く日が、近くありますように。
全ての出会いはどこかで繋がっています。“無意味な偶然”など、ありません。名を知るのは、大切なことですよ。
[少女の笑顔にそう応じて、扉の方を振り向いた]
……さて。時間があれば猫探しを手伝いたい所ですが、マスターはそろそろ此方を離れるようです。私も行かなければ。
短い時間ですが、楽しい会話でした。
[芽祈が差し出した包みを受け取り、手を振って扉を出て行った]
[手首を軽々と持っていかれて、残りのカロリーメイトを齧られる。]
な…言ってくれれば新しいのを出したのに…。
[どうも、こういう雰囲気には慣れずに、どうしていいかわからなくなって、手をばたつかせた。]
…まぁ、私もスパゲティとか、たまには食べてるけどね。
材料と鍋でも買い揃えて、…今度作ってあげるわよ。
[味の保障はしないけど、と、小さく付け加えた。]
[休むと言い部屋を出て行くみなみに、そうか、とキラーはたった三文字で応える]
まあ、マスターになりたかったかと言われれば、ノーだな。私はそういうようには育てられなかった。
[扉が閉まってから呟いて、それから己がマスターの姿を思い出す]
まあ、それで正解だったのかも知れんが。
……しかし、一度は殺されそうになった相手によく懐くものだ。
あるいは、自殺願望でもあるのだろうかな。あの娘。
[それならやはり、アレはなかなかいい女だ……。そう思ってしまい、自分もやはりジャックであるなと苦笑する]
……着けられてるようだな。今まで気づかなかったとは、油断もいいところだ。
[令呪が教えたのはマスターの存在。誰かまではわからなかった。敵意をそれ程感じるわけでも、ない。]
様子見か? それとも、気づかれ……てないわけはないな。
[バーサーカーの方をちらと見た。]
巻くか。マスター一人ならば、どうとでもなる。問題は、サーヴァントが共にいた場合だ。
バーサーカー。二手に分かれよう。少し危険ではあるが、私も逃げるのだけは得意だからな。
[苦笑と共にバーサーカーを見た。]
お気をつけて。
[台所を後にするダビデ王を見送った。
少年時代、と彼の英霊は言っていたが、それにしても備えた気品と慈愛に満ちた視線は、充分に、後に神に選ばれ王となるだけの器を宿している。
……そして、とてもイケメンだった。]
英霊って凄いな〜。
会っちゃった。喋っちゃった。役得ですわ〜。
かまわないが。
[バーサーカーに気配などてんで分からない。
しかし背後を振り返ることは憚られるのだろう。
視線を寄越すマスターに、麦藁の下の視線を返し、]
死ぬなよ。
お前には帰るべき故郷があり。
殺すべき友もいるわけでもない。
それは大事なものだ。大切にしろ。
[返事を待たずに走り出した。]
昨日の失敗を忘れるな。お前は敵サーヴァントを倒すことに全力を尽くせばいい。間違ってもマスターごときに構うな。――俺はそれほど弱くは無い。
だが、サーヴァントに対抗し得るのは同じサーヴァントであるお前しかいない。だからお前に任せるのだ。
役割を明確にしろ。それを元に戦闘をシミュレートしろ。結果として勝利を導け。それがお前の役目だ。
わかったな。
[ふよふよと宙を舞いながらせっせと働くキャスターに声をかけた。]
別にいい、味を知りたかっただけだからな。
[右手を茜の肩に置いたまま、なにやら焦っている茜を落ち着かせる。]
ほう、手料理か。
それは楽しみにさせてもらおう。
何、味なんぞ別段気にせんよ。
作る者の心が何よりも大事だからな。
[そうして、そのまま左手で頭を撫でる。]
お、2手に別れたぜ。あちらさんは大胆だねぇ。
ふーん、普通はマスターの方に行くんだろううが、あるいはそっちの方が罠……か?
この様子じゃ気づかれてないとはあまり思えないんだが……。
ええい、面どくせぇ、俺は興味のある方を追うとするぜ。
[そう言い、バーサーカーの後を追い始めた。]
まったく、どうにも読めないね。
[突然現れた聖杯。
そのくせ、力は本物であるときた。
教会が処分に困っているのも事実なのだろう]
だけど、残り一枠は、どう考えても怪しい。
[思考の渦に捕らわれかけていた。
それを止めたの教会から出てきたダビデの姿だった]
[バーサーカーが走り出すのを確認して、自分は逆の方向へと歩き出す。走ることはしない。]
故郷か。
殺す友もいないが、殺せない友も、いないな。
[殺した魔術師は、両手の指で足りない。最初は戸惑った。それでもやらなくてはならなかった。
生き残るためではない。
ただ、魔術師のため。]
あ、おい一文字…っ
[ 迷っている間に、先に走り出された。]
ええい、しょうがない。
[ そのまま左之助の後を追い、仮面の男が走っていった側へと足を向け駆け出した。]
(うぅ…)
[頭を撫でられるのは嫌いじゃない、けれど、あまりにも距離が近すぎて落ち着かない。
むー、と小さく唸りながら、何かここから抜け出す手段は無いものか、頭をぐるぐると働かせる。]
え、えーと、その。
あ、の、喉渇かない?お茶でも入れるわ。
[そう言って、立ち上がろうとする。]
―教会周辺―
[建物を出て、聖と合流した。先ほど聞かされた異常の事実が重くのしかかる。それは『キラー』の出現よりも、更に大きな謎だった]
……ヒジリ。どう思われますか。
聖杯であって聖杯でない――かもしれない奇蹟。
叶えるべき願いは、本当に全き形で果たされるのでしょうか。
役割を、明確に――……。
[
主の言葉を、完全に理解し得たとは言い難い。
だが、その言わんとすることは、判ったつもりだった。
マスターの相手は、主が。
サーヴァントの相手は、自らが。
――この数日で理解した主の性向を考慮に入れれば、恐らくきっと。
邪魔が入らぬように、主が相対する魔術師を打倒するまでのあいだ、サーヴァントに邪魔をさせるな――と。
そういった指示なのだろうと理解して。
幻術や行動阻害の魔術トラップを主に、結界を組み上げていった。
]
[足音は消えた。令呪の反応もほとんどなくなった。ほっとして、そのまま先へ足を進める。気づけば、駅からはだいぶ離れた場所へ着ていた。
魔力の供給は続いている。バーサーカーはまだやられていない。ならば、逃げている途中か、そのうち合流できるだろう、と考える。]
もう、暗いな。
この辺りはビジネス街か?
