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[みなみの言葉に対し、キラーは振り返る事も、独特の声を発する事も無かったが、それでも、自然に浮かんだ微笑は消えなかった]
あ、ちょ、ちょっと待って!
わたし、眠くて死んじゃいそうなんだからー!
[考えるべき事は山ほどあれど、とりあえず頭を白紙に戻す。ふっと力を抜けば、辺りに張っていた結界が収束した]
[――……七割方、結界が組み上がった。再び、息を吐いたとき。]
――……これは?
[
こちらに触れた魔力の糸、そして、サーヴァントの気配。
川に流れる魔力と、作成途中の結界。
それに、自分の唱えた魔術に紛れて、至近に迫られるまで探知出来なかったようだった。
]
……マスター!
魔術師とサーヴァントが……至近にいます。
[静粛の中でバイブレーションの音は響くもので、タイミングの悪さにぎゅっと目を瞑る。振り切ろうとしても振り切ろうとしても、出会い、そして拾ってしまった物は、そう簡単に落ちはしないと言う事なのだろう。それでも今は、目を反らしていたかった]
あ、マネージャーから電話だ。
そういえば後で電話するって言ってたんだったー。
[聞かれてもいない事をキラーの背中に説明をしながら、声の震えが伝わらない事をただひたすらに祈った]
[キャスターの報告と時を同じくして、左手甲の令呪が反応する。]
どうやらそのようだ。結界は……、まだ使えんか。
已むを得んな。警戒は怠らず、相手の出方を見る。
[転がった小石の行方を知る間も無く、背に新たな感覚。
目を離すべきではない。
マスターは何処かに気配があると言った。
ならば川から――川原から目を離してはいけないのに。]
…………。
[小さなマスターは、そこにいた。
背に隠れるようにして、様子を窺っている。
――――その姿に。
何を思い出したのか、思い出さないよう、つよく柄を握った。]
[少女の視線を追う。
遠く、霞むほごでもない場所に、二つの形。]
そこにいろ。
[マスターを制し、バーサーカーは川に沿って歩いて行く。
剣はまだ出さない。スキルも、まだ解除していない。
足に蹴られて転がる小石に視線を取られている余裕などない。
策も無く、未知の誰かへと近付いて行く。]
――――ク。
[笑いのような、溜息のような、音が、仮面の下で漏れた。]
[キャスターの報告と時を同じくして、左手甲の令呪が反応する。]
どうやらそのようだ。結界は……、まだ使えんか。
已むを得んな。警戒は怠らず、作業を続行しろ。
(ダビデ、聞こえるかい?)
[携帯が反応しないので念話で語りかける。
やはり余裕が無いのかしばらく応答がなかった]
(ダビデ? 聞こえているなら返事をくれるかな?)
[再度、呼びかけをする。
その声は若干焦りを含んでいたかもしれない]
―中央ブロック―
[みなみのサーヴァントが追いかけて来る様子は無かった。
跳躍を繰り返し、流血する傷口を極力意識から排除してマスターへと繋がる経路(パス)を追う]
――幕屋は移動させる、とヒジリは言っていた。なら、合流するのが最善でしょうね……。
[先ほどの戦闘は彼も見ていただろう。無理をするな、と叱られるだろうか。思考の片隅に沸いた益体も無い考えが、少年にとって今は逆に有難かった]
[
指示に頷き、基点にと魔力を流す作業を続けるも。
間に合わないだろうということは、ほぼ確信していた。
何故なら。
]
――……あれ、ですか。
[
もう、その姿は。
堂々と歩んでくる異装の姿は、既に視界にと入っていた。
]
[響く振動音。そして、みなみの言葉。それが携帯電話だと言うことは、自らの内にある比較的近代の魂が知っていた。
興味はない。
元よりキラーは犯罪者の魂が寄り集まってできた群体である。唯一の繋がりは殺人であり、存在の在り方がその一点に収束することで、危うい安定を得ているのだから]
[圧倒されるような、その気配。魔力。術を解かなければ、侵食されてしまいそうな、感覚。
走り出したバーサーカーのほうを咄嗟に見た。]
逸るな!
[だが、自身が出るわけには行かない。相手は恐らく、とサーヴァントであろう女性のほうを注視する。]
キャスター、か……。ならば、まずい。対魔力など期待できない上に、キャスターに私の魔術がきくとも思えない。なら。
[自分が目指すのはマスターのほうだと、ジリ、と場所を動く。]
[馬鹿な行動だと思う。
あれだけ策を練るべきだと進言していた男の行動ではない。
――余計なことを思い出させるから。
お前が悪いんだぞ。マスター。
そんな思念を端に抱いて。最後に、一つまた「笑って」、]
[駆ける体は疾駆というより跳躍に近い。
マントの中から既に刃は抜いている。
麦藁帽子はさも当然のように吹き飛んで、仮面が露に。
その表情は無ではなく、笑みに固定された紋様。]
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