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ジャック・ザ・リッパー……切り裂きジャックだと?
しかもキラーなどというクラスはない。
英霊など程遠い。
呼び出したのは、どこの魔術師だ……?
[それでも、サーヴァントであることに変わりはない。一介の魔術師に、勝利することは出来ない。何より、攻撃する手立てを持たないのだから。]
くっ……。
[バーサーカーがどこにいるのかを考える。反対の方向へ向かったはずだった。令呪で呼ぶか、それとも。
――逃げられるはずだ、と囁いたのは、自分ではない何か。自分でもある何か。
魔術を、そう思って紡ぐ詠唱。]
…………げら…………。
…………げら…………。
…………げら、げら…………。
[キラーの全身に醜く歪む顔が湧き出す。下卑た笑い声がした。少しずつ大きくなっていく。無数の視線が目の前の華奢な少女を捉える]
もう少しだったのだがな……。
[名残惜しげに鋼片を眺め、しかしふっと笑った。それもまた、楽しいとでも言うように]
……さよならだ、みなみ。
[小さく呟き、その男は意識を手放した]
[その姿は影のように揺らぎ、そして醜悪でおぞましい。
全身の顔が、その口を限界まで裂けさせニィィと笑む。
そこに先ほどまでの男性のキラーはおらず、
ただ、化け物があった。
久しぶりの獲物を、敵ですらない獲物を前に、それは哄笑する]
――現在・中央ブロック・病院前――
[折れた剣。濁った輝き。
友の屍に耐えかねた剣は、こうして今も手の中にある。
時を越えてここに、その役割を終えたのだ。]
私の願いは。
…………。いや、私達の願いは。
[いつかビルの上から見た町の眠りを思い出す。
とても静かで、平和で、やはり空は綺麗だった。
いつか見た、マスターの安らかな寝顔を思い出す。
とても静かで、凡庸で、風はとても心地良かった。
浮かび続けた感情は常に一つ。]
…………。
[けれど、それ以上を口にすることは、無い。
代わりに。]
そうだな。
私の願いは、友に私を殺して貰いたい。
といったところか。
[聖杯に託すものではない答を口にした。]
…………。
[けれど、それ以上を口にすることは、無い。
代わりに。]
そうだな。
私の願いは、友に私を、
[聖杯に託すものではない答を口にしようとして、]
殺し、て――――。
[流れ込んでくる魔力が、ちくりと棘に変わった。
仮面を上げる。
見つめる先は、長い建物が乱立する東ブロック。]
[目の前のサーヴァントの顔が、姿が、様子が変わっていく。響く笑い声に、ぞっとした。]
な……?
[その異様な様子に、詠唱を止めた。
絡みつくような視線が、動こうとする意志を妨げた。
笑う顔。
だめだと、何かが言った。
小さく呟かれた声は、耳に入らない。咄嗟に、身を庇うように動いた。]
[道を迂回していては間に合うだろうか。
危機を報せる棘が、一つ、また一つと多くなる。
マスターの焦りも代弁しているのだろうか。
それとも、――――自分が焦っているのか。
決定した選択は、病院の敷地を横断して東ブロックへ――。]
すまない。ツカサ。
マスターがまずいようだ。
[ツカサに背を向け、敷地を横断する為、駆け出す。]
[腕――先端に刃を備える鎌のような長い腕が瞬時に生えた。一本、二本、三本……計、五本。
数は一つ少ないが、それが制御をより安定させているのか……以前よりも禍々しく、研ぎ澄まされた刃。
異様な姿を見て、少女が身を強張らせる。それで、さらに哄笑が生まれた。心底からの、喜び。
やることは一つだった。
少女の元へとキラーは一足にて間合いを詰め、五本の腕を振り下ろす]
[ 薄く笑う仮面の下に、どのような表情があるのだろうか。ただ黙って聞いていたが、肝心な処がツカサの耳に届かなかった。]
――え、なに?
[ 聞き返そうとした刹那、仮面の男に緊張が走る。]
あ、おい、あんた?
[ 駆け出した英霊を、思わずツカサは追いかけていた。]
[その顔は、先ほどまでのキラーとは違っていた。
ただの、殺人者の顔。
逃げようと踵を返す。
動かないのは、足ではなく。
動かずにいる、足。
逃げようとしているのが、理性かもしれないと、どこかで思った。
令呪で呼べば、詠唱をやめなければ、最初に気づいていれば。逃げることに、枷を付けたのは――]
まだだ。
[詰められた間合い。振り下ろされる五本の腕。
地面に手をついて、アスファルトを陥没させ、その衝撃と共に、地面を蹴る。]
アーチャーが「時間を進める」を選択しました。
[肩を、一本の腕が抉った。痛みが、熱さが、身体に走る。
もう一本は足を裂いた。鮮血が、服を、地面を濡らして行く。]
バー……サーカー!
[呼びながら、駆けようと、裂かれた足を地に付けた。同時に、声も上げていられないほどの、熱。]
[病院の敷地を横断する。
今ほど風まで邪魔に思うことはない。
このまま横断して塀を越え、更に道を駆けて――。
考えれば考えるほどに到達時間が遠く思える。
くだらないことを考えている間にも、棘は多くなる。
だが、もっと不可解なのは、]
まだ何か用があるのか! ツカサ!
[背後に、きっちり同じ気配がついてきていることだった。]
[目の前で振り下ろされるいつぞやの五本の腕。
その腕が少女を捉えようとした瞬間だった。
一瞬少女の姿が消え、命中するはずだった腕のいくつかは空を切る]
完全にはかわしきれないか……。
[自分ならどうだろうか?
シュミレーションの結論は回避可能だった]
しかし、瀬良悠乎。
なぜサーヴァント呼ばない?
[マスターではサーヴァントに対抗する術が啼いを理解していないとは思えない。
少女とサーヴァントの事情を知らない身からすると不思議で仕方がなかった]
[まだ。まだ死ぬわけには行かない。
そう思うのは、何故なのか。浮かぶ疑問。
痛みに耐えて、どこへ行くというのか。
疑問は、本音だったのかもしれない。]
キラー……。私を、殺せばいい。
その五本の腕で。もっとあるのかもしれないな。
殺したいのだろう?
本能のままに、切り裂けばいい。
私はそれを望んでいるのだから。
[静かだった。認めてしまえば、それはあまりに空虚で。]
[目の前で振り下ろされるいつぞやの五本の腕。
その腕が少女を捉えようとした瞬間だった。
一瞬少女の姿が消え、命中するはずだった腕のいくつかは空を切る]
完全にはかわしきれないか……。
[自分ならどうだろうか?
シュミレーションの結論は回避可能だった]
しかし、瀬良悠乎。
なぜサーヴァントを呼ばない?
[マスターではサーヴァントに対抗する術が啼いを理解していないとは思えない。
少女とサーヴァントの事情を知らない身からすると不思議で仕方がなかった]
[爆発的な、とでも形容すればいいだろうか。華奢なその身体からは考えられない動きで、少女は振り下ろされたキラーの腕をかいくぐった。
サーヴァントで無くても、魔術師。キラーはさらに笑んだ。あの少年が放ったような、あの槍騎士が内包していたような、自分を消滅させかねない力は感じない]
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ―――――!
[笑った。イキのイイ獲物。少女の行動は、嗜虐心を高めるだけの効果しか得られなかった。
五本の腕が鞭のように、蛇のようにしなり蠢く。それぞれが別の生き物のように、少女めがけて殺到する]
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