[就業時間も終わったのか、人通りは少なめだった。
歩き疲れたわけでもなかったが、余り離れるのもまずい、と足を止める。パイプの手すりに腰掛けて、ビル群を見つめた。]
[不意に、ジジッ……と影が揺らめく。キラーの姿を構成する影]
……ッチ。気を失っていた時間が痛いな。
苗床へ堕ちる前に、宝具を作らねばならぬと言うのに。
[傷に障らぬよう、身を起こす。キラーもそんな状態なら、動いたりしないでしょ? と言ったみなみの顔が脳裏をよぎった]
そうしたくはあるのだが……残念だが、基本の構築はすでに終えているのだよ。そして、そろそろ時間もない。
[隣を歩くダビデの問いかけに対する明確な答えは持ち合わせていなかった]
そうだなぁ、教会の言う事は鵜呑みには出来ない。
しかし君がここにいるのも事実だ、だから力を持っているアーティファクトというのは間違いないね。
[納得しているような、そうでもないような表情で語る]
――中央ブロック・病院――
[道筋を確認しないままに走っていると、開けた場所へ出た。
高く細長い建物が見えている辺り、ここから東ブロックも近いのだろう。一度立ち止まり、背後を見た。
路地を走り抜けている際に聞こえた足音。
一つか、二つ。
自信は無かったが、マスターが言ったことには信憑性があったようだ。少なくとも此方を追ってきてくれたということは、マスターは安心であることの証左であるように思えた。
マントの中から漁業用の槍を取り出す。
先端が三叉に分かれた、これも剣闘士用の槍。
尤も、また武器としては使えない、脆いもの。
並のサーヴァントであれば一撃で砕いて割れる程度の。]
[キャスターは指示を完全に理解したのかどうか。疑いながらも自身にできることをする。
牽制の罠、幻惑の罠。踏めば集中力を乱すための魔術―― 一般的な魔術師と相対して効果的な術を、場所を選んで仕込んでいく。]
いいか、俺とお前の連携次第で勝負は決まるのだ。広範囲の術が得意であれば、まずはそれを相手に印象付けろ。
それで敵主従が距離をおけば俺が敵マスターを仕留めて俺たちの勝ちであり、近寄っていればお前が敵サーヴァントごとマスターを仕留めて俺たちの勝利だ。
俺たちの前には勝利しかないのだ。
[自信を持って、キャスターに告げた。]
[みなみとの待ち合わせ、教会での問答。
気づけばかなりの時間がたっていたようで夕暮れを過ぎていた]
ダビデ、これからの方針について良いかな?
重要な情報を得た、それに君も大分回復した。
だから、今日からは積極的に打って出よう。
[ダビデの返事を待った]
―教会周辺―
[教会から離れていきつつ、聖の言葉に答える]
ええ。力は――あるのです。間違いなく。
聖杯の呼びかけに応じて、私は“世界の外側”からこちらへやって来た。少なくとも、そう思わせるだけの何かが、“交叉の聖杯”――まあひとまずそう呼びましょう――にはある。
その事だけは、確かな事実です。ヒジリの言うように。
[思い出したのは、バーサーカーの夢。映像だけの、音のない世界。
当時のことなど何も知らない。協会に何故彼の遺物があったのかもわからない。ただ、無造作に選んだ物から、彼が選ばれて出てきたことには、何かの意味があるのだろう。
立ち上がると、ふらりと歩き出す。見た目には、少女にしか見えない。制服さえ身に着ければ、学校に行っていてもおかしくないように見える。
それは、武器でもあったが、同時に弱点でもあった。
幼い身体は、筋力に欠けた。抵抗など、出来なかった。
押し込めた記憶が、暗がりで顔を出す。少し早足になると、街灯の下まで駆ける。]
―夕刻 教会周辺―
そうですね。
みなみとキラーの事は気になりますが、他にも競争相手はいるのですし。彼らだけを相手にしている訳にもいきません。
[次第に薄暗くなる周囲。この近辺には魔力の気配を感じなかった]
では、どこに向かいましょう。
――東ブロック・ビジネス街――
[人通りの少ない道を選び進んでいく。行くあてはなかった。だが、遠くへ行く気もなかった。元よりこの傷でうろつく気はない]
……魔術、か。久しぶりだな。
[呟く。その手に持つのは、ダビデの撃った鋼片]
―― 中央ブロック・病院前 ――
[ 不思議と、振り切られる事はなかった。ついてこさせるのが目的だったのだろうか。追跡者をマスターから離れさせるという事は成功しているのだから、そういう事なのかも知れない。
目標とした男は、病院の前でこちらを待つように佇んでいた。
仮面の男の手には、三叉の槍。面白ぇと、自らも槍を取り出そうとする左之助。
だが、ツカサは左之助を制すると、ゆっくり、カツカツと足音を響かせバーサーカーへと歩み寄った。]
こんばんは。追いかけるような事をしてすまない。あんたと少し話がしたいんだが、いいか。
[ 敵意はないと、両手を広げて示しつつ。]
キラーが「時間を進める」を選択しました。
そうだな、何処に向かうかはもう少し検討するとして作戦はをその前に話すよ。
まず、僕が囮になって歩き回る。
ダビデは宝具の射程距離ぎりぎりで待機しててくれるかな?
恐敵マスターとサーヴァントは一人で歩いている僕をみて喜んで襲ってくるだろう。
だから、そこを狙い打って欲しい。
ただ、僕の力ではサーヴァント相手だと一回の回避が限度だ、それだけは覚えておいて欲しい。
[つまり、外すなという事だ。
無茶な作戦に見えるがメリットは大きい、無防備な敵を宝具で打ち抜けば敵の損害は計り知れない。
自身の能力とダビデの能力を計算した結果の作戦であった]
[感じたのは、なんだったのだろうか。
振り返った。何かに気づいたわけではない。ただ、予感がした。
暗がりに、人の姿。
光りを受けて反射するそれは、金属片。
人だと、思った。]
?
[飲み込んだ音が、耳に響く。感知能力でもなんでもない、ただの直感。危険だと、告げた。
それは、人だけれど、人でない者だと。]
[
――勝利しかない、と。
最弱のサーヴァントとされるキャスターに対して、主は、そう言った。
それが本心からの言葉であることは、主の声色から読み取れた。
――で、あれば。それだけの信頼を寄せられているのならば。
次こそは、その信頼に応えてみせよう。
それが、それこそが。従者として現世に喚ばれた、この身の務めだった。
]
――……マスター。結界については、概ね、設置を終えました。
足場となる場所が限られていたので、相手が宙を舞うのでもない限り、相応の効果が望めると思います。
[
自らの仕事を報告して。
陽の落ちた世界のなかで、主の次なる指示をと待った。、
]
[両手を広がれらると的を想起してしまい、発作的に槍を投げつけたくなった。しかしぐっと堪え、戦意が無いらしい足音をじっと見つめる。
――と、その顔には見覚えがあった。]
ツカサか。
[持っていた槍を下ろし、後退することはせずじっと見据える。]
生憎と、君の行為でマスターと逸れてしまった。
…………。いや、此方の勘違い故か。
それで話とは、何だ。
[気づいたのは、あちらが先。しかしそれとほぼ同時に、キラーもその存在に気づいた。サーヴァントほどではない、だが明確に魔力を持つ者。まだ十代半ば程度の少女に見えたが……]
マスター……か?
[呟き、そして……。
キラーの姿が、壊れかけた古いテレビの画面のように、ぶれた]
[ダビデは多少不安げでそして不満げな表情で作戦を了承した。
恐らく、マスターが囮という行為が納得いかなかったのだろう。
しばらく歩いて東ブロックに入った時、自身が放った弾丸の反応がある事を報告してきた。
方角をダビデから聞き、その方向へと歩き出した]
それじゃ、頼むよ?
[真剣な顔でダビデは頷きその姿を闇へと隠した]
―夕刻 中央ブロック―
[聖の提案した作戦を検討し、了承する。自信ありげな彼の表情は、何か必殺の宝具に対しても秘策があるのだろうと思わせた]
……分かりました。ヒジリが前に出て、私はその後方。
周囲の環境次第では上方や横手になるかもしれませんが、凡そ、そうですね。50m程度になると思います。
[実体弾として射撃するだけなら、50が500であろうと命中弾を放つ事は可能だ。だが、宝具として有効な威力を留めるにはその距離が限界。弾体に付与された祝福が発生し、消失するまでの時間が、すなわち彼の宝具の有効射程であった]
[ビル群に張られた結界は、満足の行く出来だった。周囲の明るさを見て考える。]
ご苦労だったな。今日は引き上げる。
[傾きかけた日差しに立ち向かうように、中空を見て指示を*伝える*]
いや、後をつけるなどという行動を取ったのは此方だ。すまない。
…なあ、あんた。あんたは何を以てこの戦いに現れたんだ?
いや、何を願ってこの戦争に臨んだのか、と聞くべきかな。
[ 少し、距離を空けた位置にて立ち止まる。]
なんかさ、今朝のあんた。薄く脆い氷の橋を望んで渡ろうとしているような、そんな雰囲気に見えたんだ。
[ 英霊同士が相対したというのに、会話をしただけで去っていく。その姿に違和感があった。
うまく言葉にできないままに、ツカサは自身の感じた疑問を仮面の男へと問うた。]
[耳に入った男の声。確かに、聞こえた。]
サーヴァント……?
!?
[気配はない。サーヴァントの気配は、魔力だけでは追えず。サーヴァントであるなら、マスターもどこかにいるはずだったが、その気配は感じなかった。
ぶれる姿。それは、廃工場で見たノイズと同じようにみえた。]
そういうおまえは……なんだ?
[英霊ならば、それに見合った格がある。けれども、目の前の男はそう見えなかった。
一歩、足を引く。]
[
この夜は、どうやら帰還するらしい。
幾らか回復したとはいえ、やはり、昨日のダメージは抜けきってはいないのだろうか。
安堵と僅かな不安を綯い交ぜにして、屋敷へと帰還するために、空飛ぶ絨毯を展開する。
]
……では、飛びます。
落ちないように注意して下さいね――……。
[主を乗せた絨毯を駆って、薄暗い夕暮れのなかを、*屋敷へと向かった*]
……うまくは、いかんな。
[鋼片を持つ左手を眺める。頭が湧き出していく。身体の自由がきかなくなるのも、そう時間はかからなかった]
傷つき、疲弊した我が魂。敵方はサーヴァントではなくマスター。そして女の姿。
まったく……腰抜け共め。相手が格下だと、そうまで強気になるか。
[崩れていく感覚。堕ちていく感覚。それを感じながら、相手の問いに答える]
我が名はジャック・ザ・リッパー。キラーのクラスを名乗る者。
[歩みを止めるツカサの言葉を聴き終え、天を仰ぐ。
砂塵に染まって汚されてなどいない、綺麗な空だ。
―――綺麗な、空だと、思う。]
…………。
[顔を戻す。
見るのはツカサではなく、従えたサーヴァント。
――彼は生前に納得がいかない、と言った。
少しの間だけ、過去を想起し、]
薄く脆い氷の橋。
その喩えが何を表すか私には分かりかねる。
[ツカサへと視線を戻し、槍をマントの中へとしまった。
代わりに取り出したのは、折れた剣。
奴隷として振るい続けたその剣を、未だ持ち歩いている。
そして、川から脱出する際に救ったのも、この剣だった。]
――3日目・川――
[そこに流れ着いたのは奇跡に等しかった。
徹底的に刻まれた体、水の流れにすらもがれてしまいそうな右腕、留まることの無い血。自己修復の手段など持ち得ない彼にとって、自力で岸へたどり着くことは不可能だった。
契機は片手に握り続けた剣。
織田との戦闘で砕かれた奴隷の象徴。
僅かでも抵抗を試みる腕が振り回され、折れた切っ先は川底の土へと突き刺さる。瞬間、感覚も定かではない右腕が、残る生を振り絞って近くの岩を掴んだ。
力を篭めれば余計に溢れ出る血。
もう骨も見えている。
織田の最後の一撃も、もがれかけた右腕も致命傷と呼ぶに相応しい。戦闘続行のスキルを有していても、バーサーカーの場合は生還能力などでは決して無いのだ。
構う暇など無いし、裂けて千切れて当然だ。
腕ごとで半ば抱き抱える形で岩へと体を寄せる。
比較的正常な左手は剣で地を刺す。
ぼろぼろの右腕が生命線を――岩を抱えている。
どうにかして互いの役割を逆にしなければ助からない。
結論は一つだった。]
[右腕を岩から離す。
同時、地を噛んでいた役立たずの剣を抜く。
流される――前に、右腕へと剣を振り下ろした。
右腕を、川底へと縫い付けるために。
新たな血があふれ出す。
――もう今更だ。
切断されかけた右半身のものなのか、それとも渾身を食らった袈裟への斬撃跡のものなのか、たった今貫通した腕のものなのか、混ざりに混ざってさっぱり分からない。
いずれにしても身は固定された。
自由になった左手で、マントの中を探る。
取り出したのは、三叉の長槍。
元々は漁師が扱う為に考案された、しかし剣闘士に於いてはRetiariiが殺し合いに――魚獲りに見立てた「人間狩りの見世物」に使用した、武具。
仮面は探す。岸の姿を。
手を伸ばすには少し遠い。だが、漁師用の槍ならば届く。]
[岸へとトライデントを投げつける。
柄には縄が結ばれている。
それもまた、Laquerii(縄闘士)と呼ばれる剣闘士が殺し合いに、相手の動きを封じる為使用した武具。
幾千もの友を殺した。殺し合った。
故郷へ帰りたいと嘆いた者達がいた。
バーサーカーの命を救ったのは皮肉にも、剣闘士して培った戦闘技術、如何に友を殺すかという忌まわしい術であった。]
[ダビデが示した方向の先にいたのは対峙する二人の人間の姿。
切り裂きジャックと瀬良悠乎の姿がそこにあった]
これはチャンスだ。
だけど、見極めが重要となるな。
[念話を使ってダビデにも自身の意図を伝える]
ジャック・ザ・リッパー……切り裂きジャックだと?
しかもキラーなどというクラスはない。
英霊など程遠い。
呼び出したのは、どこの魔術師だ……?
[それでも、サーヴァントであることに変わりはない。一介の魔術師に、勝利することは出来ない。何より、攻撃する手立てを持たないのだから。]
くっ……。
[バーサーカーがどこにいるのかを考える。反対の方向へ向かったはずだった。令呪で呼ぶか、それとも。
――逃げられるはずだ、と囁いたのは、自分ではない何か。自分でもある何か。
魔術を、そう思って紡ぐ詠唱。]
…………げら…………。
…………げら…………。
…………げら、げら…………。
[キラーの全身に醜く歪む顔が湧き出す。下卑た笑い声がした。少しずつ大きくなっていく。無数の視線が目の前の華奢な少女を捉える]
もう少しだったのだがな……。
[名残惜しげに鋼片を眺め、しかしふっと笑った。それもまた、楽しいとでも言うように]
……さよならだ、みなみ。
[小さく呟き、その男は意識を手放した]
[その姿は影のように揺らぎ、そして醜悪でおぞましい。
全身の顔が、その口を限界まで裂けさせニィィと笑む。
そこに先ほどまでの男性のキラーはおらず、
ただ、化け物があった。
久しぶりの獲物を、敵ですらない獲物を前に、それは哄笑する]
――現在・中央ブロック・病院前――
[折れた剣。濁った輝き。
友の屍に耐えかねた剣は、こうして今も手の中にある。
時を越えてここに、その役割を終えたのだ。]
私の願いは。
…………。いや、私達の願いは。
[いつかビルの上から見た町の眠りを思い出す。
とても静かで、平和で、やはり空は綺麗だった。
いつか見た、マスターの安らかな寝顔を思い出す。
とても静かで、凡庸で、風はとても心地良かった。
浮かび続けた感情は常に一つ。]
…………。
[けれど、それ以上を口にすることは、無い。
代わりに。]
そうだな。
私の願いは、友に私を殺して貰いたい。
といったところか。
[聖杯に託すものではない答を口にした。]
…………。
[けれど、それ以上を口にすることは、無い。
代わりに。]
そうだな。
私の願いは、友に私を、
[聖杯に託すものではない答を口にしようとして、]
殺し、て――――。
[流れ込んでくる魔力が、ちくりと棘に変わった。
仮面を上げる。
見つめる先は、長い建物が乱立する東ブロック。]
[目の前のサーヴァントの顔が、姿が、様子が変わっていく。響く笑い声に、ぞっとした。]
な……?
[その異様な様子に、詠唱を止めた。
絡みつくような視線が、動こうとする意志を妨げた。
笑う顔。
だめだと、何かが言った。
小さく呟かれた声は、耳に入らない。咄嗟に、身を庇うように動いた。]
[道を迂回していては間に合うだろうか。
危機を報せる棘が、一つ、また一つと多くなる。
マスターの焦りも代弁しているのだろうか。
それとも、――――自分が焦っているのか。
決定した選択は、病院の敷地を横断して東ブロックへ――。]
すまない。ツカサ。
マスターがまずいようだ。
[ツカサに背を向け、敷地を横断する為、駆け出す。]
[腕――先端に刃を備える鎌のような長い腕が瞬時に生えた。一本、二本、三本……計、五本。
数は一つ少ないが、それが制御をより安定させているのか……以前よりも禍々しく、研ぎ澄まされた刃。
異様な姿を見て、少女が身を強張らせる。それで、さらに哄笑が生まれた。心底からの、喜び。
やることは一つだった。
少女の元へとキラーは一足にて間合いを詰め、五本の腕を振り下ろす]
[ 薄く笑う仮面の下に、どのような表情があるのだろうか。ただ黙って聞いていたが、肝心な処がツカサの耳に届かなかった。]
――え、なに?
[ 聞き返そうとした刹那、仮面の男に緊張が走る。]
あ、おい、あんた?
[ 駆け出した英霊を、思わずツカサは追いかけていた。]
[その顔は、先ほどまでのキラーとは違っていた。
ただの、殺人者の顔。
逃げようと踵を返す。
動かないのは、足ではなく。
動かずにいる、足。
逃げようとしているのが、理性かもしれないと、どこかで思った。
令呪で呼べば、詠唱をやめなければ、最初に気づいていれば。逃げることに、枷を付けたのは――]
まだだ。
[詰められた間合い。振り下ろされる五本の腕。
地面に手をついて、アスファルトを陥没させ、その衝撃と共に、地面を蹴る。]
アーチャーが「時間を進める」を選択しました。
[肩を、一本の腕が抉った。痛みが、熱さが、身体に走る。
もう一本は足を裂いた。鮮血が、服を、地面を濡らして行く。]
バー……サーカー!
[呼びながら、駆けようと、裂かれた足を地に付けた。同時に、声も上げていられないほどの、熱。]
[病院の敷地を横断する。
今ほど風まで邪魔に思うことはない。
このまま横断して塀を越え、更に道を駆けて――。
考えれば考えるほどに到達時間が遠く思える。
くだらないことを考えている間にも、棘は多くなる。
だが、もっと不可解なのは、]
まだ何か用があるのか! ツカサ!
[背後に、きっちり同じ気配がついてきていることだった。]
[目の前で振り下ろされるいつぞやの五本の腕。
その腕が少女を捉えようとした瞬間だった。
一瞬少女の姿が消え、命中するはずだった腕のいくつかは空を切る]
完全にはかわしきれないか……。
[自分ならどうだろうか?
シュミレーションの結論は回避可能だった]
しかし、瀬良悠乎。
なぜサーヴァント呼ばない?
[マスターではサーヴァントに対抗する術が啼いを理解していないとは思えない。
少女とサーヴァントの事情を知らない身からすると不思議で仕方がなかった]
[まだ。まだ死ぬわけには行かない。
そう思うのは、何故なのか。浮かぶ疑問。
痛みに耐えて、どこへ行くというのか。
疑問は、本音だったのかもしれない。]
キラー……。私を、殺せばいい。
その五本の腕で。もっとあるのかもしれないな。
殺したいのだろう?
本能のままに、切り裂けばいい。
私はそれを望んでいるのだから。
[静かだった。認めてしまえば、それはあまりに空虚で。]
[目の前で振り下ろされるいつぞやの五本の腕。
その腕が少女を捉えようとした瞬間だった。
一瞬少女の姿が消え、命中するはずだった腕のいくつかは空を切る]
完全にはかわしきれないか……。
[自分ならどうだろうか?
シュミレーションの結論は回避可能だった]
しかし、瀬良悠乎。
なぜサーヴァントを呼ばない?
[マスターではサーヴァントに対抗する術が啼いを理解していないとは思えない。
少女とサーヴァントの事情を知らない身からすると不思議で仕方がなかった]
[爆発的な、とでも形容すればいいだろうか。華奢なその身体からは考えられない動きで、少女は振り下ろされたキラーの腕をかいくぐった。
サーヴァントで無くても、魔術師。キラーはさらに笑んだ。あの少年が放ったような、あの槍騎士が内包していたような、自分を消滅させかねない力は感じない]
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ―――――!
[笑った。イキのイイ獲物。少女の行動は、嗜虐心を高めるだけの効果しか得られなかった。
五本の腕が鞭のように、蛇のようにしなり蠢く。それぞれが別の生き物のように、少女めがけて殺到する]
[ マスターがまずいと、彼は言った。即ち、ハルカの命が危ないという事だ。
ツカサたちを撒くためにとバーサーカーと別行動をとったハルカの、命が。
そんな事実など、実際は知った事ではないはずだった。ほうっておけば、この聖杯戦争でのライバルが一組減るかも知れない状況である。だが、何故かツカサは走っている。]
ああ、なんだろうね。なんの用だろうね。
[ あの状況下でほうっておくなど、寝覚めが悪くてできるものか。自身とは咄嗟の感情で動いてしまうものだ。理由とか、用とか、そういうもんじゃない。
追いかけるので精一杯だ。喋る余裕なんてほとんどない。もしもの時の為にと仕込んであった、全身に描きこんだ絵の具に魔力を通す。幾許かの身体能力の強化。だがそれでも、バーサーカーに置いていかれまいとするので精一杯だ。
すぐ横には、呆れた顔をしながらもついてくる左之助。まあ、しょうがねえよな。そんな一言で、少しだけ余裕ができたような気がした。]
なにかあったら、助勢させてもらう。勝手なおせっかいだよ!
[ ひとまず、前を行く男に叫んでおいた。]
[振り返った身体に振る刃。それは、幼い身体を、刻むように。
それでも、令呪を使うつもりはなかった。
自分が死んでしまえば、バーサーカーは消滅するのだろう。
最後まで、分かり合うことが出来なかった、とそれだけを悔やむ。
力の入らない両足が、崩れる。地面に倒れ堕ちる頃、その気配を感じた。]
着たのか。もう、遅い。
[もうすぐ、全てが終わるのだろう。視界は、赤く染まっていた。手も、足も、動かすための筋が切れている。]
[目の前でにキラーの腕に蹂躙され血まみれになった少女が倒れていた。
体は助けろと言っていう、心は見捨てろと言っている。
どちらも正しい意見である。
前者は人間として、後者は聖杯戦争のマスターとして]
くそ、やるしかないか。
Desarrollo de gravedad
[結局の所、自分は魔術師ではないのだろう。
完全な切捨てができないのだから。
体の言葉に従い魔力の展開を始める]
Un principio de condensación
[その身はキラーを倒す為ではなく悠乎を助ける為に魔力を纏い始めた。
それが手遅れだと分かっていても]
――東ブロック――
[赤い光景。
辿り着いたのは、三人。
仮面と、妻を失った男と、槍と。
赤くなった体をマスターとする仮面は、黒い形を見据える。
赤くなった体に目を向けず、見据える。]
[蛇の腕が一本、少女の身体を捕らえた。引っかけるように突き刺し、動きを止める。
後は、簡単だった。白い腕を、美しい足を、柔らかな頬を、細い胴を。突き刺し、切り刻み、中身を晒していく]
……………………。
[哄笑は、不気味なにやつきに変わっていた。長く楽しむためだろう。殺してしまわないよう、場所だけは違わないように気をつけながら、飢えた肉食獣の群れが獲物を貪るように、何度も何度も傷をつけていく]
[――女だった。
最後の決戦に於いて、スパルタクスは見た。
ローマの兵士に刻まれ、赤く染まる女奴隷の姿を。
まだ生きている。
生きていると思ったから、助けに入った。
助けに入って、
自分が戦っていた相手を放置したからまずかったのだろう。
庇おうとするちっぽけな誇りの前に、兵士は殺到し、
背後から槍を刺し、前から剣で貫かれ、首を矢で射られ、
護ろうとした名も知らない女は、足元で息絶えた。
それでも剣を振った。振るい続けた。
血飛沫が飛んだ。肉が裂かれた。骨が割れる音もした。
死体となった女奴隷は、蹴られて砂を血に塗られていた。
それでも、意識が暗くなるまで剣を振るい続けた。]
[駆ける。
少女の体を蹂躙する形無き者へと駆ける。
後の事も先の事も何も考えていない。
ただいつものように笑った仮面が、
その背中とも取れない背中へ、拳を叩き付けた。]
[ダビデから帰ってきた返事はNOだった。
サーヴァントの気配を感じた故の言葉との事]
しょうがない、ならば僕が打つ!!
Abriendo, un agujero negro
[圧縮された重力は強烈な重力場を作りそれが臨界点に達した時、ブラックホールとなり、キラーへと向かった]
[休息に冷えていく身体。まだ言葉は発せるだろうか。
痛みも既に感じない。
少女だった姿が、形を変える。
引き裂かれた身体がそれでも形を変えていく。
幼い少女の顔は、妙齢の女性のものへ。細いだけの手足には、曲線が描かれて。
心音はか細い。もう、音も聞こえなかった。魔力も、回路ごと引き裂かれていた。]
……バーサーカー。
[姿が見えた。視界は狭く、他に誰がいるのかもわからない。
ただ、仮面がそこにあった。]
[引き出された内蔵が、外の光を受けてテラテラと滑った色を見せる。夥しい血が地面を染め上げ、大きな水たまりを作る。
夢中になっていたからだろう。その気配に気づいたのは、遅かった。
ゆらり、と。歪んだ笑みを崩さぬままそちらを振り向く。
そこには自分に向かい仮面と、優男と……いつぞや会った、槍の男。
自分に向かい、攻撃してくるサーヴァント。そしてそれを見る他のマスターと、おそらくはそのサーヴァント。だがそれを見ても、キラーは笑んでいた]
…………ケラ。
[愚直な突進。突き出される拳。その拳が触れる直前、キラーの背中が空洞状に変化した。攻撃は当たることなく、一瞬前まで背中のあった場所を通り過ぎる]
[自らの奥の手だ。
魔力の半分近くを持っていく大技だった。
消え去っていく魔力の影響か一瞬立ちくらみを起こす]
どうなった……?
[キラーに対しての言葉ではない。
死が確定しているにもかかわらず蹂躙される少女が不憫だった。
魔術師とはいえ、若い少女が無残にも殺される魔術の世界がどうしようもなく嫌いだった]
[仮面に気を取られていた。どこかから飛来した狙撃。重力場を操作したブラックホール]
……ッギ?
[それが命中するまで、キラーはまったく気づくことはなかった。
メギョッ、と。腐肉を潰すような、異様な音が響く]
[下から見上げる仮面は、不思議といつもと違って見えた。
笑う仮面。見上げたそれは、泣いている様だった。]
バーサーカー……珍しい、な。
泣 いて、い るの か。
[――止まる。停止する。全ての活動を、終える。
もう、そこで何が起きているのかも、わからない。]
[何かよく分からないものが、正体不明へと命中する。
拳は避けられたのか、最初から何も無かったのか、ともかく手応えが無かったということは分かった。なら――。
拳を引き戻し、半歩距離を取る。]
そこを退け。
[マントの中から折れた剣を取り出し、正体不明めがけて擲った。]
[小型の重力場。それはあの時に受けた宝具ほどの威力は持ち得ていない。だが、キラーは魔力への耐性を持ち得てもいない。
肉が、引きずり込まれていく。引き剥がされていく。叫び声を上げて、五本の腕を地面に突き刺した。
だが、それは動きが止まることを意味した]
[死に逝く時間、夢を見た。
遠い遠い夢だった。
大きな掌は、優しい顔の持ち主だった。笑っているのに、泣いているように見えた。
その手に縋って立ち上がると、元気良く駆け出す。]
ぎぃ……ィィ……。
[重力場が確実に内包する魂を潰しながら、動きを阻害する。仮面が放った折れた剣が胸に突き刺さる。痛み。恐怖。そして……感じたのは、怒り。
目の前で、自分の獲物の少女が死に絶えようとしていた]
ギィィィィッ!
[それを、決定的に殺すのは自分で無ければならなかった。その心臓に刃を立て、殺すのは最後の愉しみであった。
六本目の腕が生える。その先端には、ダビデの撃った鋼片で作りし……凶刃]
[さらさらと、水が流れる音。もう夢でもないのだろう。
流れていくのは、身体。
引き裂かれた身体は、溜め込んだ時間の余波で崩れ落ちていく。
祖父の遺体はなかった。死んですぐに朽ち果てるのだと、父が言っていた。
自分の体もまた、朽ちて吹く風に流れるように、姿を失っていく。
骨すら残らずに。
最後まで、令呪は輝きを放っていた。3つ残されたそれは、最後に消えていった。
着ていた衣服だけが、赤く染まり、散り散りに引き裂かれて、そこに*残っていた*]
再起動を促されるので発言前に独り言に残しておこう
[放たれた何かの効果だったのだろう。
腐った音が、崩壊を奏でながら目前で鈍くなる。
生える腕。生まれたのは刃。
分かっている。
少女との繋がりは途絶えている。
既に彼女は――――。]
[ 遅れてやってきた。目の前に広がるは最悪の状況。]
く…っ 一文字!
[ 異形の腕が握るは歪な輝き。目掛けて左之助は槍を繰り出した。]
[走り来る気配。
命じる声は聞きなれたもの。
振り返らずにバーサーカーは正体不明と死骸の間へ走る。
堕ちる断頭刃。
それを――――仮面で、受け止めた。]
[少女を絶命させる、あるいは亡骸を蹂躙する一撃を止めようと、繰り出される神速の槍……。
だが、それは一度見ていた。使い手の性格を映すかのような、愚直なまでに真っ直ぐな一閃。
執念か。キラーの腕が不自然に蠢く。あり得ない軌道を描き、その槍を避けた。
禍々しい動きで、刃はそのまま少女へと迫る。
ギィン、と。
その刃は、硬質な音と共に弾かれた]
[――少女は仮面を指して、泣いていると言った。
友を一人殺した。
友を二人殺した。
友を三人殺した。
誰かを殺した。
殺した。
殺した。殺した。
殺した。殺した。殺した。殺した―――。
一人を裂くごとに、自分が死んでいく気がした。
キャスターの魔術を受けても、消えなかった笑顔。
セイバーの剣戟を受けても、消えなかった牢獄。
だから。
仮面に入ったヒビは、キラーの一撃によるものではなく。]
[間に入ったのは、仮面。それは、もしかしたらそれこそがその男の本質なのかも知れない。
一撃は避けたが、さらに次の槍を構える男。
何処からかの魔術。
そして、目の前の仮面の男。
キラーは名残惜しげに血に沈む少女を見、すでに絶命していることを知り……大きく後ろへと跳ぶ]
[帰りたい、と誰かが言った。
殺して欲しい、と誰かが言った。
名前は何だっただろう、と誰かが言った。
必ず故郷へ帰してやる、と青年は約束した。
必ず自由を奪い取ろう、と青年は誓った。
生涯に於いてそのどちらも、果たされることはなく。
だから、無惨と決定した過去があったとしても、
この時代の人間を見て身を占めるものは――。
――空は綺麗だった。少女は安らかに眠っていた。
羨望であり、憎悪であり、復讐でもあり、殺意でもあった。
陰の怨嗟も知らぬ顔で築かれた平和に、苛ついた。
――殺してやりたい、と何度も思った。]
[血塗れた女を振り返ることなく、
決して叶えられることのない誓いを抱いたまま、
平等を欲した青年は風に紛れて消える。
去って行く敵を目に留めることはない。
ただ、惜しかったことがあるとすれば、
彼の刃が、この身を貫かなかったことか。]
[ただ見つめる事しかできなかった。
新たに現れた二騎のサーヴァントとキラーの攻防。
自分に出来たのは奥の手でキラーに多少のダメージこそ与えはしたがそれだけだった。
出て行って止める力などなく、気づけば場は静寂を取り戻していた]
せめて、最後ぐらいは……。
[悠乎の亡骸に魔術を施し見かけだけは全く傷のない状態へと戻した]
僕も撤退しないとね。
[ダビデに念話で撤退を伝えると闇夜の中へと姿を紛れこました。
最後の瞬間、少女の中に安らぎがあった事を*祈りながら*]
[ 男が、少女と異形の間に割って入る。異形が大きく跳び下がる。ツカサは、全身を朱く染めた少女の元へと駆け寄った。]
く…。
[ 無残な姿に唇を噛み締める。すでに少女ではないその人影を抱きかかえ、何かを言おうとするが、それはまるで言葉にならず。
振り返れば、男の姿が消失するところだった。]
………ッ
[ うつむき、歯軋りをする。足音に顔をあげれば、逃げられちまったと左之助が口を開いた。]
いや、ありがとう。…すまない。
[ それだけをようやく口にした時、何処からか飛来した魔力に身を強張らせた。が、それはハルカの亡骸より傷を消し去り、消滅する。左之助が辺りを見渡すが、今はいいとそれを止めた。
せめて教会へと届けよう。そう思った時、ハルカの身体がゆっくりとツカサの腕の中で消えはじめた。はっとして抱きかかえようとするも、ひとすじの光を残してハルカは*消失したのであった――*]
[さらさらと、水が流れる音。もう夢でもないのだろう。
流れていくのは、身体。
引き裂かれた身体。
二人の魔術師によって修復された身体は、その身体に溜め込んだ時間の余波で崩れ落ちていく。
まだまだ人の身には余る術だと。
祖父の遺体はなかった。死んですぐに朽ち果てるのだと、父が言っていた。
自分の体もまた、朽ちて吹く風に流れるように、姿を失っていく。
骨すら残らずに。
最後まで、令呪は輝きを放っていた。3つ残されたそれは、最後に消えていった。
仮面が消え、害した影が消え、少女が消えて。――着ていた衣服だけが、赤く染まり、散り散りに引き裂かれて、そこに*残っていた*]
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